江戸川乱歩のレビュー一覧
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「明智小五郎事件簿」シリーズ全16巻もこちらで終了!
これは明智小五郎の関わった事件を発生順に並べたシリーズです。江戸川乱歩の執筆が戦後の小説のなかでも明智小五郎がある程度活躍している小説を取り上げています。
そのため児童向け読み物の収録はかなり少なくなっています。
この最終巻収録の『影男』は1950年1月から1954年にかけて、『赤いカブトムシ』は1954年5月18日から26日までの出来事です。
明智小五郎はもう60才…(^_^;)
あとがきでは「そろそろ明智も小林も引退、少年探偵団解散」と予測されてるけど、私は探偵事務所を小林くんが引き継いだのかと思ってます。少年探偵団員は資産家家庭も多いので、今度は探偵の依頼者になるかもしれないし、小林くんと政財界との繋がりにもなりそうだし。
あとがき解説では二十面相のその後も予測していますが「ドロボー引退して家族と暮らした」というのはなかなか良いです。それなら明智小五郎も病気療養中の文代さんのところへ行って老後を穏やかに過ごしなよ、と思いました。
『影男』
冒頭はSMプレイです。お、この話は大人向けだな 笑
人の裏面に興味を持った男がいる。いくつもの名前に偽経歴を持ち、目立たず人を観測する「影男」。
この影男、目立たないためにその場に溶け込んだり、変装や演技したりも大得意。人の裏面を観察するのが楽しみだが、そのために恐喝とか人の裏面を見事に顕す作家としての収入もある。
物語前半はこの影男の裏社会巡りが綴られます。政治家大物の弱みを握ったり、死体片付けを引き受けたり、秘匿された悦楽の館に出入りしたり…。この前半は、江戸川乱歩の明智以外の小説でも見られる人間の裏社会とか、変態行為とかが次々に現れます。
風貌は目立たないけどたまに派手な演出だってする。ある不幸な少女が「お空にはきっと幸せの世界があるんだわ」と妄想していることを知ると、影男はヘリコプターを誂えて、お姫様を迎えに来た騎士のような装束で彼女の境遇を救い出すこともやってのける。ここまでやってのけるって、筋が通っててちょっとかっこいいとか思って
しまった・笑
さらに変装の名人で美女に変装もするんです。明智小五郎や怪人二十面相も「変装の名人」だけど美女になりきるのって影男だけでは!?
こんなヤツなのでこの影男、恐喝者ではあるけれども、やってることはそこまで悪いか?って感じがしないでもないんだよなあ。なんとも不思議なお人。そのため、明智小五郎とどう絡むんだろうという疑問を持ちながら読み進める。
さて、そんな人間の裏を見て、自らも背徳行為を楽しむ影男の元に「殺人請負会社」の須原という男が接触してくる。
人殺しは嫌う影男に対して、こちらは大金で殺人を引き受けその殺人方法も変態的で悪趣味な集団です。
後半では、影男と殺人請負会社の須原が協力したり敵対したりするようになります。
他人と自分の命をかけての出し抜き合いをするけれど、ちょっとコミカルというかコント的でもあります・笑
最後は明智小五郎が見事に解決するんですが、この物語の中心は「影男」なので、明智小五郎がどうやって彼らの正体をつかみ追い詰めたかは、すべて明智の口頭説明です(^_^;)。
読んでいて思ったのは、江戸川乱歩はこの物語はあくまでも影男の物語で書きたかったけど、それでは淫行だとか不道徳だとか目をつけられてしまうので、明智小五郎を出して爽やかに締めたんだろうか?
犯罪者が主人公で、明智小五郎は主人公を捕まえる役回りというのは初期の頃の『屋根裏の散歩者』『心理試験』に似ている。この『影男』は江戸川乱歩が書いた明智小五郎物で大人向けの最後のお話だそうです。初期と最後に同じ感じになったんですね。
江戸川乱歩の小説の登場人物で、背徳の世界を知ってしまったり殺人に魅せられてしまう人物は出てきたけれど、だいたいがあくまでも関係者でしかなかったり、背徳行為に飲み込まれてしまっていました。しかしこの影男は背徳を楽しみ、しかし自分はしっかり保ったままでいる、更に美女にも変装できるということでは、明智小五郎が相対した犯罪者のなかでもかなりの特異な人物像でした。
『赤いカブトムシ』
この「明智小五郎事件簿」を読んできていて、題名を見れば大人向けか子供向けかが分かるようになりました。「赤いカブトムシ」なんてどう見ても児童向け 笑
発表されたのは「たのしい三年生」という雑誌?のようで、本文もひらがなが多いです。
「あるにちよう日のごご、」って感じです。
こちらは少年探偵団物ですが、犯人が怪人二十面相ではありません!私は子供の頃に児童向け江戸川乱歩シリーズを読んでいるので、怪人二十面相以外の犯人も読んでいましたが、この「明智小五郎事件簿」シリーズの児童向けで二十面相以外の犯人はこれだけですね。
犯人、というか少年探偵団の対決相手は「まほうはかせ(魔法博士)」。少年探偵団に、知恵と勇気を試す挑戦してきます。景品はルビーでできた赤いカブトムシ!
