あらすじ
あらゆる知的探究も内心の欲求を満たさないことに絶望したファウストは、悪魔メフィストフェレスと魂をかけた契約を結ぶ。巨匠ゲーテが言葉の深長な象徴力を駆使しつつ自然と人生の深奥に迫った大作の第一部を、翻訳史上画期的な名訳で贈る。読売文学賞受賞作。訳者による解説「一つの読み方」を付す。
〈巻末エッセイ〉河盛好蔵・福田宏年
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悲劇的な人物、心情、情景描写などを哲学、神学、神話、劇、詩、社会、宗教、天使、悪魔などなどありとあらゆる視点から描かれた悲劇の最高傑作。これ以上の悲劇を描ける人は今後生まれてくるのだろうか。
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戯曲なので読み進めることはできたし、情景はイメージしやすいが、全ての意味を理解できたかというと別である。
今響く言葉も幾つかあるが、年を取ればまた違った感想を持つのだろう。
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老学者ファウストは悪魔メフィストフェレスと「とまれ、おまえはじつに美しいから」と言った時、自分の魂を渡す契約を結ぶ。その代償として若返り、
「さっぱりと知識欲を投げすててしまったこの胸は、
これからどんな苦痛もこばみはせぬ。
そして全人類が受けるべきものを、
おれは内なる自我によって味わいつくしたい。
おれの精神で、人類の達した最高最深のものをつかみ、
人間の幸福と嘆きのすべてをこの胸に受けとめ、
こうしておれの自我を人類の自我にまで拡大し、
そして人類そのものと運命をともにして、ついにはおれも砕けよう。」(第一部PP142~143)
と人生をやり直すことを決意する。しかし、一幕一幕場面が変わり、主人公のファウストは相変わらず、女性の後を追いかけ回し続ける。最後は寄せて返る波の非生産性に腹を立て、海の埋め立てを実行する。そして、立ち退かない老夫婦を焼死させることになりながらも、自身は
『自由な土地に自由な民とともに生きたい。
そのとき、おれは瞬間にむかってこう言っていい、
「とまれ、おまえはじつに美しいから」と』(第二部P568)
と思いを馳せ、亡くなる。しかし最後は、メフィストフェレスとの契約履行のとき、天使たちが突然降り立って、約束を反故にしてしまう。
天使たちは
「どんな人にせよ、絶えず努力して励むものを、
わたしたちは救うことができます。」(第二部P598)
といって、主の救いを歌う。
傍から見て身勝手な物語だと思う。しかし、これは憂いを克服する物語なのだ。老学者の頃のファウストに自殺を考えさしたこの憂いを、悪魔の力を借りながら最後は退ける。ゲーテにとって、この、憂いがどれだけ生命に反するものだったかを察しなければならない。解説文で中村光夫が『ファウスト』のセリフは「作者の体得した人生の真実」と書いていた。それを汲み取る努力が、この読書には必要だ。
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生涯を通して人智の宝庫を掴み取っても結局は何も知らないということが分かっただけ
肉体の翼は閉じていることが多く精神の翼だけは羽ばたこうとバタつく
無邪気さと無垢なるものは時の渦に飲み込まれてひとつひとつ挫折に変わり
太陽に背を向けて冷たい霜を胸であたためたくなると復讐の女神メゲラが囁く声に耳を傾けてしまう
人間は努力する限り迷うもの
人を欺く仮面の群に繋がれ怯える心
恐怖と希望は最大の敵
寂寥という虚無のなかで一切を見つける
救いや慰めはいらない 困難な危険を恐れないファウストの勇気がその鎖を断つ
詩のこころは美の調和をもたらす
子供のころに聞き慣れた歌が地獄の淵から引き戻す
胸から溢れ出て全世界を再び心の中に入れる
非精神的である無感動の意識は浅く留まり
揺すぶられる感動を必要としている戦慄する魂だけが前進していく
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古典で戯曲というと近頃シェイクスピアを数編読んだという程度のニワカだが、古典で名作といわれる作品らに感じることがないわけではない。必ずしも面白いものではないこと、週刊少年ジャンプ掲載作品のようだということ。前者については戯曲に限らぬこと。後者については、作者が第一に気にすべきは人気であっただろうということである。客が席を立たぬようにすることが第一で、叶うならばリピーターを生産したかっただろうということである。それを由来として、いろいろと雑なところがあるように見える。
『ファウスト』も古典で戯曲だが、第一部を読んだ限りでは前述のようなことはない。雑だと感じないし、面白い。
なぜか第一部の巻末に掲載されている、第二部まで含めた解説によればゲーテは半生をかけてこの物語を綴ったそうで、死の間際にも改稿を施している。重ねた推敲が悪く働かず、作品を昇華させたということか。
巻末エッセイによれば、ファウストの翻訳は森鴎外をはじめ幾つも存在するが、必ずしも読みやすいものではなかったらしい。本書はそのあたりを強く意識して翻訳がなされたということで、そのためだろうか、読みやすいと感じるのは。
さて、本作品にはノストラダムスの名が登場する。ただ一度だが、出生地たるフランスはおろか全世界的にはそうでなくとも、一時期日本人なら誰でも知ってるくらいの著名人たりえたのは、古典名作の権威があったからなのかなとか。
石川賢が「虚無との戦いは空間の奪い合いだ」としたネタ元だったのかなとか。
ワルプルギスの夜の描写は『ベルセルク』の蝕に着想を与えたのかなとか。
ハロルドシェイの呪文はこの辺由来なのかなとか。
思ったり思わなかったり。
Posted by ブクログ
高潔にして世界の真理を追い求めた末、自分のちっぽけさに絶望した主人公ファウストが、悪魔メフィストフェレスに魂を売って人間的快楽を知るといった内容だった。設定としては結構面白かったが、内容が面白いかと言われれば個人的にはそうでもなかった。
所々に出てくるポエムはちょっとよくわからなかった。また、登場人物たちの何気ない発言は含蓄に富んでいるが、少々唐突で無理やりであり、著者がこの作品を通じて自分の人生哲学、思想を詰め込もうとしているように感じた。
ただ、この手の古典的名作の良さというのは、そのつまらなさの故に、読後に現代の流行りの小説を読むといつもの数倍面白く感じることができるといったところにあると思っている笑
Posted by ブクログ
こんなに好き勝手やって、最終的に救済されるのは納得いかない
信仰心があればもっと理解できるのかもしれない
グレートヒェンに関しては悲劇っていうかもはやファウストの罪でしょ
親殺させて兄殺して行方をくらませてる場合か?捕まってから助けに行くのはあまりにも遅いのでは?
一部と二部だとまだ一部の方がおもしろい
二部はキリスト教知識に加えてギリシャ神話とか歴史に詳しくなくて読むのが大変だった