吉田修一のレビュー一覧
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「春、バーニーズで」と違い、こちらの作品は閻魔ちゃんのキャラクターが好きという理由から時折読みたくなる一冊。
あと、物語や登場人物に繋がりは無いのだが、この作品の“ぼく"と「パレード」に登場する杉本亮介がどうしても重なって見えるんだよなぁ。
それは、寿司屋の一人息子が誰もいない大学の大教室で"金沢の公務員"の息子をつかまえ、先輩の彼女とワンナイトしてしまい、親への顔向けができすわ、死んでしまった地元の友人に対しての浮かばれない思いなど様々な感情が入り混じって泣いてしまう彼。
K公園の安全な場所を一晩中歩いて自分を許し、母親に元彼女で浮気相手の女を紹介し、閻魔ち -
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吉田修一のANAの機内誌に連載しているエッセイ集(第4冊目)。僕は機内誌で何度か読んだ記憶があるがエッセイとして出ていることを恥ずかしながら知らず、何だか読んだ気のするタイトルもあるなあ、とか思いながら読み進んだ。そしてその中でこの作品がエッセイ集として4冊目ということを知って、どうしようかと思いながら、まずは3冊目と5冊目を購入して読み進めることにしたのだけど、エッセイだから順番はそんなに気にする必要はないかもしれないが、いずれにしても全冊は読まない気がする。それはともかくこの作品だけど、厚さといい(笑)、とても持ち運びやすく、読み進めやすくて助かっている。内容も小説ほどとはさすがにいかない
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何というか、良い人も悪い人も彼(吉田修一氏)の描く人間の人となりが鮮明過ぎて、見知った人の話のような錯覚に陥る。
全く異なる5編からなる犯罪にまつわる物語なのだけど、隣近所でおこった事件を見せられている感じ。
だから決して読後感が良いわけではない。
1話終えるたび「嗚呼…。」となんとも言えない重りを背負わされるよう。
例えば、幼い頃からよく知ってる近所の子どもに「お母さん刺しちゃった」とインタホンごしに聞かされるような…そんなオモリ。
偏見、嫉妬、小さなプライド、欲、思い込み、集団心理、傲慢…人のダメな部分をあげたらキリがない。
そんな中に置いても、田舎の閉鎖的な街で生まれる集団心理の怖さ -
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吉田修一(1968年~)氏は、長崎市生まれ、法大経営学部卒の小説家。芥川龍之介賞(2002年/『パーク・ライフ』)のほか、山本周五郎賞、大佛次郎賞、柴田錬三郎賞等の文学賞を受賞している。
本書は、初出はANAの機内誌「翼の王国」への2007年4月号~2008年9月号の連載(短編小説12篇+エッセイ6篇)で、2008年に単行本で出版、2011年に文庫化された。尚、同連載は、2016年9月までのものが、本書、『空の冒険』、『作家と一日』、『泣きたくなるような青空』、『最後に手にしたいもの』の計5冊で書籍化(文庫化)されている。
私は、本書を含む3冊目までを2019年にまとめて購入し(4、5冊目は文 -
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ミスサンシャインという著者の新作へのインタビュー記事の「人はどんどん優しくなってきていると思う。」というコメントを読んで、なんだか好きな予感がして読んでみたらやはりとても面白くハマりました。
男性作家が書く女性像はなんとなく違和感を覚えるものが多いのだけど、この本に出てくる女性達の描写は細部までリアルで鼻白むところがなく、とても女性のことを理解している方なんだろうなあと著者の人としての深さを感じました。
自分の子供を宿したと思われる女性にふらふらと移ろっていく真守もまた「こんな人いそう」とリアルで、本気で始まった愛が乱暴に終わっていく様が悲しい。最後に救いがあったのも、人生悪いことばかりじゃな -
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「最後の息子」「破片」「Water」の三篇。
先日(と言っても昨年8月)に読んで良かった『春、バーニーズで』がこの本の後日譚だと知り手にしました。
勿論、吉田さんの方が先達ですが、最近嵌まっている桜木紫乃さんと同じ香りがします。片や長崎、片や釧路。場所は違うけれど、場末の夜の繁華街。背徳感のある愛憎劇。最後の短編「Water」なんて、水泳部で競い合う高校生の爽やかな青春物語なのだけど、そんな話でさえどこか夜の酒場や背徳の香りが漂うのですから。
「破片」は良く判らなかったけれど、ショートムービーを繋ぎ合わせるようにしてストーリーを紡いで行く(しかも今はやりのLGBTネタ)構成力。そして、こういう -
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ネタバレ同性愛者の閻魔ちゃんとの同棲を続けながら、同性愛者に向けられる偏見の眼差しを他者からも自己からも感じる「最後の息子」
幼い頃土石流で母を亡くした弟が、女性は自分がいなければ死んでしまうものという強迫観念から彼女を執拗に束縛してしまう「破片」
亡くなった兄の後を追うように高校の水泳部のキャプテンとなった凌雲が、仲間たちと大会に挑む青春小説「Water」
前二作は社会派でもあり重いところもあるが、「Water」は比較的爽やかで読みやすかった。くじ引きで水泳部の顧問になった大人の女性な黒木先生が、ジンを飲みながら練習を眺めてる場面が好き。惨めに見える先生に、どうしてあげたら良いか尋ねる凌雲に、そのま -
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あの『悪人』や『怒り』と同じ系統の群像劇を期待して読み始めたら何だか違う。現代を舞台にした3編はそれぞれにつながりがなく、最後の4編目で時代は2085年に。私の苦手なSFチックな話になっているという。
現代の3編でそれぞれの主人公やその周囲の人は、ちょっとした悪事や倫理・正義にもとる行動をとるかとらないかという狭間におかれる。「橋を渡る」ってどういう意味だろうかと思うけど、人間として越えちゃいけないものを暗示しているんだろうかと思いながら読んだ。
4編目の未来でそれまでの3編がつながるんだけど、かといってよかったとも悪かったともいえない読後感。いやいやどっちかというと「そして、冬」ってだけあっ