この魔法博士も全く子供たちを傷つけるつもりはないので、二十面相より安全な対決相手です。
しかし子供たちと知恵比べするためのものすごく凝った仕掛け、なかには相当怖いものも…(^_^;)
少年探偵団たちは、宝捜し、暗号解明、地下室の冒険、そして最後はヘリコプターに乗って空の冒険を繰り広げます。
戦後10年以上たち、読者も少年だけでなく少女も増えたようです。少年探偵団に少女団員も増えています。
完全に児童向けに書かれた軽い一作というこちらで、「明智小五郎事件簿」全16巻終了! -
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ネタバレ〜記録〜
石榴→
ラスト5ページで全てがひっくり返る内容だった!ラスト石榴が爆ぜたような死に方の比喩がされたのは誰でもなかった人としての伝えた方をしたかったのかなあ、と
押絵と旅する男→
ワードとして押絵との間にレンズのような働きをするものをたくさん散りばめることで、より鮮明に見えているような錯覚を起こさせているが、正体はとても曖昧なものであるのが、魅力だと感じた
目羅博士→
模倣、鏡、月の光、、、全てが揃った時に起こる有り得ないけれど、もしかしたら起こってしまうかもしれないと思わせる殺人の方法にとてつもなく恐怖を感じた
人でなしの心→
タイトルに含まれる3つの意味
①本にある通り、この世のほかの恋。
人ではないものに恋をしている門野
②嫉妬と恨みで狂ってしまった私(京子)のこと。
もはや人ができることではない
③最後に不気味な笑みを浮かべていた人形。
人形ではない=人ではない=人でなし
白昼夢→
とても強烈な印象が残る。
白昼夢か現実か分からない曖昧な始まりから、その情景はかなり濃く鮮明で夢とは思えない
踊る一寸法師→
私以外が狂っていると感じる世界を、まるで自分もその現場にいたような不思議な感覚を覚えた
陰獣→
これ好き。中編でも退屈することがない。
大江春泥の描写が気味が悪すぎて印象に残るため、存在しているように思える。六郎は寒川と同様元は変態性欲者ではなく、静子が育てたのではないだろうか。静子と結ばれていたとしても、六郎と同じ運命になった可能性もあると思うと、、、こっわい -
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明智小五郎の関わった事件を発生順に並べたシリーズ。江戸川乱歩の執筆が戦後の小説のなかでも明智小五郎がある程度活躍している小説が収録されています。
『サーカスの怪人』1952年の冬、『妖人ゴング』1953年3月の事件です。両方とも少年探偵団が中心の事件で、明智小五郎は出番が少なくなっています。
こちらの「明智小五郎事件簿」では、明智小五郎の経歴を推測しているのですが、それによると第二次世界大戦中には軍の諜報活動に従事していたのではないか?と考えています。その関係で戦後の混乱期は明智小五郎の出番も少なくなっているのではないか?としています。
読者としては「児童向けだから明智小五郎があまり出てこないんだな」としか思いませんでしたが、時系列で考えると、紙面に現れないところでも明智小五郎が一人の人間として考えられて面白いですね。
『サーカスの怪人』
笠原団長率いるグランド=サーカス団に「骸骨男」が現れた。目は真っ黒な二つの穴、花も三角の穴、唇はなくて上下の歯が剥き出しのお黒顔、それが真っ黒な服に真っ黒なマントをまとっている。
骸骨男は笠原団長に脅迫状を送り、小学生の息子正一くんを誘拐する。
サーカス団にこれほどの恨みを持つ骸骨男は何者なのか…。
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少年探偵団物だし、変な怪人が出てくるし、その怪人はみんなを脅かして密室消失やってのけるので、犯人は「彼」だよね?と思って読んでいたのですが、途中で少年がかなりのピンチになるし、サーカス団長に対する仕打ちもかなり執拗でかなり酷く、「どうしちゃったんだ?」と思いながら読んでいきました。
結局明智小五郎と小林少年が出てきて、骸骨男の正体もトリックも見破られました。真犯人はやっぱりの遠藤宗吉。
…え?遠藤宗吉って誰かって?もちろん「彼」ですよ!読者にお馴染みの「彼」の本名や経歴の一部が明らかになりました!
今回は舞台がサーカスなので、「彼」も明智小五郎も曲芸をやってのけます!
