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東京焼盡
空襲に明け暮れる太平洋戦争末期の日々を、文学の眼と現実の眼をないまぜつつ的確に綴った日録。記録にして記録にあらず、百鬼園先生の詩精神が随処に横溢する稀有の東京空襲体験記。 -
猟奇歌 夢野久作歌集
何故に 草の芽生えは光りを慕ひ 心の芽生えは闇を恋ふのか わが胸に邪悪の森あり 時折りに 啄木鳥の来てたゝきやまずも *** 故郷・福岡で、のちに代表作となる幻魔怪奇探偵小説『ドグラ・マグラ』を執筆する合間――夢野久作が手帳に綴り、雑誌に発表した短歌連作「猟奇歌」。 発表以来、独自の言語感覚で静かに読者を魅了し続けてきたその本篇と、関連作品を初めて一冊にした文庫オリジナル。 〈巻末エッセイ〉寺山修司 【目次】 猟奇歌 [巻末資料] 日記より ナンセンス(随筆) 夢野久作の死と猟奇歌――吸血夢想男 「猟奇歌からくり」夢野久作という疑問符――寺山修司 -
江戸川乱歩トリック論集
探偵小説にとってトリックとは何か? 戦後、江戸川乱歩は海外作品を渉猟し、「なぜ小説を書かぬ?」と揶揄されながらも、独自のトリック研究に没頭した。 物理トリックは本当に出尽くしたのか。これからのミステリが進むべき道とは……。 多くの追随者を生んだ、全推理ファン必読の名篇「類別トリック集成」、およびその随筆版として自身が編んだ『探偵小説の「謎」』。ほか、乱歩のトリック論を精選し、初めて一冊に。 巻末に、トリック研究の只中に行われた横溝正史との対談「探偵小説を語る」(1949)を付す。 さらに、乱歩没後、松本清張指揮のもと研究を引き継いだ中島河太郎・山村正夫による「トリック分類表」(1969)を書籍初収録。 「類別トリック集成」という伝説を乗り越え、来たるべき探偵小説を模索するための、文庫オリジナル。 『江戸川乱歩座談』(中公文庫)に続く生誕130年記念刊行。 【目次】 1 類別トリック集成 2 探偵小説の「謎」 3 トリック各論・補遺:珍らしい毒殺の話/微視的探偵法/自動車と探偵小説 4 トリック総論:探偵小説のトリック/トリックを超越して/「謎」以上のもの/トリックの重要性/一人の芭蕉の問題/本陣殺人事件/探偵小説と子供心/創意の限度について/探偵小説の特殊性への執着/トリックについて 5 トリック分類表(中島河太郎・山村正夫)/探偵小説を語る(対談・横溝正史) 解説 新保博久 -
野生の棕櫚
「悲しみ(grief)と虚無(nothing)しかないのだとしたら、ぼくは悲しみのほうを取ろう。」 1937年――人妻シャーロットと恋に落ち、二人の世界を求めて彷徨する元医学生ウイルボーン。(「野生の棕櫚」) 1927年――ミシシピイ河の洪水対策のさなか、漂流したボートで妊婦を救助した囚人。(「オールド・マン」) 二組の男女/二つのドラマが強烈なコントラストで照射する、現代の愛と死。 アメリカ南部を舞台に、実験的かつ斬新な小説群を、生涯書き継いだ巨人、ウィリアム・フォークナー。 本作は、「一つの作品の中で異なる二つのストーリーを交互に展開する」という小説構成の先駆となったことで知られる。原著刊行(1939)の直後、ボルヘスによってスペイン語訳され(1940)、その断片的かつ非直線的な時間進行の物語構成により混沌とした現実を表現する手法は、コルタサル、ルルフォ、ガルシア=マルケス、バルガス=リョサなど、その後のラテンアメリカ文学に巨大な霊感を与えた。 他方、現代日本の小説にも、大江健三郎(『「雨の木」を聴く女たち』)や村上春樹(『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』)、叙述トリックを用いたサスペンス小説(連城三紀彦は本作を生涯の10冊に挙げている)など、本作の影響は数多見受けられる。 また、ゴダール(『勝手にしやがれ』)、ジャームッシュ(『ミステリー・トレイン』)における言及で本作を知る映画ファンも多いだろう。 その意味では、文学のみならず20世紀カルチャーにおいて最大級の方法的インパクトを与えた、世界文学史上の重要作にして必読の傑作だといえる。 その本作を、『八月の光』『サンクチュアリ』『兵士の報酬』などの名訳によって定評のある、加島祥造訳にて復刊する。 -
