吉田修一のレビュー一覧
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この方の作品は強烈な没入感を与えてくれる。「怒り」が大好きだが、この作品も並びました。男性作家なのに光代の心理描写がすごいです。終わり方もたまりません。
読み終わった後に感じたこと、
悪に利用されない為に、強くあり、賢くあらないといけない。自分を軽視する人間とは関わるべきではない。必死に生きている人を見下し、馬鹿にする人間にだけはならないように生きていきたい。そして誰かから語られる様々な自分はどれもちょっとずつ自分なのだということ。
「悪人」は誰か?
私にとっては、彼は優しすぎたのだと思いたい。衝動的に殺人を犯してしまった彼は悪でなければならない。なぜなら、殺人を許してはいけないから。でも人として、あの大学生や傲慢さを撒き散らす被害者女性より、思いやりと情のある人間でもあると思う。登場人物を善と悪のどちらかに分類することは私にはできないが、好きと嫌いに分類するならば、間違いなくあの大学生だけは嫌いだ。 -
Posted by ブクログ
初めて著者の作品を読みましたが、とにかく文章が上手いと感じました。
収録している3つの短編、いずれも分かりやすい起承転結があるわけでもなく、登場人物たちがもつ背景や性格に沿ってごくごく自然な態度・行動を取るだけの話で、オチというよりはストーリーの過程での感情の隆起や変化そのものを楽しむものなのかな、と思います。
起こった事象をどう認識し解釈するか、それは個々人の持っている情報や考え方によって大きく変わります。本作はそこに至るまでの背景の説明とその際に湧き起こる感情について、そのまま書き出すというよりは、目の前で起こっている事象を登場人物がどのように捉えているか、という結果となる部分を五感で立体的に表しているため登場人物への共感を強めることができ、物語の中に引き込まれるような感覚を味わえます。
そういった意味合いでいうと、登場人物が現状をハッピーに捉えているかどうかで各編の読後感が違ってきます。最後に掲載されている「water」が爽やか要素が多いこともあって一冊の印象としてはさっぱりした本だったな、となりますが前2篇はどちらかというと陰鬱というか諦念に近いものを感じました。どれくらい感情を変化させられたか、というのは自分の中で小説を評価する評価基準の1つになっているような気がするのですが、この項目で本作は非常に優れていると感じました。
こんな文章書けるようになりたーい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ真守の罪、奈央の罪、照子の罪、そして桃子の罪。歪な人間関係や生活環境がそれらを産んだのだろうか? 母屋と離れという、近いのに遠い距離感がそうさせたのだろうか? 鞄が底なしになって、引っ張られないように畳をひっくり返したのはその罪に精神を引き摺り込まれないようにするためだっか? 全ての出来事が写真のフレームのようになって連続してさまざまな想像が掻き立てられた。なんだかんだと8年も結婚生活を続けてきたのだから、ことはそう簡単ではない。ただ急転直下でもなければ不満のちりつもでもなくて、一つの因果関係で物語れないところにこの著作の肝がある気がする。
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温泉行きたいなぁ。
コロナが流行り出してから 何年も行ってないな。
これからだったら紅葉みながらの露天風呂とか
いいなぁ。草津、伊香保、那須塩原…。いいなぁ。
こちら、温泉旅館に泊まる男女5組の恋愛小説です。
初恋の女性と結婚した男性。 突然 妻から離婚したいと告げられる。別れる理由も聞けないまま温泉へ訪れる。
結婚を間近に控えたおしゃべり好きのカップル。義母から「脇役夫婦」と言われる。襖一枚隔てた隣の部屋には 物静かな男女が泊まる。(これ好き)
お互いの配偶者に嘘をつき温泉に泊まりに来たダブル不倫の男女。
初めての1泊旅行に来た高校生カップル。(これ男の子がザ・高校生男子でめちゃ可愛い!【この先ずっと一緒にいたい。星の瞬く露天風呂で、この気持ちがいつかなくなるなんて、いくら考えても想像できなかった】ってさ!てさ!!)
