あらすじ
大宮の地にそびえたつ地上35階建ての超高層ビル。それはフロアがねじれながら、巨大な螺旋を描くという、特異な構造をもっていた。設計士・犬飼と鉄筋工・隼人、ふたりの毎日もビルが投影したかのように不安定になり、ついにゆがんだ日常は臨界点を超える。圧巻の構想力と、並はずれた筆力で描く傑作長編。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
出版社/著者からの内容紹介
最高傑作長篇小説
村上龍氏絶賛!
「倒壊の陰にある希望、裏切りと同意語の救済。閉塞と共存する解放、虚構に身を隠す現実。」
関東平野のど真ん中、開発途上の大宮の地にそびえ立つ、地上35階建ての巨大スパイラルビル。設計士・犬飼と鉄筋工・隼人の運命が交差するその建設現場で、積み重ねられた不安定なねじれがやがて臨界点を超えるとき。鮮烈なイメージと比類ない構想、圧倒的な筆力で<現代>のクライシスを描く芥川賞・山本賞作家の傑作長篇小説!
それぞれにそれぞれの物語があるんだなぁ・・・
と感じてしまいます。
きっと何も取り柄がないような僕にも物語にしようと思えばそうなるのかなぁ・・・とか感じながら読んでみました。
なんだか続きも読みたいです♪
Posted by ブクログ
ねじれた建造物で、人が崩壊していくって発想がすごい。無機質なものに囲まれていると、人が壊れていくのもわかる。人の心があっての、デザインだからね。暖かいものの中で暮らしたいよね。
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≪内容≫
大宮の地にそびえたつ地上35階建ての超高層ビル。それはフロアがねじれながら、巨大な螺旋を描くという、特異な構造をもっていた。設計士・犬飼と鉄筋工・隼人、ふたりの毎日もビルが投影したかのように不安定になり、ついにゆがんだ日常は臨界点を超える。
≪感想≫
そびえ立つランドマークとそれに関わる2人の男の日常。Number10から始まりNumber1で終わる各節のタイトルは、歪みの臨界へのカウントダウンとなっている。結末が明確でないことに不満を感じる方もいるのかもしれないが、徐々に歪みに耐えられなくなっていく2人の不安や焦燥感と、その捌け口となる行動がとてもリアルに感じられ、現代の閉塞感を巧みに描き出している点もさすがと思った。建設中のランドマークの各階に貞操帯の鍵を埋め込んでいくという理解し難いはずのその感覚に惹きつけられるのは、僕だけではない、はず。
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主人公の一人、隼人は鍵を埋める
作り手として自分だけが知っている秘密を残したいのか
それ以上の意味があるのか
隼人のそれまでの行動がとんでいるのでわかりがたい
もう一人の主人公、犬飼は愛人部屋で
“グローバル経済と現代奴隷制”という書籍を見つける
この本が気になって(実際にある書籍のため)購入
現代奴隷制という相反するような言葉が連なって
ひとつの単語を形成していることはなんだか不思議な印象
最後、これで終わり?と思う終わり方になっている
吉田さんのお話はあくまで生活の一部を切り取ったもの
という形になっている気がする
何か大きなことが起こったとしても
わかりやすいハッピーエンドも哀しい結末もなく
ただ、その後にも続く生活の余韻を感じるよう
それが素敵なんだけど、吉田テイストの余韻は
(あまり明るくもなくカラッともしていないので)
積極的には味わいたくないかも…と思ってしまいます(笑)
Posted by ブクログ
人は見た目じゃわからないというものの象徴が主人公の貞操帯で、内と外という(内面外面というよりも文字通りの内側と外側)面をそれぞれの登場人物に適したアイテムで鋭く描かれている。
ふたつのサイドからの構想も変に感傷的じゃないので鼻につかなくてよかった。
Posted by ブクログ
好きな作家はと聞かれたら、必ず入れるであろう作家の一人です。
文学界や芥川賞を取るなど純文学の作家ですが、この「ランドマーク」は彼の作品の中でも特に純文学っぽい作品だと感じました。
舞台は大宮。大宮駅前に建設中の地上35階建ての超高層ビル。
その建設に関わる設計士・犬飼と、鉄筋工の隼人という二人の毎日が描かれます。