桃花源奇譚
不老不死の伝説が眠る郷・桃花源。その謎を解く鍵は、旅芸人の少女・宝春にあった。不死の力を求める者たちに狙われた宝春は、生き別れの母を探す貴公子・戴星、天命を与えられた秀才・希仁に救われる。三人の出会いは、国を揺るがす壮大な冒険の始まりだった。中華歴史ファンタジー、ここに開幕!(全四巻) -
日本語の技術 私の文章作法
文章術は泥棒に学べ!? ロングセラー『論文の書き方』の姉妹篇。 実践に役立つ文章修業の本道を説く、社会学者・ジャーナリストとしても活躍した著者による体験的文章指南。 日本語を知り、よい文章を書くための34の方法。 (以下、本文より) その中の或る文字、或る言葉、或る文章を大変に好きだと思い、反対に、その中の或る文字、或る言葉、或る文章を非常に厭だと感じるような人、そういう人は、立派な文章が書ける素質のある人だろうと思います。 実際に、その人の文章と瓜二つのような文章を何篇も書いてみることです。これが文章修業の本道で、それ以外に道はありません。一にも真似、二にも真似、三にも真似です。 * 締切という時間的限定、枚数という空間的限定、この二つの限定が曖昧なのが研究室の特色で、それと反対に、この二つの限定が厳格なのがジャーナリズムの約束です。 文章を修業するのには、自分で締切と枚数とを厳重に定めて、これを自分に課するという方法をお勧めしたいように思うのです。 * 文章というのは一種の建築物だと考えています。大きな論文はビルディングのようなもの、小さな文章は交番のようなもので、文章が建築物であるならば、それを作るのには、どうしても、設計図がなければなりません。 正確な設計図を用意せずに、文章を書き始めたら、論旨不明の文章が出来上るのは全く当然のことです。 -
書きあぐねている人のための小説入門
小説を書くときにもっとも大切なこととは? 実践的なテーマを満載しながら、既成の創作教室では教えてくれない、新しい小説を書くために必要なことをていねいに追う。 読めば書きたくなる、実作者が教える〈小説の書き方〉の本。 著者の小説が生まれるまでを紹介する、貴重な「創作ノート」を付した決定版。 -
『夫の墓には入りません』〈『嫁をやめる日』を改題〉
ある晩、夫が急死。これで嫁を卒業できると思いきや、舅姑や謎の女が思惑を抱えて次々押し寄せる。“愛人”への送金、墓問題、介護の重圧……がんじがらめな夏葉子の日々を変えたのは、意外な人物と姻族関係終了届!? 婚姻の枷に苦しむすべての人に贈る、人生逆転小説。『嫁をやめる日』を改題。 さだまさし氏 熟読&痛感! 「人生の荷物が多ければ多いほど、この本は笑えて泣けて、ホッとする。」 夫が亡くなった時点で、自分は誰の妻でもなくなり、晴れて自由の身だと思っていた。 だが、どうやら違うらしい。今もこれからも「高瀬家の嫁」なのだ。それも、夫が生きていた頃より、もっとずっと明確に。 (本文より) -
天盆
「誰かのために戦う奴に勝てるわけがない」 蓋の国を動かすのは、盤戯「天盆」を制した者。人々は立身を目指し研鑽に励むが、長い間、平民から征陣者は出ていない。 そんな中、貧しい十三人きょうだいの末子・凡天が激戦を勝ち進み――少年が歴史に挑む時、国の運命もまた動き始める。 圧倒的疾走感で描き出す放熱ファンタジー! -
肉食の思想 ヨーロッパ精神の再発見
欧米人は、なぜ動物をと畜して食う一方、動物を愛護するのか? 本書は、ヨーロッパ思想の原型を、歴史的・地理的条件に由来する食生活の伝統に求め、それに基づき形成された思想的伝統を明らかにし、日本とも比較しながら平易に説く。食という新しい視点で西洋の歴史を見直す、西洋史学究の問題作。 -
死にがいを求めて生きているの
