吉田修一のレビュー一覧
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静謐で美しい話。
冒頭でテレビ局に務める俊平と耳の聞こえない響子が出会うシーンがドラマティックで一気に引き込まれた。
筆談でのやりとりで、響子の短くも優しい言葉や、時々芯をつく会話にはっとさせられる。
音のない静かな爆弾は、爆発するまでその存在にすら気づかないように、響子がなぜ突然俊平の元を去ったのか、響子が本当は何を思っていたのかは分からず、俊平は彼女の家をぐるぐると探す。
読んでいる途中は吉田修一らしくない作品かな?と思ったが、「悪人」や「怒り」と同様に、愛する人が本当はどんな人間なのか、本当は何を思って生きているのかを主人公が考えており、殺人犯が出てこないだけで、これまでの作品とテーマ性が一貫しているように感じられた。
巻末の宇垣美里さんの解説が秀逸。この文章で一気にこの話が好きになる。
バーミヤン遺跡の爆発を誰もが見て見ぬ振りをしたように、俊平も彼女が去っていくかもしれないのを分かっていたのに、去らない方に懸けたという伏線が、この物語をより一層重厚なものにしている。 -
Posted by ブクログ
よそのお宅の猫を覗かしてもらえる番組
「NHKネコメンタリー 猫も、杓子も。」の本です。
夫が養老先生のお宅に行くと まるが居て
邪魔だったよ。とチロじゃなかったの?
と聞くと、ウーン?ドスンと座ってたけど?
それに、わざと邪魔な所に居るんだよ。
またいで、通ってたんだよ。と
嫌われていたのかしら?
自分の思い出になってしまった猫たちを重ねて見てしまいます。
猫の下僕となった人間も、そうなのよねー。
と共感してしまいます。
テレビで、いくちゃんとたまちゃん・カグラちゃん・大ちゃんと見てその下僕化した作家さん達を見てうふふと癒されてます。
この本が、何冊も続くと嬉しいんだけど。
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Posted by ブクログ
この小説は、実際の事件を元にしてますね!
5つの内容を読み終えた後に、実際の事件を調べ
見比べをしました。
どこかで皆、"楽園"を求めているのかも知れないですね。
・青田Y字路
・万屋善次郎
上気2つは映画"楽園"に描かれていた内容ですね
ほぼ、内容通りだったので面白かったですね。
本当に小さな集落シリーズは、不気味です。
そんな、イメージがついてしまう。
互いに助け合う事は出来なかったのか。。と思う。
残り3つも、まぁまぁです。
背任罪といい、金の貸し借りといい。
お金関係は胸糞悪い!読むだけでイライラしますわ(笑)
ただ、"曼珠姫午睡"は凄く官能チックで
なんかドキドキしました。。
全体的な感想として、実際の事件を
少しアレンジして短編集となるのは
まぁまぁだったかと思います。
他、吉田修一さんの作品を読んでいきたいですね! -
Posted by ブクログ
短編が5つ。「青田Y字路」「曼珠姫午睡」「百家楽餓鬼」「万屋善次郎」「白球白蛇伝」。
「犯罪小説集」とは言っても、そこで起こる犯罪自体より、登場人物の生き様や人間関係に重きが置かれている感じ。
ひとつめとふたつめは、最後でよくわからなかった。『え、終わり??」と思ってしまった。結末は想像してねってことなんだろうけど、しっかり終わるのかと思っていたから突き放された感じがした。ちょっとピンと来なかったな。
3つ目以降は、そのスタイルに慣れたのか、どれも面白かった。楽しいお話ではないけれど、ストーリーには引き込まれた。
出てくる登場人物たち、罪を犯したひともそうでないひとも、根っからの悪者はいなくて、何だかみんな哀しいものを持っていた。
人間くさい展開。物悲しい結末。登場人物の背景を知ってしまっているだけに、何とかならなかったのか……とやり切れない気持ちが残った。
「楽園」ってタイトルで映画化されているらしい。カバー(ダブルカバーで映画化仕様がかかっていた)の写真を見てもどれが使われたのかよくわからず、公式サイトのあらすじを見た。「青田Y字路」と「万屋善次郎」がミックスされているっぽいね。 -
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「安寿と厨子王」「山椒大夫」が現代に現れた!
最近、NHKラジオで森鴎外「山椒大夫」の英語版をリスニングした。
子ども時代に童話を読んだきりだったので、懐かしく聞いていたところ、こういう本が出ていることを知り、興味深く拝読。
アンジュと頭獅王にとってはお母さんに会えてハッピーエンドだけど、物語の残酷さを再確認した。
山椒大夫と三郎、人でなしすぎるでしょ。
そして、慈悲をかけるふりして「黄泉の国」を贈る頭獅王の報復もこわい。処刑の仕方は「山椒大夫」(by森鴎外)通りかな。
オリジナルストーリーは加えられているものの、話の筋としては元の話の通り。
死んだはずのアンジュが現代の新宿で再登場した場面は、舞台のカーテンコールを見ているようだった(カーテンコールでは死んだ人も手に手を取って再登場する)。
GoogleとAppleとソフトバンクの株を…というくだりはちょっと笑えたな。
この本の、というより、安寿と厨子王の思い出が少しだけある。
小学校一年時の友達が、童話「安寿と厨子王」を「私の大好きなお話なの!」と言っていた。
当時「大好きな物語」と言えるようなものがまだなかった私は、安寿と厨子王をさぞ素敵な物語だと思っていた。ワクワクするプリンセスのお話かと思ったほどだ。
それを母に伝えたら、嫌な顔されて「私は嫌いよ。残酷だから。」と一蹴された。
その後も、20歳の頃に「安寿と厨子王」が好きだという友達に会った。
今となっては、彼女たち、若年にして「安寿と厨子王」好きだってのは変わってるなぁと、改めて思う。
おそらく、現代人にとって、この人身売買と虐待と報復の物語が、受け入れ難いと思う。
それくらい、すごく、かわいそうで残酷な話なんだよね。
もともとは浄瑠璃なんだとか。
子ども向け童話にしたのが「安寿と厨子王」らしい。これを子ども向け童話にしようと思った人、逆にすごいな。