吉田修一のレビュー一覧
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映画と原作本の感想をまとめてこちらへ~
江口のりこさんが主人公・桃子を演じているので、映画館で観るつもりだったが逃してしまった。
江口さんが今まで見たことがないエレガントな洋服で、淡々と不穏な雰囲気を漂わせて桃子を演じているのが新鮮だった。チェンソーを振り回し床下に蹲ってるシーンはさすがに彼女ならではというところか。最初は原作に時折りいきなり日記文があって、てっきり不倫相手・奈央の日記だとばかり思ってしまった。しかし、これはミスリードを誘っていて、桃子の日記だったことが次第に分ってきて、実は桃子も略奪婚だったと気づかされ、まんまと吉田さんにやられてしまった! 決定的に違うのは、桃子は妊娠して流産したのに、奈央のお腹の中の子供は順調に育っていく。桃子は真守との関係が終わってしまうことを恐れるあまり、婚約後に流産を明かし結婚した。映画ではこの”日記”を、SNSに替えてあったのが世相を反映していて面白い。
読後、タイトルの「愛に乱暴」な人とは桃子の夫・真守と思っていたが、登場人物の大方がそうだったのかもしれないと思えて来た。真守と姑は桃子から騙されたと感じ、ずっと“しこり”を感じていたのだろう。結果的に桃子が妊娠によって真守の気をひいた形となってしまったが、桃子が打算的で因果応報なのよと切り捨ててしまうには横暴なような気もする。“妊娠”を盾に勝者となった桃子と奈央が不憫でならなかった。生まれ出る子供を結婚の切り札に使うのは時代錯誤と反論したいがそう簡単にいかない現実もある。子供誕生ですべてが丸く収まるなんてあり得ないと誰もが知っている。かつて貝原益軒の『女大学』に「嫁して三年 子なきは去る」じゃあるまいし。またもや妊活かと悲しくなった。真守は果たして奈央と大人しく家庭を築いていくのだろうかとおせっかいを焼きたくなる。原作には真守の父親誕生の話も盛り込まれていいるが・・・・。3人の女たちはよくもまあこんな男に振り回されたものだ。(エンドロールで真守役を小泉孝太郎さんだったというのを初めて気づいた! 完璧に彼を消していた)
最後に桃子は縁側でアイスクリームを舐めながら取り壊される家を眺めている。賠償金替わりに家をもらったと匂わせるのも前向きのラストに違いないが、原作にあった”手作り石けん”の仕事ができるようになったという話も加えて欲しかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレオリンピックを題材にアジアの4つの都市を舞台にした短編集
人生の岐路に立たされた主人公たちを描いていて、なかなか面白い作品集でした。
以下、収録されている各作品の感想
香港林檎
時代の転換点にある香港と、人生の転換点にある主人公が重ねられるお話。最初のところでジャッキー・チェンを成龍と呼ぶのは何故かと思ったら主人公が香港の人という設定でした。
大きな転換点にあるものに対して、当事者以外が興味本位で気軽に話を聞こうとするのは、個人の人生に関してはやりすぎないようにしようと気をつけているけれど、国の変化に対してとかは自分もやっちゃいそうだなと思った。
上海蜜柑
かつては将来を期待されたスポーツ選手だったが引退して高校の臨時教員をしている主人公が、変わりゆく上海、恋人との関係の中で人生を考えるお話。
少年時代の思い出のエピソードが、そこだけで一つの小説にしても良いようなお話で、すごく心に残った。
落ちた蜜柑がエスカレーターに乗って進んでいくように、思い描いていたレールから外れても人生は止まらずに進んでいく。
ストロベリーソウル
家族と共に渡米するも、父親は当初の予定とは違う仕事をすることになり、結局両親と離れ、1人だけソウルの伯母の家で暮らす青年が主人公。
両親は学業に専念してもらいたいと考えているが、自分はスケートリンクの清掃の仕事をそのまま本業にしてしまっても良いと思っている。
そんな中、知り合ったフィギュアスケートを辞めようとしている少女に、主人公は頑張って続けてみるようアドバイスするが、そのままその少女と会うことはなかったというお話。
これは、結局主人公も親から頑張って学業を続けるように言われるけど、それを諦めようとしていて、少女と主人公が被っているんですよね。
そんな中、親は諦めずにアメリカで頑張っているというのは、「頑張ること」に対する世代間の感覚の違いなのかもしれない。
ラストは、諦めた夢は2度と取り戻せないようにも読めてちょっと寂しいお話でした。
東京花火
東京オリンピックが開幕される中、会社の同僚がオリンピックのそばにいたいというメッセージを残し行方不明となるというお話。
他の3編と比べるとあまり好きじゃなかったかな。オリンピックを神聖なものとして捉えすぎてる感じがちょっと苦手だったかも。
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個人所有の小さな孤島から、1人の老人が忽然と姿を消した。
老人の名は梅田壮吾。九州の富豪で島の持ち主だ。壮吾氏がいなくなったのは、氏の米寿を祝う内輪のパーティーが開かれた翌朝のことだった。
台風が間近に迫っており、本土に帰るのは不可能だ。島にはパーティー会場となった別荘が1棟あるだけで他に身を隠すところはない。ならば壮吾氏はどこに消えたのか?
