あらすじ
PC上で輝く星(レビュー)だけが、進むべき道を照らしてくれる――。離婚して実家に戻った恵美は、母の介護を頼んでいるホームヘルパー・依田の悪い噂を耳にする。細やかで明るい彼女を信頼していたが、見る目がなかったのだろうか。動揺する恵美に、母が転んで怪我をしたと依田から連絡が入り……。ネットのレビュー、ブログ、SNS。評価し、評価されながら生きる私たちの心を鮮やかに描き出す6編。(解説・彩瀬まる)
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Posted by ブクログ
ここで日々星をつけている者にとっては、なんとも言えない気持ちになるタイトル。それだけに、刺さる部分の多い一冊でした。
なんといっても設定といい心理描写といい、絶妙かつそして鋭い。奥田亜希子さんの作品は初読でしたが、絶妙かつ鋭い今を切り取る感性と、それを生かした心理描写に感嘆した短編集です。
収録作品は6編。いずれもネットやSNSが話に関わってくる。そうした現在的なものを扱いつつ、そこから浮かび上がる人の普遍的な心理を鮮やかに描き切ります。
表題作『五つ星をつけてよ』は、ネットのレビューを読み込む女性が主人公。ある日自分の母の介護ヘルパーの悪い噂を耳にした彼女は……。
「五つ星をつけてよ」という感覚は自分にはよく理解できる。このサイトでもそうだけど自分がいいと思ったものが、ほかの人が低評価で、なおかつその低評価レビューにたくさん「いいね」がついてることがある。
『でも自分は面白かったから』と強がっても、心のモヤモヤは晴れない。
主人公は自分は好意を抱いているヘルパーさんの悪い評価を聞くにつけ、自分以外の誰かの物差し、肯定を求め「五つ星をつけてよ」と思うのだけど、身に覚えのある感情を場面を通して鮮やかに描いていて、非常に印象的だった。
他に印象的な短編だと多感な時期の少女を描いた2編『キャンディ・イン・ボックス』と『ウォーター・アンダー・ザ・ブリッジ』も良い。
高校の卒業式の日の女子高生の友情を描いた前者は、ある事実の隠し方と明かし方が上手く、そこから一気に彼女への共感の感覚が深くなる。
そして、語り手の少女が友人のある一面を知った時の感情の描き方の鮮やかさといい、青春小説として抜群に素晴らしい出来の作品。
後者の短編は、この時期特有の青臭さや、なんだか盛り上がってしまう感情と、それへのシニカルな描き方が好印象の短編。
上記三編は爽やかな印象が強い短編ですが、一方で苦みの残る後の三編も、それらとまったく遜色のない完成度。『ジャムの果て』で描かれる親子関係、「空に根ざして」の男女関係、そして『君に落ちる彗星』の閉塞感のあるそれぞれの人生の断片。
ネット、SNSと現代の道具を使い、今を生きる人の心理を鮮やかに切り取った、個人的に刺さるところの多い短編ばかりの一冊でした。
Posted by ブクログ
04
めっっちゃすき。
誰もが持ってて、でも隠している暗いところを
ちくちくと攻撃してくる。
全部好きだけど、読み終わって二週間経ってもタイトルも内容も覚えているのは キャンディインマイポケット、ジャムの果て、五つ星をつけてよ。
高校生の時、自分よりレベルの高い友達と一緒にいると誇らしさと劣等感があるよね。でも対等じゃないって思ってるから、一歩引いたりしたよね。
ジャムの果てはもうつらい。つらいからこそ心にすごく残る。最後裸足でどこに行ったんだろうか。
五つ星をつけてよ はもーーわかるわかる!
