吉田修一のレビュー一覧
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本作は、少なくとも三〜五作目は実在の事件をもとにして書かれていると思うのだけど、明記されていないのはなぜだろうか
ばからがき…大王製紙井川 ギャンブル狂い
よろずやぜんじろう…『つけびの村』でも有名な山口連続放火殺人事件
白球白蛇伝…元千葉ロッテマリーンズ投手強盗殺人事件
実際の事件がモチーフになっている犯罪小説は、人間の業の深さ、生い立ちや環境次第で一歩間違えば誰でも犯罪者になり得るのではないかと思わせるリアリティさが増す
完全なるフィクション(あり得ない筋)も面白いが、
こういう背景が本当にあったのかもしれないと思わせてくれる事件小説は、実際の報道内容と照合させて書かれているものもあるし、作家さんの想像力に依るものもあるだろう
人間の残酷さが実際には恐ろしいのに、なぜ小説やドラマ、漫画の中ではその描写を『娯楽、エンタメ』(より良い言い方が見つからない)として『楽しめる』のだろうか。没頭できるのだろうか
深淵を覗いた気がするからだろうか
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遂に読んでしまったって感じかな…。この作品では、主人公の横道世之介が38歳~39歳の1年間をベースに描かれています。世之介は修学旅行に同行するようなカメラマンとして、そして暮らしているのは「ドミー吉祥寺の南」という下宿です。この下宿を切り盛りしているのが、交際相手のあけみちゃんで、世之介の他にも営業マンの礼二さんや書店員の大福さん、大学生の谷尻くんなど個性的な面々が暮らしています。そこに、教師のムーさんの息子でひきこもりの一歩が加わります。
世之介って、どの年代にもちゃんと交際している彼女がいて…あ、あけみちゃんとは内縁関係か、でもその前にもう一人、二千花という彼女もいたようで…あけみちゃんには2番目に好きだと!!えっ?世之介、いいの?なんかイメージが崩れる…と、思いきや、読み進めていくとそうでもないんですね…。私が、好きな人から2番目だけれど…なんて言われたら、ちょっと、だいぶ引くかな(汗)。
だけど、世之介キライにはなれないんですねぇ…だから不思議だったりするんです。『あー、いっぱい笑った。あー、いっぱい働いた。いっぱいサポって、そんでもって、いっぱい生きたなー』って、こんな風に思える人生、世之介ならではですよね!! -
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初めて世之介が世に出たのはもう15年ほど前でしょうか。
続編かと思っていたら、この間にもう一冊「続」があって驚く。次に読みましょう。
さて、世之介は40歳前になっていて、下宿屋をしているあけみちゃんと暮らしながら、カメラマンをしている。
といっても、売れっ子でもなんでもなく、レストランのメニューを撮ったり、修学旅行について行って学生の写真を撮ったり・・・
時には先輩カメラマンのアシスタントをしたり、ゆる~くだけれど、何事にもまじめな世之介である。
あけみちゃんとは事実婚の仲だけれど、あけみちゃんはぼくの2番などと公言して、亡くなった婚約者が忘れられない世之介である。
婚約者の実家にもたびたび顔を出し、両親に歓迎される世之介である。
下巻に続く。 -
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横道世之介が大学入学からの1年間の話。
青春話になるのかなあ。
バブル期の時代背景描写が
自分の経験と重なり懐かしさがこみ上げる。
それにしても世之介って。
両親の名前のセンスっ!