氏のベッドにあった「遺言書」に書かれていた謎めいたことば。そして氏がパーティー当日に見せた不自然な言動。
残された手がかりをもとに、懸命の捜索が始まった。
謎が謎を呼ぶヒューマンミステリー。
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長崎県北西部の北松浦半島。半島の西には九十九島と呼ばれる 200を超える群島が連なっている。島の大半は岩礁や無人島だが、個人所有の別荘島も少なくない。
野良島は、そんな別荘島の1つだ。
野良島の持ち主は梅田壮吾。高度経済成長期に九州を中心にデパート事業を展開し、一代で財を成した立志伝中の人である。
現在、事業は息子から孫へと引き継がれていて、すでに経営から退いている壮吾氏は、この野良島で隠居生活を送っていた。
今回、米寿を迎えた壮吾氏を祝おうと、内輪で野良島に集うことになった。
横浜で探偵事務所を営む遠刈田蘭平は、梅田豊大 ( 壮吾氏の孫です ) からある依頼を請け、豊大の招待客としてパーティーに出席したのだが……。 (「プロローグ」) ※全18話とプロローグ及びエピローグからなる。
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吉田修一さんの探偵小説。しかもクローズドサークルで始まるコテコテ謎解きミステリーとは!? ということで、意外の感に駆られつつも、ワクワクしながら読み進めました。
物語の謎は3つあります。
1つ目は、梅田壮吾氏の行方です。
米寿のお祝いパーティーで少々はしゃぎすぎの感があった壮吾氏。翌朝、「遺言書」を残して姿を消してしまいます。
けれど普段の壮吾氏を知る息子夫婦や孫たちによると、壮吾氏が自殺するとは考えられないと口を揃えるのですが……。
別荘内にはいない。狭い島内に身を隠す場所はない。台風接近で本土には帰れない。
いったい壮吾氏はどこへ消えたのか?
2つ目は、壮吾氏が別荘内で紛失した時価35億円の宝石の行方です。
この宝石は、かつて壮吾氏がオークションで落札した25カラットはあるルビーで、「一万年愛す」という名がつけられています。
遠刈田が別荘を訪れたのは、宝石を探してほしいという豊大の依頼を請けてのことでした。
そして3つ目は、45年前に東京で起きた主婦失踪事件の真相です。
状況から見て自発的に失踪したのではないと判断した警察は捜査を開始。その途上で、容疑者として浮上したのが壮吾氏でした。
ただ確証がなかったことと壮吾氏が九州の名士だったことで、壮吾氏の身柄が拘束されることはなく事件は迷宮入りとなりました。
捜査を担当したのが坂巻丈一郎という警部だったのですが、捜査打ち切り後も坂巻と壮吾氏はときおり連絡を取り合うようになり、その関係は互いに高齢となってからも続くことになります。
坂巻は今回も壮吾氏から招待されて、野良島を訪れていたのでした。
ということで、壮吾氏の身内以外でパーティーに招待されたゲスト2人、探偵・遠刈田蘭平と元刑事・坂巻丈一郎の主導によって真相が明らかになっていくプロセスが描かれます。
謎解き中心に展開する前半は古典的なミステリーのようなテイストで、過去の回想中心に展開する終盤は歴史問題や社会問題に目を向けさせられるような内容で、非常に奥行きが感じられる作品に仕上がっていたと思います。
新聞小説らしくメリハリを効かせた書き方がされていましたが、ただのエンタメ要素の強いミステリーで終わらせないのは、さすが吉田さんだと感心しました。 -
ネタバレ 購入済み
良くも悪くも吉田タッチは健在
12月湖西線に乗って曇天の夕暮れが湖面に反射するどこかもの寂しい琵琶湖を見たことを思い出しながら、そして日に日に老いていく母のことを思いながら、偶然手にしてしまった本。吉田修一ならば間違いないはずだったが、読み進めるたびにうんざりするような酷い状況の話で、ますます琵琶湖
の心象が悪くなってしまった。滋賀県に罪はないが事件が起きそうな心象をもってしまった。吉田小説の温度感を感じ映像が浮かぶような描写は健在で、ゆえに気が滅入ってしまった(これでも褒めています)。追い詰められていく人。堕ちていく人。 -
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吉田修一の怒りと悪人が好きで、他の本も読みたいなーと思い、これを選んだ。