誰とも比べなくていい。 そう囁かれたはずの世界は こんなにも苦しい―― 毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年TVディレクター。交わるはずのない彼らの痛みが、植物状態の青年・智也と、彼を見守る友人・雄介に重なるとき、歪な真実が露わになる。自滅へひた走る若者たちが抱えた、見えない傷と祈りに触れる物語。 文庫版特典:特別付録/本作と螺旋プロジェクトに寄せて 解説/清田隆之 【電子版巻末に特典QRコード付き。〈螺旋プロジェクト〉全8作品の試し読みを読むことができます】 ※〈螺旋プロジェクト〉とは―― 「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画 〈螺旋〉作品一覧 朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(本作) 天野純希『もののふの国』 伊坂幸太郎『シーソーモンスター』 乾ルカ『コイコワレ』 大森兄弟『ウナノハテノガタ』 澤田瞳子『月人壮士』 薬丸岳『蒼色の大地』 吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』 -
マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白
日本経済復活のフィクサーか? 廃れゆく伝統文化の守護神か? 天才ハッカーvs.金融資本主義 イランの核施設破壊プロジェクト「オリンピックゲーム」にもCIAの情報職として参加した経験を持つ天才ハッカーの黒木が、和歌山の世界遺産・熊野古道の中辺路に現れた。伝統工芸を研究する大学院生・柴田澪と出会った黒木は、彼女をある試みに誘う。彼はそれを「実験だよ、金融資本主義に抗うための」と嘯くのだが――。黒木は、金融市場が拡大し続ける世界を相手に、何を目論んでいるのか? 現在を分析し未来を予見する、興奮の知的エンタメ巨篇。 【目次】 稲妻 気前のいい客 長い長い夜 夜明けの柴田 ツタエテ TSUTAE‐TE チャンス! 神々の黄昏 また逢う日まで あとがき -
たそがれてゆく子さん
男が一人、老いて死んでいくのを看取るのは、本当によかった。 夢に見た専業詩人の生活、ぽっかりとした自由。 もんもんと考え、るると書く。 カリフォルニアのキャニヨンを犬どもを従えひたすら歩く。 料理や洗濯は、しないことにすぐ慣れた。 山賊のように台所で立って食べた。卵ばっかり食べていた。 ひとりの肩にのしかかるローンに光熱費、熊本地震、石牟礼道子さんのこと、末っ子の結婚、 そして……日本に帰ろう。 「みんなホルモンのせいでしたと、今は言い切りたい」―― 女のための戦記『閉経記』から五年。 書くことで生き抜いてきた詩人の眼前に、今、広がる光景は。 -
昭和23年冬の暗号
昭和二十三年十二月二十三日、東條英機をはじめA級戦犯が処刑された。なぜ皇太子明仁の誕生日、のちの「天皇誕生日」が選ばれたのか。そこにアメリカが仕掛けた「暗号」から敗戦国日本の真実を解き明かす、『昭和16年夏の敗戦』完結篇。 再刊にあたり書き下ろし論考「予測できない未来に対処するために」を収録。 〈解説〉梯久美子 (『ジミーの誕生日』『東條英機 処刑の日』改題) -
昭和16年夏の敗戦 新版
日米開戦前夜。平均年齢三十三歳、全国各地から集められた若手エリート集団が出した結論は「日本必敗」。それでも日本が開戦へと突き進んだのはなぜか。客観的な分析を無視して無謀な戦争に突入したプロセスを描き、日本的組織の構造的欠陥を暴く。 石破茂氏との対談、新版あとがきを収録。 -
女と文明
「男と女の、社会的な同質化現象はさけがたい」――今や当たり前にも思えることを六十年前に民族学者の立場から徹底的に論じた梅棹忠夫。発表するや賛否両論の大反響を巻き起こした「妻無用論」「母という名のきり札」を含む慧眼の書。有賀薫氏、酒井順子氏、花田菜々子氏推薦。 〈解説〉上野千鶴子 【目次】 まえがき 女と文明 アフガニスタンの女性たち タイの女性たち 家庭の合理化 妻無用論 母という名のきり札 家事整理の技術について――家事整理学原論Ⅰ すてるモノとすてられないモノ――家事整理学原論Ⅱ あたらしい存在理由をもとめて 女と新文明 情報産業社会と女性 『女と文明』――追記 解説 「妻無用論」から半世紀をへて 上野千鶴子 -
