江戸川乱歩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレものすごく面白くて、読むのが止まらなかった。読み終わった後は、パッとせず、スッキリしない、心持ちがモヤモヤするそんな終わり方だった。
しかし、伏線や読んでいた最中にあった謎は全て綺麗に解き明かされているから、面白い!
まず、諸戸の蓑浦に対する愛情が強烈的で驚いたな。この作品は同性愛があるからこそ、より面白く異常な雰囲気になってるんじゃないかと思う。
恋人である初代を殺された蓑浦がその仇として復讐を実行するだけではなく、そこに諸戸の異常な蓑浦への同性愛的な恋愛を入れることによって、より世界観がドロドロと奇妙なものになるんじゃないかと…。
この小説の最後の「道雄は最後の息を引取る間際まで、父の名も母の名も呼ばず、ただあなた様の手紙を抱きしめ、あなた様のお名前のみ呼び続け申候」でもあったように、僕は蓑浦に対して、冷たい人だなぁと思った。蓑浦は事件解決のために諸戸の知能や行動力を頼り、時には無意識に甘えている。異性愛者である蓑浦にとって、諸戸の好意はどこまでいっても「理解を超えた重荷」でしかない。あれほどまでに蓑浦のことを愛している諸戸の愛を少しは受け止めてやっていいじゃないかと…。
けれど、実際そこが難しいもので…この小説はある意味現実的だと思う…。読者が「諸戸と蓑浦くっつけよ…」と思うのは当然だが、実際は同性愛者じゃなければそれは難しいことだ。どんなに尽くされても、同性同士の恋愛は生理的に無理な人だっている。ハッピーエンドを与えず、読者が気持ちよくなるように書いていない、人間の生々しい部分だけを残しているこの作品が好き。
しかし、諸戸は可哀想だなぁ…まぁしょうがないのか。
探偵役である深山木幸吉が殺されてしまう。探偵がまさかの序盤から殺されてしまうことにかなり驚いたな。
初代を殺した少年軽業師の友之助くん。チョコレートで釣られて事情を話したのが可愛かったけれど、それもすぐにピストルで殺されてしまって、かなりショックだった。
双生児の秀ちゃんと吉ちゃん。秀ちゃんの雑記帳がかなり重い…。読んでいて、1番きつかったのはここかもしれない…。地獄のような世界でいた秀ちゃんは、助け出してくれた蓑浦と将来共に過ごして、幸せな生活を送れることを願う…。
諸戸は蓑浦に異常なほど執着していたし、怪しい研究をしていたから、最初はこいつが犯人なのではないかと思ってしまったが、そんな諸戸もかなりの酷な被害者であった。それだから余計に最後まで真の幸せになることができなかった諸戸に同情してしまう。
洞窟のところもかなり面白くて、読んだら止まらなかった。
主人公蓑浦もその恋人の初代さんも諸戸も、犯人の丈五郎以外の人たちがただただ可哀想だった。
江戸川乱歩の作品を読むといつも思う。乱歩、人の心とかないんか…。(だがそこがいい。)
いやー、にしても青春だなぁ…って思ってしまうな。僕も洞窟冒険してみてぇ……
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Posted by ブクログ
ネタバレ『断崖』、「おとなだってそうよ。どんな苦しみにあえいでいる時でも、その中で遊戯している、遊戯しないではいられない」が印象深い。
ラストの「夕日は大空を焼き、断崖の岩肌を血の色に染め」と「女の姿は/人形とように可愛らしく」の対比にゾクゾクした。その直後の「つぶらな目は、大空を映して異様に輝いていた」も印象的。毒々しい空の色に目を輝かせるヒロイン……。まだ殺したりなさそう。これも「遊戯」ってやつか。
『屋根裏の散歩者』や『心理試験』も、この「遊戯」的な側面がある気がする。