まずは遠藤宗吉。密室からの消失!家族にもバレない変装術!サーカス公演中に乱入してアクロバットな綱渡りを披露!象に乗ってのっしのっしと操る!クマの皮を被って警察を驚かせる!やっぱり「彼」は楽しいやつだ!(>▽<)
そして最後は馬に乗って逃亡を図ります。
対する明智小五郎も馬に乗って追いかけます。
「夜の東京を馬に乗って逃げる骸骨男、投げ縄で追いかける名探偵」を目撃した作中の人々が羨ましい笑・笑
最後は、明智小五郎が見事に投げ縄で遠藤宗吉を捕まえます。
戦後編では50代になって少し元気のない明智小五郎も「彼」を相手にすると若返るな・笑
前半は「彼にしては容赦ないな」とか、「トリックはまたいつものパターンだな」などと思っていたのですが、終盤のアクロバットは読んでいて楽しかったです。
『妖人ゴング』
明智小五郎に花崎マユミというという少女助手ができました。マユミは、明智夫人の姉の娘なので、明智小五郎の姪にあたります。
んん?明智夫人の文代さんの経歴は『魔術師』ではっきりしていて、兄はいるけれど姉がいないことは確かなんだよなあ?と思ったら、解説によると「文代さんのお兄さんの奥さんの姉では?」という推測が。このマユミは「明智先生の影響で小さいころから探偵が好きだった」ということなので、明智小五郎は文代夫人の親族とはけっこう親しい親戚付き合いをしていたのね。小説では文代さんは「胸を患い高原で療養」として出番がなくなっちゃってますが、親戚付き合いはあってちょっとホッとした。
さて。近頃東京でまたしても怪人事件が起きる。
東京の上空に「ウワン…ウワン…ウワン」という鐘が響くような音と共に、大きな人の顔が現れたのだ。この音がゴングのようなのでマスコミは「妖人ゴング」と名付けた。
そのゴングは、少女助手の花崎マユミの実家、花崎検事の家の池に巨大な顔を浮かび上がらせたり、マユミとその弟の俊一の誘拐予告をする。
まずは俊一くんが誘拐された。だがそれは少年探偵団たち、そしてチンピラ別働隊により無事に助け出された!
そして小林少年は妖人ゴングの隠れ家に入り込むことに成功した。だが妖人ゴングに見つかり、酷い目に…。
その危機を抜け出した小林少年の報告により、明智小五郎は妖人ゴングの奇術の仕掛けを見破り、捕縛計画を立てるのだった。
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怪人、密室からの消失、「人殺しは嫌い」は犯人といったらいつもの「彼」だよね。
でも今回の「彼」は、妖人ゴングの隠れ家に潜入した小林少年を「人殺しは嫌いだが、勝手に死ぬのは構わん」と言ってかなり酷い目にあわせます…
そうそう、血を見るのは嫌いと言ってもこいつはやっぱり悪人だった(-_-;)
小林少年は少年探偵団物ではちょっと子供っぽくなる印象。最も「明智小五郎事件簿」によると、「いつまでも少年のはずがないので、小林助手は三人いるはず」としています。そう考えるのも面白いし、まあ私は「少年助手という概念」で読んでますが。
なかなか可愛かったのはチンピラ別働隊。1953年のこのときは戦後の混乱も少しは収まったのか、チンピラが減ってきている、と語られます。
で、そのチンピラくんたちが犯人の跡をつけたり、誘拐された少年を助けたり、犯人逮捕に協力したりと活躍です。このチンピラくんたちもこの事件の後、働き口とか、学校に行かせてもらったりしたんだろう。
なお妖人ゴングはやっぱりいつもの「彼」で、いつものパターンで最後は捕まるのですが、明智小五郎は妖人ゴングにけっこう酷い扱いをして捕まえますす。可愛い助手の小林くんが死ぬ目に合わされたので、実は怒ってたんですね(^_^;)。
しかし毎回毎回凝ったトリックで明智小五郎や少年探偵団を驚かせる「彼」ですが、今回ほど酷い目に合ったことは初めてかもしれない。終盤の「溺れそうになりプカプカ立ち泳ぎしていると、頭に五匹のネズミがよじ登ってきて顔を齧られた」という姿には、ちょっと笑ってしまいました。 -
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明智小五郎の関わった事件を発生順に並べたシリーズ。この巻からは江戸川乱歩の執筆が戦後の小説になります。なかでも明智小五郎がある程度活躍している小説を取り上げています。
『化人幻戯』は1949年11月3日〜12月21日、『月と手袋』は1950年2月〜5月・6月の出来事です。
『化人幻戯』も『月と手袋』も、題名が良いですねえ。
『化人幻戯』
探偵小説作家で明智小五郎物語著者として、江戸川乱歩が名前だけ登場!「江戸川乱歩の書いた明智小五郎の手柄話はほぼ創作」だそうです 笑 明智小五郎の事件序盤『D坂』とかに出てきた語り手は、江戸川乱歩本人ってことでいいよね。
今回は関係者が探偵小説大ファンとして、ミステリ小説とか犯罪に関する文章がたくさん出てきます。
探偵小説好きの青年庄司武彦は、元貴族の実業家大河原氏の秘書になった。大河原夫人は、若い後妻の由美子。大河原氏は探偵小説とレンズが大好き。由美子夫人とともに、双眼鏡で遠くを覗いたり、庭の生き物を大写しにして楽しんでいた。
大河原邸には政財界の大物や、大河原氏が目を書けている若者が集っている。庄司武彦はその中の一人、姫田吾郎から「怪しい手紙を受け取った。君は名探偵の明智小五郎氏と仲が良いらしいので、彼に紹介してもらいたい」と頼まれる。