訳ありそうな一人旅の女性に声をかける男。実は男の方が訳ありだった…。(これはラストがゾワッ)
別れ話もイチャイチャも 会話の一つ一つは
今 この世界のどこかしらで こんな会話をしている男女がいるだろうなって内容なのに、その場所が 「温泉旅館」っていうだけで 日常から離れた特別なもののように感じてしまう不思議。終わり方も余韻の残る感じ。あぁ、この2人はお風呂から上がった後、どんな顔でどんな会話するのかな…って。
っていうかあれですよね。
小説の中のセリフでもあったけど
温泉ってなんかエロいよね。
いや、全然そんな話ないけどね。
全てのお話で 男女が泊まる旅館は実在する旅館のようで、気になったところはスマホ検索してみた。
青荷温泉ランプの宿、気になるー。
那須の二期倶楽部は行ける距離だわとおもったら 閉業して星野リゾートが買い取ったらしく 1泊6万6000円もするオサレホテルになってた ( ꒪⌓꒪)うへぇ
温泉で温まりすぎた体が 外の空気にふれて一気に冷えるの気持ちいいよね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ有名映画の原作が多くあるので、大衆寄りの作風かなと想像しちゃうけど文学的な仕上がりがこの著者にはあるし、そこにまんまと魅了される。
主人公たちは想像の範囲内で一癖二癖あり、生きていく環境に翻弄されてまさに罪への陥穽に知らず知らずに嵌まる。決して根っからの悪人ではなく、ただボタンの掛け違いが修復不可能なまでに加速しもう後戻りできない最後の一線を超えていってしまう。
特に「百家楽餓鬼」と「白球白蛇伝」がシビれる。
原因は違えどどちらもお金に関係し、堕落していく。しかし、主人公二人とも最初は真っ当な人間といて歩んでいるはずなのに、周りの環境からの外的影響から歯車が徐々に狂い出し堕落していく。そこに劇画的なターニングポイントなんかなく、いつの間にか気づいたらがんじがらめの袋小路。人の破滅というのはいとも簡単に起こるんだなと戦々恐々です。
他のレビューにもあるように、後味は決して良くない。でもそういった結末にこそ、そこに人間の根底にある感情的な、理性では制御できない本質があるのだと思う。ここまで本作品に引き込まれるのだから、一理あるだろう。 -
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飄々とかつ一生懸命に人生を楽しむ男、横道世之介。
現在は東京郊外にある下宿屋「ドーミー吉祥寺の南」で、家主のあけみや4人の店子たちと共同生活を送っている。
暮らし向きが豊かでないのは相変わらずだけれど、やはり毎日が楽しそうだ。
世之介不惑の歳までの約1年間を描くシリーズ最終作。下巻は、後半の半年間の物語。
◇
世之介は39歳を迎えた。カメラマンをしながら東京郊外での下宿屋暮らし。大家で妻のあけみと、気心の知れた3人の店子たち。そんな平和な空間にやってきたのは引きこもり男子高校生。名を一歩という。
一歩は世之介が仕事で知り合った中学教師の一人息子で、誰ともコミュニケーションを取ろうとせず、不満があれば下宿中に響く爆音で音楽を流したりする。
両親ですらお手上げ状態の一歩なのだったが、下宿屋のユルい空気の中で徐々に変化が訪れる。
また、世之介やその周囲でも、人生に新たな希望が芽生えはじめていた。
全7章で「三月」から「八月」までをひと月ごとに描いた本編と、エピローグとしての「15年後」からなる。
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下巻の中心になるのは世之介の溢れる人間味です。適宜挿まれる二千花との日々。もう涙なくしては読み進められませんでした。
まず、世之介の好意を察知した二千花が余命2年を告げるシーン。世之介のリアクションがいかにも世之介で、安堵の笑みが漏れます。
結婚式場でのウェディングドレス体験に゙二千花が応募する話もいい。タイムアップのときが刻々と迫る人生を精一杯生きようとする姿が美しい。また、彼女を懸命に支える世之介のふわっとした優しさがよかった。
そして、海辺での2人のシーン。もう言葉にならないほどです。
世之介のよさは、二千花の余命をカウントダウンしながら彼女に接する、ということをしないところです。
世之介が見ているのは目の前にいるいま現在の二千花だけ。だから二千花も、その時の体調に合わせた過ごし方を世之介に伝えるだけ。瞬間瞬間をきちんと生きようとする2人が胸を打ちます。
心が繋がっているような密度の濃い2年間でした。
また、世之介の両親の出会いから世之介誕生の日のことまでの描写も印象的です。
「世之介」命名の意味もストンと腑に落ちました。「名は体を表す」のことばどおり、まさに世之介の生き方そのものだったからでした。
あとは運命の日に向かって物語が盛り上がりを迎えていきます。
世之介の日々は明るく希望に満ちた展開であるだけに、読んでいて却って辛くもなります。
ブータン人のタシさんの言葉。
〈私が誰かに生まれ変わる。そしたらその生まれ変わった誰かは、きっと今、私が愛している人たちの生まれ変わりにとても愛されるんだと思います〉
目の前の人を愛する。助ける。でも決して押しつけない。誇らない。得意にならない。まことの愛は輪廻転生を越え永遠に受け継がれていく。
世之介にはタシさんのような確固とした哲学はないと思います ( 偏見です、ごめんなさい )。けれど、本能というか根っこのところで、世之介にはタシさん同様の行動原理が備わっている気がします。そんな天然の「愛の使徒」っぽいところに人は惹かれるのだろうと思いました。
世之介と関わった人たちは皆、素直で優しい愛でもって周囲に接するようになります。その展開の心地よさこそ本作のかけがえのない余韻なんだと思います。