『目羅博士の不思議な犯罪』の一文「何の動機がなくても、人は殺人の為に殺人を犯すもの」というのも、この「遊戯」とよく似ている気がする。
「遊戯」的側面への言及は解説にも。「世の中とうまく交われないんですよ。乱歩はまた、そういった、自尊心ばかりが強くて、そのくせ人間関係はてんで苦手で、だから人間が嫌いで、でも本当は人と接したくて/ついに見つけた方法が、一般の社会では犯罪と呼ばれるものだった」
誰もが犯罪者になり得る。金のためとか怨恨ゆえとかだけでなく、退屈や興味、遊戯など、理由は色々。だからこそ人間は恐ろしい。でも少なくとも小説の題材としては、これほど面白い生き物はいない。
人間とは不思議な存在だ。 -
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ネタバレ柘榴
すっごく面白かった。やっぱどんでん返しがいいね。どこも驚くところばっかりだった。硫酸殺人事件…名前からしてもかなり怖い……。全ての行動に意味があって、ラストもまさかの展開で面白かった。警察の考えることよりも先の先を読んで犯行する、読んでいて自分の予想の斜め上にいったものばかりでよかった。
人でなしの恋
面白かった。人形に恋をするのは理解し難いけど、妻を愛そうと努力しても愛せない夫は妻に直接ひどいことはしてないみたいだし、夫も夫なりに普通になりたいと努力をしていたのかも。根本的な悪いやつではないから、そこが難しい。人形を壊されただけで、自分の命までも絶ってしまうのは、彼なりに生きる理由がその人形にあったんだろうな。
人形の声はもちろん夫が出してるみたいだから「あなたのような美しい方に…」って自分で言ってたけど、自分の美しさは自覚してて面白い。
白昼夢
不気味で怖かったぁ…大好きな美しい奥さんを屍蝋にしてしまうなんて…思いもつかないよね。
踊る一寸法師
グロくて怖い、復讐劇。最初のいじめのところはかなりひどくて不快な気分にならざるおえなかったけど、最後の復讐も怖い。テントに火をつけるが、火がある中でも、酒に狂って笑う人々。全てが狂気的なシーンばかりだった。今の時代ではあんな作品作れないな。そういう思考ができる乱歩に恐怖を感じる…
陰獣
とてつもなく、もうすっごく面白かった!色々とカオスだし、怖いし、でも面白いし!乱歩の作品をたくさん読んできた人からしたら、特に面白いかも! -
Posted by ブクログ
切ない。紛れもない怪奇小説であると同時に、世間の普通の基準から外れた人々への乱歩からのラブレターであるようにも感じた。
特筆すべき点は、当時は性的倒錯者としてみなされていた同性愛者が、多面的で魅力的なキャラクターとして物語の中心人物を担うところにあると思う。
本作には奇怪な身体的障がいを持つ人々が登場する。
そして見た目で判別できないとしても、同性愛者は同じように嫌悪の対象だったという描写がある。
そんな立場である諸戸が探偵役として華麗な推理を見せることで、世間の偏見との間に齟齬が生まれ、必然的に他の“はぐれ者”たちに対する偏見を薄れさせる。
所謂奇形の人々が読者を恐怖させるための道具としてではなく、尊ばれるべき人間として描かれているところが怪奇ジャンルとして新鮮に感じた。
なぜ諸戸が箕浦にそこまで惚れ込んだか最後まではっきり説明されないのが個人的に好きなポイント。
なぜなら読んでいる側にはきっちり伝わっているから。
諸戸に迫られても関係を切ったりせず友人として大切に扱い続け、障がい者の秀ちゃんと恋に落ち、恋人を殺した少年にすら同情できる。
言わば心がめちゃめちゃ綺麗。
しかも本人は全く自覚してないっぽいので罪な男だ…。この人たらし!