だが明智小五郎が別の事件で不在中に事件が起きた。
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戦後編では50歳になり、現場に出ることも少なくなった明智小五郎、久しぶりに変装侵入捜査したみたい。今回は半隠居の明智小五郎をその気にさせた不思議な犯人です。大人向けの話なので、レンズで人の生活の覗き見や昆虫の捕食を見て喜んだり、庄司武彦の性的指向「女性に包まれたい」を熱弁したり、犯人の独特すぎる愛情表現方法など、変態趣味も出てきます。
推理小説としては犯人などはわかりやすいのですが(江戸川乱歩はかなりヒントをくれる・笑)、終盤の犯人の告白場面は、いままでの犯人たちとはまた違ったインパクトが有りました。
『月と手袋』
犯人側から書かれる形式。
北村克彦は、知人の股野重郎の妻のあけみと不倫関係にあった。そのことを股野に詰め寄られた北村は、弾みで股野を殺してしまった。正当防衛といえば言えるのだが、するとあけみのことも、あけみが受け継ぐ股野の財産も失ってしまうので隠蔽工作を施すことにした。
隠蔽工作は大成功かに思えた。北村とあけみは堂々と同棲し、担当の花田警部とも個人的に親しくなった。
だが花田警部は「名探偵の明智小五郎くんにも意見を聞いているんですよ」と言って、北村とあけみの心を凍らせた。
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この話には、明智小五郎本人は全く出てこない!しかし知己の花田警部の言動が、いかにも明智小五郎に言われてやってるなという感じで存在感はあります。
そして被害者の股野重郎というのが戦後の強かな嫌なヤツ。元男爵というけれど、人の弱みに付け込んだ高利貸しというか要するに強請屋。彼に強請られていた人も多いので、小説の上では加害者二人の事情も汲みたくもなる。
しかし犯行が隠せそうだとちょっと増長する様子には、やっぱりこのまま見逃しちゃだめだねと思い起こす。
花田警部が二人と親しくなったのはもちろん探りをいれるっていうのはあるけれど、でもやっぱり個人としても北村とあけみに親しみを感じたのもあるのかな。花田警部が自首を勧めるのに「あなたたちは精神的に追い詰められて辛いだろう。もう告白して、楽になられては?」というのは本心でしょう。
ところで、最初に現場に駆けつけた巡査が「美少年の警官」っていう書き方は乱歩の趣味ですか・笑 -
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明智小五郎の関わった事件を発生順に並べたシリーズ。この巻からは江戸川乱歩の執筆が戦後の小説になります。なかでも明智小五郎がある程度活躍している小説を取り上げています。
『青銅の魔人』は1945年〜46年冬、『虎の牙』は1947年春、『凶器』は1949年6月15日〜28日の出来事です。
明智小五郎は50代、小林芳雄くんはもう「少年」ではないのですが、小説内では相変わらず「50歳になっても彼なりのお洒落をして、相変わらずモジャモジャ頭で朗らかに笑う」明智小五郎と、「リンゴほっぺの少年」小林くんなので、私も「概念上の明智小五郎と小林芳雄少年」として読んでいきます。…明智夫人の文代さんは30代のはずですが、存在がほぼなくなってます…。明智小五郎が元気ない今こそ一緒にいればいいのに、江戸川乱歩が悪女か被害者女性しか書けないのかな (^_^;)
戦中・戦後は日本の作家には制限がかかり、探偵小説や怪奇小説も出版停止などの憂き目を見ました。この巻の明智小五郎があまり元気ないのですが、江戸川乱歩も好きなものは書けないというような事情も考えてしまう。
『青銅の魔人』
機械作りのような怪物が東京を騒がせている。顔は青銅色、三角形の鼻、三日月型の穴のような口、真っ黒な穴の両目、動く時にギリギリと音をさせ、言葉は歯軋りのよう、四つ足で逃げるかと思えば密室から消え去ったりもする。そして青銅の魔人と呼ばれるようになったその怪物は、東京十から貴重な時計を盗んで回っているのだ。
次に狙いをつけられたのは、復員してきた手塚氏の所蔵する貴重な時計だ。その家には幼い昌一くんと、雪子ちゃんがいる。手塚氏は名探偵明智小五郎に捜査を依頼する。
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戦後すぐの出来事なので、復員した人とか、親も家もないルンペン少年たちが出てきます。特にルンペンたちは本来「少年探偵団」たちと変わらないような少年たちですからね。逞しさと素直さを持っています。
そして犯人は…、…、少年探偵団といえばの二十面相。人殺しはしない、やたらに凝り性の二十面相。今回も青銅人形作ったり、地下に美術品展示室作ったりして、チマチマ準備したかと思うと、相変わらず面白い人だなあ。
しかし、今回の変装は結構酷いんじゃないだろうか…とも思う。
『虎の牙』
化け物屋敷と言われる西洋館に「魔法博士」が引っ越してきた。魔法博士はその西洋館に近所の子供達を招待し、魔術ショーを披露する。その中に、天野勇一くんと小林芳雄少年がいた。ショーの最中に天野勇一くんが消えてしまった!捜査する少年探偵団にも危機が…!どうやら背後には明智小五郎と小林少年を狙いとした何かがあるらしい…?
