小学生の頃から大好きな作家さんです。あのポプラ社のレトロ怖い表紙(笑)な少年探偵シリーズを、図書室で何度借り続けた事か。懐かしい~。若かった…←
推理・怪奇・幻想・グロテスク・エロティックなど色々なイメージが浮かぶ、大正から昭和期の作家さん。こちらの本は多数の作品を残している中の一つ、短編、中編を収録している名作選です。
江戸川乱歩と言えば、名探偵・明智小五郎や怪人二十面相、少年探偵団の小林少年などが登場する作品が有名で、メディア化も多数されており、特に少年探偵シリーズは子供も読める作品としてのイメージがあるかもしれませんが、この方の書かれる大人向けの作品も独特の面白さがあり、強く惹き込まれます。読みやすく、わかりやすく、グイグイ引っ張られる吸引力のあるストーリー。先が読みたくなる高揚感高まる文章の巧みさが魅力。あっという間に読める。
幾重にもかけられたトリック、大どんでん返しもさる事ながら、全てに潜む『人間の異常心理と狂気』がゾッとさせられながらも病みつきになる、味のある作品。
結構グロイ描写のものもあるので、苦手な方もいらっしゃるかと思います。でもグロイの苦手な私ですが、乱歩作品は結構読める。っていうかゲームや映画や漫画なんかはそういうの苦手なのに、小説だと耐性がついてる謎(笑)。あ、でも『蟲』とか『盲獣』は更にグレードアップできつかったような。もう随分昔に読んだのでほぼ記憶がうすら。←憎き老化!(せいにすんな)。こちらに収録の『踊る一寸法師』もですが、こちらは生理的に嫌悪感を覚えるやも。まあ無理無理ー!ならば短編なので飛ばしても…。いや読んだけど(笑)。挑戦も良いものですよ。駄目だったとしても。←何のフォローでもないがな。
この7作品中、一番読後が良かったのは『押絵と旅する男』。走る汽車の中で出会った、押絵を持つ男から語られる話。それは現か幻かも不明瞭な、不思議な幻想空間へと誘われます。異様さも含みながらどこか柔らかさを感じるのは、そこに確かな愛情を感じるからかな、と。
『目羅博士』『白昼夢』『踊る一寸法師』などは今でわかりやすく例えるなら『世にも奇妙な物語』と言えば馴染が良いのかも。
でも話の完成度は圧倒的に乱歩。映像で補える視覚、聴覚をもたらさずして文章だけでゾッと肌を粟立たせる人の狂気と残虐さ、陰湿さを与えてくる。心霊現象よりも何よりも、一番恐ろしいのは人間の持つ狂った部分ではないのかと、それをまざまざと見せつけられるようでした。特に『踊る一寸法師』は読後悪いったらなかったです。これはかなり酷い内容なので好きではないんですけどね。
『人でなしの恋』は…何か何だかなぁ…言葉もなく唸ってしまう。何が誰が悪い?って、そらめっちゃ悪いけどね?どっちもこっちも悪いんですよ。悪いけども…うーっ!と唸りが(動物ですか)。何とも言えない女の恋情の果ての哀れさがありました。こんな恋情は一生持ちたくないなぁ。
『柘榴』はですね、何かめっちゃ好きなんですよ。この真犯人、本当酷いし悪いし狂ってるし殺し方なんて凄惨だし、何も悪くない身近なある人に関しては、気の毒なくらい一番可哀そうな扱いなんですけど、この真犯人のもう一面にある決して揺るがないものがね、男の魅力と色気を感じてしまう。人としては完全壊れているのにね。ラストなんか狡い男だなって思います。全部持って行ったぞこの男!って。とんでもない殺人犯であるのに、うっかりある部分に置いては良い男だ…などと、ちらっと、ちらーっとかすめてしまう。悔しい(笑)。
そして『陰獣』。収録作品の中でも一番長いんですけど、このトリックに次ぐトリック、どこまでいったら真犯人にいきつくのか、どいつもこいつも(←)狂いまくってる上にサディスティックもあればマゾヒズムもあり、エロティックもありの推理と絡み合う人間の心理と、全てが上手く融合されている作品です。凄く先が楽しみで、ゾクゾクとワクワクが押し寄せてくる物語。
こちらを読み終わった後に映画版と明智小五郎の美女シリーズ版の陰獣もU-NEXTで観ましたが、やっぱり原作が最高です。
乱歩自身に似せた、人嫌いの怪しい作家が出てくるのも面白いんですけど、その存在の濃さと同時にはっきりしないあやふやさもまたそそられる展開でした。
畳みかけるスピードと艶と醜さに、にやついてしまう(変態か)。
でもやっぱり一番心に残ってるの柘榴の人です。