吉田修一のレビュー一覧
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人生は長いようで短く、芸術は世代を越えて延々と続く。
人というのは、世の変遷に合わせながら与えられた人生の役回りを演じる存在に過ぎないのかもしれません。
下巻では、バブル期とその崩壊など、日本の移り変わりを背景に、梨園を支えるようになった二人の宿命のライバル同士の人生の岐路が描かれます。(よく下巻一冊でおさまったなぁ、と思います)
きっと作者は歌舞伎をとても愛しているかたなのでしょうね。
二人の主人公の人生を描くことによって、歌舞伎という芸能の存在の大きさが浮き彫りにされているような気がします。
ここへきて、この作品のタイトルがなぜ「国宝」なのか? ということを考えざるを得ません -
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「~であります」「~でございます」という語りが狂言回しになって物語を進め、その途中で登場人物がセリフを語ることによって、読む者に臨場感を与えています。
[これは、歌舞伎の太夫の語りと同じ手法なんですね。本作品そのものが歌舞伎作品のようになっているかのようです♡]
ご丁寧にも、登場人物の動作を説明し、そのあとにセリフを言わせるという段取りの良さです。
(どこでもよいのですが)例えば、107ページの地の文とセリフの流れを抜粋してみますと、
~前略~ いつの間にか徳次も目を覚ましておりまして、
「三味線の音やね?」
と耳を澄まします。
「坊ら、おはようさん!」
とつぜん枕元の襖が開いた -
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凄いものを読んだの一言に尽きる。波瀾万丈とはまさにこのこと、苦難ばかりの彼の人生。それでも歯を食いしばって続けてこられたのは、やはり芸への情熱ゆえだったのだと思う。芸に生き、芸に捧げた一生。圧巻の終幕に観客のごとく息を呑み、万感の思いが込み上げる。今年を締めくくる作品がこれで佳かった。
また、語り口が明瞭で非常に読みやすく、かといって単調ではなく、要所要所で血の通った生きた表現が立ち上ってくるのがまた秀逸だった。苦しい場面が多いけれど小説は笑いどころもあって、緩急のバランスが良い。
映画の方を先に観たけれど、小説が映画を補い、映画が小説を洗練させていて、良い相乗効果になっていると思う。映画を観 -
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ネタバレ圧倒的な熱量で描かれる「芸」の物語だが、読み終えて心に残ったのは、華やかさよりも「哀しさ」や「人間の弱さ」だった。
1. 「美」からの解放(万菊の死)
大役者・万菊が最期に選んだのは、美しいものが何一つない山谷のドヤ街だった。「ここにゃ美しいもんが一つもないだろ。(中略)もういいんだよって、誰かに、やっと言ってもらえたみたいでさ」という言葉が胸に刺さる。
生涯をかけて美を追求し、演じ続けることの凄まじい緊張感。そこから離れ、汚れた天井を見上げることでようやく自分自身を取り戻せたのだとしたら、これほど切なく、また人間らしい最期はないと感じた。
2. 成功の影にある「屍」(喜久雄の業)
主 -
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ネタバレ犯罪は意外と自分と遠い存在ではない。
実際の事件をもとにしている。短編集。結末が明確に書かれていない作品も多く、読者自身が考える必要のある、深みのある一冊だった。
個人的おすすめは、万屋善次郎、百家楽餓鬼、白球白蛇伝!
《青田Y字路》
街や風景の描写が丁寧で、情景がすぐに浮かんで一気に話に入り込めた。圧倒される感じとか恐怖がリアルで、読後はやるせない気持ちになる現実感のある怖さを感じる。
村社会の怖さや差別、誰もがトラウマから犯罪者にもなりうるし、誰もが犯罪に巻き込まれるかもだし、逆に誰かを犯人に仕立ててしまう側にもなるかもしれない。同情する気持ちと「もしかしてお前が犯人か?」って疑う気持ち -
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下巻をカフェで読み終えたんですが、危なく泣きそうになりました。
荒筋はだいたい皆様ご存知のとおりだと思いますが、任侠の家に生まれた喜久雄が歌舞伎の女形として大成するまでの物語。先に映画を観てから原作を読みましたが、これが大当たりでした。
不勉強で歌舞伎の事はズブの素人ですが、映画を観ていたことで歌舞伎の演目の描写の場面では鮮明にその映像が蘇り、また映画には登場しない演目も沢山出てきますが、観ているといないとでは脳内イメージの精度が全然違うもので、なんとなくではあるものの舞台の情景が目に浮かんできました。
映画では語られなかった部分、異なるストーリー展開、登場しなかった人物の活躍など、全く -
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映画を観たあとに読みました。
上下巻合わせると結構なボリュームがありますが、面白くてどんどん引き込まれてしまいました。
はじめの料亭での立花組VS宮地組の抗争など、映像だと刺激が強すぎて
観ていて辛くなるシーンがありましたが、
本だと文章表現の美しさが一番に感じられて、とても良かったです。
映画を観た後なのでどうしても登場人物は俳優の顔で置き換えられますが、置き換えても全く違和感がありません。
改めて、表方裏方関係なく、映画に携わる人全員が本気で作った作品だったんだなと感じました。
映画では全ては描かれていないディテールの部分も
本で読むことができたので良かったです。
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ネタバレ 購入済み
血
今回も一気読みしてしまいました。市駒と彰子の一途さ、けなげさがいじらしいです。反対に、春江だけはどうにも嫌いです。映画で高畑充希さんが春江役をやってましたが、あのものほしげな上目遣いの顔を思い出してしまい嫌悪感があります。
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ネタバレ「白河集団公司」!!!(嗚咽)
徳ちゃんって最後の最後まで本っっ当に義理堅くてなんていい奴なの!!!
私は映画が先、原作が後になったけど、結果的に正解だったと思う!
歌舞伎の繊細な大胆な美しさとか、俳優陣の演技の上手さを堪能するために映画がすごく良かったんだけど、映画化で省かれたたくさんの部分があまりにも良すぎるため、「映画に反映されてなくて残念」の気持ちの方が上回ってしまうと思う。
映画では、俊ぼんが逃げて、喜久雄の元カノと子供作って、結構ぬるっと実家と歌舞伎界に帰ってきたようなイメージだったんだけど、原作では戻ることを決めてから父親に許可もらうために踊るシーンもあったし、腕の中で第一 -
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この事件の『悪人』とは一体誰なのか…。
元々気になっていた本作ですが、上下巻がセットになり新装版が出たタイミングで購入(そこから積読でしたが笑)。
内容としては保険外交員の女性が殺害かれ、その女性を巡る周りの人たちの物語。愛する娘を失った親、親友、バーで好意を持たれた男、出合い系サイトで出会った男などなど。ひとつの事件を境に色々な人の人生があらゆる方向に。
視点がコロコロ変わる本作では、とにかく感情移入の対象が変わりまくります。ある人の話に耳を傾けていたら横から聞こえてくる話にも共感みたいな。とにかく共感と嫌悪を繰り返しました。
そしてタイトルの『悪人』。今回の事件を通しての