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Posted by ブクログ
ミステリーや探偵小説が嫌いなわけでも苦手なわけでもないのですが、何も考えずにパーっと読み進めてしまうせいであまり推理を楽しみきれなくて普段はあまり読まないんです。
でも乱歩は、「読者諸君はお気づきだろうか」とか「ここまで読んだ諸君はもうお分かりだろうが」とたまに読者に語りかけてくるので、何か見落としているのではと慌ててページを戻ってみたりして、自分も推理に参加しているような気持ちになれる。
そして文章から漂ってくる独特の不気味さ。
これから何が語られるのか、どう終わるのか、最後まで気になった。
「心理実験」が好き。
それでもやっぱり推理ものより印象に残ったのは「芋虫」。
言葉にしにくい重苦しさはあるけれど、人間の愛情や欲望について考えさせられた。
歪んでいってしまった夫婦の間にも、それまで築いてきた愛や絆が間違いなくあったこと最後に感じられて、後味の悪いだけの作品では終わらない魅力があった。 -
Posted by ブクログ
傑作選と名作選で、はじめして乱歩さんからすっかり虜になってしまった…。
名作選では、人でなしの恋が好きだったかなぁ。目羅博士に出てくる表現や、陰獣の最初の方に出てくる表現が全く素敵すぎて、ミステリしたくない!と思いながら乱歩の世界にハマっていました。
また読み返したくなる本だなぁーと感じています。
全集集めたいので、またどこかで、今回出会った短篇、中篇と再開したいです。
何故か、コナンくんのイメージが強くて子供向けだと長年読んでこなかった自分……!!勿体ない!!
まぁ、これから全部読むから良いか。
ほんとに楽しい読書時間を過ごせました! -
Posted by ブクログ
『江戸川乱歩傑作選』に続けて読んだ。
『傑作選』と比べるとやや大人しい印象。しかし『石榴』、『押絵と旅する男』、『陰獣』は乱歩の魅力が発揮されていて、本書も読み応えのある内容だった。
特に『石榴』と『押絵と旅する男』はどちらも余韻がすごい。『石榴』は『ニ癈人』的なストーリー展開だが、終わらせ方が鮮やかで素晴らしかった。『押絵と旅する男』はこれぞ怪奇譚、夢のような読書体験ができる。この二作だけでも、本書を買って良かったと思える。
大人しい印象の原因としては、この並びだと『目羅博士』は少し物足りなく感じる。月光の妖術を題材にした話だが、肝心のトリックが説得力にやや欠けているように思えた。『人でなしの恋』も佳作ながらもどこか滑稽に感じるのは、乱歩得意の奇人の描写が少ないからだろう。
また、『踊る一寸法師』はエドガー・アラン・ポーの『Hop flog』から着想を得たのだと思うが、西洋の宮廷を日本の見世物小屋に置き換えていて、不気味さはそのままによく出来ていると思う。エドガー・アラン・ポーを先に読んでいたのでどうしても既読感があったが、『Hop flog』 を読み返してみたら結構違ったので、興味のある人は読み比べると面白いかもしれない。
最後が『陰獣』なのは素晴らしい。『陰獣』は手塚治虫のスターシステムばりに、江戸川乱歩の過去の作品が出てくる。多くの代表作を持った人気作家でないと使えない手であり、この時代にメタ的な(本人は楽屋落ちと評しているが)アイデアをここまでうまく使っている作品も他に例がなさそうである。ストーリーも読者を飽きさせない仕掛けがこれでもかと組み込まれていて、(苦心も伺えるが)最後まで楽しく読んだ。タイトルからはエログロを連想させるかもしれないが、乱歩作品にしては抑えめで、かなりエンターテイメントに寄せてると思う。そういう意味ではタイトルで損してそうに思えた。
乱歩は人物描写が魅力的で話し方や仕草が妙に生々しい。言葉が脳にこびりつくようでゾッとする。昨今ではこのような外連味は安っぽく思われそうだが、乱歩作品にはこの語り方でなければならない魔術的な魅力があって、新しい物も読むけど、結局乱歩が読みたくなるのだろう。とはいえ現代でも荒木飛呂彦や京極夏彦など多くの作家が
受け継いでいるので、腕さえあれば現代でも魔術は通用するのだ。すっかり乱歩のファンになってしまった。
『傑作選』の後に『名作選』を読むと、乱歩の短編がより楽しめる素晴らしいセレクションでした!