あらすじ
実業家・羽柴壮太郎のもとに、恐ろしい予告状が届いた。昨今世間を騒がせている怪盗、「二十面相」からの予告状である。狙われたのは、羽柴家が所蔵する、ロマノフ家の王冠に由来するダイヤモンド。羽柴家は、ありとあらゆる防備を施すが……。(「怪人二十面相」)江戸川乱歩初の少年ものである「怪人二十面相」と、長編「大暗室」を収録。【この電子版は、註釈と「私と乱歩」を割愛しています】
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正義と悪が対立する作品において、魅力を決定づけるのは悪役だと思う。ある程度言動や人物像が予想できる正義の人物よりも、予測がつかない悪役のほうが魅力的だ。その点でこの作品の悪役は素晴らしく、この作品を大変魅力的なものにしている。
『大暗室』の悪役である大曾根龍次は生粋の悪人だ。本人もそれを自覚しており「僕は地獄の底から生まれてきたのです。悪こそ僕の使命なんだ。」なんて言っている。悪役に、悪に染まった理由など必要ない。訳の分からぬまま悪であるほうが魅力的だ。悪になった理由や経緯・過去などがあると、恐ろしさや得体の知れなさが薄れてしまう。現代では人間のあらゆることが分析や説明の対象となっているが、フィクションの中の悪役くらい、得体のしれない者のままでいてほしい。大曾根龍次には同情できる事情や過去など一切描かれないので、最後まで怪しい存在のままでいてくれる。『ダークナイト』版のジョーカーのほうが好きな人は、大曾根龍次に魅力を感じると思う。
大曾根が美青年という点も、彼の魅力をさらに引き立てている。女優に変装をして、全く違和感がないくらい美しい姿をしている。正義側にあるはずの美しさが、悪の側にあることで、怪しい魅力が増している。この点では、手塚治虫『MW』の結城美知夫と似ている。
常軌を逸した欲望も、悪役の大きな魅力だ。社会に許された範囲内の欲望しか持つことができない凡人には、悪役の、常人には理解できないスケールの欲望は憧れる。大曾根龍次は、悪事によって集めた資金を使って、自分の欲望を体現した王国を、東京の地底に築いた。そこは「あらゆる怪奇と艶美とを織り混ぜた狂気の国、夢幻の国、天国と地獄との交響楽とも例うべき」王国であった。
悪役の真骨頂は、何よりその死に際だろう。大曾根龍次よりも死に際が見事な悪役を知らない。作中のクライマックス、彼は自身の王国である大暗室で、遂に主人公たちに追いつめられる。彼は正義の側に自身の運命を委ねるようなことはしない。自ら壮絶な最後を迎える。その自決の様は、彼の悪の芸術性を極限まで高めている。地獄のオーケストラが奏でる悪魔の音楽と怪しく光るオーロラのもと、自分に心酔する美女たちの死体に跨って自身の体を切り刻み、真っ赤に染まった顔で狂ったように笑いながら死んでいく。美しき悪魔の最後にふさわしい壮絶な死。この死によって、彼の悪は芸術となった。
最初から最後まで自身の悪を貫き通し、そこに一切の理解や同情も挟ませぬまま、不気味な美しい悪魔として散っていく。大曾根龍次は、理想的な悪役だ。
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『怪人二十面相』
怪人二十面相に狙われた富豪・羽柴壮太郎の所有する6つのロマノフ家の宝石。羽柴家の長男・壮一の帰国。壮一に変装した二十面相に奪われた宝石。逃亡する際に羽柴壮太郎の次男・壮二君が仕掛けた罠で負傷する二十面相。運転手に化けて逃亡する際に誘拐された壮二君。外国にいる明智小五郎に代わって二十面相と対決する小林少年。二十面相から壮二君と引き換えに要求された仏像。仏像の受け渡し、乞食の親子に化けた二十面相。仏像に化けた小林少年と二十面相の対決。囚われた小林少年の伝書鳩。美術城と呼ばれる屋敷に美術品を溜め込む日下部老人。二十面相からの予告に折よく近くに滞在していた明智小五郎に護衛を頼むが…。帰国後の明智小五郎と二十面相の対決。北小路博士の美術品盗難予告。明智小五郎に襲いかかる赤井、明智に恨みがあることで二十面相の部下になる赤井。誘拐された明智小五郎。予告当日奪われた美術品。明智小五郎の登場。明智に弟子入り志願した男の秘密。北小路博士の腕を離さない明智小五郎。少年探偵団の活躍。
『大暗室』
