【感想・ネタバレ】陰獣~江戸川乱歩全集第3巻~のレビュー

あらすじ

ひょんな事から知り合いになった人妻から奇妙な相談を受けた私。それは元恋人であり探偵作家の男から復讐予告の手紙がたびたび来るというものだった。その復讐の内容とは? そこから発展してくる恐るべき犯罪とは!? 表題作の他、初期乱歩の傑作を数多く収録する一巻。【この電子版は、註釈と「私と乱歩」を割愛しています】

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Posted by ブクログ

何度読み返してもゾクゾクする、この感覚は何だろう。
本のタイトルになっている「陰獣」は、乱歩の願望そのものだなあ。

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2019年01月03日

Posted by ブクログ

3巻は短編14篇収録

『お勢登場』『人でなしの恋』『鏡地獄』『芋虫』が個人的には好きかな
『陰獣』は期待値が高かったのと、犯人が容易にわかる点がいまいち…
でも最後をもやっとさせた部分は好きだな
お勢〜と鏡地獄は想像しただけで気がおかしくなりそう
人でなしの恋は案外現代にはこんな恋してる人いるだろうなぁと思いつつやっぱ切ない
芋虫はエグさの中にもやはり最後は切ない

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2013年01月13日

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ネタバレ

半数は再読。「空中紳士」等は初読。

・「踊る一寸法師」
 最初の描写の痛ましさと言ったら。「芋虫」でも存分に発揮されていたが、ああいう厭な情景描写は、読む者に或る種の「嫌悪感」だとか「厭世感」を与える。乱歩は特に、よく与える描写を得意としているように思う。筋については、乱歩作品を読んでいれば何となく予想のついてしまうもの。

・「毒草」
 「堕胎」という微妙な社会問題を扱っていたせいか、左翼方面からの評判は宜しかったらしい。だが、乱歩がそのようなことを考えて書いていなかった事は、乱歩自身も述べている通りである。乱歩としては、本作を通じて、「堕胎の恐怖」というものを描いたということであるが、若干的を射ない表明ではないかとも思う。と言うのも、堕胎行為に対する恐怖を描いているというよりも、その行為に対する人々の心理に主眼を置いて描いているとしか読めないからだ。

・「覆面の舞踏者」
 巻末で新保博久さんが「いただけないもの」として(というのも、男は兎も角、女の方で取り返しのつかなくなる前に必ず気づいて回避するはずだ、ということから)評価しているが、果たしてそうも言いきれるかどうか、ということを直感的ではあるが思う。心理的なものを含めば(一時の過ち、というもの)、全く成立しないとは言えまい。

・「灰神楽」
 乱歩曰く、「無理に絞り出してこね上げたもの」らしいが、読むとそんな風に書いたとも思えない。多分、多少自信を持って書いたにも拘らず、「全く黙殺」されてしまったから、悔しい思いもあってそういう評を本作に下したのであろう。火鉢の中に小道具(ボール)を忍ばせて、まるで偶然が重なったための過失死なのだ、と思わせる手。そして、実は火鉢は当日とは別物で、そんなボールが入っているわけもないのに、どうしてそこから出てきたのか、という矛盾から破滅を来す犯人。乱歩好みの結末の付け方であるが、世間としては乱歩の言う様な「妙な味」が一切しない(私に言わせれば、結末の付け方で十分「乱歩味」が出ている)から、あまり興味を剥かせるだけの魅力を本作が持ちえず、黙殺と言う結果になったのだろう。

・「火星の運河」
 乱歩の青年時代の夢をもとにしているらしい。「パノラマ島綺譚」に共通する「幻想性」が本作にはある。

・「五階の窓」
 乱歩に連作の初っ端を任せると、少々、いや結構な暴走っぷりを発揮してしまうから、後々が大変になるだろうというということをいつも読みながら思ってしまう。乱歩は少なくとも、私が知る限り「江川蘭子」でも暴走していたように記憶している。今回はやたらめったら伏線だか何だかわからないものを拵えすぎているのが、主暴走であろう。乱歩もその点、「僕自身の失敗について云えば、どうでも筋が運べる様にと、その点を考え過ぎて、疑問の人物を無闇に拵えたことだ」と述べている。私も、某大学某推理小説研究会にて、リレー小説なるものに参加し、尻尾の方を任されたが、本当に筋を纏めるのに苦労した。それというのも、やはり、伏線ばっか考えずに乱発されたせいなのだが。