犬飼が設計したビルはフロアが捩れながら積み上げられる螺旋の構造を持っている。
そのビルの設計が進むに伴って交互に描かれる犬飼と隼人の毎日も少しずつずれていき・・・、というお話。
舞台が東京でなく九州でもなく、大宮であることには意味があるんですが、個人的には、大宮には一年間予備校に通っていたことがあり、描写される街の風景も所々目に浮かんできたり、そこらへん妙に感情移入できて良かったです。
捩れていく二人の生活が徐々に緊迫感を増していく描写はさすがです。
吉田さんの作り出す会話は本当にリアリティがありすぎて、時々ゾッとしてしまいます。
ただ、交互に描かれる二人の生活がどこで交わるのかと思いながら読みつつそこを裏切られるっていう。これは何だろう。別のとこに着目してもう一度読むべきなのか。
スパイラルしたビルの柱はいつまでも交わらずに上へ上へと続いていくということか。不思議な感じ。
二人の男の捩れていく生活から僕が感じたことは、
鬱々としていること、退廃的であること、やるせないこと、うまくいかないこと、不安であること、イライラすること、などなど。
そういう負の感情の認識や共感。
それが世の中に、というより一人ひとりの人間の中に存在するのである、ということ。
それはきっと人によっては難しく考えなくとも意識できていたり、普段の人間関係の中で消化できるのかもしれないが、そうでない人にとってはそういう感情の存在の認識はきっと生きていくために必要なことであり、きっとそこらへんが純文学たる所以なのかなぁ、と取りとめもなく見当違いに思いをめぐらせた本でした。
吉田修一に興味がある人は別の本から入る方が良いかもしれません。
Posted by ブクログ
ねじれながら空へと上っていくビルの建設。
そこに絡みつくように織り成す人間ドラマを、軽妙なテンポの文章表現で描き出しています。
生き生きと脳内で踊る登場人物たちに、圧倒させられます☆
Posted by ブクログ
生きているひとは、
皆、
どこか捻れていて、
どこか不安定だ。
隣の誰かが
何を考えているかなんて
知るよしもなく、
それでも
わかった気になって
日々を過ごしている。
捻れた日々の中で。
Posted by ブクログ
ちょっとなんだ、コレ的な部分もある。ランドマーク的なタワーの建築現場に男の象徴を司るものを抑える鍵を一つずつ埋め込んでいくのは何かの皮肉のようだ。
Posted by ブクログ
ねじれたフロアで巨大な螺旋を描くという異形なデザインの建設中高層ビル『O-miyaスパイラル』。
それに関わる人間達の少しずつねじれて行く人生を描いた長編作。
ラストの方に書かれていたこのビルの設計上の例え話が人生の比喩のようでゾクっとしました。
Posted by ブクログ
待っていました、文庫化。
日常に散らばる危うさと心もとなさが、
建築途中の高層ビルが徐々に空へ伸びていくように、
ある頂点へと積み重なっていく。
吉田修一を読むといつも思うのだが、
不特定多数の固有名詞が乱立すると、
没個性化が起こる。
Posted by ブクログ
圧倒的な筆力で現代の「ひずみ」描きだす!開発途上の大宮の地にそびえ立つ、ねじれた外観で、地上35階建てのスパイラルビル。その設計士・犬飼と、鉄筋工・隼人、立場の違うふたりの運命が、交差する。
別段何か起こるわけでは無いお話。
最後に良治が自死したくらい。
どこにでも居る様な男二人。
犬飼は愛人作ってまともに家に帰らず嫁さんに出て行かれ、
隼人は現状に不満が無い事に不満を覚えて貞操帯を着けて何か変化を期待している様に見えた。
何気ない日常が人間を歪ませる。
何もかも不自由なく手に入り生活が出来るこの世界が、
大宮スパイラルの様に歪んでいく。
ねじれたものは元に戻ろうと反発する。
巨大な建築物と共に犬飼も隼人もねじれていくように見えた。
結末が尻つぼみのように感じたが、
ねじれたものはそう簡単には戻らないとも読める様な気がする。
日常生活の中で注視していないだけで、人は歪んで行ってしまう事があるのかもしれない。
犬飼や隼人の様に戻る事が出来なくなるのかもしれない。
菜穂子がまぁまぁ可愛いなぁ。
Posted by ブクログ
作品から出てくるカラーとしてブルーグレーのイメージでラストに向けて破滅していく居心地の悪さ、不快感が感じられます。これも狙いなのでしょうか?
