吉田修一のレビュー一覧
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ネタバレ台湾新幹線を舞台に日本と台湾をつなぐ恋の物語、とでもいいましょうか。
商社勤務の春香と、春香を思い日本に留学し就職までした人豪。彼らのすれ違いが物語のメインに据えられます。
この恋物語、行く末は分かりませんが(続編出そうな)、逢えそうで逢えないヤキモキした展開。その長々と続く悲恋っぷりは以前読んだ平野啓一郎氏の『マチネの終わりに』に通ずるところありました。
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もちろんこの作品、それだけではありません。
現地人に恋し、妻子と仲が悪くなる安西の話(駐在(たまに)あるある)、日台の仕事のスピード感の話(これまた駐在あるある?)、はたまた台湾新幹線の整備工としてぐうたら人生を改めようとする威志の話など、幾つかの話が次第に絡まり合うところもまたよし。
とくに、ほのぼの系の威志のキャラクターは『横道世之介』を思わせるナイスガイ。読み口も自然と和んだものになったと思います。
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ということで、久々の吉田作品でした。
ビジネス小説?恋愛小説?青春小説?などなど、幾つかの要素がバランスよく配分された作品でした。キャラがどれも伸び伸びとして、なんとも微笑ましいというか、和やかな作品だったと思います。
吉田作品、癖になるかもですね。 -
Posted by ブクログ
三篇収録されている短編集。
最近吉田修一さんの作品にハマっていて、いくつか読んでいますが、何かから逃げている、または目を逸らしている男性を描いている作品が多いように感じます。この三篇の登場人物たちも、何かから逃げている男性。『熱帯魚』の大輔は、同居している子連れの真実やその娘の小麦、義弟の光男や近所に住む時先生に対し、養っている、気にかけていると思っていますが、その思いはどこか、本心とは違うところにあります。自分の淋しさを埋めるために過剰に介入し、その見返りを求めているような描写がとても切ない。
『グリンピース』は吉田作品の中で、一番嫌な男性(笑)でも、それより『突風』の新田の方が、相手の人生に踏み込んだのに、手を離すというまたまた最低な人物。胸糞悪い男性の物語を読みたいときにオススメです。 -
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温泉を訪れる五組の男女を描いた恋愛小説。
表題作『初恋温泉』は、初恋の女性と結婚し、がむしゃらに働いて成功するが、夫婦で温泉に出かける前日、妻から離婚を切り出されるというお話し。主人公の重田は、妻には自分が一番幸福な瞬間を見せたいと思っていて、それ以外のダメな部分は見せないようにしていました。妻の立場からすると、良い面も悪い面もすべて見せて欲しい。一番幸福な瞬間を一緒に喜ぶだけのパートナーは、どこかお飾りのような気もして、なんだか寂しい関係であることが読んでいて感じられます。好きな相手だからこそ、輝いている自分だけ見せたい夫と、好きな相手だからこそ、すべてを見せて欲しい妻。自分自身、夫婦関係を見直すきっかけになる作品でした。 -
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昭和後期の地方任侠家の盛衰のなかで、少年の心の成長を追う物語。
主人公の駿と弟の悠太が身を寄せる三村家は、叔父にあたる長男・龍彦がヤクザの組長、次男・文治がチンピラ、文治を慕う正吾と猛々しい男たちばかり。幼い駿はそんな男たちの中で育つ中、自死した三男・哲也と思われる幽霊を離れの家で見ることに。
暴力・酒・女に荒くれる男に自分もなっていくと思いつつも、どこか違和感を感じながら成長していく過程が繊細に描かれています。駿は三村家の男たちにある意味呪われていて、それが消化されるようなラストが良かった。歳を重ねていくうちに、駿が哲也に似ていく様子が少し恐くも感じました。 -
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思い当たる節しかない物語だった。
テレビ局に勤める俊平は、
公園で出会った聴覚にハンディキャップを持つ響子と恋に落ちる。
静かで穏やかな日々を重ねる二人だが、音によって隔てられた世界は
恋しさと戸惑いを同時に生み、やがてすれ違いが積み重なっていく。
自分はその相手のことをどれぐらい知っているのだろうか。
これはある意味、永遠の問いなのかもしれない。
言葉にしなければ伝わらない。だが、その言葉によって逆に伝わらない。
そんな矛と盾のような禅問答が頭の中で駆け巡る。
物語は全編通して俊平の目線でしか語られないので、
響子の思いはわからない。つまり読み手も俊平と同じ感覚を味わうしかない。
こちらも俊平でしかいられないのだ。
それはわかったつもりでいることと同じことなのだと、
読み進めるうちに俊平と同じようにハッキリとわかってくる。
これほど怖いことはないかもしれない。
小説を読んであまり味わうことのない類の恐怖を覚えた。 -
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ネタバレ過去と現在2つの事件に関わる満洲と滋賀の2つの湖。
そのとても美しい情景と子供の残虐さが共通している。
そしてそれを知っている大人が口を噤んでしまうことも。
真実を語ることと沈黙を貫くこと、子供のためにどうすべきなのだろう?
また、誰でもいいからとにかく犯人を作り上げる、という警察の悪しき構造もとてもよく描かれていた。
他人の幸福や真実と自身の立場や利益に利益相反がある時、どちらを大切にするのだろう?
なぜ人間はそんな選択ができてしまうのだろう?
そして、主人公の増幅していく「誰かに従属したい」という仄暗い欲望。
これは程度の差こそあれ、誰しも持っているものなのかもしれない。