世之介のやる気があるんだかないんだか、
ふわふわっとしている雰囲気のような
つかみ所があるよな、ないような
流される性格のような、そうでないような、
独特の雰囲気を醸し出している感じでもあるが
どこにでもいるような平々凡々な男でもある。
ひょうひょうとているようで、熱いものもあるような
なんだか憎めないやつ。
20年後ふと思い出したときに
笑みがこぼれてしまう不思議な人。
当時つきあっていたお嬢様の祥子ちゃん曰く
(彼女もかなり独特なひとでしたw)
「いろんなことに、「YES」って言っているような人だった。・・・・もちろん、そのせいでいっぱい失敗するんだけど、それでも「NO」じゃなくて、「YES」って言ってるような人」
しっくりくる表現だ。
最後の母の手紙も、世之介の人柄が偲ばれる。
なんだか温かい気持ちがわいてくるのだ。 -
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断捨離をしているうちに吉田修一さんの本が結構出てきて、また読んでみようかと。本屋さんに行くと最近の作品=映像化されている作品があり、つい手にとった。
地理的に琵琶湖の風景が脈々と解るので余計リアル、薬害問題、戦時中の人体実験、介護施設の事件もかなり知見しているのでリアル
人間とは賢くもあり愚かである。
この物語
圭介と佳代のなんとも言えないインモラルな描写に妄想も加わり一気読み。
「湖は自らを波立たせることが出来ない。だからこそ静かで美しい」
波立った湖は物語の終わりに何事も無かったように静かなり、より一層美しくなる
ちょっと車を走らせて湖岸に向かおうかなと言う気持ちだ。
もし白衣の子供たちがいたらどうしよう
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映画化もとっくにされていて昔から存在を知ってるお話を、前知識無しで今更ながら読んだ。
結果、なぜ今まで読まなかったんだろう?!と思うくらいには好きなテイストの本だった。
調べてみたら、なんと続編も2つくらい出てるんですね。全然知らなかったです。
物語は、バブルの頃の大学1年生男子の1年のお話。田舎から上京してきた、横道世之介。名前もなんだかふざけているし、本人も(至って真面目なのだろうけれども)飄々としていて面白い。
周りのキャラクターも濃くて、学生ならではのゆるっとした空気のまま、ひと月ひと月が過ぎていくような一冊。学生の時ってそうだったなと思い出しながら読み始める。
そんな何気ない日々の中で、登場人物たちは人生を変えるような出来事をそれぞれが実は通過し、そしてそれもまた日常のひとつとして同じトーンで描かれているのが興味深い。実際に人は、あれが実は自分の人生のエポックメーキングな出来事だったなんてことはあとから振り返ってわかるわけで、そのときはただ一日一日をたんたんと生きている。それがこの小説でも表現されていて、登場人物たちとともに疑似体験しているみたいだった。
作者吉田修一の本では、国宝が好き。あれも一人の人の日々、人生がじっくり描かれている。しかしあちらは人間国宝の人生を追ったもので大河的、こちらは市位の人である横道世之介の物語で言うなれば朝ドラ的?
対比的に感じた。
合間合間で、二十年後ぐらいの登場人物それぞれのシーンが挟まっていて、そこはかとなく不穏な感じが徐々にしてくる。そうして少しずつなにが起こったのかを読者は知る。人生って諸行無常、関わった人たちとの関係も変わっていく。でも関わったことにより、お互いの人生に多かれ少なかれ影響している。そういうことが、多層的でグラデーション的につくられている物語から、じんわり伝わってくる。
主人公、続編ではなにが描かれてるんだ?読んでみます。
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日雇いのアルバイトを無断欠勤でクビになり、無職でだらだらと暮らしていると、以前に付き合っていた圭子のことを思い出す。圭子は職を転々とするろくでなしの自分と付き合ってくれていたが、実は医者の卵であったことが判明。身分も違うことから別れようと言う話になったとき、腹をすかせた兄弟に出会う…。
繋がっていないようで、あるところから繋がる5本の掌編。人生の分岐点で出会う、得体のしれない親を探す兄弟が、普通ならば人生を変えるきっかけになるようなものだが、本作ではそんなことはない。2本目を読んでいるときに「あれ?さっきも出てた?」とひっかかる程度というのが、なんとも良い重み付けをされている作品である。
