吉田修一のレビュー一覧
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三篇収録されている短編集。
最近吉田修一さんの作品にハマっていて、いくつか読んでいますが、何かから逃げている、または目を逸らしている男性を描いている作品が多いように感じます。この三篇の登場人物たちも、何かから逃げている男性。『熱帯魚』の大輔は、同居している子連れの真実やその娘の小麦、義弟の光男や近所に住む時先生に対し、養っている、気にかけていると思っていますが、その思いはどこか、本心とは違うところにあります。自分の淋しさを埋めるために過剰に介入し、その見返りを求めているような描写がとても切ない。
『グリンピース』は吉田作品の中で、一番嫌な男性(笑)でも、それより『突風』の新田の方が、相手の人生 -
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温泉を訪れる五組の男女を描いた恋愛小説。
表題作『初恋温泉』は、初恋の女性と結婚し、がむしゃらに働いて成功するが、夫婦で温泉に出かける前日、妻から離婚を切り出されるというお話し。主人公の重田は、妻には自分が一番幸福な瞬間を見せたいと思っていて、それ以外のダメな部分は見せないようにしていました。妻の立場からすると、良い面も悪い面もすべて見せて欲しい。一番幸福な瞬間を一緒に喜ぶだけのパートナーは、どこかお飾りのような気もして、なんだか寂しい関係であることが読んでいて感じられます。好きな相手だからこそ、輝いている自分だけ見せたい夫と、好きな相手だからこそ、すべてを見せて欲しい妻。自分自身、夫婦関係を -
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昭和後期の地方任侠家の盛衰のなかで、少年の心の成長を追う物語。
主人公の駿と弟の悠太が身を寄せる三村家は、叔父にあたる長男・龍彦がヤクザの組長、次男・文治がチンピラ、文治を慕う正吾と猛々しい男たちばかり。幼い駿はそんな男たちの中で育つ中、自死した三男・哲也と思われる幽霊を離れの家で見ることに。
暴力・酒・女に荒くれる男に自分もなっていくと思いつつも、どこか違和感を感じながら成長していく過程が繊細に描かれています。駿は三村家の男たちにある意味呪われていて、それが消化されるようなラストが良かった。歳を重ねていくうちに、駿が哲也に似ていく様子が少し恐くも感じました。 -
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思い当たる節しかない物語だった。
テレビ局に勤める俊平は、
公園で出会った聴覚にハンディキャップを持つ響子と恋に落ちる。
静かで穏やかな日々を重ねる二人だが、音によって隔てられた世界は
恋しさと戸惑いを同時に生み、やがてすれ違いが積み重なっていく。
自分はその相手のことをどれぐらい知っているのだろうか。
これはある意味、永遠の問いなのかもしれない。
言葉にしなければ伝わらない。だが、その言葉によって逆に伝わらない。
そんな矛と盾のような禅問答が頭の中で駆け巡る。
物語は全編通して俊平の目線でしか語られないので、
響子の思いはわからない。つまり読み手も俊平と同じ感覚を味わうしかない。
こち -
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ネタバレ過去と現在2つの事件に関わる満洲と滋賀の2つの湖。
そのとても美しい情景と子供の残虐さが共通している。
そしてそれを知っている大人が口を噤んでしまうことも。
真実を語ることと沈黙を貫くこと、子供のためにどうすべきなのだろう?
また、誰でもいいからとにかく犯人を作り上げる、という警察の悪しき構造もとてもよく描かれていた。
他人の幸福や真実と自身の立場や利益に利益相反がある時、どちらを大切にするのだろう?
なぜ人間はそんな選択ができてしまうのだろう?
そして、主人公の増幅していく「誰かに従属したい」という仄暗い欲望。
これは程度の差こそあれ、誰しも持っているものなのかもしれない。
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フォローしている方のレビューに惹かれて読んでみたいと思った。
大学院生・岡田一心が既に引退している伝説の女優・和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理のアルバイトをすることとなり、そこから交流を深めていく物語。
戦後のエンターテインメントの歴史を辿りながら、その時々に銀幕を彩った色々な女優さんを彷彿させる鈴さんの魅力と生き様がとても面白くスルスルと読めた。
加えて、これまで観てきた映画のエッセンスが詰め込まれたような、著名な映画監督たちとその代表作を思い出させる(架空の)作品が語られていくのも楽しい。
後半には鈴さんと一心の出身地である長崎に落とされた原爆の話が入ってくる。
私も長崎生まれで、小