==久しぶりに明智夫人の文代さんが出てきた。今までも「いたけど書かれなかった」扱いでいいよね。
明智探偵事務所は千代田区の一戸建て。
さて、犯人は懲りない二十面相、しかも「ただ世間を驚かせたかった」だって!笑・笑・笑 二十面相は40代かな、戦争中は大人しくしていたけれど、戦後に世間を騒がせることと明智小五郎・少年探偵団たちに復讐するためにまた出てきた!というのは、もし本当の出来事だとしたら当時の人達は面白く楽しく受け入れられたでしょう笑
『凶器』
…「いたけど書かれなかった」かと思われた明智夫人の文代さん、どうやら完全退場(-_-;)
胸を悪くして高原に療養して明智夫婦は別居してます。解説によると「戦争中に明智小五郎は諜報活動していたのでは?」が本当だとすると、文代さんも戦中戦後の夫の不在、敗戦後の夫の処遇でかなり苦労したのでしょう…(-_-;)
文代さんがいないので、明智探偵事務所は麹町のアパートに引っ越し、小林くんが面倒を見てるみたい。
この話の明智小五郎は現場には行かず、お馴染になった庄司巡査部長から「資産家佐藤氏のご夫人が襲われた」事件の話を聞いて、推理します。私は「明智小五郎は探偵というより冒険家」だと思っていたのですが(『虎の牙』では、三メートルの幅跳びを易々と行っていた)、この話では完全に安楽椅子探偵です。
解説によると、今回事件のあった佐藤氏は戦後成金で、時代のドサクサに悪どい手も使い、アメリカ軍も相手にして財を成した人物。戦後の暗さは、「失った」だけではなくこのような人物が出てきて新たな社会が作られることにも見られる。 -
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明智小五郎の解決した事件を発生順に並べたシリーズ。
『悪魔の紋章』は1934年3月〜4月27日、『地獄の道化師』は1934年5月の事件です。
二つとも大人向けの陰惨な殺人の物語です。
戦前に手掛けた事件はここまで。次の巻からは戦後編。
1934年の世界と日本の出来事は、ドイツではヒトラーが総統になり、東京宝塚劇場開場、ベーブ・ルース来日、南満州鉄道では最新の特急が動いた。
あとがきの解説では、明智小五郎は日本のスパイ教育とか諜報活動に使われてたんじゃないのという推測がされています。
このシリーズを事件発生順に読んでいくと、たしかに戦争間近の雰囲気があります。
『悪魔の紋章』
会社重役の川手氏のもとに不気味な脅迫状が届いていた。川手家に深い恨みを持つという者が、川手氏と二人の娘を手にかけると脅してきたのだ。
川手氏は、法学博士で素人探偵の明智小五郎…は、海外の(政府依頼の事件というので、明智小五郎は素人探偵と言うより諜報部員みたいなもの!?)仕事に駆り出されていたので、明智と同じくらい高名な素人探偵の法学博士・宗像博士に事件解決を依頼する。
宗像博士は犯人の指紋を入手した。それは世にも珍しい渦巻きが三つある「三重渦状紋(さんじゅうかじょうもん)」だったのだ。
その時から、幾重もの警備にも関わらず川手家の内部に「三重渦状紋」が押される。この不気味な犯人は幽霊のように家を自由自在に出入りできるのだろうか?
ついに恐ろしい事件がおきて…。
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明智小五郎は最後の方に出てきて解決だけ示します。
これは名探偵小説として良い方法かもしれない。最初から名探偵出しちゃうと事件を防げないけど、最後だけ出てきたらそれまでの犯行は名探偵の手抜かりではないからね。
事件の真相は、犯人は確かに気の毒(-_-;) だけど、被害者に落ち度はないので被害者も酷い…(-_-;)
しかし…。私はこの「明智小五郎事件簿」シリーズを順番に読んでいっているのですが、『悪魔の紋章』の真相が、シリーズ最初の方で読んだお話とほぼ同じ(^_^;)
この頃の探偵小説はトリックを下ろすことが当たり前だったようです。(以前読んだ横溝正史エッセイでもふつーに書かれてた)
『地獄の道化師』
彫刻に塗り込めた女の死体が見つかった。女性の身元は、確認に来た女性野上あい子の姉、野上みや子だとわかる。野上あい子は、数日前姉のみや子に不気味な道化師の人形が届いたこと、同じものが今日自分の元に届いたことに怯えていた。
そしてあい子の周りに顔を真っ白に塗り、水玉の赤衣装、紅白だんだら帽子という出で立ちの道化師が姿をみせるようになった。
野上家の姉妹と親しい青年の白井精一は、素人探偵明智小五郎に事件の解明を依頼するのだった。
===
ちょっと珍妙なゲスト、貧相な芸術家の綿貫創人(わたぬきそうじん)がいるのですが、陰惨な事件がコミカルな感じになってました。
真相は、犯人の行動力がすごい(-_-;) いくらここまで恨んでもここまで実行できるのか…犯人も被害者も、まさに地獄の事件…。 -