・「モノグラム」
 学生時代、好きだった子が実は盗人だったなんて事実を、偶然にも知ることとなってしまったら、やはり厭なものだろう。

・「お勢登場」
 非道い。

・「人でなしの恋」
 むしろ、人形で良かったと思う。私の場合、人形であるというのもフェイクで、実は……ということも考えた。

・「鏡地獄」
鏡偏執狂とも言うべき者の、破滅までの話。

・「木馬は廻る」
 メリーゴーラウンドの真ん中でラッパを吹く男の、甘酸っぱい話。結構通俗的だが、地味に良い筋。少女も調子良いな。

・「空中紳士」
 連作ではなく、合作。ただ、主に乱歩が筆をとって書いたと言われる。部分部分、雑な文章構成の部分が見受けられる。が、後半になってくると調子が出てきたように、生き生きしてくる。
 文字通り、雲隠れできる飛行機やら、獅子の着ぐるみでどうのこうの、という展開は後の作品にもよく見受けられる着想。

・「陰獣」
 乱歩得意の、「結末に余韻を残す」作品。然し、本作は本来の効果として
十二分に屋台骨を支えている。話としても、面白いものに仕上がっている。

・「芋虫」
 本当に、良い意味でも悪い意味でも「気持ち悪い」。読んでいて、うえっと思わせられる作品。多分、丸尾末広の「芋虫」を読んだ後と言うのも影響しているとは思うが……。

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2012年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すぐに内容を思い出せるように記録。
完全なるネタバレにつき注意。



踊る一寸法師
・サーカスの一団
・明るいグロテスクさ

毒草
・堕胎の毒草
・先の読める展開
・姦通と堕胎が悪とされていた戦前ならではの感覚が強く出る。

覆面の舞踏者
・じゃぁ自分の妻は誰と寝た?事実を知った後味の悪さ

灰神
・心理試験?のバレ方と少し似ている。ボールを入れた火鉢は当時あった火鉢とは別のもの。

火星の運河
・散文詩。文章の組み立て、選び方、とても好き。幻想的で少し物悲しい。

五階の窓
・合作小説の始まり部分。
モノグラム
・昔好きだった女性の形見に自分の写真が?しかしこれは自分の奥さんの持ち物で、女性は盗み癖があったと判明。昔の思い出のままでいてほしいことってありますよね。

お勢登場
・ひたすらにご主人がかわいそう。

人でなしの恋
・人で、無し。二次元にひたるとこうなるのだろうか。

鏡地獄
・狂気の沙汰。あまり触れたことのない次元の想像力。

木馬は廻る
・別段可愛いわけでもないのにモテるとは羨ましい。スリが盗ったお金で良いショールを買ってあげようとする、その盲目っぷり。

空中紳士
・長編。響晰の正体が明かされたときの驚きったらない。
・乱歩作品によくある、「読者諸君、」という書きぶりが多く見受けられる。読んでいて非常に楽しい。

陰獣
・陰湿なストーカー話、を連想させながらドSな主人の気色悪さ、を連想させるも、実は妻が異常者であるという回転数。

芋虫
・戦争から帰還した主人が手足や聴覚など一気に失ったとき、その奥さんが一概にこうはならない、と断言できるだろうか。

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2011年07月08日

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どの作品もすばらしくて、子供向けの探偵小説しか知らなかったので見る目がすっかり変わりました。
「芋虫」「人でなしの恋」と「覆面の舞踏者」「モノグラム」が特に好きです。

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2010年04月01日

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ネタバレ

『踊り一寸法師』
サーカスでの宴会の席。一寸法師と呼ばれる豆蔵に絡む人々。無理やり酒を飲まされ侮辱された豆蔵。宴会の席で行われた豆蔵の奇術。串刺しにされ首を切られる美女。

『毒草』
川原に生える草。友人と散歩中にその草のなかに堕胎に使える毒草があることに気がつき彼に毒草の説明をし始めた私。貧しく3人の子供があり妊娠している郵便局員の妻がその話を聞いている事に気が付く。彼女が毒草を使うのではないかと不安になる私。郵便局員の妻のお腹は?流産した妻。刈り取られた川原の毒草。

『覆面の舞踏者』
ある集まりに参加した男。友人の井上次郎に誘われた仮面舞踏会。どこの誰とも知らぬ女と一夜を共にするが・・。相手の女は井上の妻。はたして自分の妻は?実はそれぞれの夫婦がパートナーになるはずだったが・・・。

『灰神楽』
同じ女を争う奥村を撃ち殺した男。事件当時に飛び込んだ野球のボール。自分に疑惑が向けられた時、男が奥村の弟に告げた嘘。火鉢の灰にかくされた秘密。

『火星の運河』
森の中をさ迷う男。森の出口と思われる光に向かい歩くが、そこは森の中心だった。森の中心の沼。自分の体を見るとそこには女の体が。沼に入り沼の真ん中の岩の上に立つ男。全身を掻きむしり流れ出る血。火星の運河。目覚めた男。

