【感想・ネタバレ】パノラマ島綺譚~江戸川乱歩全集第2巻~のレビュー

あらすじ

芸術を極限まで引き上げた、この世の楽園を夢見る男が、ひょんなことから世にも恐るべき計画を立て始める。その果てには……。奇想の決定版といえる表題作と、のぞき眼鏡に映った浴場の惨劇の謎とは?……「湖畔亭事件」、初の新聞連載「一寸法師」、他に「闇に蠢く」、「空気男」を収録。【この電子版は、註釈と「私と乱歩」を割愛しています】

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 引越しの果てに捨ててしまった江戸川乱歩全集。その中で最初に出会い、衝撃を受けた本。およそ小学生が読む本ではなかった。しばらくの間、死肉を自分の指で触った感触がぬぐえないで怖かったのを覚えている。
 おどろおどろしていたのは江戸川乱歩共通か。押し絵と旅する男、などは好きだった。おませな小・中学生だった。
 当時の表紙は現在のように淡々としておらず、たいへん、奇妙でありながら、どうしても手に取りたくなる不思議な魔力があった。数十年後、古書店で1冊探し当てた。思いのほか高くなかったのは文庫だったせいと思う。春陽文庫、高塚省吾氏装丁である。タイトルは「屋根裏の散歩者」
 この書庫の表紙画がいつが自分の本であらわせたら…(特に愛蔵本は)いいのだが、と思う。

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2011年11月07日

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いや…
乱歩ってなんでこんなに凄い世界観をもっているんだろう…。
話の展開から何から何まで凄すぎる。

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2009年10月04日

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「パノラマ島綺譚」は乱歩の作品ではあまり賞賛はされませんが、個人的に思い入れの強い作品。
文字通り花火のように散った男の儚さが乱歩の美しい世界観を象徴しています。

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2009年10月04日

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江戸川乱歩って「カー問答」のような海外本格ミステリの扇動者としては超一流だったと思うけれど、実作者としてはどうだったんだろう。彼の資質はむしろ今ならばファンタジーとか幻想小説とかホラーとか、そっちの方あったのではないだろうか、というのは例えばこんな全集を読めば誰でも感じる感慨。その中でもこの「パノラマ島奇譚」のビジュアルなイメージは鮮烈。正直これを初めて読んだ中学生にとってはインパクトが強すぎた。

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2009年10月04日

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「闇に蠢く」
「空気男」
「パノラマ島奇譚」
「一寸法師」

まず「闇に蠢く」について。これは恐ろしく不気味な話だ。「え、そんな展開!?」と、序盤と終盤の差が激しい。野崎三郎という画家と、その友人が怪しい男を追って洞窟に閉じ込められるところから、すさまじい方向に話が進む。飢えの描写。乱歩は飢えがどういう状態なのかを具体的に知っているかのよう。胃がねじ切れんばかりに痛くなるというのは本当だろうか。飢えのあまり、人間の腐乱した死体に食らいつく場面があるが、食中毒にならないのだろうか。

「空気男」は感想なし。
「パノラマ島奇譚」は自分にそっくりな金持ちの男(双子のように似ている)になりすまし、そのお金を使って「理想の世界」を実現させようとした、人見という男が主人公。瓜二つとはいえ、そんな程度で周囲を欺けるとは思わないが、それをいうとおしまい。映画の『FACE OFF』などもそうだが。人見は、死んだそっくりさん(菰田)が実は生きていてお墓から出てくる、というのを偽装するのだが、菰田が墓の下に埋められてから10日ほど。それで生き返ったなんてよく通用したものだ。
「闇に蠢く」でも墓場のシーンがあったが、このころは土葬がメインだったのか?


「一寸法師」は全集②では唯一の明智小五郎もの。不気味は一寸法師が東京の街で悪事を働く。小林という人物が進行役。彼なりに推理をし、次々と容疑者が浮かんでは消え、また浮かんで・・・という感じでうまく部隊を回す。
しべての満足者(五体満足)のものを呪うという一寸法師が少し可哀そうな気がした。

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2017年01月30日

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闇に蠢く:前半と後半の別の話をなんとかひとつにくっつけた話に。これは乱歩自身の解説でも事情を書いている。後半はある事件を思い出したが、乱歩も似たような小説からインスピレーションが働いたとのこと。恐ろしい話。

湖畔亭事件:全体の話が決まってないうちに書き始めてなんとか辻褄を合わせて書いたらしい。そういうことができるものなのね。少し無理がある話だとは思うけど、辻褄はなんとか合わせられ、なかなか面白かった。

