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占領下の時代に、アメリカ人の学校を参観しに出かけた日本の中学校教員の、貧しく、それゆえにも滑稽な姿を描いて、芥川賞を受賞した「アメリカン・スクール」。ほかに、現代の複雑な世相を、批評精神に貫かれた知的感覚で捉え、人間ドラマを深味のあるユーモアと鋭く深く屈折した諷刺で描いた小島文学初期の傑作「汽車の中」「燕京大学部隊」「小銃」「星」「微笑」「馬」「鬼」を収める。
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Posted by ブクログ
なんの前情報もなしに読んだけど、面白くてびっくりした。特に『小銃』『星』『馬』が好きです。『馬』ではうだつが上がらない男が妻に対して色々思うとこがあり不満などを漏らしてるけど、どうせこんなヘンな世の中なんだから咎めることできないよね~とか言っちゃうあたりがこの男の魅力を最大限引き出してる気がする。 ...続きを読むそう思うと、どの作品の登場人物もみんな特徴的で面白い。
文は恐らく綺麗とは言えず、悪文寄りだが“凄み”のある非常に特殊な作家。 戦後特有の暗い雰囲気に包まれている本作だが、とにかく言語化が難しい魅力がある。 芥川賞受賞で有名な本作だが、是非他作の魅力も感じて欲しい。
昨年5月の不忍ブックストリート『一箱古本市』で、100円で購入した一冊。昭和50年6月発行の十刷。 王道的なレビューとすれば、「戦後」「アメリカ」「風刺」あたりのキーワードを使うということになるのだろうが、ワタシにはもうとにかく"イタイ"短編集という印象が強烈に。何が"...続きを読むイタイ"って、登場してくる男たちがのきなみイタイ。発言、態度、行動…どれを取っても、思わず「アイタタタ…」と突っ込みたくなるようなものばかり。例えば、このイタイ男たちはひたすら依存する。妻へ、愛人へ、物へ。そして、ブンブン振り回される。 ただ、思わず笑ってしまうおかしさがあるのは確かなのだけれど、喜劇のように腹の底から笑えるものでは決してない。この男たちが見せているのは、人間の性(さが)とか弱さといったもので、それは自分にもあてはまる部分がある…と、どこかで感じてしまう。これが腹の底からは笑えない理由なのでは。この短編集の不思議なおかしさの奥には、そんなものが垣間見えた。
戦後間も無くの空気感を孕んだ小説は、今と価値観自体が違っていて面白い。 〝その中〟での情動が面白い。 いい作品は、それがとても生々しく読める。 中でも『微笑』が凄い。 こんなに抉られる小説は他に無い。
2009年2月20日~23日。 参ったなぁ、といったところか。 人によっては「下手な文章だなぁ」と思われるかもしれない。 そんな文章がこれほどに心に響いてくるものとは。 八篇の短編集。 そのどれをとっても面白い、どれをとっても胸に迫ってくる、どれをとっても考えさせられる。 も...続きを読むっと早く知っておくべきだった。
微笑が気に入った。外向きには良い父親を演じながら、誰も見ていないところで、何もわからぬ不具の息子への加虐欲求を満たす。根底にあるのは同族嫌悪であり、息子を痛めつけながら、自身の痛みを楽しむ。この気持ちがよくわかるのは自分もそうだから?
表題の「アメリカン・スクール」のほか「汽車の中」「鬼」「微笑」「馬」「小銃」がいいです(てか、ほとんどじゃねぇか)。 作中の主人公達には閉鎖的な劣等感を宿しています。 その劣等感は何に対する物なのか? 敗戦後のあの時代の社会に蔓延した物なのか? 普遍的な物か、個人的な物か? 価値観が根底からひっ...続きを読むくり返ったあの時代、戦後の日本人が抱えていた不安がヒリヒリと伝わってきます。 自己の中で囲い込みくすぶり続けた劣等感の解放する術をしらない主人公達は、いったいどこに向かうのでしょうか。
表題作は、アメリカンスクールに見学に行く英語教師たちの滑稽譚。アメリカ人相手に、英語を話せば日本人でなくなってしまうが、英語を話さなければ、劣等民族のように扱われるという矛盾した立場に彼等は立っている。いくら英語がネイティブのように話せても、日本人は、立小便するし、箸で弁当を食べるし、ハイヒールより...続きを読む裸足が似合う。おそらく教養では、アメリカ人にまさるところもあるのだが、文化的な洗練や、豊かさでは、到底かなわない。英語だけ上手くなって、近代化したと勘違いすることの恥ずかしさが、容赦なくえぐり出されている。
なんとも言い難い読後感。これは明らかに、巻末で作家の保坂が述べているように、その独特の文体によるところが大きい。もちろん、主題も特異だ。しかし、その主題の特異性を醸し出しているものが文体だと言える。そして、さらに言うならば、その文体を生んでいるのは、小島信夫の、世界を分節化する思考法そのものの特異性...続きを読むなのだ。流麗な文章を書く作家はあまたいるが、彼のような語り口を持つ人は稀有だ。読みづらいので引っかかる。腑に落ちないので心に澱む。すごい作家だ。
どの作品も一貫して主人公は無様だ。 同情を誘う可愛らしい今風の無様、ではなく、きっと物心ついたときからすでにこういう扱いを受け続けてきたんだろうなと想像できるような無様。そこに戦後の、否が応でも自尊心を意識せざるを得ない流れがやってくるからさらに厄介。 「アメリカン・スクール」、「汽車の中」、「星」...続きを読む、「微笑」の感想は上記のような感じ。 どの作品も私好みの奇妙さと哀惜を湛えていて面白く読んだけど突出して良かったのは「馬」かな。 結局よく読者も主人公もよくわからないまま終わる。真相はおくさんだけが知ってるんだけど。こういう話が一人称で語られるとすごく怖いです。最近見つかった安部公房の未発表作品の「天使」的な感じ。あそこまでストレートなえぐみはないけど。シュールの一言で片づけられないものがありました。
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