手塚富雄の作品一覧
「手塚富雄」の「ツァラトゥストラ(合本)」「ファウスト」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
ゲーテの代表作『ファウスト』
一部と二部とありまた分厚いので興味はありながらも読めずにいたが、読んでみると戯曲ということもあってかなり読みやすかった。手塚富雄の訳はヘルダーリンやニーチェなどで読んだことがあったのもあり、岩波でなく中公文庫を選んでみたが、これで正解だったと思う。訳も平易でありながらリズム、格調があってとても良かった。
ファウストは映画も見たことがあったが、やはり内容がかなり違く、またこうした古典は原典を読むのが一番良いと思う。ウェルテルはゲーテ自身の体験や取材によるところが大きいらしく、ノンフィクション的な面白さもあったが、ファウストは極端・突飛な設定など含めて、これぞ物語という感じがする。その観点で見れば、両極端に位置するウェルテルとファウストの両方に触れてみると、ゲーテの言い尽くせぬ才能が感じられる。
中でも、全体としてキリスト教を基調とした作品の雰囲気は、味わい深いと同時に、それが作品全体を彩っているという魅力を感じる。
とくにヒロインのマルガレーテの結末はファウストと対照的である。この少女はファウストの行路における犠牲者で、自分自身嬰児殺しや母殺しという許されぬ罪を犯してしまうが、最後は他人の力によってでなく、自らの信仰心によって救われたのだ。途中まではファウストしか見えていない若い少女という感じだったのが、最後の場面ではファウストも認識しない、一つの独立した精神になっている。「救われたのだ!」という天の声も含めて、この場面は舞台で見たら一番映えそうだった。この少女の存在が二部のファウストでも鍵を握ってくるらしいので、その後のファウストにも注目したい。
また、手塚氏の解説の中で、ゲーテはファウストの中で本筋からずれて遊んでいるところがあるが、それは天才のみに許された所業なのだ、的なことが書いてあった。確かに、ファウストとメフィストの二人以外の場面では、そのように思われるところが多かったが、読んでいるときには気にしないくらいで、その場面その場面に面白さがある。ゲーテの思想的な面白さも詩の中に詰め込まれていて、手塚氏のいうように、それらのうちから箴言として心に残るものも見つけられるだろう。
「ワルプルギスの夜」という題の章もあって、まどマギやんと思いながら楽しんでよめた。だいたい、魔女がどんちゃんお祭り騒ぎできる特別な夜、ぐらいの意味らしいが初めて知った。
二部も大学生が終わるまでに読もうと思う。
Posted by ブクログ
まず、誰の訳で読むか迷ったが、比較記事などを参考に手塚富雄氏の訳を選んだ。言い回しに引っかかることもなく最後まで面白く読めたので、私には合っていたのだと思う。
ギリシア神話の神々や、架空の生き物も大勢登場するが、詳しい注のおかげで理解しやすく、訳者の解釈まで添えられているのも面白かった。こんなに隅々まで注を読んだのは初めてだった。
20代前半から書き始め、82歳の頃に完成させたという、ゲーテが一生をかけた作品。その歳月に思いを巡らせながら読むと、若々しい情熱や勢いが感じられる場面もあれば、長い人生を経たからこそ生まれたような重みを感じる場面もあり、一つの作品の中に異なる年代のゲーテが同居しているように思えた。
人間とは何か、という大きくて単純な、答えのない問いに向き合った作品だからこそ、ゲーテもまた簡単に完成とはせず、生涯をかけて書き続けたのかもしれない。そんなことを想像すると、この作品がいっそう美しく思えた。
良くも悪くも欲望を抱え、それでも何かを追い求め続ける人間の姿が、最後には肯定されているように感じたのが印象的だった。人は過ちを犯さないことよりも、立ち止まらず求め続けることに価値があるのかもしれない。
「悪魔は年をとっている。だから悪魔の云うことがわかるには、早く年をとることです」
一度読んだだけで、とても全てを理解できたとは思わない。もっと年を重ねて10年後、20年後に再読したら、今とは違うものが見えてくるのだろうか。長いつきあいをしたいと思えた一冊。