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遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた――紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは、人質たちと見張り役の犯人、そして……。人生のささやかな一場面が鮮やかに甦る。それは絶望ではなく、今日を生きるための物語。今はもういない人たちの声、誰の中にもある「物語」をそっとすくい上げて、しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。
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Posted by ブクログ
人はそれぞれに物語を持っている。
それが他者にとっては何でもない出来事であろうと、
それが言葉や文字で伝えにくい内容であろうと、
僕たちは常に自分の人生という物語の当事者なのだと、
そう思わせてくれる小説でした。
ネタバレになるため具体的な内容は書けませんが、
あの印象的な書き出しは、その後に続く9つの朗読を
深みを持って読まざるを得なくさせるのではないでしょうか。
小川洋子さんの巧みな描写と表現力には
どこか恐ろしさすら感じました。
特に印象深かったのは、朗読の一つにあった
胸の中に特定の人物が住み着き、
ふとした瞬間にその人物が心の中に現れるという描写です。
僕の中にも様々な人が住んでおり、
もしあの人なら、この場面でどう振る舞うだろうかと
考える瞬間が日常に多々あるため、深く共感しました。
Posted by ブクログ
とある国。反政府ゲリラの襲撃により、人質となったツアー参加者七名と添乗員の計八名による朗読会の記録。そして、それを聞いていた特殊部隊員が語る物語。
『ささいなことなのだけれども、ずっと胸の片隅に引っかかって消えない記憶というものがある──。』
遺族に語り手のことを聞いても挙げられることのないような些細な出来事も、人生でほんの一瞬だけ交わった人たちも、彼らにとっては大きな支えになっていた。彼ら自身にしか語ることのできない物語だったと思う。
彼ら同様、彼らの語った物語の中に現れる人々にも語られるべき物語があるのだろうと感じた。
本を閉じた後、自分だったら何を語るだろうかと考えさせられた。
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