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哀しい、無器用な劣等生は、社会にうまく適応してゆく人々の、虚偽を見抜く力をもつ……。先天的に、世間に対する劣弱意識に悩まされた著者は、いたずらに自負もせず、卑下もしない、明晰な自己限定力をもって、巧まざるユーモアのにじむ新鮮な文章で、独自の世界をひらいた。表題作ほか、処女作『ガラスの靴』、芥川賞受賞作『陰気な愉しみ』『悪い仲間』など、全10編を収録する。
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Posted by ブクログ
戦中から戦後、高度成長期ころにかけての半自伝的な短編が多い。母親やおそらくはモデルを同じくする友人たちが描かれる。どうにもならない将来や友人との優劣意識を伴う関係、女性体験、そして母親との葛藤‥ある種自虐的に著者独特のユーモアを交えて描かれるが、ときには自身を鋭いナイフで切り裂いたように血が流れ出す...続きを読む瞬間があり、はっとさせられた。
安岡章太郎の「質屋の女房」に収録された短編たちがフレッシュだった。小島信夫がこの文庫の解説で「ガラスの靴」について書いている「新鮮」さとは少し違う意味で。 それぞれの短編で描かれる、戦争、徴兵までの、童貞喪失、“男”になるまでの、決めかねる将来までの、あるいは占領下、“戦後”という時代にあったモラト...続きを読むリアム。そこには熟れる寸前に残った青さのようなギリギリのフレッシュさがあった。 モラトリアムは猶予された期間ではあるけれど、そこには気楽さや安心感、希望よりも「漠然とした不安の未来」「前途には悲惨なものが待っている」という思いが渦巻き不安や焦燥感が募る。それでも、周りが動いたり決めたりし始めるなか、なにも決められないまま動き出せないまま『相も変わらず』過ごすうちに時間や時代や他人が前途や未来、将来を”決めて“しまったとき、猶予期間が終わったと「そうわかった瞬間」「ふと安堵に似た溜息がもれ」る。ああ、モラトリアムとはそういうものだった。と感傷的に昔を思い出し、わたしも素晴らしい小説を読んだことに感傷が加わった溜息をもらす。 しかし”大人“に父になったことで、時代が変わったことで、そして母親の死(を実感する様を描いた「海辺の景色」は本当に傑作)によって終わったはずのモラトリアムは最後の「家族団欒図」「軍歌」という二篇で父親の姿をして帰ってくるのだった。ああ、そうか。モラトリアムという期間は、若者だけのものではなかったのか。先の予定や期限が切られた決断、作らなくてはいけない金や時間、生きている限りある、将来や未来。幾つもの猶予と不安と焦りが人生には常にある。わたしにはある。今もある。それらを抱えながらも、決めたり決められなかったり、動いたり動かなかったり、右往左往や思い悩みながら、(わたしの人生では)多くは時間に押しつけられるように訪れるモラトリアムとその終わりがこの短編集のように繰り返される。そして何度も安堵に似た溜息を漏らす。そうやって人生は続いていくのか、ともう一度溜息が漏れたのだった。 安岡章太郎の書く小説はその時代的には「遠い」のだけれど、そこで主人公が起こす、あるいは起こせない行動、感慨や思い悩みは普遍的というか、わたしに「近い」と思ってしまえるのだった。そして安岡章太郎も小説がめちゃくちゃうまい。毎回、うまい素晴らしい小説を読む喜びと一緒に、自分を省みたり気がついたり、人生を思ったりしてしまう。ちょっと落ち込んだりもするけれど、やはり素晴らしい読書体験なのだった。
