無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
ここで日々星をつけている者にとっては、なんとも言えない気持ちになるタイトル。それだけに、刺さる部分の多い一冊でした。
なんといっても設定といい心理描写といい、絶妙かつそして鋭い。奥田亜希子さんの作品は初読でしたが、絶妙かつ鋭い今を切り取る感性と、それを生かした心理描写に感嘆した短編集です。
収録作品は6編。いずれもネットやSNSが話に関わってくる。そうした現在的なものを扱いつつ、そこから浮かび上がる人の普遍的な心理を鮮やかに描き切ります。
表題作『五つ星をつけてよ』は、ネットのレビューを読み込む女性が主人公。ある日自分の母の介護ヘルパーの悪い噂を耳にした彼女は……。
「五つ星をつけてよ」という感覚は自分にはよく理解できる。このサイトでもそうだけど自分がいいと思ったものが、ほかの人が低評価で、なおかつその低評価レビューにたくさん「いいね」がついてることがある。
『でも自分は面白かったから』と強がっても、心のモヤモヤは晴れない。
主人公は自分は好意を抱いているヘルパーさんの悪い評価を聞くにつけ、自分以外の誰かの物差し、肯定を求め「五つ星をつけてよ」と思うのだけど、身に覚えのある感情を場面を通して鮮やかに描いていて、非常に印象的だった。
他に印象的な短編だと多感な時期の少女を描いた2編『キャンディ・イン・ボックス』と『ウォーター・アンダー・ザ・ブリッジ』も良い。
高校の卒業式の日の女子高生の友情を描いた前者は、ある事実の隠し方と明かし方が上手く、そこから一気に彼女への共感の感覚が深くなる。
そして、語り手の少女が友人のある一面を知った時の感情の描き方の鮮やかさといい、青春小説として抜群に素晴らしい出来の作品。
後者の短編は、この時期特有の青臭さや、なんだか盛り上がってしまう感情と、それへのシニカルな描き方が好印象の短編。
上記三編は爽やかな印象が強い短編ですが、一方で苦みの残る後の三編も、それらとまったく遜色のない完成度。『ジャムの果て』で描かれる親子関係、「空に根ざして」の男女関係、そして『君に落ちる彗星』の閉塞感のあるそれぞれの人生の断片。
ネット、SNSと現代の道具を使い、今を生きる人の心理を鮮やかに切り取った、個人的に刺さるところの多い短編ばかりの一冊でした。
Posted by ブクログ
初めて読んだ作家さんだけど、良かった。
ちょっと長くなるけど、お気に入りの話が沢山あるので、是非残したい。
冒頭「キャンディ・イン・ポケット」は、この短編集のモチーフになっているインターネットにまつわるアレコレこそ出てこないが、女の子同士の微妙な関係性に、グッと引き込まれた。
高嶺の花の女友達。
一緒に通学する、ただそれだけの関係が、卒業を機に終わってしまうことを沙耶は分かっていた。
憧れや恋心にも似た気持ちを秘め、卒業式を抜け出した沙耶は、椎子にあることを仕掛ける。
粘り気のある文章から、不穏な方に向かってしまうんじゃないかと、正直ハラハラした。
私は、関係を自分から続けていける根気のない人間だと思う。
だからこの時期の、たった一人に見捨てられることの怖さ、恋人が出来た友達への違和感、そして節目を迎えることの寂しさは、少し分かる気がする。
沙耶に光が当たって、良かった。
続いて「ジャムの果て」。
今度は、間違いなく不穏に突き進む。
夫に先立たれ、ジャム作りとブログ更新に励む母。
度々ジャムが送られて来る娘、息子夫婦は辟易して、離れて行ってしまう。
「家族」という形に囚われすぎて、見えていなかったそれぞれの心を、成人し、一人になった今になって突き付けられ、追い込まれてゆく。
結末の狂気が、上手い。
「五つ星をつけてよ」では、母を介護する娘からの視点が苦しい。
母の言うことや口コミを頼らなければ、信じて決断できずにきた彼女。
母を見てもらっている介護士に、実は虐待の噂があって……というあらすじ。
物がなくなった、怪我をした。
どちらの話が、本当か、嘘か、藪の中。
自分自身や、自分を作り上げてきた場所や人に、評価が下されることって、よく考えるとむごい。
モノにまつわる感情や人も、もはやモノと化して、評価されているんだよなぁ。
でも、今現在そんなシステムに浸っている自分がいて、再び傷付いてしまう。
「君に落ちる彗星」は、最後に相応しく、構成にゾワっとさせられます。
どの話も、短いけれど、ずしりと来る。
まだ、文庫化された作品は少ないけれど、他の作品にも手を出そうと決めた。
解説は彩瀬まるさん。ああ、なるほど!
彼女の作品が好きな方には、オススメしたい。
Posted by ブクログ
「キャンディ・イン・ポケット」通学の30分間だけの友達。見た目も付き合う人も世界が違い、なんとなく一緒に登校してるだけなんだろなと思われていると感じている沙耶。控えめで内気な感情や憧れ。後半に向かい少しずつ感情が溢れ出していく鮮やかさ。後悔と喜びの間で揺れながらも前に進む沙耶が素敵。
「ジャムの果て」ジャムの描写がいい。気分のいい時には光り色鮮やかに、子供達への不満を感じた後には鈍くどろりと重たいようなものに。良かれと思ってたことが押し付けだと言われ今までの自分はなんだったのかという失望。ジャムとうまく絡み合って面白い仕上がり。
6編全てに人への想いや距離感や他人の肯定、自分自身への肯定と、こうだったはずという思いをなかなか消せない日常が描かれていて面白かった。
Posted by ブクログ
どこかで見たことある名前と思ってたら、すでに一冊読んでた方でした。
タイトルと装丁はポップで可愛いけれど、内容はきゅっとなったり、読んでて苦しくなったりしました。
携帯電話ができて、インターネットが普及して、
いろんな情報がダイレクトに届くなか、
情報に踊らされたり、その沼にはまってしまったり、
誰かから承認されないと満たされなかったり。
確かにショッピングサイトの評価を見て、購入を決めたりするし、ブログに反応があれば嬉しいし、いいねが、つけば嬉しいし。
でも渇望してる気持ちは満たされず。
他者の目、ことば、評価にさらされて
じゃあ自分はどうするのか。
改めて自分のいまの状況を考えさせられる一冊。
Posted by ブクログ
久々のTぬオススメ本。ということで短編集。
う~ん、この本はジャンル付けが難しい。
自分なんかと思っている女子高生の話はちょっとわかるような気もしたけれど、
ジャム作りに没頭する母親にはウザイと思われるのも仕方ないとは思いつつ、それ以上にもう少し母親に優しくできないものかと思ったり。
まだ中学生なのに暴走してしまった女の子が母親になって自分が嫌っていた大人と同じようになっていたことを気づき、
娘と向き合うところなどは良かった。
どうしても人の評価を気にしてしまうとか、ほんとに今どきはそうだよなぁと思わせる話ばかりなのだけど、
どれも微妙に読後感を引きずる感じの本だった。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。