船の事故により漂流する有明男爵と親友の大曾根五朗、有明男爵の家令・久留須左門。有明男爵と久留須を殺害し有明男爵の妻・京子と結婚した大曾根五朗。有明男爵の息子・友之助、大曾根五朗の息子・竜次。生きていた久留須の証言から罪を暴れた大曾根は京子を殺害。焼かれかけた久留須は友之助を連れ逃亡する。20年後、飛行機ショーで再会する友之助と竜次。大曾根竜次こと大野木隆一が組織した殺人会社に依頼を持ち込んだ辻堂。財宝のありかを示す暗号をとく星野親子を殺害し財宝を独り占めしようとする辻堂。辻堂に化けて親子に接近する大野木隆一。星野の娘・真弓と親しい有明友之助こと有村清。辻堂に化けて星野氏をつれて財宝を探しに出掛けた大野木隆一。自分の正体をあかし星野氏を殺害しようとするが、星野氏に変装した有村清。1度は大野木隆一を倒すが騙され、星野親子を誘拐される有村清。久留須と共に大野木隆一との対決を決意する有村清。世間を騒がす黒い渦。背中に黒い渦の現れた花菱ラン子。ラン子の替え玉を勤める野沢少年。舞台上で血塗れになったラン子。運び出されたラン子は蝋人形にすり替えられ誘拐される。ラン子の誘拐を阻止した久留須。明智小五郎の名前で呼び集められた6人の新聞記者たち。大暗室への招待。大曾根竜次の大暗室案内。囚われた少女たちの人魚。ラン子を再び誘拐した大曾根竜次の前に現れた有明友之助。警官隊に包囲された大曾根竜次の最期。
2009年1月29日初読
Posted by ブクログ
えーと、収録されている作品は、「怪人二十面相」と「大暗室」の2作です。
どっても、なんというか、すごいマンガ的というか、エンターテイメントの王道という感じで、楽しいです。
「怪人二十面相」は、多分、子どもの頃から数えて今回で読むのは3回目ぐらいになっていると思うのですが、最初の1行のドキドキ感はすごくあります。
「大暗室」では、最初に悪のヒーローと主人公が、ライバルだと認め合って握手するときとかが、好きですね。
しかし、明智小五郎とかのキャラクターは、もともと大人向けの小説のためにつくったキャラクターなのに、それをそのまま子ども向けの作品にも持ってきて、ちゃんと違和感なく活躍させているあたりが、なんか、世界ができているという感じで好きです。
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小学生の頃にみた怪人二十面相、小林少年と明智探偵のはなしから大暗室まで
江戸川乱歩を楽しめる一冊になっています。あらためて読んでみて大暗室は淡々とした文章から見える作者の性癖というかいびつな世界は、淡々と描写されるからこそ気持ち悪い世界として僕には伝わりました。
ここからはネタバレになるので読んだ人は読んでほしいと思う
東京の地下が舞台になる大暗室調べてみると書かれた時分には地下鉄はあったのでこの作品を当時読んだ人は自分の住んでいる東京の横にこのいびつな世界が広がっているのかもしれないという想像力がわき怖気が身を包みました。
けっこう気持ち悪いと思うので万人にお勧めできる話ではないと思いますが見ている現実の幅が想像力で広がるので、自分の世界を広げたいと思う人にはお勧めしたいなと思いました。
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あれよと展開する陰謀と復讐の捕物帖は、変態エロスを加味しながらも清楚な雰囲気を醸し出す不思議な感覚に襲われる。これは読者がまんまと騙されているのかもしれぬ。やはり乱歩による変態世界に招待されているのよ。きっと。
Posted by ブクログ
『怪人二十面相』と『大暗室』
どちらも冒険ものって感じですね。
『怪人二十面相』は子供向けに書かれたもののようですが、大人の私が読んでも純粋に楽しめました。
もちろん子供が読んでも夢中になれるような内容だと思います。
明智小五郎も二十面相も好きです。
『大暗室』は、最初の方は引き付けられたんですが、後半は乱歩によくある展開で、ちょっとお腹一杯感が…
まぁよくいえば乱歩らしいし、あまりまだ乱歩作品(特に冒険色が強いもの)を読んでないかたはもっと楽しめるんじゃないかなとは思います。
Posted by ブクログ
「怪人二十面相」「大暗室」を収録。
子供の頃夢中で読んだ少年探偵団。
小林少年のようになりたくて、
その辺の一般人を尾行してみたり(ただの迷惑)
屋根裏に秘密基地をつくったり(母に怒られました)。
そんなワクワクする心を思い出す「怪人二十面相」。
大して「大暗室」は大人の乱歩。
すごーく分かりやすい白と黒の対決なのですが、悪い奴が
とっても奇抜でセクシーで我侭なのが魅力的。
エロとグロが入り混じり、「吸血鬼」と「パノラマ島綺譚」
が混ざりあったような雰囲気。
どちらも結末は分かりきっているし、先の展開も
見えています。
それでもその過程を面白く読ませるのが作家の力量。
ハラハラドキドキして、最後は皆が望む大団円。
老若男女に愛された乱歩作品の中でも、バランスの良い
2作が収録されていると思います。
Posted by ブクログ
「大暗室」とは即ち、作者・乱歩自身の心の闇。
現在、やれサイコホラーだのノワールだの言っても、作者自身の
「狂気」
が伝わってくる、こういう小説はあまりない。
Posted by ブクログ
2003年。
「怪人二十面相」
「大暗室」
ここまで乱歩を読んで感じたこと。後世に作品を残す作家とは。
・自分の世界があること(心に秘めた変態が良いみたい)。
・出版社(編集者)の要望に沿って書くこと。ムリなら断ること。
・時代に寄り添うこと→戦中に何を書いてたか知らんが。
ってか、何を考察しているのかw