全体には、いろんな職業でそれぞれうまく行かない、だいたい孤独の人間模様が描かれており、転職だったり仕事をやめたりというよくある人生である。
全体にエンターテインメントとして読める作品で、それぞれは記憶に残るだろう。そこにスパイスとも言えない程度の違和感。読み終えて振り返ると、芥川賞的な純文学の要素もあるんだなと思える程度で、小難しいブンガクなどと気合を入れるほどではないバランス感覚が良い。
すごくいい、傑作(と裏表紙に書かれている)と称えるような話ではないかもしれないが、なんかいい。手元においておきたくなる1冊だ。 -
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映画の原作ということで読みました。
既に劇場公開されてしばらくした頃、書店で原作を見かけて吉田修一の作品であること、琵琶湖が舞台になっていることを知って、慌てて原作を読みましたが、鑑賞当日(6/11)は夜勤明けであったこともあって50ページを残して鑑賞となりました。
一日一上映になって木曜日が最終上映になってもいたので、この日を逃すと劇場で見れなくなるので、仕方ないかって感じです。
ただ鑑賞後に残りを読みましたが、クライマックスの部分以外は読めていたし、そこまで読んでイメージしていたそのシーンの映画の中の佳代の姿に違和感を感じたのですが、その違和感は外れてはいなかったと残り50ページを読んで得心がいきました。もちろんその違和感が、佳代を演じた松本まりかの凄さを減弱させるものではないです。
この作品の映画サイトでの評価が、僕が思っていたよりも低くて正直驚いているのですが、多分、この作品に何を求めるかによって鑑賞後の感想も変わってくるかと思います。一つの事件を巡るミステリーだと期待して観れば、その結末の中途半端さに疑問を抱かれるかと思うし、社会悪に深くメスを切り込んで世に問う作品と思われれば、そこまで深く闇に立ち入るわけでもない。けっきょのところ、人々が内包している闇の部分を、主人公である濱中圭介と豊田佳代を中心に、モザイクのように描いた物語なのかなぁと思いました。
今まで爽やかなイケメンを演じてきた福士蒼汰と、まさに体当たりという言葉の通り新たな境地を開いたかのような松本まりかの演技は、ちょっと引きずってしまうほどの凄みがあって、それだけでもこの映画は観る価値があったと思わされました。
原作を読んでいなければ、圭介と佳代の関係にいろいろ疑問を生じるだろうことは想像できます。
でも、今作ほど原作に忠実であらんと苦労したであろうことも察せられ、変に解説めいたストーリー展開にしなかった分、難解な要素も生まれてしまったのだろうと思いました。
吉田修一はデビュー作を当時読んで、この人来るかもって思ったことを覚えていますが、その時も圭介や佳代のような性的人間が出てきて、それが社会通念や常識を無視したような描写が印象に残っています。その後、あまり読む機会がなくて今日に至りますが、圭介や佳代のような人物の登場には、彼の作品ならと想定の範囲ではあったかなぁと思います。
原作では雑誌記者の池田は男性ですが、福地桃子の女性記者は映画的な改変ながら、結構いいなと思えました。
大森立嗣監督は『星の子』の監督でしたか。この監督の作品は結構好みかもです。
琵琶湖を舞台にしていますが、作者が実際にあった滋賀県での事件にインスピレーションを得て描かれたということです。実際の事件をご存じの方も多いと思いますが、今作で起こる事件とは似て非なるものなので、あくまでも作者の創作なのだと納得して読みました。舞台となる西湖は琵琶湖の湖東側にあるのですが、映画では住所が高島という湖西の地域であったりロケであったりと滋賀に住む者として違和感あるのですが、まぁ、これは土地勘あるせいで、大筋には全く関係ないので、そんなことを感じながら観れるのは特典かなぁって思ってました。
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楽しい。この描写の奥深さ。
たとえば、腕をつたう洗剤の泡、だとかそのかゆみが全身にうつる、とか細かな描写から人物の心の内をのぞかせてくれる。宮部みゆきさんとかもそう。余韻というのか、想像の余地を少し残してくれている。
よくファミコンなんかが再評価される時に使われる、表現しすぎないというプレイヤーの自由。
ああ、吉田修一さんは『国宝(上)(下)』に震撼させられた方じゃないか。本作もまた、シーンと深い思索に落ちていくような感覚を味わった。
祈るしかないようなフィナーレの迎え方が、人間という余韻すら残してくれる。
うん、なんかいいこと言った気がする。
生きたという余韻。