吉田修一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
前作「横道世之介」では、1987年、大学進学で東京に出てきた世之介の1年間が描かれた。
本作では、世之介が大学卒業後の1993年と、そこから27年後、(物語世界で)東京オリンピックに湧く2020年が描かれている。世之介は、大学を卒業したといっても、留年した挙げ句、就職できずにバイトとパチンコで日々を送っている。あまり見習いたくない人生だけど、悲壮感はない。ただ純朴でまっすぐな世之介と、彼に惹かれていく登場人物の姿がまぶしい。
といって、正直、なかなかご都合主義的な展開は前作同様。それでも世之介のことが気になってしまうのだから仕方ない。
(前作を読んでいる前提なのでネタバレではないと思うけど)世之介が事故で亡くなることはわかっているので、元気な姿を見るとうれしくもあり、切なくもある。
そしてなんといっても、世之介と同時代に生きてきた身としては、平成初期のころが懐かしい。レインボーブリッジができた頃とかさ。郷愁感が本作の評価を後押ししていると思う。
桜子は世之介の優しさに感謝しつつ、こう言う
「世之介ってね、たとえば人からこんな人いるんだよ、って聞くと、とっても良い人そうに見えるんだけどさ、実際そばにいたら、そうでもないからね。極端に頼りないし」
そうなんだろうなあ。
前作に登場した祥子ちゃんや倉持くん、加藤くんたちのその後がわからないのはちょっとさみしい。大学時代の元カノやクラスメイトとの関係ってそんなもんかもしれない。 -
Posted by ブクログ
▪︎パーク・ライフ
日常の一部を切り取ったかのような、なんの変哲もない生活の中に隠れたストーリーを、男女の絶妙の距離感を表現しつつ、特別にしてくれている感じが好きだった。
目を開いているのに目の前のものは見えていなくて、別のことを考えている時の解像度が高くて共感した。オチに関しては、私は深い考察をするような思考を持ち合わせてないのだけれど、日常にオチなんてものはないのだから、それでいいのだろう。
▪︎flower
「この世にある花の数だけ、人には感情がある」
良い言葉だと思った。花をテーマに数多くの複雑な感情や人間模様を描いていて、シリアスな場面とは裏腹に鮮やかな表現にのめり込んでしまった。
夏の酷暑からくる苛立ちの表現があまりにもリアルで、読んでいるだけで気持ち悪い汗をかいてくる感じがした。
それぞれタイプの違う物語なのに、同じ世界線のそれぞれの日常を切り取っているような感じがして不思議な気持ちになった。
#2026 #1