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ネタバレ読むにつれて、ぐいぐいと物語に引き込まれました。
親戚が決めた結婚だったが、夫はよく愛してくれた。だがそれは偽りだった。
夫が夜な夜な布団を抜け出し蔵に会いに行っていたのは、人形であった…。
それを知り、人形をバラバラにする妻。
そして、最後にはバラバラになった人形を抱き、自決する夫の姿…。
人形に恋する人間とその妻の話。
妻としては、夫の心が自分ではなく、人形にあると知り、とても辛かったと思う。
結局夫は人形とあの世に行くほうをとってしまい、残された妻はやりどころのない気持ちになったことだと思う。
江戸川乱歩さんの話は「人間椅子」依頼2作目でしたが、どちらもゾクゾクとし、とても面白い作品だと思いました。
また、この本のイラストはイラストレーターの夜汽車さんが描いており、とても美しかったです。
今日も素敵な本との出会いに感謝します。
ありがとうございました。 -
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明智小五郎の関わった事件を発生年順に並べたシリーズです。
『妖怪博士』は1933年4月2日から5月2日の事件、『暗黒星』は1933年5月の事件です。
※※※以下、犯人の正体を記載しています※※※
『妖怪博士』
明智小五郎の一番弟子、小林少年を団長とする10人の小中学生から成る少年探偵団を中心としたお話。
少年探偵団の団員たちは、困った人をみたら助けるし、探偵道具と持ち歩くし、尾行や通信方法も練習している。そんな団員たち4人の少年たちが次々に誘拐され、地下室攻めだの、催眠術だの、銅像に閉じ込められるだの、とっても怖ろしい目に遭う。
…いくらいままで怪人二十面相逮捕に尽力したとはいえやっぱり小中学生。悪者(この「わるもの」って表記がなんか良いよね笑)が本気で騙しに来たらあっさりかどわかされてしまいます。
明智センセイと小林団長は「君たちは少年探偵団とはいえまだ子供なんだからね。怪しい人を見かけたら小林団長や明智センセイに伝えるんだよ!けっして自分たちだけで尾行したり建物に忍び込んだりしてはいけないよ!」ということをしっかり伝えてほしい…。
明智小五郎は、中村警部に「犯人は、変装名人で、奇怪な仕掛けをめぐらし、そして少年探偵団とこの僕に深い恨みを持っている。そんな犯人は…二十面相です!」という。
二十面相は『少年探偵団』では生死不明となってました。江戸川乱歩は二十面相を児童向けの名物悪役にすることにしたようだ・笑
さて、二十面相となったら読者には安心の紳士怪盗。血を見るのが嫌いなので少年たちを傷つけることはしません。「恨み重なる少年探偵団員たちを怖がらせてやる!!」と大人げない宣言をして更に彼らを怖がらせる、脅しつける。…大人げない(^。^;)
しかし「洞窟で怪獣の被り物で少年たちを怖がらせる」など、子供に合わせた怖がらせ方を計画して、事前準備して、いそいそと怪物被り物で登場したかと思うと笑ってしまう。二十面相、子供たちにドキドキワクワクの冒険を与えてくれる案外付き合いの良いマメな奴です(^▽^)
…なんて微笑ましく読んでいたら、少年たちを洞窟に閉じ込めて「俺は血を見るのは嫌いだが、勝手に死ぬのは構わん!暗闇を彷徨って飢え死にしろ!わはははは」と高笑い。…やっぱり可愛くない(-_-;)
しかしそこはやっぱり児童が読んでも安心の二十面相シリーズ。最後は怪獣気ぐるみのまま捕縛されるという、児童文学の名物悪者としての役割をきっちり果たしてくれました★
なお、あとがきで書かれていましたが「1933年はヒトラーがドイツ首相に、ルーズベルトがアメリカ大統領に、日本は国際連盟を脱退した年」です。
世相が混迷へと向かうなか、少年たちは鍾乳洞探検にワクワクし、悪者二十面相との対決にドキドキして…。やっぱり楽しい奴だな、二十面相。
さらにあとがきによると「この頃の二十面相はまだ20歳くらいではなかろうか」(作中では「30歳くらいの見栄えのする若者」)ということ!まだまだ本人も半分子供じゃないか!それじゃーいそいそと怪獣の気ぐるみ用意したり、小中学生相手に大人げない脅ししたりもするし、40代のはずの明智小五郎も余裕を見せるよなあ。
『暗黒星』
こちらは殺人も発生する大人向けです。
しかしこの『暗黒星』の事件の雰囲気が『明智小五郎事件簿』にあったある事件によく似ている。そのため、かなり早い段階で犯人わかっちゃいました…(^_^;) かなりの重大事実がかんたんな口頭説明で済まされたり、江戸川乱歩も気軽に書いたのかな。
そして今回の明智小五郎、かなり性格変わってないか(-_-;) 冒頭から被害者一家の美青年に惹き込まれるし、「変装が嫌い」だなんて言ってるし!変装が嫌い!?いままで散々変装してきたのに!?「僕の変装術は10年間のたゆまぬ研究努力の結果」とか言ってたのに!?をれを「変装嫌い」だなんて誤植かと思っちゃったじゃないか(-_-?)
