吉田修一のレビュー一覧
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ネタバレ「最後の息子」の主人公のその後を綴った連作短編集。
装丁がおしゃれで、モノクロの写真がちりばめられていて寂しげな感じです。
淡々と語られていて…、作中で昔話が物悲しくてむなしいと書かれていましたが、このお話自体そんな感じがしました。
筒井と閻魔ちゃんの過去がお話の前提にあるからでしょうか。変わらない閻魔ちゃんも、閻魔ちゃんから逃げ出して収まるところに収まって生きている筒井もなんだか物悲しいというかどこか切ない感じです。
「夫婦の悪戯」のお互いが嘘(でも本当の話…)を言い合うのが面白かったです。2人の動揺っぷりがリアルだった…(笑)
「パーキングエリア」で、筒井の暴走がどうなるのかと思いましたが、最後は一応ほっとする展開だったので安心しました。なんて素敵な妻なんだ…!
もしもの別の人生のことを考える、今の人生が嫌なわけではないけれど…現実逃避する気持ち、投げ出して逃げ出したくなる衝動はとてもわかります。
最後の「楽園」が何故だかわからないけれど、すごく怖くて切ないです。一体誰の視点…?「彼女」はだれで、不慮の事故が何かを暗示しているのか…。
もう一度、「最後の息子」と続けて読んでみたら何かに気付くでしょうか。 -
Posted by ブクログ
子供の駿が、周りの大人から「やくざの家の子」として裏でこそこそ言われる様子がなんとも言えなかった。始めは毎晩宴会が行われるような賑やかな家も、やくざとしての力を失うとともに人の出入りがなくなっていく様子も物悲い。やくざの男どもの会話や不良少年達の描写は本当に胸くそが悪くなるほどだった。
やはりそんな家庭環境で育ちながらも、駿とその弟悠太は違う男に育ってゆく。私の印象では駿は「ニート」で悠太が「まともな人間」に育ってゆくのだが、どんな要因が二人をこのように分けたのだろうか。。。
あと、最後の火事によって、「三村家の男たちがこの家にいたんだ」という事実が鮮明に印象づけられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレANAの有名な機内誌「翼の王国」に連載されている短編小説12編とエッセイ11編の文庫化。
エッセイは読まないので、作者自身のプロローグと小説を読んだ。
すべての小説が、良い意味で尻切れトンボ。
そこに終わりは一つもなかった。
すべての小説は、必ず何かの始まりでペンを置いている。幸せな始まりの予感を感じさせるものもあれば、不吉なことの始まりをにおわせるものもある。
でも必ず…何かが始まっている。
ディテールにあまりこだわらず、無造作に言葉を連ねてゆき、ぶつっと句点が打たれて、いさぎよい。その先を読みたいという気持ちにまでは至らず、次の始まりはどんなのだろうかと、心はページを繰る手を急かす。あっという間の12編。
冒険と いうほどのことも なき身かな
旅先への移動中に読むには最適な一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ圧倒的な筆力で現代の「ひずみ」描きだす!開発途上の大宮の地にそびえ立つ、ねじれた外観で、地上35階建てのスパイラルビル。その設計士・犬飼と、鉄筋工・隼人、立場の違うふたりの運命が、交差する。
別段何か起こるわけでは無いお話。
最後に良治が自死したくらい。
どこにでも居る様な男二人。
犬飼は愛人作ってまともに家に帰らず嫁さんに出て行かれ、
隼人は現状に不満が無い事に不満を覚えて貞操帯を着けて何か変化を期待している様に見えた。
何気ない日常が人間を歪ませる。
何もかも不自由なく手に入り生活が出来るこの世界が、
大宮スパイラルの様に歪んでいく。
ねじれたものは元に戻ろうと反発する。
巨大な建築物と共に犬飼も隼人もねじれていくように見えた。
結末が尻つぼみのように感じたが、
ねじれたものはそう簡単には戻らないとも読める様な気がする。
日常生活の中で注視していないだけで、人は歪んで行ってしまう事があるのかもしれない。
犬飼や隼人の様に戻る事が出来なくなるのかもしれない。
菜穂子がまぁまぁ可愛いなぁ。