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造り酒屋の箱入娘として育った茜は、十七歳の頃、文楽の三味線弾き、露沢清太郎が弾く一の糸の響に心を奪われた。その感動は恋情へと昂っていくが、彼には所帯があった。二十年が過ぎた。清太郎は徳兵衛を襲名し、妻を亡くしていた。独身を通した茜は、偶然再会した男の求婚を受入れ、後添えとなるのだった。大正から戦後にかけて、芸道一筋に生きる男と愛に生きる女を描く波瀾万丈の一代記。
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Posted by ブクログ
最高!文楽の三味線弾きに心を奪われた女性の話。乙女の恋心、文楽の芸の道の厳しさ、大正から戦後にかけての時代描写、などなど。一冊でたくさん楽しめる。
酒屋の箱入娘として育った茜は、17歳の頃、文楽の三味線弾きの弾く一の糸の響に心奪われた。 天真爛漫で一途な茜が、彼の後妻となり、芸道一筋に生きる男を支える、波乱万丈な愛と芸の世界を描いた物語。 戦前から戦後にかけて、「文楽」という私の知らない世界で、芸に生きる人々の粋な様子と、愛に生きる茜のひたむ...続きを読むきさに引き込まれました。たくさん泣いたし、余韻がしばらく消えなそうです。 口下手で根っからの芸人で、なんて奴だと思うこともある徳兵衛だけど、理屈じゃなく茜が恋に落ちる瞬間、盲目にそれを追い掛ける過程を見ていると、何割増しにもいい男に思えてしまう。 実際、一芸に秀でている人、譲れないものがあって自身を磨き続ける人というのは格好いい。 それに、徳兵衛なりに茜に深い愛情があることが垣間見える場面では、きゅんとします。 登場人物は昔ながらの粋な人が多いですが、茜の母が中でも印象深いです。強く賢くたくましい女性。 一冊で人の一生が見える。時代の移り変わりを感じられる。 そんな一冊だからこそ、するりと時間が経過してしまう部分もあるけれど、行間には濃い時間が流れていて、その月日を思うと気が遠くなる程。 世間一般のルールとは違うかもしれないけれど、茜にも徳兵衛にも共通して自分のルールがあって、それを大事に守っているところが心に残っています。 世間に流されず自分ルールを守るためには、強くあらねばならないものですね。 文楽にも興味を持たせてくれる素敵な1冊でした。
本を開いた瞬間、改行の少なさにひるみました。 読みづらそうだなーって思ったのに、面白さにぐいぐい引き込まれ、あっという間に読み終わりました。 一昔前の朝ドラを彷彿とさせる濃厚さでした。
文楽は、ここ5年ほど定期公演に通っており、この世界を描いた小説は関心があります。有吉佐和子さんは凄い人ですね!造詣の深さ、構成力、細部の描写、すべて非凡な作家でした。特に「音締」からは見事な盛り上げで、一気に読ませます。一方、文楽は素材に過ぎないと思わせるくらい、茜の描写が周到で、自我を貫くヒロイン...続きを読むの生き様が実在感に溢れています。
こんなに一途な愛を知れて素敵な時間を感じた。 古い本。母の本棚にあったものを本屋で見つけ、購入。違う作品もだけど、有吉作品は主人公の女性の生き方に作者の信念を感じる。心に決めたものに一途な主人公がすき。高校のころ読んだ作品も読み直してみようかな。
面白かった〜 三人称小説ではあるが、完璧茜視点なので、清太郎(徳兵衛)への気持ちが切なくっていじらしくって。でも家族になってからもずっと尊敬であり恋であり、愛とか欲とかではなかったような。それが「妻」ということばに象徴されるものなのかもしれない。世喜が「弓次郎」とよび茜が「お父さん」と呼び慣わしたこ...続きを読むとにも。うーんうまくいえない。芸は男のもので、女はそこに入れない哀しさはあるけれども、それに惹かれ支えている立場は自信となり誇りとなり女を支えていく。どちらの生き方も心動かされるものだと思いました。
有吉さんの芸者モノ?はそこそこ読んだのですが、文楽モノは初めて。もう少し古典に明るければもっと染みてくるものがあったのだろうと思います。しかし、好きな男にちなんだ柄の着物を身にまとったりするような愛情表現は今ではすっかり廃れてしまったのか。観劇をする方々はそういうこといまだしているのかなといったこと...続きを読むも気になります。この作品すら新しい古典なのかもしれないと思ったり。古い関西弁といい、風習といい。宝石、着物、お稽古事、古典芸能、家の格、嫁入り。結婚はやはり厳しいなあとも、芸の道は恐ろしいなあとも思いました。読み応えじゅうぶん★★★★★
実は佐和子の小説はこの辺の時代の方が好き。他も好きですが。 無骨な匠を感じるし。一の糸ってどんな音なのか読めば誰もが聞きたくなってくる魅力がある。
「文楽」の世界を舞台にした話。 茜は徳兵衛に恋をしているというより 徳兵衛の「芸」に恋をしている。 けど実際恋なんていう軽い甘いはかないものではなくて、 一の糸が作り出すように激しく太くて強いもの。 茜の一途さには圧倒されるが、茜の母の世喜の母としての強さに 心打たれます。 連...続きを読むれ子の不幸の責任を茜の家族が茜に責めており、 それに対して世喜が徳兵衛に言った言葉はなんだかもう 涙涙・・・ まさか泣くとは思わなかったわー不覚。。 有吉佐和子の小説を読むと、現代の女性の強さは どこか間違っているように感じる。
なんて力強い主人公。 最初はよくわからず、ノロノロと読んでいましたが、途中から一気読みです。 この時代の女性は強いのかしら。
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