(本棚を検索していたら、以前の登録が消えてました)
Posted by ブクログ
ここでの評価、低いなぁ。。。^^;
確かに、内容は、結局なに?っていう感じはあったけども、でも読んでいて退屈では、なかった。
読んでて街の情景が頭いっぱいに広がるのって、描写がうまいんだなぁと思う。
Posted by ブクログ
人の心の奥の歪みとか苛立ちが、斬新なデザインのビルの建築と共に淡々と綴られる。おもしろいことはおもしろいけど、物語を楽しみたい人には向いていないかな。「パレード」、「悪人」のほうが楽しめた。
Posted by ブクログ
自分が建築を学び始めたから思うのだろうけれど、「そうきたか!」と思った小説。ゆがんでゆがんで、破裂する。もう救いの無い様なストーリーだけど、文章の所々に、なにか共感する所がある、そんな一冊。
Posted by ブクログ
自分の地元が舞台で、その詳細な描写に光景が浮かんだ。
また別の楽しみ方ができた。この街が舞台ってあんまりなくて嬉しいような。。
上手いな~と思う。
誰もが感じている閉塞感のようなもの、
空気のように当たり前でいて、実は最も根源的であり
その危機的状況をランドマークタワーに投影していて、
果たして他人事とは思えない。
Posted by ブクログ
ねじれた形の高層ビルを設計した男と建築する男。
彼らの人生もまたねじれていく。
共感もしなきゃ感動もしない。
だけども、この人の本は文学の香りがする。
Posted by ブクログ
それほど期待もせずに買って読み始めた割にはなかなかの面白さであった。設計士の犬飼と鉄筋工の隼人を主人公にして、普通の生活の裏に潜む歪んだ日常がよく描かれていて、現実感を持った作品となっている。また、その歪みが、大宮に建築中のO-miyaスパイラルと照らし合わせて描かれているところが、読者に、現実的な歪みと不安感を植えつけるのに強い効果を出している。
その他の登場人物も含めて、みんなどこか不安定で、全編通して幸福感を感じさせない内容となっており、何かが起きるのではないかとつい先を読み進めてしまうのであるが、吉田修一の悪いところであろうか・・・読者それぞれに委ねているのかもしれないが、終わりがあっけなさすぎる。せっかく興味を持って読んで来たのに、最後がこれではつまらない。
もうちょっと先まで描ききってほしいものである。
Posted by ブクログ
いろんな出来事が、結末に至る前に(中には不吉な示唆を残して)話が終わっていってしまうので、その後が気になってしまいます。女が出て行った本当の理由、ある人物が死んだ理由、告白の行方、そして一番気になるのはO-miyaスパイラルのその後。物語は吉田修一らしい視点で、現代(小泉政権時代の日本のようです)を描いてて相変わらずうまいなーと思います。ただ、読後はすっきりしないので好き嫌いが分かれそうです。
Posted by ブクログ
いまいちどの登場人物の心情もよく書かれていないように感じてしまったなぁ…。なんで主人公が貞操器具をつけているの、とか、愛人の人が4pしたいのかがよくわからんかったです。残念。
Posted by ブクログ
直前に読んだ『ペダルの向こうに』(池永陽)の感想が「通俗的で捻りが無い」でしたが、これは逆に捻り過ぎられていて。まあ、舞台が捩れた構造の高層ビルだからですかねぇ(苦笑)。
設定は面白い。特に鉄筋工・隼人のXXXX(あえて伏字)への精神的依存は今までに無いパターンで見事です。しかし、どうもその話と設計士・犬養の家庭の崩壊を二本柱とした物語とした為、二重螺旋のようになり、どうも作者の意図の理解が極めてしづらくなっているようなのです。