学生時代(出征前)を描いた作品が一番多く、終戦直後がひとつ、戦後10年以上経った時代を舞台にしたものが2つ。芥川賞受賞作を含む。 発表された時期はバラバラ。安岡章太郎の代表作を集めたと言っていいだろう。 「ガラスの靴」は恋愛(それも未熟な恋愛)小説の傑作。若さと才能だけではなく、あの時代に生きていた...続きを読むからこそ書けた。今の上手い作家が同じ時代を舞台にしたところで、これは絶対に書けない。「待つことが、僕の仕事だった。」忘れられない。 代表作だけあって、どれも良かったし、戦争中に浪人していた、母に愛された取り柄のない一人っ子の気分というのは、彼だからこそ書けたと思うが、自分が中年となり、かつては不在ながらも存在感と威圧感のあった父が老いた姿を描いた最後の2作も素晴らしい。 もっと読みたい、安岡章太郎。
短編集 個人的には表題作の『質屋の女房』よりも、 『悪い仲間』や『陰気な愉しみ』の方が好きで、 社会に劣等感を抱きつつ中々前に進めない登場人物たちに非常に好感が持てます。 『ガラスの靴』も読後感の素晴らしい作品です。 短編で読みやすい作品ばかりですので、是非手に取ってほしいです。
青春期はある意味、モラトリアムであるとおもいます。 産みの苦しみを経て青年は次のステージへと進んでいくのが一般的な成長だと思うのです。 しかし、ここでの主人公はモラトリアムとも言えない、本当に無駄な時間、糞みたいな時間を過ごしています。 「誇り」も「覚悟」も無いから、女も抱けず、軍人にもならず、学...続きを読む生にもなれず、母親からも独立できずにいます。 こんなクソ野郎が主人公のくせに、苦悩感が薄くさらりと仕上がっています。 でも、それでも苦悩感が残っているんです。 そんなバランスがとても心地よかったです。
10の短編集。しっかりとした文章が印象的。「陰気な愉しみ」は「檸檬」を彷彿とさせる。他の作品では総じて、母、父との関係、家族であるがゆえの空虚感や重圧感が、苛々と覆ってくる。12.6.20
母親への義務感と自己嫌悪に苛まれる、童貞の苦悩の結晶みたいな短編集。陰気さと笑いと愛憎のどっちつかずなバランスがおもしろい。処女作「ガラスの靴」の別次元の世界観は、いまなお新鮮で抜群にクール。
男になるための通過儀礼には二種類あって ひとつは女、もうひとつは戦争なんだけど 結局、敗戦でなにもかもご破算になってしまったわけで 結局、最後に残された、ギリギリ人間であるための手段は 「裏切り」にあったように思う 母を裏切り、友を裏切り、自分を裏切ることで かれはこのどうしようもない戦後日本と自分...続きを読むを やっと相対化することができるんだ でもそれはやっぱり倒錯でしかないよなあ、とも思った
初めての安岡章太郎 短編集 「悪い仲間」などの青年ものより、際立つのは「陰気な愉しみ」だ。 傷痍軍人の悲しい愉しみ。 楽しみではなく、愉しみ。 人の目を憚りながら、生きながらえる中に愉しみをも見出せない儚さ。 心の凹凸を顕微鏡で覗くかのように隆々たる山並に変えてみせる、良い作品。
慶応大学在学中に結核を患い、戦後、脊椎カリエスを病みながら小説を書き始めた著者が、世間に対する劣弱意識に悩まされた経験をベースに綴った10編から成る短編集。 戦中、戦後を哀しく、無器用に生きた学生の自堕落で屈折した日常をユーモアも盛り込んで描く。 標題作「質屋の女房」は、戦時中、外套を質屋に持って...続きを読む行った学生と質屋の女房との関係を甘酸っぱく余韻を含ませて描いたもので印象に残った。学徒出陣で召集令状が来たその学生にとって一度きりの秘め事が結果的にはなむけとなったのだった。 「ガラスの靴」は猟銃店で夜番をしている「僕」が散弾を届けに行った米軍軍医の屋敷で出会った風変わりなメイド・悦子との間に生じた特別な時間が生々しく描かれている。 この他、兵役で病気になり、月に一度生活費をもらいにいく男の屈折した感情、厳格な母親を怖れ、呪縛を感じながらも反発する男子学生や悪徳仲間と現実逃避に終始する学生たちの姿を描く作品が盛り込まれている。
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