吉田修一のレビュー一覧
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それほど期待もせずに買って読み始めた割にはなかなかの面白さであった。設計士の犬飼と鉄筋工の隼人を主人公にして、普通の生活の裏に潜む歪んだ日常がよく描かれていて、現実感を持った作品となっている。また、その歪みが、大宮に建築中のO-miyaスパイラルと照らし合わせて描かれているところが、読者に、現実的な歪みと不安感を植えつけるのに強い効果を出している。
その他の登場人物も含めて、みんなどこか不安定で、全編通して幸福感を感じさせない内容となっており、何かが起きるのではないかとつい先を読み進めてしまうのであるが、吉田修一の悪いところであろうか・・・読者それぞれに委ねているのかもしれないが、終わり -
Posted by ブクログ
面白くないわけではない。でもどこか掴みきれない。そんな感想です。
1作品が20ページほどの11の短編集です。一つ一つが少し短すぎて、何かが描き切れていないような印象です。
それぞれの短篇に現れる女性達は、キッチリ描かれているのですが、どこか最後のオチが弱いのです。そのため、どこか不可解で希薄な印象しか残らない。おそらく作者が意図してやっているのだと思うのですが。。。
文章で読むより映像化した方がインパクトがあって面白いかなと思ってたら、ちゃんとされていました。
ところでこのタイトルは如何なものでしょうかね。前にも「初恋温泉」という作品が有りましたが、どうも私は安っぽく感じてしまうのですが。 -
Posted by ブクログ
直前に読んだ『ペダルの向こうに』(池永陽)の感想が「通俗的で捻りが無い」でしたが、これは逆に捻り過ぎられていて。まあ、舞台が捩れた構造の高層ビルだからですかねぇ(苦笑)。
設定は面白い。特に鉄筋工・隼人のXXXX(あえて伏字)への精神的依存は今までに無いパターンで見事です。しかし、どうもその話と設計士・犬養の家庭の崩壊を二本柱とした物語とした為、二重螺旋のようになり、どうも作者の意図の理解が極めてしづらくなっているようなのです。
エンディングもどうでしょう。結末まで描くやり方が有ります。さらにそれが進んで「将来を予感させる」終わり方もあります。この物語は、これらに飽き足らず、さらに手前で終わら -
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~内容(「BOOK」データベースより)~
大工の大輔は子連れの美女、真実と同棲し、結婚を目指すのだが、そこに毎日熱帯魚ばかり見て過ごす引きこもり気味の義理の弟・光男までが加わることに。不思議な共同生活のなかで、ふたりの間には微妙な温度差が生じて…。ひりひりする恋を描く、とびっきりクールな青春小説。表題作の他「グリンピース」「突風」の二篇収録。
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3編それぞれの主人公はタイプは違えど誰もが自分本位であんまり好きになれない。
でも、何だか寂しい人だなと思うと嫌いにもなりきれず、ラストの印象的な描写(個人的には「グリンピース」のラストが好き)と合わせて何とも言えな -
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~内容(「BOOK」データベースより)~
風呂上りの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが、下穿き一つで集い、日々酒盛りに明け暮れる三村の家。人面獣心の荒くれどもの棲む大家族に育った幼い駿は、ある日、若い衆が女たちを連れ込んでは淫蕩にふける古びた離れの家の一隅に、幽霊がいるのに気づくのだった。湾の見える町に根を下ろす、昭和後期の地方侠家の栄光と没落のなかに、繊細な心の成長を追う力作長編。
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最近長崎に縁があるので、久々に再読。
最後の「悠太と離れの男たち」は正直ぞっとした。
「威勢のよかった男どもにおいていかれた女と、威勢のいい男になれなかった -
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昔、本を読まないボーイフレンドが、
本を読むようになって、
いちばん最初に言ったのが、
「本って、こんなエロいことが書いてあるのね。
みんな良く電車とかで読んでるよね。
真面目に本を読んでいる人の見方が変わったわ」
でした。
どんな本を読んだのか、今でも本読みのようです。
この本を読んで最初に思い浮かんだのは、その時のこと。
かなりびっくりしちゃった。
でもどんどん読んでいくと、あれあれ、いろんなこと考えなきゃ
いけない本になってきた。
ランドマークになりうるような大きなものに、
自分しか知らないこと少しずつ少しずつ埋めていくのは、
気持ちがいいだろうな。