エンディングもどうでしょう。結末まで描くやり方が有ります。さらにそれが進んで「将来を予感させる」終わり方もあります。この物語は、これらに飽き足らず、さらに手前で終わらせている感じです。おそらく意図的に。でも何のために?。それが読む人に伝わらない(少なくとも私には)のなら余り意味のある手法には思えないのです。
さらに羽ばたく為の実験的小説。そう言う作品だと思います。(希望的)
Posted by ブクログ
昔、本を読まないボーイフレンドが、
本を読むようになって、
いちばん最初に言ったのが、
「本って、こんなエロいことが書いてあるのね。
みんな良く電車とかで読んでるよね。
真面目に本を読んでいる人の見方が変わったわ」
でした。
どんな本を読んだのか、今でも本読みのようです。
この本を読んで最初に思い浮かんだのは、その時のこと。
かなりびっくりしちゃった。
でもどんどん読んでいくと、あれあれ、いろんなこと考えなきゃ
いけない本になってきた。
ランドマークになりうるような大きなものに、
自分しか知らないこと少しずつ少しずつ埋めていくのは、
気持ちがいいだろうな。
Posted by ブクログ
気づいたら話が終わっていて
吉田修一の気持ちとリンクできないと
よくわからないまま終わってしまうお話だと感じました
でも大宮にゆかりがあるので、ちょっと好きです
Posted by ブクログ
高層ビル建築現場で働く鉄筋工隼人、そしてその高層ビルの設計士犬飼の日常が描かれる。あまり起伏のない物語。わかりにくい作者の意図。それなのに、なぜか私は惹かれて読んでしまう。出稼ぎにきているおじさんたちや、仕事浸けで妻がわからなくなる犬飼。日常に次第にいらいらしてくる隼人。この作品に渦巻く空気感、人々のありようが「悪人」へと続くのだなと実感できた。「悪人」前段階の不安感を喚起させてくれた。
Posted by ブクログ
ねじれたランドマークに、ねじれた社会生活を送る2人の男性を投影して話は進む。
都市部周辺に住まい仕事をする人々の、日常からでは伺えない、異常な精神状態。
だいぶ前に読んだんですけど。 本の名前ときれいな水色に惹かれました。 の割りに、内容はどちらかと言えば、人間の心情に迫るもの。心の葛藤とか孤独感とか。30代くらいに確かに考えを巡らせてしまいそうだと、自分に投影するシーンもしばしば。 ねじれた超高層がテーマなので、当時建設中だった、名古屋のアレを思い浮かべながら読みました。それにしてもランドマークってなんで、どうしてもほっそりしたイメージ喚起をさせられるんだろうなぁ。
Posted by ブクログ
文庫になっていたので購入。
相変わらず好みの完全に分かれそうな作風。
でもついつい買ってしまうのは何でだろ?
ってか舞台が大宮!あまりに地元なんで書かれている風景がまじまじと浮かび面白い。
出だしがHap`1 Kingdamだもんな〜。
地元愛で星プラス1してます。
Posted by ブクログ
いつか読もうと思っていた吉田修一。
入社直前に読めました。
たぶんこの作品は代表作じゃないんだろうけど、充分に彼の特性がわかる一冊だった。
彼の小説は、小説なのに非常にリアリティーのある小説だ。
つまり現代社会を映し出す鏡のような役割を自作に担わせている。
そういう点で村上龍に近いものを感じたし、非常に力を持った作家だということがわかった。
もう一冊くらい読みたいな。時間があれば。。
Posted by ブクログ
物語の中心となる超高層ビルのねじれた構造と、登場人物の人生のねじれを対比(あるいはリンク)しているのだろうか?
ビルの設計者と鉄筋工の日常が並行して描かれ、最後に交差するという展開は、吉田修一が得意とする手法ではあります。
しかし、読後に残るものはあまりありません。
元々、淡々と語り続けるような作風なので、本作に限ったことではありませんが、結論を明確に示して欲しいという読者には、お薦めできません。