『五階の窓』
会社の窓から墜落死した社長。犯人は?乱歩の連作ミステリ。

『モノグラム』
かつて憧れていた女性の弟とのベンチで再会した男。女性が持っていた紙入れに入れられていた自分の写真。妻との間に不満を持っていた男の夢。妻が語る真実をあこがれの女性の正体。

『お勢登場』
格太郎の妻・お勢は夫が肺病を患い体が弱っているのをいいことに不倫三昧。不倫に気がついていながら何の行動もとれない格太郎。ある日お勢が不倫相手の元に出掛けている間に息子の友達たちとかくれんぼをする事に。長持に隠れるが開かなくなった蓋。格太郎が長持の中にいることに気がつきながら放置し死に至らしめるお勢。

『人でなしの恋』
新婚の夫の奇妙な行動。土蔵の中にかくされた秘密。妻が目撃した夫の恋人の正体。人形との恋。

『鏡地獄』
鏡に取りつかれた男。両親が死に莫大な遺産を相続すると屋敷の中に作り上げた鏡の部屋。屋敷の小間使いの少女を愛人にして暮らし始める。ある日呼び出された私が目撃した鏡の部屋の中の球体。球体の中から現れた発狂した男。ガラスで出来た球体の外側に水銀を塗り内部が鏡張りのような状態にした物の中で男が見たものは?

『木馬は廻る』
木馬館に勤めるラッパ吹き。貧乏で辛い生活の中で木馬館のキップ売りの少女にほのかな恋心を持つラッパ吹き。貧乏な彼女が欲しがるショール。ある日キップを売る彼女のお尻のポッけに封筒を入れる若い男を目撃する。恋文と思い彼女のポッケから抜き取り中身を確認するが。

『空中紳士』
亡命したルール殿下。殿下をかくまう巽侯爵が殺害され、カロロ伯爵と名乗っていたルール殿下も誘拐される。捜査にあたるのは女新聞記者・星野龍子。しかし、ついで巽侯爵未亡人も誘拐されてしまう。そして突如帰国した巽侯爵の弟・美麿。謎の紳士・響の活躍。

『陰獣』
会社重役の小山田氏の妻・静子と知り合い文通するようになった推理作家・寒川。静子がかつて婚約していた平田一郎が大江春泥と言う推理作家になり、彼女を脅迫していると静子から相談を受ける寒川。大江春泥を知る本田に話を聞く寒川。小山田の屋敷に侵入したと思われる大江春泥。天井裏に落ちていた手袋のボタン。大江が公園で道化者の格好をしてビラ配りをしているのを目撃した本田。殺害された小山田。接近する寒川と静子。小山田家の運転手の手袋のとれていたボタン。手袋は小山田氏からもらった物だった。小山田氏が春泥をかたり静子を脅したと推理する寒川。運転手が手袋を貰った日付。

『芋虫』
戦争で重症を負い、手足を切断し口も聞けず耳も聞こえない状態になった須永中尉。元上官の鷲尾少将の敷地に妻の時子と住むようになる。須永と時子の異常な生活。須永の目に傷を負わせた時子。許しをこう彼女への須永の答え。

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2015年03月07日

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ちょっと読んだだけで乱歩ワールドに惹きこまれるのが不思議。どの話も不気味で結露した壁の様。でもこの世界がたまらなく居心地がいい。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

短編が多く収録されている。
毒草 貧しい時代おなかの子を殺すとか仕方が無いといえどもかわいそうな話だ。
覆面の舞踏会 金持ちの悪趣味。
人でなしの恋 前にも読んだことがあるけど、結構好きな話。妻には悲しいけどね。
お勢登場 前にも読んだことがあるけど、恐ろしい悪女だ。
空中紳士 読んでない。
陰獣 乱歩がよく出すモチーフが集まっている。変態だからこその事件と言えるかもしれないけど、そんなに楽しいことなんだろうか?と思う。もしかしたら?という曖昧な終わり方が良い。この話の場合はハッキリしないからこそ気味が悪いのでいいと思う。
芋虫は以前読んだけど、気持ちのいい話ではない。

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2014年07月14日

Posted by ブクログ

悔しい。大好きな芋虫が穴あきだらけの編集で惜しいと思いました。乱歩好きにはたまらないシリーズ。芋虫だけ惜しかった、本当に惜しい。

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2013年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「芋虫」めあてに読んでみた。

