【感想・ネタバレ】パノラマ島綺譚~江戸川乱歩全集第2巻~のレビュー

あらすじ

芸術を極限まで引き上げた、この世の楽園を夢見る男が、ひょんなことから世にも恐るべき計画を立て始める。その果てには……。奇想の決定版といえる表題作と、のぞき眼鏡に映った浴場の惨劇の謎とは?……「湖畔亭事件」、初の新聞連載「一寸法師」、他に「闇に蠢く」、「空気男」を収録。【この電子版は、註釈と「私と乱歩」を割愛しています】

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Posted by ブクログ

ネタバレ

再読
●闇に蠢く
 乱歩も自ら回顧するように、何かにつけて「まとまった筋」というものを用意せずに物語を書く癖があった。故に、筋がてんでバラバラ、どうしようもなくなり怪奇趣味に走りだすとか、風呂敷を畳めずに執筆を辞めてしまうことがあった。無論、悪いことばかりでなく、そういう習慣(?)のお陰で傑作が生まれたり、読者を魅了するような怪奇趣味を提供してくれることだってある。
 「闇に蠢く」は、放蕩道楽男、野崎三郎がお蝶という女性に昵懇になってしまったことから始まる。第一に、この主人公野崎の性癖からして、真正の変態である。本当に乱歩はこういうのを描写するとき、大変生き生きと楽しそうに書くなあ、といつも思う。お蝶の死(か、どうかは不明だが、沼に片方の草履が浮かんでいた)、昔のお蝶の連合い進藤の登場、野崎の旧友植村による報告、そして洞窟に閉じ込められる野崎と植村。
 とんとんとん、と場面は展開していくのだが、行きつく先がカニバリズムだとは、誰が想像できるだろうか。
 
●湖畔亭事件
 二転三転と物語を転がすのは、乱歩の十八番。特にこの作品は秀逸だと思うのだが、どうだろうか?
 この事件の主人公もまた、中々に変態のご趣味を有しておられる。
 様々な箇所で、犯人はこいつだ、ということを示唆しているにも関わらず、成る程、河野の言うことにも一理あると思わせられ、しかし……、そうは問屋が卸さなかった。多分、本作を読んでいて、「ん?この事実については言及されていないじゃないか」と思われることになるだろう。そう、その事実を犯人の話とすり合わせれば、より残忍な真相に近づけるであろうことは請け合いである。

●空気男
 尻切れとんぼ。然し、いくらなんでも健忘症が過ぎるだろ(もし、写真を除いた出来事を忘れているなら)。

●パノラマ島綺譚
 瓜二つの人物の片割れが死に、それに成り変らんとするもう一方。そのもう一方が、死んだ片割れの金力を恃みにして、長年の望みであった「パノラマ島」を形にしていく。
 恋した相手(菰田の妻千代子)をどうしようもできないのは、自業自得とはいえ、辛かろうことは容易に想像し得て、何だか変に人見に同情してしまう。
 散り際は狂気(花火として自らが打ち上げられる)だが、華を咲かせたかったという心情もわからなくもない。
 しかし、あのパノラマ島の情景の克明な描写から一転、急に北見小五郎とかいう人物を出して風呂敷を急に畳もうとしているところから見ると、名残惜しい(描写だけではもうどうにもできない)がどうにか終わらせないといけないので、筋としてはまずい(あんなに苦労して人見が準備をしていたのに、未発表作の『 RAの話』で身元がばれてしまうのは、ちょいと不自然か。でも、そういうちょっとしたことで嘘が崩れていくのは、或る意味リアル)
が、ああいう持っていき方をしたのだろうと思う。

●一寸法師
 ふんだんにトリックを使っている。ただ、今からしたら、「ああそれね、知ってる」と言われかねないトリックだったりするので、期待を膨らませすぎるのは禁物。
 一寸法師が犯人かと思ったら違うし、あれれ実の父親だと思ったらそれでも違う。で、結局は入れ替えでした。……という、あの二転三転の展開が待っているので、やっぱり楽しめる(嫌いな人は嫌いだけど)のだ。

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2012年11月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『闇に囁く』

『湖畔亭事件』
療養のために湖畔亭にやってきた「私」。昔からレンズにとりつかれ他人の行動を覗き見る事を趣味としてきた。脱衣場に仕掛けを施し様々な人々を観察していたが、ある夜女が何者かに殺害される場面を目撃する。同じく湖畔亭に宿泊する河野と現場で血痕を発見する。事件当夜から失踪した芸者・長吉。風呂炊きの三造。早朝慌ただしく消えたトランクをもった二人組の客。長吉と河野の関係。

『空気男』
ある宿で知り合った北村五郎と柴野金十。探偵小説好き同士話が合い親しくなる二人。様々な遊びをしていたが、それぞれに問題を出し解いていく遊びから探偵小説を書くようになっていく二人。互いに作品を交換するなど遊びながら仕事をしていたが、ある日柴野が北村が以前話したトリックを自分で考えたと北村に紹介する。柴野の記憶力低下をモデルに北村が書いた「空気男」。「空気男」の挿し絵を描く河口の家に侵入した謎の人物。
途中で終了した作品。


『パノラマ島奇談』
自らの妄想を実現しようと望む小説家・人見広介。大学時代の同級生・菰田源三郎の死を聞くと、富豪であり自分と瓜二つの源三郎との入れ替わりを計画する。自らを自殺として存在を消し、墓場からよみがえった源三郎を演じる。建設のはじまった人見の王国。ただ一人の脅威・源三郎の妻・千代子。千代子の殺害。安泰となったと思われた彼を訪れた探偵・北見小五郎。

『一寸法師』

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2015年03月07日

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