これだけ情報も物も溢れる世界で、自分の評価に自信がなくなって失敗したくないからレビュー参考にして
そしたら自分の意見に自信がなくなっちゃった。
最後、自分自身の評価を下せてよかった。
20200116
Posted by ブクログ
はじめの章からすごくよかった
人気者だから私と仲良くしてくれてる
いつのまにか自分が自分を低評価して行動をセーブしてしまう。
でも最後彼氏さんが自分のことを相手もすごく話してくれて考えてくれてたのすごくよかった。
どの章もよかった
周りの意見に流されそうになるけど
自分が感じたもの見たものを尊重したい
Posted by ブクログ
表題作の「五つ星をつけてよ」「ジャムの果て」「キャンディ·イン·ポケット」が好きだった
「キャンディ·イン·ポケット」の学年での人気者と自分を比べてしまう気持ちとても分かるな〜
思春期のめんどくささを思い出して懐かしい気持ちになった
6作とも他者と自己の評価について書かれていて面白かった
どんな人でも何につけ評価して、また評価されている
どうしようもなく比べてしまうのはまた仕方ないことなんだろうと思う
私も本のレビューは全然気にしないけど、家電のレビューは気にしてすごく調べてしまう派です…(◔‿◔)
Posted by ブクログ
私はこれから目を逸したくて桜蔭を受験したし、今は舞台の上の推しを追っているのかもしれない。どこまでも日常。痛いほどの日常。フィクションなんだけど、そこにドラマは無くて、ただただ日常。これを書ききれる、言語化しきれる作者さんはすごいなぁ…
Posted by ブクログ
PC上で輝く星(レビュー)だけが、進むべき道を照らしてくれる…。ネットのレビュー、ブログ、SNSなど、評価して評価されながら生きる人々の心を鮮やかに描き出す6編。
物を買うにも、お店の雰囲気も、小説や映画の善し悪しも、今じゃ全てが星次第。そこに自分の考えはないのかと言いつつも、こうやって星を付けてる自分がいる。何とも言えない世の中だが、匿名性が高い分、その評価には本音や真実が含まれていることも確かである。星を数えるのも見つけるのも自分自身である。本作の登場人物のように、自己を失わないことが大切だ。
Posted by ブクログ
「キャンディ・イン・ポケット」通学の30分間だけの友達。見た目も付き合う人も世界が違い、なんとなく一緒に登校してるだけなんだろなと思われていると感じている沙耶。控えめで内気な感情や憧れ。後半に向かい少しずつ感情が溢れ出していく鮮やかさ。後悔と喜びの間で揺れながらも前に進む沙耶が素敵。
「ジャムの果て」ジャムの描写がいい。気分のいい時には光り色鮮やかに、子供達への不満を感じた後には鈍くどろりと重たいようなものに。良かれと思ってたことが押し付けだと言われ今までの自分はなんだったのかという失望。ジャムとうまく絡み合って面白い仕上がり。
6編全てに人への想いや距離感や他人の肯定、自分自身への肯定と、こうだったはずという思いをなかなか消せない日常が描かれていて面白かった。
Posted by ブクログ
どこかで見たことある名前と思ってたら、すでに一冊読んでた方でした。
タイトルと装丁はポップで可愛いけれど、内容はきゅっとなったり、読んでて苦しくなったりしました。
携帯電話ができて、インターネットが普及して、
いろんな情報がダイレクトに届くなか、
情報に踊らされたり、その沼にはまってしまったり、
誰かから承認されないと満たされなかったり。
確かにショッピングサイトの評価を見て、購入を決めたりするし、ブログに反応があれば嬉しいし、いいねが、つけば嬉しいし。
でも渇望してる気持ちは満たされず。
他者の目、ことば、評価にさらされて
じゃあ自分はどうするのか。
改めて自分のいまの状況を考えさせられる一冊。
Posted by ブクログ
6篇の短編集。著者の「リバース&リバース」が面白かったので、他のも読んでみたくなって手に取りました。
「キャンディ・イン・ポケット」がいちばん好みだった。
主人公にはそこまで自分を卑下したり、へりくだらなくても、、、と思ったけれど、そうなってしまう気持ちもわかるから、原田先輩とのやり取りからのくだりは胸が熱くなって泣いた。
他の話も面白かったんだけど、余韻が残るほどはハマらなかったので星3つです。
Posted by ブクログ
感動!とか、おもしろかった!とか、後味悪く怖かった、とか、鮮明な感想をもたせない。ただ、胸にジュワッと何かが残る。作者の奥田さんはどんな意図で、この年代、性別、状況の違う人たちを描いたのだろう…。
母に五ツ星をつけてほしい感情は、自分にもある。バランスとって生きていきたいな〰️、という願望をもつ自分も奥田さんにかかると、闇や穴があるのかな。
Posted by ブクログ
久々のTぬオススメ本。ということで短編集。
う~ん、この本はジャンル付けが難しい。
自分なんかと思っている女子高生の話はちょっとわかるような気もしたけれど、
ジャム作りに没頭する母親にはウザイと思われるのも仕方ないとは思いつつ、それ以上にもう少し母親に優しくできないものかと思ったり。
まだ中学生なのに暴走してしまった女の子が母親になって自分が嫌っていた大人と同じようになっていたことを気づき、
娘と向き合うところなどは良かった。
どうしても人の評価を気にしてしまうとか、ほんとに今どきはそうだよなぁと思わせる話ばかりなのだけど、
どれも微妙に読後感を引きずる感じの本だった。