吉田修一のレビュー一覧
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表題作、ほか3編。いずれも、幼稚で身勝手な若い男性が主人公。
一見普通に見えて、じつは心の奥底に凶器を隠し持っているような、精神的に不安定な男たちを主人公にするのがうまい、といつも思う。おそらくは肉親の愛情だろうけれど、彼らには大事な何かが欠落しているため、ふとした瞬間に突然牙をむき、破壊的になる。当人は無自覚なのだろうが、破滅願望すらうかがえる。
だから、周囲の人間、とくに側にいる女たちはいつも振り回され傷つけられることになるため、読後感もよくはない。設定こそ違うけれど、3編に共通するこういう種類の男には、近づかないに限る。
最近は、わかりやすいストーリー性のある作品も増えてきたが、初期の頃はなるほど芥川賞作家、という雰囲気のものが多い。これもそんな1冊。
今年から芥川賞の選考委員にもなり、ベテラン感も増している。今後も不条理で重みのある作品を楽しみにしたい。 -
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『最後の息子』の主人公のその後を描いた短編集。
ヒモ状態で同棲していたオカマバーのママを裏切り、部屋を飛び出した主人公は、子持ち女性と結婚して父親になっていた。
偶然オカマのママと再開する最初の一編は、とくに切ない。
一見まともな社会人生活を送っているようだが、やはり主人公の本質は変わっていない。まともな生活は息苦しく、いつも逃げ道を探している。相手の女性は出来すぎで、ダメ男を増長させる。でも、しっかり者ほどそういう男に頼られて、また惹かれてしまうんだろうな。どう考えても、幸せになれるとは思えないのに。
最近、読み終えるそばから次の本を開いてしまい、レビューを何冊分か溜め込む状態が続いている。印象の弱まらないうちに書かねば……。 -
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吉田修一の描く男をみていると なぜか ささくれ立つ。
なんとも言えないほどの頼りなさ。
そして、自分中心なのだ。それに愛想を尽かすオンナ。
いつの間にか ドロドロの関係になって、すすめなくなり
結果として 別れるしかないみたいだ。
この三つの短編も、底流は 似ている。
「熱帯魚」
大工さん。大輔。ある程度任せられるけど、任せきれないところがある。
吉田修一の男主人公としては、めずらしく 高給取り。
大工さんに、ボーナスで プーケットに4人が行けるほど出るのだろうか?
大輔は、ちょっと、おせっかい。『オレについてこい』系。
大家は 時先生で いつもむつかしいことを考えている先生。
歳をとっているが、ちょっとゲイっぽい。
大家から借りたマンションに、真実とその子供 麦子と一緒に住む。
真実は 天真爛漫系。何となくイメージがわく。
大輔の親はつれ子同志の結婚で、義理の弟 光男がいるが、
これは、箸にも棒にもかからない感じ。吉田修一が好きなタイプ。
ちょっとのろまで、しかし 羅生門の演劇をしたいと思っている。
熱帯魚を 見つめて ぶらぶらしていて、熱帯魚の顔のちがいまで分かるようになった。
光男も 転がり込んで居候となる。
4人の疑似家族ができ上がる。
大輔のついてこい系で、まわりは、それをどちらかと言うと 迷惑がっているが、
気がついているようで、気がつかない。
その光男が プーケットの代金と真実の貯めた50万円を盗んで 逃げた。
大輔は 家をつくっている家主の娘14歳とねんごろとなり、ぼやを起こす。
これは、完全に 淫行条例違反 ですね。ロリコンですまされない。
大輔は、棟梁に ボコボコにされるだけで、まわりは 簡単に受け止めている。
普通は クビ でしょう。
なぜか、読んでいると 気分がささくれ立ってくる。
余っている エネルギーと その扱い方が分からない青年たち。
吉田雄一の 男たちは なぜか そのような雰囲気をまとっている。
「グリンピース」
僕と千里。鷹野と椿。
カップル同士のつきあいで、鷹野と椿は マジメ。
千里は 冗談の分かる女。
僕は 失業中。千里が すきだけど、どうも気に食わない。
千里がカレーを作っているときに グリーンピースをぶつけ始める。
それで、千里が 家出する。そこから 物語は 奇妙になる。
吉田修一の『どろどろ』が始まる。
『許す』ことは、分かるが、『許さない』とは どうすればいいのか?
本来ならば 別れるという方向に行くはずだが、別れないで許さないを考える。
真っ白な雪が 降って すべてを覆い隠す。
「突風」
新田は どうも いい会社に勤めているが、休暇で 海辺の民宿でアルバイト。
民宿の 奥さん すみれさん。ふわふわと浮かんでいる女。
それに、ちょっかいを出す 新田。
吉田修一的ワールド。不安定な状態での不安定な感情。 -
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11人のオンナの デッサン。
そのオンナの断面を切り取る うまさがある。
それなりに、存在感がある。
そのオンナたちを見ているオトコの
不確かさ。不安定性が 目につく。
下流のオトコたち。
『どしゃぶりの女』
頼りないオトコなのに、オンナを試す。
何もしないオンナが、食事を待っている。
だから、待っているのを どれだけ待てるか 試す。
この こころ意地の悪さ。
それでいなくなった。
それは、オンナではなく ペットの猫の扱い。
『殺したい女』
あかねにつきあい、居着いてしまうあかねの工場。
母親が蒸発し、娘 あかねも蒸発してしまう。
お母さんのところにいったんだ。
それで納得する オトコたち。これも、ペットのたぐい。
ちゃんと、探せよ。
『自己破産の女』
まったく、金の管理ができないオトコ。
女のセイにするなよ。
『泣く女』
妊娠させて、堕胎を自分で言えないオトコ。
友人に言ってもらう。情けない。
『平日公休の女』
アパートに残された別れた彼女の荷物といっしょに
『手切れ金』と書いておくるオトコ。
『公衆電話の女』
公衆電話の話を盗み聞きしたと言って
身体の関係を迫る オトコ。
『11人めの女』
別れたいと言われて 首を絞めてしまうオトコ。
『夢の女』
きれいだなと思って ストーカーまがいのことをして、
彼女の家に 男の声がしたからと言って
石けんをぶつけるオトコ。
『CMの女』
マクラ営業で CMにでることができたのだろうな
と 推測で 考えながら CMを見るオトコ。
『ゴシップ記事の女』
虚偽の履歴書を書いて、就職し、仕事もできずに、
女に教えてもらう オトコ。
『最初の妻』
初恋以前のあわい想い出にしたるオトコ。
掃いて捨てるような 下流のオトコたち。 -
Posted by ブクログ
吉田修一や石田衣良は若者の風俗を描いて支持を得たような印象があるのですが、そういう作家さん胡散臭くて結構嫌い。吉田修一もパレードが面白かったにも関わらず、結構胡散臭げに見ていてあまり読まなかったのだけれど、去年読んだ「さよなら渓谷」で見直したのです。
さて、この本は多分昭和30年代位のやくざの家系の家で育った少年が大人になる道すがらを描いた連作長編で、予想通りろくな大人になって行かない姿がつらつらと書かれています。性的な描写も結構有りますが、個々の章が全て寸止めなので、すっきりしたいエンタメ好きの人には物足りないかも(僕がそうです)。でもそういうワカモノガーみたいな変なおもねりはなく、淡々とどうしようもない家庭のどうしようもない道を歩みそうな少年~青年を描いていて結構好印象。読んでいてぐったりはしましたが、そこは評価とは別の個人的な好みの部分になるか。