探偵助手の小林少年は出てきますが「15歳くらい」に成長していますが今回は見張り程度の子供の手伝いの範囲。になってちょっと雰囲気が違います。それよりいきなり出てきてかなり優秀な調査をしたのが越野くん。調査能力高いのにほとんど出番がない。
この『明智小五郎事件簿』シリーズは、それぞれの物語との整合性を考えずにその場その場で割り切って楽しむもののようですね。私の印象では明智小五郎の最初の頃って感じです。まだ変装が苦手で、結婚していなくて、小林くんはまだ助手見習い。そんな頃の明智小五郎って考えたほうが納得できるんだよなあ。
さて。
資産家伊志田(いしだ)一家に魔の影が忍び寄る。一家は、資産の築き方を怪しまれる主人の鉄造氏、まだ若い後妻、鉄造氏の老母、鉄造氏の先妻の子供たちで美貌のきょうだい綾子、一郎、鞠子だ。
そして綾子と一郎は、それぞれ「自分の部屋に誰かが入った形跡がある」という。そこで一郎青年が素人名探偵明智小五郎に相談に来たのだ。明智小五郎はこの美青年に妙に惹きつけられる。
だが明智小五郎の警戒にも関わらず、伊志田一家は次々に襲われる。 -
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江戸川乱歩の『目羅博士の不思議な犯罪』と素敵なイラストがコラボする、乙女の本棚シリーズ42巻です。
探偵小説作家が小汚い哲学者風の青年と上野動物園で出会い、彼の不可思議な体験談を小説のネタとして語られる物語です。
とある5階建てビルの一室に、入居すると間もなく首吊り自殺をしてしまう魔の部屋がありました。
様々な人たちがそこへ入っては死にを繰り返す中で、青年は向かいのビルから不気味な顔がニヤニヤと観察しているのを目撃します。
その人物は目羅聊斎という医者で…。
不可思議な物語を不可思議なイラストで彩り世界観を更に増幅させている良書・シリーズです。 -
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明智小五郎が関わった事件を事件発生順に並べたシリーズ。
『大金塊』は1930年晩春、『怪人二十面相』は1931年10月11日から12月10日の出来事です。
後書きの解説によると『大金塊』では江戸川乱歩が「『少年探偵団』や『妖怪博士』をお読みになった読者の皆さんは明智小五郎の少年助手小林くんのことはよく知っていると思いますが…」と書いているので、出版されたのはそれらのほうが先だけど、事件発生は『大金塊』が先ってことらしいです。
こちらの二作品は児童向けのため、小林芳雄くんたち少年たちが活躍し、敵も大仕掛けの割には殺人はしない悪党というソフトな描写になり、地の文章の言葉遣いも丁寧です。「お仕事は〇〇をなさっているのです」の言葉遣いで、会話でも息子は父を「おとうさま」と呼ぶなど、児童教育にも配慮されている 笑
少年たちが活躍する物語は、明智小五郎は「頼りになる大人」で(本来この人かなり子供っぽいと思うんだが)、愛妻文代さんは「とても綺麗な明智先生の奥さん」存在が書かれるだけで殆ど出てこない。『蜘蛛男』あたりでは文代さんと小林くんは姉弟な印象だったけれど、少年探偵ものだと明智夫妻のほぼ養子のようなものな印象です。なお、私は勝手に「小林くんは戦争孤児で明智夫妻に引き取られたのかな」などと思い込んでいたんだが、物語の時代はまだ戦前なのでそういう感じでもなかったようだ。
『大金塊』
美術収集家の宮瀬氏の先祖が隠した埋蔵金「大金塊」が謎の盗賊団に狙われた!
