吉田修一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「最後の息子」の主人公のその後を綴った連作短編集。
装丁がおしゃれで、モノクロの写真がちりばめられていて寂しげな感じです。
淡々と語られていて…、作中で昔話が物悲しくてむなしいと書かれていましたが、このお話自体そんな感じがしました。
筒井と閻魔ちゃんの過去がお話の前提にあるからでしょうか。変わらない閻魔ちゃんも、閻魔ちゃんから逃げ出して収まるところに収まって生きている筒井もなんだか物悲しいというかどこか切ない感じです。
「夫婦の悪戯」のお互いが嘘(でも本当の話…)を言い合うのが面白かったです。2人の動揺っぷりがリアルだった…(笑)
「パーキングエリア」で、筒井の暴走がどうなるのかと思いまし -
Posted by ブクログ
帯に「底抜けに明るい復讐劇!」とありますが、底抜けはちょっと言い過ぎ。確かにエンタメ系で上手くくすぐり、にやりと笑える所も随所にあるのですが、全体にはスカッというより、やや重めの印象があります。
いきなり歌舞伎町とか、登場人物もバーテンダー、ホスト、ホステス、ヤクザ、ついでに政治家と胡散臭い職業ばかり。もっとも人物は軽かったり明るかったりグータラだったり、さほどどす黒くは無いのですが。どうも私はこうした環境(水商売系)が苦手のようで、乗り切れませんでした。
それと、頼りなく無責任で刹那的と見えた二人に若者が、妙に真面目になって行くところも少々無理を感じるし。ただ、90過ぎのサワ婆さんの存在感は -
Posted by ブクログ
子供の駿が、周りの大人から「やくざの家の子」として裏でこそこそ言われる様子がなんとも言えなかった。始めは毎晩宴会が行われるような賑やかな家も、やくざとしての力を失うとともに人の出入りがなくなっていく様子も物悲い。やくざの男どもの会話や不良少年達の描写は本当に胸くそが悪くなるほどだった。
やはりそんな家庭環境で育ちながらも、駿とその弟悠太は違う男に育ってゆく。私の印象では駿は「ニート」で悠太が「まともな人間」に育ってゆくのだが、どんな要因が二人をこのように分けたのだろうか。。。
あと、最後の火事によって、「三村家の男たちがこの家にいたんだ」という事実が鮮明に印象づけられた。