結婚て難しいなぁ〜
一番、旦那がよくわからん。桃子とも不倫で始まったってことでしょ?それで同じ流れで、若い子と一緒になりたいからって離婚するって、ハァ???(´Д` ) またおんなじ結果になるでしょこれは笑
桃子目線で話が進むので、彼女にどうしても感情移入してしまう。が、旦那の世話を色々焼いちゃうのは良くないなぁ。朝ごはんから荷解きまでぜーんぶやっちゃってるもん。これは母親と息子だし、健全な夫婦ではなくなるよなあ…あと癖強い義母と同居はキツイだろうなぁ…
とにかく、嫌いになったから結婚やめる、好きな人ができたから結婚やめる、ってそんな簡単にしていいものなのか?そのくらいなら最初から結婚するな。ってことなのかな…
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Posted by ブクログ
昨日に続いて吉田修一さんのエッセイ。
村上春樹さんは小説とエッセイにかなりの落差があって痛快なのだが、吉田修一さんはどうなのだろうか。
『横道世之介』という映画はうろ覚えだけど、あまり落差がない気がする。
今回のエッセイも旅の一コマと追想が綴られている。
なかでも、「青の氾濫・竹富島」「対馬旅情」「四00万人分の笑顔がお気に入り」竹富町も対馬も金比羅山神社も行ったことがない。
特に藍色、空色、水色、水浅葱、露草色、勿忘草色、青褐、鉄紺、、33種類の青表現以上の色の豊富な竹富島の海と空。期待を裏切らないどころか期待以上という景色。
想像ばかりがふくらみ、幸せな気分になる本だった。 -
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ANAの飛行機に乗ると、必ず目を通すのがこの機関誌。そうか、そこに載っていたエッセイだったのか。
地図が大好きな私は、早速吉田修一さんとの共通点を見つけて、「読む旅」を始めた。
吉田修一さんが『横道世之介』の原作者というくらいしか予備知識がなかったが、読めば読むほど興味が湧いてきた。
吉田さんはさださんと同じ長崎出身。賑やかな精霊流しな話などを読むと憧れがふくらむ。
上高地とヨセミテ国立公園の水と清潔の話。水が大好きな吉田さんは、清潔さが一番恐ろしいという。たぶん表裏一体の気持ちだろう。森の声と風のゆらぎ、満天の星の敬虔なる風景がそう言わせたのかな。
アカデミー賞の映画に対するSMAPの稲垣さんのコメントにもビックリした。稲垣さんには、感情に溺れない、自分で冷静に考え判断する稲垣さんのイメージを持っていたが、自分を俯瞰して観る目を持っている方なんだなと感じた。
吉田修一さん、好きな作家になりそうな予感がする。 -
ネタバレ 購入済み
11人の女性との逸話または寓話
吉田修一さんのストーリーテラーぶりにはただただ脱帽。男性視点の11人の女性との逸話または寓話。個人的には作品名含め最後の「最初の妻」の話がよい(というか胸が痛い)。中学1年で最初で最後のデートという設定も初恋ではないが儚くそしてその純粋な思いにくらくらしてしまいました。また、自分勝手な妄想で怒りにふるえてしまう犯罪ストーカー的な「夢の女」も共感する部分あり。「どしゃぶりの女」は何もしない無気力な女ではなくて、実は人には事情があって、それをいちいち言わないのもそれに気づかないのも男と女だなと思ってしまった。
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Posted by ブクログ
ネタバレ映画観てから上下巻読み終わり
映画だと分かりにくかった、不倫相手の日記かと思いきや桃子自身の日記だったり
桃子と真守と義母の細かいやりとりとか、描写とか、凄く想像しながら読めて面白かった
桃子はきっと他所から見たら、良いお嫁さんで、働いてた時は凄く仕事も出来て、旦那さんとも義理親とも上手くやっていて、とても幸せに見えてたんだろうな
でもみんな自分だけの地獄があるんだなと思い知らされる
鰐淵さんに、裏でめんどくせ〜って言われるとことか
義母と真守に騙されたようなもんだって言われるとことか
リアルだな〜
誰でも桃子のようになる可能性がある
自分が自分でいられなくなる時がある
最後は仕事だって、家だって、桃子自身の気持ちだって吹っ切れて本当によかった