日本語びいき
「させていただく」は丁寧か、馬鹿丁寧か。「先生」の読み方は本当に「センセイ」? よく知っているつもりの言い回しも、日本語教師の視点で見るとこんなにおもしろい! ヨシタケシンスケさんの、クスッと笑える絵とともに、身近な日本語のもうひとつの顔をのぞいてみませんか? 【『日本人の日本語知らず。』を増補改題】 目 次 まえがき 1 日本語は難しい、か? 2 ところでひらがな、ぜんぶ読めてます? ほんとに? 3 しつこいようですが、ひらがなはエライ! 4 らぬき、れたす、さいれ 5 ナウい人とナウな人、どっちがナウ? 6 品詞の谷間 7 お茶が入りました。 8 日本語はあいまい? 非論理的? 9 みなまで言うな。 10 米洗ふ前を螢の二ツ三ツ 11 私はこれでやめました。 12 ウチ向きな日本の私 13 ウチとソトの交流 14 しぇんしぇー、ちゅくえ 15 ありますですかそれともありますですか? 16 ててったってっ。 17 トンネルを抜けると鴨川でマスオさんが 18 飾り飾られ 19 4番の、カードを、お持ちの、お客さま 20 先生はとても上手に教えました。ありがとうございます。 21 お~星さ~ま~ギーラギラ♪ 日本語は美しい。――あとがきにかえて 文庫版あとがき -
十六夜荘ノート
英国でこの世を去った大伯母・玉青から、高級住宅街にある屋敷「十六夜荘」を遺された雄哉。思わぬ遺産に飛びつくが、大伯母は面識のない自分に、なぜこの屋敷を託したのか? 遺産を受け取るため、親族の中で異端視されていた大伯母について調べるうちに、「十六夜荘」にこめられた大伯母の想いと、そして「遺産」の真の姿を知ることになり――。誰も信じず仕事だけをしてきた雄哉に託された「想い」とは――? 文庫化を望む声多数! 古内一絵の人気作が登場! -
馬の世界史
馬は、人間社会のなかで、多種多様な役割を担わされてきた。太古には狩猟の対象になり、やがて車を引き、人を乗せ、人間の世界に深く入りこんだ。人が馬を乗りこなさなかったら、歴史はもっと緩やかに流れていただろう。戦争、交易、世界帝国……、馬から歴史を捉え直す。JRA賞馬事文化賞受賞作 -
幕臣列伝 新装版
2027年NHK大河ドラマは「逆賊の幕臣」。 主人公は小栗上野介忠順。 激動の国際情勢に投げ出された落日の幕府を担い、時代と格闘した小栗忠順はじめ幕府官僚たちの姿を余さず描く、直木賞作家による決定版人物評伝! 開国を迫る黒船と攘夷の嵐に揺らぐ徳川政権を、海防・外交に自己の才幹を賭けて必死に支えた俊英たち。 幕末のテクノクラートの苦渋の生涯に、近代日本の胎動を追う。 〈目次〉川路聖謨/堀織部正/岩瀬忠震/条約勅許と幕臣/遣外使節と幕臣/池田筑後守とフランス/栗本鋤雲/西周/小栗上野介/勝海舟と榎本武揚/福地桜痴と成島柳北/ある〈幕臣論〉 〈解説〉砂原浩太朗 -
あのころのパラオをさがして 日本統治下の南洋を生きた人々
1920年から終戦まで日本の統治下にあったパラオ。 そこには南洋庁という役所が置かれ、 作家の中島敦をはじめ、日本から移り住む者も多かった。 「楽園」と呼ばれた島で、日本人移民と現地島民が織りなす 暮らし、そして「戦争」のリアルとは――。 各地で拾い集めた、80年前の「日常」の証言。 植民地支配の歴史を、そこに暮らした人々の視点から 見つめなおすルポルタージュ。 〈巻末対談〉中島京子 -
小泉今日子書評集
2005~14年『読売新聞』に掲載された書評、97本を収録。 久世光彦が「その本が読みたくなるというところが、何よりもすばらしい」と称えた、すぐれた読書案内であるとともに、文章からその時々の著者の心象風景が浮かび上がり、エッセイ集としても楽しめる一冊。 特別インタビュー「読書委員の十年間を振り返って」も収録。 -
世界怪奇実話傑作選