宮瀬氏と息子の不二夫くん、名探偵明智小五郎と少年助手の冒険活劇。
今回児童向け小説のため、小林少年や不二夫くんが大冒険・大活躍します。小林少年は14歳くらいかな。盗賊団に誘拐されて牢のような部屋に閉じ込められてもそこを抜け出し、賊の首領の正体を見破り、宮瀬家から盗まれた物まで取り返してしまう。残念ながら少年らしい甘さ・冒険心・虚栄心から盗賊団は取り逃がしてしまうが、師匠明智小五郎だって自信と冒険心で賊を逃がしたことは何度もあるからねー。
物語後半は「大金塊」が埋められている孤島に渡っての大冒険。
少年探偵の活躍、暗号解読、地底洞穴探検、真っ暗闇の恐怖、少年たちの勇気など、一難去ってまた一難、最後まで気が抜けない、んだけど、児童向けのため最後は絶対勝つ!という安心感のある物語になっています。
『怪人二十面相』
冒頭は明智小五郎、海外出張中。え、素人探偵、ついに国家仕事に呼ばれるように!?(初出では「満州国政府からの依頼」だそうです)
そんな折に日本中を騒がしていたのは「怪人二十面相」という盗賊だ。変装の名人、現金より美術品を狙い、狙った宝物は予告して必ず盗み出し、血を見るのは大嫌い、という大怪盗。
まずは明智先生の留守中に代理を任されている小林少年が怪人二十面相を出し抜いてみせた。
だが怪人二十面相も負けてはいない、新たな盗みを大成功させる。
いよいよ帰国した明智小五郎と、怪人二十面相の全面対決が始まる。
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この後も末永く明智小五郎や少年探偵団と対決する怪人二十面相の初登場。「少年探偵団」もここで開設されました。カッコよく二十面相と対峙した小林お兄ちゃんを「崇拝」しちゃった小学生たちが自主的に集まりました。
自分が子供の頃に読んだときは、二十面相は変装達人・脱獄名人・催眠術達人・家にすごい仕掛けする人・という魔法使いのような盗賊の印象でしたが、大人になって読み返すと、戦争前後の混乱期にスリルを楽しみに縦横無尽に生きる自由人という感じがしてきた。そして小林少年や少年探偵団に、適度なスリルを与えつつあまりひどいことはせず付き合ってくれる案外いいいやつだ。今回だって小林少年を捕らえて閉じ込めておきながら「君が持っているピストルを渡してくれたら美味しい朝ご飯を出してあげよう」と言って、暖かいおむすび三個、ハム、生卵、お茶を差し入れてくれた、という馳走っぷり。私だって「美味しそうだ!」って思ってしまいましたよ 笑・笑・笑
その小林少年は「探偵七つ道具」とやらを持っていて、牢を抜けたり、助けを求めたりできます。私の「明智小五郎は名探偵というより冒険家」という印象がますます深まった。 -
Posted by ブクログ
明智小五郎が関わった事件を事件発生順位に並べたシリーズ。『人間豹』は1930年2月から1931年4月の出来事です。(最初の事件の後、一年ほど間を空けて次の事件になだれ込むため、明智小五郎が出てくるのは後半の1931年2月頃から4月)
今まで明智小五郎が対決した出てきた「吸血鬼」「蜘蛛男」などは犯人の残酷さを表す渾名だが、こちらの「人間豹」は半人半獣のような犯人そのものだ。
その「人間豹」は、30歳ぐらいで、ひどく痩せて足は長く、顔はドス黒く頬は痩せて鼻が高く、舌は一面のササクレで覆われていて、びっくりするほど大きな両目は青い燐光を放っている。更に非常に身が軽く、四足歩行のほうが自然らしい。人間というより豹や虎のようなもの。(現代なら病名などがつくのだろう)
そして酷く残忍だ。怒りを抑えられず、目をつけた相手を嬲ることを楽しみとする。
この人間豹は「恩田」という名前があって、父親と暮らしている。この父親がまた残酷な怪人物。物語では人間豹恩田が数人の女性(しかもそのなかの一人は、明智小五郎の愛妻文代さん)に目をつけるのだが、彼女たちを付け回し、誘拐し、嬲り、いたぶり、そこにはエロチックなこともあるので、読んでキツいところがあった(-_-;)
そして恩田の父親もやたらに肝が座っている。いままでも「特徴のある子供が生まれて父親が逃げ出した」ものはいくつか読んだ(観た)ことがあるけど、このように父親がむしろその子供を喜んでかわいがって、息子と一緒に「世間に逆らうのが楽しくて仕方がない!」って珍しいのでは。人間豹・恩田の見かけと残酷性は生まれつきだけど、さらに父親による影響も大きいだろう…。
人間豹の恩田親子と明智小五郎は、お互い出し抜き合い、裏をかきあって、かなりの攻防戦を繰り広げる。人間豹恩田親子の知力や肝の座り具合はなかなか大したもので、女性にあんな所業に及ばねば楽しく読んだかもしれない。
しかし恩田親子は確かに手強いけれど、明智小五郎もかなりドジ踏んだっていうのもあるような…(^_^;)
人間豹相手に軽口を叩いたため作戦を見抜かれ裏を掛かれて明智も文代さんも大ピンチに陥る、変装のせいでややこしいことになる、眼の前の敵の変装に気付かず取り逃がす、狙われている文代さんを自分の鼻先で誘拐されてしまう…。
江戸川乱歩はしきりに「明智小五郎は相手の素顔を知らないのだから仕方がない」「名探偵だって狼狽や失策もあるが、明智小五郎は高い知力と活力でそれを取り戻すのだ!」などと擁護するけれど、作戦喋っちゃったのと、狙われている文代さんから目を放したのはやっぱり失策だろう…。さすがに明るい明智小五郎も「女房ひとり守れないでなにが名探偵だ!」って自戒してたしさ。
今回はかなり残酷描写もあったのですが、ところどころ笑っちゃう描写もありました。私は小学校の図書室の江戸川乱歩シリーズでこれを読んだ覚えはあるのですが、ラストの文代さんの場面しか覚えていない…。他の残虐描写は児童向けにはソフトになっていたのかなあ。(今度確かめてみます)
やっぱり明智小五郎側の人たち、文代さん、小林少年、恒川警部(今回出てないけど波越警部も)たちって精神的に健全なので、安心感があるので、明智自身の多少のピンチは笑えるというのは良いです。