ひどい話を覚悟していたが、夫の残した「ユルス」には私まで救われた気がした・・・

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2012年05月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・踊る一寸法師
曲馬団の一寸法師と玉乗りのお花
・毒草
堕胎草の話
・覆面の舞踏者
秘密クラブ二十日会での仮面舞踏会の話
・灰神楽
弾みで友人を射殺してしまった庄太郎が罪を秘匿しようとする話
・火星の運河
乱歩の夢の世界
・五階の窓
乱歩、平林初之輔、森下雨下、甲賀三郎、国枝史郎、小酒井不木による『新青年』のリレー小説。
乱歩は初回を担当。ビル五階の電気会社の社長が転落死しているのが見つかったが…。
・モノグラム
工場の老守衛が語る、初恋の人の弟との出会いと、初恋の人の遺品の、写真が入った懐中鏡の話
・お勢登場
悪女お勢を妻に持つ肺病みの格太郎は、子供との隠れん坊で押入れの長持の中に隠れる
・人でなしの恋
美男門野の浮気相手とは
・鏡地獄
『大衆文藝』への最後の寄稿作。とっても乱歩だな、という作品だと思う
・木馬は廻る
浅草木馬館のラッパ吹き格二郎と、若い切符切りお冬
・空中紳士
『新青年』に「飛機睥睨」として八回連載。土師清二、長谷川伸、国枝史郎、小酒井不木、乱歩による耽綺社同人合作小説。
R国さきの皇太子ルール殿下を日本にて匿う巽小路公爵とその周辺の人々、謎の紳士 響晰
・陰獣
探偵小説家 私と人妻 小山田静子、静子のかつての恋人でありストーカーの探偵小説家 大江春泥。
大江春泥は全体的に乱歩を彷彿とさせる描写。作品も『屋根裏の遊戯(屋根裏の散歩者)』『一枚の切手』(一枚の切符)『B坂の殺人』(D坂の殺人)『パノラマ国』(パノラマ島綺譚)『一人二役』とそれまでの乱歩作品の総集編的。
・芋虫
乱歩的には反戦意識はなかったそう。

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2011年08月22日

Posted by ブクログ

☆☆☆2019年11月☆☆☆


乱歩ワールドに迷い込む楽しみ。
本当に別世界に行ける。
『踊る一寸法師』
『毒草』
『覆面の舞踏者』
『灰神楽』
『五階の窓』
『モノグラム』
『お勢登場』
『人でなしの恋』
『鏡地獄』
『木馬は廻る』
『空中紳士』
『陰獣』
『芋虫』

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2019年12月07日

Posted by ブクログ

卒論は江戸川乱歩の一作品について書くこと、と居酒屋でバイトしている学生。乱歩のイメージはエログロナンセンスという。
怪人二十面相や明智小五郎などをドラマで見たことしかなかったので、ひとつだけ読むとしたら何かな? と聞くと、いいかどうかわからないけれど「陰獣」とのことで本書を借りた。
短編から長編までいくつか収録されているので、とりあえず全作読んだ。ナンセンスの作品はなかったが、エログロ感はなるほど。
著者による自作解説があり、当時の編集長横溝正史君に「矢の督促を受け」たり、名古屋で「私と枕を並べて寝た」り、最初は嫌いだった講談社が「原稿料が他社に比べ格段に高く、ついに講談社党になってしまった」などあり興味深い。

かなり→可成り、はちきれそう→はちきれ相、さようなら→左様なら、など漢字の使い方が今とはかなり違うのも面白かった。

実はエドガー・アラン・ポーという外国人が、日本に帰化して江戸川乱歩となったと、ずーっと思いこんでいた。はずかしい。

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2019年03月07日

Posted by ブクログ

再読。合作の「五階の窓」が読み返したくて(最近、小酒井不木や森下雨村を読んでるせいです)。収録されている他の作も短編では「灰神楽」、「モノグラム」、「お勢登場」辺り大好きな作だし、「陰獣」の乱歩らしさもこれまた良いですね。
「空中紳士」も合作という事ではありますが、書いたのは乱歩と(第三回だけ岩田準一らしいです)いうことで、後半、乱歩らしい仕掛けがあちこち入っていて面白い、盛り沢山の一冊です。

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2018年01月03日

Posted by ブクログ

2009/
2009/

踊る一寸法師. 毒草. 覆面の舞踏者. 灰神楽. 火星の運河. 五階の窓. モノグラム. お勢登場. 人でなしの恋. 鏡地獄. 木馬は廻る. 空中紳士. 陰獣. 芋虫. 私と乱歩 間村俊一著.

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2009年10月07日

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