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Posted by ブクログ
吉田修一に手を出した。デビュー作から順次読んでいくつもり。
あえて強引に分類すれば、純文学になると思うが、しばらくエンタメ(ライトノベル、直木賞系)を読んでたので、非常に歯ごたえと旨味があった。そして不思議なことに面白くないのに没頭してどんどん読んでしまうのだった。作品世界に引き込まれる。。。まあそれは結局、面白いということなのだろうが。
長崎弁が大変良い。これまでの人生で大学の4年間だけ九州にいたので長崎弁を聞く機会もあり、本作でも読んでてまったく苦も無く理解することができた。リズムと語呂が良い。
また、荻窪に向かう電車の中で読んでいるとき、主人公がモノレールからJRに乗り換えて荻窪に向かうシーンが出てきて、熱かった。
Posted by ブクログ
初めて著者の作品を読みましたが、とにかく文章が上手いと感じました。
収録している3つの短編、いずれも分かりやすい起承転結があるわけでもなく、登場人物たちがもつ背景や性格に沿ってごくごく自然な態度・行動を取るだけの話で、オチというよりはストーリーの過程での感情の隆起や変化そのものを楽しむものなのかな、と思います。
起こった事象をどう認識し解釈するか、それは個々人の持っている情報や考え方によって大きく変わります。本作はそこに至るまでの背景の説明とその際に湧き起こる感情について、そのまま書き出すというよりは、目の前で起こっている事象を登場人物がどのように捉えているか、という結果となる部分を五感で立体的に表しているため登場人物への共感を強めることができ、物語の中に引き込まれるような感覚を味わえます。
そういった意味合いでいうと、登場人物が現状をハッピーに捉えているかどうかで各編の読後感が違ってきます。最後に掲載されている「water」が爽やか要素が多いこともあって一冊の印象としてはさっぱりした本だったな、となりますが前2篇はどちらかというと陰鬱というか諦念に近いものを感じました。どれくらい感情を変化させられたか、というのは自分の中で小説を評価する評価基準の1つになっているような気がするのですが、この項目で本作は非常に優れていると感じました。
こんな文章書けるようになりたーい。
Posted by ブクログ
吉田修一初期の作品、ということで文学的な香りが漂う3作品。この人の文章何というかかっこいいんだよなぁ。語弊があるかもだけど、男性的で且つキザっぽい。でもそこが最高にかっこよくて憧れちゃう。
部活ものは心に響いちゃうなぁ。『Water』のアオハル真っ只中の物語は心が爽やかになるし、でも同時に中心人物4名には秘密で後ろめたい暗い側面があって、そのコントラストが意外にもライトで表裏というか全く同じ方向から眺めているのに不意に影が覗くみたいな二面性的な表現方法で、今どっち側の話題だっけみたいに迷っちゃう。
何はともあれ愛おしい小説です。
その他二作品、もう少しアダルトなでもフラジールな世界観で、とっても無垢で純粋なでも過去に囚われてる『破片』が、九州のあっけらかんな情景も非常に心地よくミックスしていていやらしくない。素敵。
Posted by ブクログ
「最後の息子」
ビデオ日記を撮るという設定がなんとなくピンと来ず。かなり自分で感情を考察しなければいけない部分が多いのが難しく、読むのは2回目だが、やっぱりあまりハマれなかった。
ラストの閻魔ちゃんの電話中のメモの愛情にはグッとくる。あえて悪ぶるのとか、それでも閻魔ちゃんには優しく見えているのとか、人間失格に近い構図か?
「破片」
最後の息子に比べて格段に情景描写が増え、一気に物語の風景が浮かんで真に迫ってくる感じがあった。これぞ吉田修一という感じ。明らかに才能開花している。
積み重ねられるエピソードで、母を不幸な事故で亡くした田舎の男世帯の雰囲気、九州に根強く横たわる男尊女卑思想、兄弟それぞれの歪んだ女性感が伝わってくる。突然去っていくかもしれない怖さでか女を手放したくなってしまう兄と、女を握りしめて絶対逃さないことが女の幸せだと信じ込む弟。
「Water」
恋も部活も、いろいろ悩みもありつつ全力&ストイックな青春坊主たちも素晴らしいけど、かなり苦味走った恋愛をしていそうな大人のエピソードが挟まるのが、アクセントとしてとてもいい。
その効果で、より青春はキラキラして見え、大人の世界はほのぐらく見える。
とにかく部活を頑張る青春って、無駄かもしれないけどかけがえないな。部活って、初めて気づく複雑な人間心理をいったんリセットして別のことに打ち込み、心の健康を守るのに必要なのかもな。
Posted by ブクログ
「春、バーニーズで」と違い、こちらの作品は閻魔ちゃんのキャラクターが好きという理由から時折読みたくなる一冊。
あと、物語や登場人物に繋がりは無いのだが、この作品の“ぼく"と「パレード」に登場する杉本亮介がどうしても重なって見えるんだよなぁ。
それは、寿司屋の一人息子が誰もいない大学の大教室で"金沢の公務員"の息子をつかまえ、先輩の彼女とワンナイトしてしまい、親への顔向けができすわ、死んでしまった地元の友人に対しての浮かばれない思いなど様々な感情が入り混じって泣いてしまう彼。
K公園の安全な場所を一晩中歩いて自分を許し、母親に元彼女で浮気相手の女を紹介し、閻魔ちゃんに母親が会いたがってるから来てと電話して、家に戻ってこれまで撮り溜めた映像を見返すぼく。
この2人が重なって見えるのは私だけかな?
どちらも一言では言い表せない、入り組んだ複雑な感情を表現してて、この物語の後に続く「春、バーニーズで」もそうした複雑な感情をすごく上手に描いた作品だと思うんだよね。
Posted by ブクログ
「最後の息子」「破片」「Water」の三篇。
先日(と言っても昨年8月)に読んで良かった『春、バーニーズで』がこの本の後日譚だと知り手にしました。
勿論、吉田さんの方が先達ですが、最近嵌まっている桜木紫乃さんと同じ香りがします。片や長崎、片や釧路。場所は違うけれど、場末の夜の繁華街。背徳感のある愛憎劇。最後の短編「Water」なんて、水泳部で競い合う高校生の爽やかな青春物語なのだけど、そんな話でさえどこか夜の酒場や背徳の香りが漂うのですから。
「破片」は良く判らなかったけれど、ショートムービーを繋ぎ合わせるようにしてストーリーを紡いで行く(しかも今はやりのLGBTネタ)構成力。そして、こういう世界が苦手な私を読み入らせてしまう文章力。凄いな、吉田さん。これがデビュー作でしたか。
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