吉田修一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレANAの有名な機内誌「翼の王国」に連載されている短編小説12編とエッセイ11編の文庫化。
エッセイは読まないので、作者自身のプロローグと小説を読んだ。
すべての小説が、良い意味で尻切れトンボ。
そこに終わりは一つもなかった。
すべての小説は、必ず何かの始まりでペンを置いている。幸せな始まりの予感を感じさせるものもあれば、不吉なことの始まりをにおわせるものもある。
でも必ず…何かが始まっている。
ディテールにあまりこだわらず、無造作に言葉を連ねてゆき、ぶつっと句点が打たれて、いさぎよい。その先を読みたいという気持ちにまでは至らず、次の始まりはどんなのだろうかと、心はページを繰る手を急か -
Posted by ブクログ
ネタバレ圧倒的な筆力で現代の「ひずみ」描きだす!開発途上の大宮の地にそびえ立つ、ねじれた外観で、地上35階建てのスパイラルビル。その設計士・犬飼と、鉄筋工・隼人、立場の違うふたりの運命が、交差する。
別段何か起こるわけでは無いお話。
最後に良治が自死したくらい。
どこにでも居る様な男二人。
犬飼は愛人作ってまともに家に帰らず嫁さんに出て行かれ、
隼人は現状に不満が無い事に不満を覚えて貞操帯を着けて何か変化を期待している様に見えた。
何気ない日常が人間を歪ませる。
何もかも不自由なく手に入り生活が出来るこの世界が、
大宮スパイラルの様に歪んでいく。
ねじれたものは元に戻ろうと反発する。
巨大な建 -
Posted by ブクログ
「間違えたくない」
別に取り立てて魅力的なところもないけど、人に好かれないわけでもない。
かと言って、みんなの憧れの彼と付き合っても、きっと捨てられて、大きな傷を受ける。
そんな、ゆるやかにマイナス思考な主人公が愛しくて、人に優しくしたくなります。
「私も、間違ったことしてみるよ」
自己嫌悪の裏返しのように傷つけてしまった年下の女の子に、こんな風にまっすぐ宣言できるのは、素敵なことだと思う。
まっすぐ、自分と、周りの人に向き合うことは痛みも伴うかもしれないけれど、やっぱり見てて潔いし清々しい。
自慢の弟も、高校時代よ憧れの人も、気のいい上司も、みんな彼女が幸せになるための登場人物になる -
Posted by ブクログ
ANA機内誌「翼の王国」にて連載されていた「願い事」、「自転車泥棒」、「モダンタイムス」、「男と女」、「小さな恋のメロディ」、「踊る大紐育(ニューヨーク)」、「東京画」、「恋する惑星」、「恋恋風塵(れんれんふうじん)」、「好奇心」、「ベスト・フレンズ・ウェディング」、「流されて」の短編12編と「バンコク」、「ルアンパバン」、「オスロ」、「台北」、「ホーチミン」、「スイス」6編のエッセイからなる吉田修一さんの作品。
台北へ行く際、旅のお供に選んだ一作。
私の場合、旅のお供の条件は、あっさりした話で旅の気分を盛り上げ、現地の良さを知ることができる作品なのだが、この作品は吉田修一ファンであること