吉田修一のレビュー一覧
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短編が5つ。「青田Y字路」「曼珠姫午睡」「百家楽餓鬼」「万屋善次郎」「白球白蛇伝」。
「犯罪小説集」とは言っても、そこで起こる犯罪自体より、登場人物の生き様や人間関係に重きが置かれている感じ。
ひとつめとふたつめは、最後でよくわからなかった。『え、終わり??」と思ってしまった。結末は想像してねってことなんだろうけど、しっかり終わるのかと思っていたから突き放された感じがした。ちょっとピンと来なかったな。
3つ目以降は、そのスタイルに慣れたのか、どれも面白かった。楽しいお話ではないけれど、ストーリーには引き込まれた。
出てくる登場人物たち、罪を犯したひともそうでないひとも、根っからの悪者はいなくて、何だかみんな哀しいものを持っていた。
人間くさい展開。物悲しい結末。登場人物の背景を知ってしまっているだけに、何とかならなかったのか……とやり切れない気持ちが残った。
「楽園」ってタイトルで映画化されているらしい。カバー(ダブルカバーで映画化仕様がかかっていた)の写真を見てもどれが使われたのかよくわからず、公式サイトのあらすじを見た。「青田Y字路」と「万屋善次郎」がミックスされているっぽいね。 -
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「安寿と厨子王」「山椒大夫」が現代に現れた!
最近、NHKラジオで森鴎外「山椒大夫」の英語版をリスニングした。
子ども時代に童話を読んだきりだったので、懐かしく聞いていたところ、こういう本が出ていることを知り、興味深く拝読。
アンジュと頭獅王にとってはお母さんに会えてハッピーエンドだけど、物語の残酷さを再確認した。
山椒大夫と三郎、人でなしすぎるでしょ。
そして、慈悲をかけるふりして「黄泉の国」を贈る頭獅王の報復もこわい。処刑の仕方は「山椒大夫」(by森鴎外)通りかな。
オリジナルストーリーは加えられているものの、話の筋としては元の話の通り。
死んだはずのアンジュが現代の新宿で再登場した場面は、舞台のカーテンコールを見ているようだった(カーテンコールでは死んだ人も手に手を取って再登場する)。
GoogleとAppleとソフトバンクの株を…というくだりはちょっと笑えたな。
この本の、というより、安寿と厨子王の思い出が少しだけある。
小学校一年時の友達が、童話「安寿と厨子王」を「私の大好きなお話なの!」と言っていた。
当時「大好きな物語」と言えるようなものがまだなかった私は、安寿と厨子王をさぞ素敵な物語だと思っていた。ワクワクするプリンセスのお話かと思ったほどだ。
それを母に伝えたら、嫌な顔されて「私は嫌いよ。残酷だから。」と一蹴された。
その後も、20歳の頃に「安寿と厨子王」が好きだという友達に会った。
今となっては、彼女たち、若年にして「安寿と厨子王」好きだってのは変わってるなぁと、改めて思う。
おそらく、現代人にとって、この人身売買と虐待と報復の物語が、受け入れ難いと思う。
それくらい、すごく、かわいそうで残酷な話なんだよね。
もともとは浄瑠璃なんだとか。
子ども向け童話にしたのが「安寿と厨子王」らしい。これを子ども向け童話にしようと思った人、逆にすごいな。 -
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あの人、ほんとに意気地ないし、ちょっとでも嫌なことがあったら、そこから逃げ出して、別の場所で1から楽しいことだけ始めちゃうんです。でもそこでも嫌なことは起こるでしょ?そしたらまた逃げ出して、そうやって生きていけばいいんですよ。
真守のことを、そう思った桃子だが、自分が浮気相手だった時にはきっと、この人を変えられるのは自分しかいないとか思ってたんだろうな。
身勝手な夫に見えるけれど、結局似た者同士な気がする。
流産は女性にとって、かなり辛く悲しい経験ではあるが、誰かの不幸の上にある幸せには共感出来ない。
愛情じゃなくて、ただの執着。
ラストは吹っ切れた感じで良かった。 -
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旅にまつわる短編小説とエッセイ。
読解力のない自分は、「はて、何を伝えたかったのだ?」と思うストーリーもあったので、★3。
まあ、単純にわたしの読解力に原因があるんだろうな。。
あ、あと、たぶん、自分がその土地のことをあまりよく知らないから、想像ができないことも原因かも。
自分が想像できる都市や国のストーリーは理解できたから。
この中で好きだなーと思うのは、
願い事
モダンタイムス
小さな恋のメロディ
踊る大紐育
恋恋風塵
ベスト・フレンズ・ウェディング
かな。
でも、きっと。。
この本を何処かに向かう機内で読んだら、また違う感想なんだと思う。
いまは、旅に出たくても出られない状況。
それが、ストーリーを理解できない状況を作り出しているのもあるかもしれない。 -
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小説家の書く随筆は大体面白い。
随筆家の書く小説は当たり外れがある。
この本もご多分にもれず面白い。
お笑い芸人のすべらない話が面白いように、小説家が何気ない一日を随筆に落としこむ視点は、僕らにとっても自らの日常をどう見てどう考えるかの参考になると思うのだ。
体制や社会の問題を書き、批判する本は多いが、この本は基本的に身の回りのものやひとを肯定的に捉えようとしている。そして、その肯定的に捉えたものの対照として別のものを否定的にあげつらって書いていない。それが、ゆっくり夜の静かな時間に読むのにもってこいなのだ。
・海水浴場というか、この海というか、この世界を、独り占めしているような気分だった
・ルイ13世という酒を一口飲むと、酒というものが職人たちの本気で造られているということが分かる。決して安くはない酒だが、その一口ごとに「時間」をなめているような気がするのだ。
などなど。