・三つの筆名を使い分け、わずか35歳で忽然と世を去った伝説の作家、長谷川海太郎=牧逸馬。 ・「中央公論」に連載された代表作を精選。愛好家必読のミステリー百科。 ・著者は、1928年、中央公論社の特派員として、1年3ヵ月に及び欧州に滞在。ロンドンでは、中央公論の潤沢な資金を用いて、街一番の古書店にある、あらゆる怪奇事件を伝える資料を買い占めたと伝えられる。 ・帰国後、この資料をもとに執筆されたのが、「牧逸馬」名義の代表作となった「世界怪奇実話」である。 ・『中央公論』1929年10月号~1933年3月号連載。全33話。1930年~32年に順次書籍化されるが、単行本としては未完。 ・本書は、島田荘司氏が、本連載から「ミステリー百科」的要素を持たせたいと14編を精選。1)短篇小説として読める。2)その出来具合、面白さの度合い。3)ミステリー教養的な意味合いで、事件の客観的重要度。以上の観点からセレクトしたもの。 ・本書の編集にあたって、各編のタイトルは、事件に寄せたものに一部変更。 ・事件の同時代に現地に居合わせた作家によるドキュメントとしても貴重。 ・2003年、島田荘司編『牧逸馬の世界怪奇実話』として刊行されたものを改題した。 -
猛き朝日
彼が幕府を開いていたら、のちの「戦国の世」は訪れなかったかもしれない。 源頼朝の好敵手かつ優れた軍略家として大河ドラマでも人気――悲運の義将・木曾義仲の鮮烈な31年を描いた、第11回野村胡堂文学賞受賞作。 平安末期。12歳の少年・駒王丸は、信濃国木曽の武士・中原兼遠の養子として、自然の中でのびのびと育つ。彼は父と母の名も自分が何者なのかも、いまだ知らずにいた。 ある日、駒王丸はささいなきっかけから、同じく信濃の武士の子・根井六郎と喧嘩になる。だが、同等の家格であるにもかかわらず、六郎と根井家当主が後日謝罪に訪れる。二人は畏れ多そうに深々と頭を下げて言う。 「駒王丸殿はいずれ、信濃を束ねる御大将となられる御方」 初めて知る実父の存在、自らの壮絶な生い立ち。駒王丸、のちの木曾義仲の波乱の生涯が始まろうとしていた。 類い希なる軍略で平家を破り、男女貴賤分け隔てない登用で源頼朝・義経より早く時代を切り拓いた源氏の嫡流。「朝日将軍」義仲の波瀾万丈な生涯を描いた傑作歴史巨編。 「彼の一生は失敗の一生也。彼の歴史は蹉跌の歴史也。彼の一代は薄幸の一代也。然れども彼の生涯は男らしき生涯也」――芥川龍之介(「木曾義仲論」より) 【目次】 序 章 法師 第一章 駒王 第二章 巴 第三章 戦雲 第四章 決起 第五章 源氏 第六章 前夜 第七章 死戦 第八章 魔都 第九章 落日 第十章 残照 終 章 余光 -
フーコーの振り子
「あの陰謀は本当なんです…殺されるかもしれない」 乾いた銃声とともに電話は切れ、助けを求める友人ベルボが失踪した。行方を追うカゾボンは、フーコーの振り子を抱くパリ国立工芸院に向かう。 テンプル騎士団の秘密にまつわる原稿が持ち込まれたミラノの出版社で、3人の編集者たちは錬金術や歴史の陰で囁かれてきた「陰謀」に引き寄せられていく。 カバラ、錬金術、グノーシス、薔薇十字、古代の超大陸から現代イタリアまで、古今東西の知識や伝承、オカルトや奇想が引用された博覧強記の冒険的ミステリー。 記号学の世界的権威であり、中世史については専門家をしのぐ著者が著した畢生の大作、待望の復刊。 巻末に、訳者による作品紹介『「語り」と「騙り」の見分け方――「フーコーの振り子」のメッセージ』を収録。 【全3巻】 -
詩文集 夜の酒場
【萩原朔太郎生誕140年記念企画】文庫オリジナル作品集 わがよき心の友等は、多く街頭の酒場にあつまる――。萩原朔太郎 酒は人間と同じように、無邪気で天真爛漫である――。酒場と孤独を愛した詩人の酒をめぐる詩・短歌・アフォリズムを初集成。そのほか一九二〇年代の時代風俗を伝えるラジオ、映画、旅、東京等をテーマにした随筆二十篇、短篇小説「猫町」他一篇を収録する。 〈巻末附録〉江戸川乱歩・伊藤信吉ほか 【目次】 Ⅰ 詩人と酒 酒に就いて *詩6篇と短歌 夜の酒場/酒場にあつまる/宿酔/乃木坂倶楽部/珈琲店 酔月/虚無の歌 *アフォリズム Ⅱ 孤独者の独語(随筆20篇) *自身 孤独者の独語/永久の放蕩/ダンヂイズムについて *四季 秋と漫歩/冬の情緒/春と抒情詩/夏の日記 *旅 石段上りの街/天城・下田/大島行 *趣味と娯楽 ラヂオ漫談/映画漫談/映画随想/ダンスの弁/弁明一件/僕の写真機 *東京 移住日記/浅草/悲しい新宿/動物園 Ⅲ 猫(短篇小説2篇) ウォーソン夫人の黒猫/猫町 巻末附録 「猫町」(江戸川乱歩)ほか -