空気男:連載していた雑誌が廃刊になり、途中で終わっている。結末まであればどういう話になってたんだろう。前半のみなので、中途半端すぎる。

パノラマ島綺譚:無理があるような話ではある。現代では通用しない。最初は面白いので引き込まれるけど、パノラマ景色は想像すると気持ち悪い感じにしか思い浮かばない。尻窄み感あり。

一寸法師:典型的なミステリーなので、読みやすく引き込まれやすかった。どんでん返しの繰り返し。

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2014年05月18日

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2巻
『パノラマ島綺譚』ほか全5篇収録

読んだのが結構前なのでうろ覚えですが、『闇に蠢く』の最初の段階からは想像できようがない最後のオチにびっくりしたことと、『パノラマ島綺譚』の島の綺麗さとラストのバーンが印象的だったのを覚えてます

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2013年01月13日

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ネタバレ

再読
●闇に蠢く
 乱歩も自ら回顧するように、何かにつけて「まとまった筋」というものを用意せずに物語を書く癖があった。故に、筋がてんでバラバラ、どうしようもなくなり怪奇趣味に走りだすとか、風呂敷を畳めずに執筆を辞めてしまうことがあった。無論、悪いことばかりでなく、そういう習慣(?)のお陰で傑作が生まれたり、読者を魅了するような怪奇趣味を提供してくれることだってある。
 「闇に蠢く」は、放蕩道楽男、野崎三郎がお蝶という女性に昵懇になってしまったことから始まる。第一に、この主人公野崎の性癖からして、真正の変態である。本当に乱歩はこういうのを描写するとき、大変生き生きと楽しそうに書くなあ、といつも思う。お蝶の死(か、どうかは不明だが、沼に片方の草履が浮かんでいた)、昔のお蝶の連合い進藤の登場、野崎の旧友植村による報告、そして洞窟に閉じ込められる野崎と植村。
 とんとんとん、と場面は展開していくのだが、行きつく先がカニバリズムだとは、誰が想像できるだろうか。
 
●湖畔亭事件
 二転三転と物語を転がすのは、乱歩の十八番。特にこの作品は秀逸だと思うのだが、どうだろうか?
 この事件の主人公もまた、中々に変態のご趣味を有しておられる。
 様々な箇所で、犯人はこいつだ、ということを示唆しているにも関わらず、成る程、河野の言うことにも一理あると思わせられ、しかし……、そうは問屋が卸さなかった。多分、本作を読んでいて、「ん?この事実については言及されていないじゃないか」と思われることになるだろう。そう、その事実を犯人の話とすり合わせれば、より残忍な真相に近づけるであろうことは請け合いである。

●空気男
 尻切れとんぼ。然し、いくらなんでも健忘症が過ぎるだろ(もし、写真を除いた出来事を忘れているなら)。

●パノラマ島綺譚
 瓜二つの人物の片割れが死に、それに成り変らんとするもう一方。そのもう一方が、死んだ片割れの金力を恃みにして、長年の望みであった「パノラマ島」を形にしていく。
 恋した相手(菰田の妻千代子)をどうしようもできないのは、自業自得とはいえ、辛かろうことは容易に想像し得て、何だか変に人見に同情してしまう。
 散り際は狂気(花火として自らが打ち上げられる)だが、華を咲かせたかったという心情もわからなくもない。
 しかし、あのパノラマ島の情景の克明な描写から一転、急に北見小五郎とかいう人物を出して風呂敷を急に畳もうとしているところから見ると、名残惜しい(描写だけではもうどうにもできない)がどうにか終わらせないといけないので、筋としてはまずい(あんなに苦労して人見が準備をしていたのに、未発表作の『 RAの話』で身元がばれてしまうのは、ちょいと不自然か。でも、そういうちょっとしたことで嘘が崩れていくのは、或る意味リアル)
が、ああいう持っていき方をしたのだろうと思う。

●一寸法師
 ふんだんにトリックを使っている。ただ、今からしたら、「ああそれね、知ってる」と言われかねないトリックだったりするので、期待を膨らませすぎるのは禁物。
 一寸法師が犯人かと思ったら違うし、あれれ実の父親だと思ったらそれでも違う。で、結局は入れ替えでした。……という、あの二転三転の展開が待っているので、やっぱり楽しめる(嫌いな人は嫌いだけど)のだ。

