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Posted by ブクログ
紀伊半島の南西を走り、和歌山湾(淡路島の南島)に流れ込む有田川。その両岸には今もところどころでみかん畑が山肌を埋めている。
時は明治の初め、有田川の上流からタンスの引き出しに乗せられ流れてきた女の子が御霊(ごりょう)の山持ちの家に拾われ大切に育てられた。が、自分が拾われた子だと知り、有田川の氾濫で川に流されたことをきっかけに家を離れ滝川原の蜜柑農家で面倒見てもらうことになった。それが千代10歳のこと。そこからは蜜柑一筋の人生を辿るが、赤ん坊だった妹の悠紀のことだけは忘れない。愛しい、会いたい、思いを募らせているうちにひょんなことから御霊の家で生存を知られ、父母が会いにきた。そこからまた交流が始まるが、結婚も決まっていたので御霊には戻らず、さらに下流の箕島へ嫁いで行った。
嫁いでからも波瀾万丈。とにかくこの時代自体が波瀾万丈な世の中だったのだ。二人の息子を育て、育ったかと思ったら次男と妹の悠紀が男女の関係かと疑いを持ち、悠紀と断絶。あれほど愛しいと憧れていた妹が世にも穢らわしい存在になってしまう。そんな息子も兵隊に取られ、次男は戦死。守るべき存在がいなくなってしまうと妹との仲も元に戻る。
蜜柑職人としての紆余曲折も描かれている。「蜜柑のおばん」と呼ばれ一目置かれていたのに、年老いてくると頑固になり、人のいう意見を聞かなくる。自分は新しいことから乗り遅れていると気づかず、気づいた時には自分の畑だけ虫にやられていたという現実。これって世の老人たちには耳痛い話ですよね。
物語の終盤には、有田川がまた大きく氾濫し、1000人以上の死者を出す。昭和28年、実際に起こった災害だ。今のように自治体や政府が避難所や食糧を用意してくれない。大きな家は場所を提供し、食事も用意する。完全ボランティア。そんなことを今の金持ちはできるだろうか。
有田川の流れに身を任せ、自然に翻弄されて、それでもひたすら蜜柑を愛した女の一生でした。
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