江戸一新
首都焼失――その時、幕閣のトップは何をしたか? 明暦3年(1657)1月、江戸が燃え尽きた――。「明暦の大火」である。 日本史上最大、世界史的に見ても有数の焼失面積と死者数を出したこの大惨事からの復興に立ち上がった男がいた。代官の息子に生まれながら、先代将軍・家光の小姓から立身出世を遂げた老中・松平伊豆守信綱。その切れ者ぶりから〝知恵伊豆〟と呼ばれた信綱は、町奴の長兵衛に現地調査を命じながら、「江戸一新」に乗り出した。 叩き上げの天才政治家が老中会議で熱く議論し即決、遅滞なく推し進めたのは、現代の東京に繋がる「大江戸」への建て替えだった。 目 次 第一章 大火発生 第二章 復興開始 第三章 米の値段 第四章 復興景気 第五章 抗 争 第六章 大移動 第七章 討ち入り 第八章 遷 都 〈解説〉内田剛 -
竜血の一族
北の鉱山を舞台に、圧倒的筆致で綴られた哀切な昭和ロマン 昭和13年、北海道東部――鉱山技師の那須野寿一は、巨大な水銀鉱床と地図にない村を発見する。〈フレシラ〉という名のその集落には、謎めいた一族が暮らしていた。 鉱夫となったフレシラの若者アシヤ。寿一の息子で、水銀に魅せられた源一。太平洋戦争、朝鮮戦争特需、水俣病の公害問題……昭和の動乱に翻弄された二人の青年と数奇な一族の波瀾万丈を描く、壮大かつ幻想的な大河ミステリー。『竜血の山』改題。 【目 次】 第一章 赤い岩 ―昭和13年 第二章 水飲みたち ―昭和17年 第三章 不死身の鉱夫 ―昭和18年 第四章 冷たい山 ―昭和24年 第五章 ある母子 ―昭和26年 第六章 人間の血 ―昭和34年 第七章 湖底 ―昭和38年 第八章 飛ばない鳥 ―昭和39年 第九章 きらめく水のほとり ―昭和43年 〈巻末対談〉今村翔吾×岩井圭也 -
完本 新釈落語噺
太宰治『お伽草子』に感動したという家元が「諸々の咄のあちこちに疑問を投じて、新たな解釈」を試みた。 「粗忽長屋」「寿限無」「死神」「子ほめ」などの古典を分析しつつ、「落語はイリュージョン」論を見出してゆく。 落語とは何かを全身全霊で考え続けた噺家とたどる、至福の45席。 〈解説〉太田 光(爆笑問題)/吉川 潮/広瀬和生 立川談志生誕90年 【目次】 新釈落語噺 その一 前口上 第一席 粗忽長屋 第二席 欠伸指南 第三席 片棒 第四席 湯屋番 第五席 疝気の蟲 第六席 だくだく 第七席 長屋花見 第八席 胡椒悔やみ 第九席 化け物使い 第十席 寿限無 第十一席 宿屋の仇討ち 第十二席 鉄拐 第十三席 桃太郎 第十四席 寝床 第十五席 死神 第十六席 孝行糖 第十七席 按摩の炬燵 第十八席 文七元結 第十九席 つるつる 第二十席 妾馬 後口上 新釈落語噺 その二 前口上 第二十一席 あたま山 第二十二席 小言幸兵衛 第二十三席 饅頭怖い 第二十四席 真田小僧 第二十五席 西行 第二十六席 不精床 第二十七席 黄金餅 第二十八席 かつぎ屋 第二十九席 明烏 第三十席 堀の内 第三十一席 狸 第三十二席 居残り佐平次 第三十三席 品川心中 第三十四席 千両みかん 第三十五席 半分垢 第三十六席 釜泥 第三十七席 手紙無筆 第三十八席 三方一両損 第三十九席 代わり目 第四十席 洒落小町 後口上 新釈落語噺 その三 前口上 第四十一席 のめる 第四十二席 初音の鼓 第四十三席 ずっこけ 第四十四席 備前徳利 第四十五席 子ほめ 後口上 解説 太田光(爆笑問題)(『新釈落語咄』より再録) 吉川潮(『新釈落語噺 その2』より再録) 広瀬和生(書き下ろし)
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