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2012年11月10日

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ネタバレ

『闇に囁く』

『湖畔亭事件』
療養のために湖畔亭にやってきた「私」。昔からレンズにとりつかれ他人の行動を覗き見る事を趣味としてきた。脱衣場に仕掛けを施し様々な人々を観察していたが、ある夜女が何者かに殺害される場面を目撃する。同じく湖畔亭に宿泊する河野と現場で血痕を発見する。事件当夜から失踪した芸者・長吉。風呂炊きの三造。早朝慌ただしく消えたトランクをもった二人組の客。長吉と河野の関係。

『空気男』
ある宿で知り合った北村五郎と柴野金十。探偵小説好き同士話が合い親しくなる二人。様々な遊びをしていたが、それぞれに問題を出し解いていく遊びから探偵小説を書くようになっていく二人。互いに作品を交換するなど遊びながら仕事をしていたが、ある日柴野が北村が以前話したトリックを自分で考えたと北村に紹介する。柴野の記憶力低下をモデルに北村が書いた「空気男」。「空気男」の挿し絵を描く河口の家に侵入した謎の人物。
途中で終了した作品。


『パノラマ島奇談』
自らの妄想を実現しようと望む小説家・人見広介。大学時代の同級生・菰田源三郎の死を聞くと、富豪であり自分と瓜二つの源三郎との入れ替わりを計画する。自らを自殺として存在を消し、墓場からよみがえった源三郎を演じる。建設のはじまった人見の王国。ただ一人の脅威・源三郎の妻・千代子。千代子の殺害。安泰となったと思われた彼を訪れた探偵・北見小五郎。

『一寸法師』

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2015年03月07日

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人見廣介の想像力即ち江戸川乱歩の夢想は見事。実際にパノラマ島を再現して乱歩テーマ・パークを作ってもらいたい(笑)ある意味ディズニー以上だ。

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2009年10月04日

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めくれる花びら。偽の妻、夫への愛。極彩色で悪夢を綺麗に書き抜いた春の私には衝撃的だった作品。くらくらする。

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2009年10月04日

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全集なので5,6本入っているのですが、やっぱりオススメは表題作のパノラマ島綺譚でした。今まで読んだ本の中で一番美しい。あの終わり方は本当にたまりませんでした。どうせなら私もあのくらい綺麗に散って死にたいわ。

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2009年10月04日

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装丁や本造りが気に入って全巻揃えたが、第一巻を読んでから5年が過ぎてしまった。

「パノラマ島綺譚」と「一寸法師」は読んだ記憶がある。なんと言っても驚いたのは「闇に蠢く」。
衝撃的な問題作と言ってもいいだろう。かなり強引で無理のある展開のような気がする。話の中身もハチャメチャ。好き嫌いは分かれるだろう。

本格推理として割とまとまっているのは「一寸法師」かな。「パノラマ島綺譚」は割と有名だが、設定には少し無理があるかな。今の技術で映像化すると面白いかもしれない。

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2022年07月23日

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久々の乱歩。
闇に蠢くがかなり衝撃的。
ただ少しだけ小難しく、長いこと読んでると飽きてくる。
しかし乱歩の世界は不思議だなぁ。
耽美と言うよりもメルヘンな気がする。

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2017年10月26日

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2009/
2009/

闇に蠢く. 湖畔亭事件. 空気男. パノラマ島綺譚. 一寸法師. 私と乱歩 大林宣彦著

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

第2巻にして、いきなり

「書けない〜」

と叫んでいる江戸川乱歩でありました。

割とこの全集は、年代順に並んでいるようなので、その後、28巻分も文章(小説だけではないけれど)を書いたというのは、すごいですねぇ。
1巻で、本が2〜3冊分はありますから、少なくとも60冊ぐらいは書いていることになります。

で、わたしが江戸川乱歩にもっている猟奇的なイメージは、このあたりの作品のようです。

おもしろいと思うけど、このあたりの作品の評価が、乱歩自身低いのは、本人が、

「こんなんじゃなくて、本格推理を書きたい!!」

と思っていたからなんだろうなぁと思います。

1巻を読むと、もともとが、本格推理をさらにひねったところから出発しているので、自分の作品のアラや、限界が見えちゃうんだろうなぁと思います。

しかし、古今の名探偵が思わせぶりでイヤな奴なのは、もしかしたら、作者がそのときにはトリックを考えられていないからいもしれないと思ったりして。
まあ、あんまりすぐに推理を披露しちゃうと、お話が続かないのだけど……。

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2010年04月10日

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