吉田修一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
吉田さんの作品では『怒り』を読んだことがあり、
読みながら苦しくやるせない気持ちになった記憶。
でも、人間の奥の奥に隠された感情に迫る感じが懐かしくなり、今回『悪人』を読むことにしました。
誰が本当の悪人なのか、
それを白黒で決めつけることはできない。
誰しもの中に善も悪も混在していて、1人の人間が誰かにとっての悪でもあり、また別の誰かにとっては善だったりする。
本で描かれているのは極端な例だけど、
きっと日常の中でもこの構図は当たり前に存在するんだろうと思った。
祐一のおかした殺人は絶対にいけないこと。
それは揺るぎない事実で、私が佳乃の親だったら間違いなく祐一を120%悪(≒許せない)と思うけれど…
第三者として読み進めると祐一の悪ではない部分も見え、後半はやはり読み進めるのが苦しかった。
そして増尾の悪事のように法で裁かれない悪も存在してしまうことがまたモヤモヤでもあった。
小説で描かれていないその先で、
誰か祐一を救ってくれる人がいますように。
そして増尾にギャフンという出来事が起こりますように。。。苦笑 -
Posted by ブクログ
『ああ、俺、もしかしたらずっと逃げたかったのかも』
ヒリヒリした緊迫感の中で逃亡の果てにつぶやいた者の言葉だ。4つの短編のどれもが、ふとしたことがきっかけで逃げなければならなかった者たちの、明日は我が身の物語である。
どのお話も、つい先日 テレビのニュースで見たようなリアルな現実感がある。逃亡するだけの犯罪を犯したということよりも、ごくまっとうな人々が事件を起こし逃げるまでの過程がストンと腑に落ちて共感を呼ぶ。作者 吉田修一さんの、人間の心の動きを見つめる目が好きだ。優しい。
ふと、偉大な社会派推理作家、松本清張さんを思い出す。松本清張さんも犯罪の背景と、罪を犯した者の心理に共鳴を覚える描き方をする人だった。
この逃亡小説集、緊迫感の中にも読みやすい展開が気持ちいい。 -
Posted by ブクログ
籍も入れていないのに、子連れの女とともに過ごす大輔。さらには仕事をしないで引きこもっている光男。光男は毎日出かけずに熱帯魚の世話をする。大輔はボーナスで家族全員を連れて海外旅行へ行こうというが、だれもまともに取り合ってくれない…。
吉田修一の短編3編で、いつもどおりなにか起こるようで起こらないようなグズグズとした話である。しかし、とにかくあるかね全部使って何かを変えようとしたり、女子中学生に手を出したり、女にグリーンピースを投げつけたり、作りかけの酢豚を皿ごとゴミ箱に捨てたりと、突然爆発する。
どこかにあるようでどこかにない、掴みどころのない作風なのだが、なぜか日本映画のような妙な静けさと喧騒が同居したような、BGMも無いんだからしゃべれよといいたくなるような、独特の間が存在するのが吉田修一の作風である。
現状が嫌になって、何もかも投げ出してしまうが、自分が悪いのをわかっているあたりは、読んでいて救われる。だからといってとっつきやすいわけでもない。
なぜかわからないが、吉田修一や長嶋有の作品を読むと、自分でも小説を書きたくなってしまうのだ。本作の3篇もれいにもれず。読み終わった今、書かないといけない気がする。不思議だ。