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世之介は、宮沢賢治さんの詩「雨ニモマケズ」を体現したような人だなあと、ずっと感じていました。亡くなるその瞬間まで世之介は、「サウイフモノ」だったと思いました。 -
Posted by ブクログ
飄々と、そして一生懸命に、人生を楽しむ男、横道世之介。
現在はカメラマンとして生計を立てつつ、「ドーミー吉祥寺の南」という東京郊外の下宿屋で、家主のあけみや3人の店子たちと共同生活を送っている。相変わらず暮らし向きは豊かでないけれど、やはり毎日が楽しそうだ。
世之介不惑の歳までの約1年間を描くシリーズ最終作。上巻は、前半の半年間の物語。
◇
前巻から14年ほどが過ぎ、世之介39歳を迎える年。カメラマンとして (かろうじて) 身を立てられるようになっている。
現在の住居は東京郊外の下宿屋。でも店子というわけではなく、寝起きするのは家主のあけみの居住スペースである。
あけみと入籍はしていないので、内縁の夫という位置づけだ。だけど2人の醸す雰囲気からはまったく不安定さを感じない。
あけみのサバサバした性格も大きい。けれど、何と言っても世之介の魅力でもあるフレンドリーさが主たる要因だろう。
店子は3人。気さくな営業マンで元芸人の礼二さん、書店員で何やらとっつきにくいところのある大福さん、純で気弱な大学生の谷尻くん。
狭い生活空間ではあるけれど、世之介を中心に、付かず離れずの絶妙な距離感で暮らすメンバー。ドーミー吉祥寺の南は毎日が平和である。
ところがある日、そんな下宿屋の空気にそぐわない入居者がやってきた。
全6章で9月から2月までをひと月ごとに描いていく。
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付添カメラマンとして修学旅行に帯同している世之介が、男子中学生のザコ寝部屋で写真撮影をするシーンから物語は始まります。
イキがる中坊を茶化すことなく飄々と受け止めていく世之介の姿に、ああ変わってないなあとうれしくなりました。
この上巻でもっとも注目したのは、世之介とあけみさんの関係。というか世之介の恋愛事情。これまでの祥子ちゃんや桜子さんのときとは違う世之介を見られるのではと期待しました。
祥子ちゃんとは学生らしい初々しい恋人関係でした。「布団が吹っ飛んだ」でウケまくったり、長崎の世之介の実家に押しかけて世之介の両親や友人たちと仲よくなってしまったりする祥子ちゃんが実に微笑ましい。でも世之介は、そんな祥子ちゃんに常に押されっぱなしだったのを覚えています。
桜子さんとは格が違っていたのか、世之介は土俵にすら上げてもらえなかったように思います。
そして今回のあけみさん。どしっと構えた素敵な女性。気立てがよくさっぱりしているし、心遣いも細やかです。
けれど、世之介も女性をしっかり受け止められるようになっているではありませんか。内縁ではありますが、あけみさんとおしどり夫婦の関係です。
前巻から14年。世之介もいい感じに成長したのですね。
ところで、あけみさんと知り合う前、世之介には二千花という恋人がいたのです。二千花は不治の病に冒されており、2年間にも満たない恋愛期間だったけれど、世之介にとっては最愛の女性として永遠の存在になっています。
でも恋人とこんな別離を経験すると、なかなか違う女性を好きにはなれないし新しい恋にも踏み出せないのが普通であるように思います。
けれど世之介は、あけみさんとの新生活に踏み切ります。しかも「いちばん好きなのは二千花」とあけみさんにことわったうえで。
あけみさんから言い寄ったのだし、あけみさんの気持ちを世之介がまじめに受け止めたというのはわかります。でも世之介が逡巡したとの描写はないのです。
別に『好色一代男』になぞらえたわけでもないでしょうが、一般的には誠実さが疑われる行動なのに違いありません。
それでもこちらの世之介には、嫌悪感どころか違和感さえ感じない。そんなところが、横道世之介の横道世之介たる所以なんだろうなと思ってしまいました。
本文中に、世之介の人生観を象徴する次のようなことばが出てきます。
人生の最後に、どんなことを思っていたいかについて。
「そうだなー。おれだったら、こう思いたいかなー。『あー、いっぱい笑った。あー、いっぱい働いた。いっぱいサボって、そんでもって、いっぱい生きたなー』って」
1年後に訪れる世之介の運命を知っているだけに、強烈なインパクトを感じることばとして印象に残りました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・とりあえず読んでみてよかった!!最後はよく分からないけど鳥肌が立った。こうして文章にまとめることにも意味があるんだと思った。
・「音のない世界」って、たぶん想像できない。怖い。
・〝情報というのは、不思議なものだ……〟(P.54L2〜)取材の人も必死なのがよくわかる。情報の価値の違いとか、考えたことなかった。
・アパートで起きたいざこざ、よく分からなかった。誰が悪いんだろう……?
・とにかく、気付かされることが多い!実体験なのかな。
・読んでるとき「これは記憶しておけばいいか」って思ってメモしなかったこともあるけど、きっと忘れちゃうんだろうな、人間って。だからこそ覚えようとするんだろうか。
・響子がいなくなったあたりとか、面白くなってきたー!って感じ。
・ラストの方、気になりすぎて一気読み不可避。
・何かを伝える仕事って素敵。やり方はなんであれ、〝伝える〟って大切。
・最後は「え?!なになに?!」ってなった。もう少し経ってから読み直したい。今までどうして知らなかったのか……