あらすじ
遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた――紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは、人質たちと見張り役の犯人、そして……。人生のささやかな一場面が鮮やかに甦る。それは絶望ではなく、今日を生きるための物語。今はもういない人たちの声、誰の中にもある「物語」をそっとすくい上げて、しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。
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Posted by ブクログ
やっぱり小川洋子作品にはハズレがない。夢の中にいるような、原風景を見ているような、生きているけどすぐ側には常に死があるような。この本の中で特に好きだったのは「やまびこビスケット」「B談話室」「槍投げの青年」「花束」かなー。解説で紹介されている小川さんの言葉「物語として残しておきたいと願うような何かを誰でも一つくらいは持っている」「それらを見つけ、言葉ですくいあげてゆくときのわくわくする気持ちが好き」。自分には出来ない言語化をしてもらってる感じ。
Posted by ブクログ
『本を読む人はうまくいく』で紹介されていた本
やっと読むことができた!
人質の方たちが語るエピソードが、日常に潜むなんてことないものだったけど、どれも本当に綺麗で読み入ってしまった
Posted by ブクログ
あ〜〜好みぶっ刺さり小説。江國さんのひとりでカラカサさしてゆくに読後感が似てる。冒頭で、凄惨な最期を迎えた人々が残した物語であることが明かされるので、言いようのない切なさが全編漂う。わたしが好きだった話は、
•大家の偏屈おばあさんとビスケット並べる話
•公民館で細々と行われている集会や会合に参加する男性の話
•おじいさんが作るヤマネのぬいぐるみをお守りにしている男性の話
自分で書いててなんだそりゃと思ったけど本当にそういう話なんです笑
どんな最期を迎えた人にも、きっとその人の心にずっと残り続ける大切な記憶や思い出があったんだなと、そう思って泣きたくなる宝物みたいなお話たちだった。
Posted by ブクログ
反政府ゲリラの襲撃を受けて人質として捕らえられた8人。
捕らえられてる時に語られた8人の過去の忘れられない物語と人質救出作戦通信班の政府軍兵士の過去の忘れられない物語を描いた作品です。
ただの日常の中でも、心に残ることはあり、それを言葉にすることで、日常が面白くなるのかなと感じました。
印象に残った話はやまびこビスケットでした
Posted by ブクログ
最初にこの本を書店で手に取った時、表紙の白い小鹿が人質となった人物の悲しさや絶望感を象徴しているのだろうか、と思いました。しかし、作品を読み終わると、白い小鹿の目が人質一人ひとりの大切な過去を見つめているような気がしました。人質の絶望感というよりも、物語の温かさが胸に残る小説でした。
Posted by ブクログ
「人質たちが暇つぶしに、
何か一つ思い出を文に書き出して朗読し合おうとする。
今必要なのは、
じっと考えることと耳を澄ませることだ。」
冒頭のこの文を読んで、
小川洋子さんが「物語の役割」で、
辛い現実を乗り切るための手段として物語がある、
と語られていたのを思い出した。
杖
子供の頃足を怪我した太った下っぱ工員さんに、
のこぎりで切った枝を渡して助けてあげた。十数年後、
交通事故で意識を失っていたわたしの頭の中に、
工員さんがバーナーと立派なお面を持って現れて、
足を治してくれた。
目覚めたら、切断寸前だったらしい足は、
どうにか持ち堪えてくれていた。バーナーとお面は、
世界を壊すのではなく創り出すものだったと気付いた。
やまびこビスケット
味より型の種類が重要なビスケット。
嫌われ者の大家さんにとって、
家賃は決して横取りされてはならない獲物であり、
整理整頓は理屈抜きの生存本能であった。工場でたまに
貰える不良品を、大家さんと食べるようになった私。
厄介者扱いされる不良品は、大家さんと私の仲間だ。
大家さんが亡くなった部屋の丸テーブルには
『整理整頓』のアルファベットのビスケットが
綺麗に並んでいた。
私はそれを布に入れ、お守りとして大事にした。
B談話室
そこでは様々な集会が開かれる。どんな種類の会にも
僕はすんなり入り込める才能があるようだ。
不思議なことに必ず片隅に空いた席があるのだ。
ここでの色んな経験が、
僕が作家になったきっかけだった。
世界中のひっそりとした場所にB談話室はある。
ささやかな繋がりを持つ者たちが、
真に笑ったり泣いたり感嘆したりできる場所。
冬眠中のヤマネ
僕は子供の頃、いろんな事柄について「分かる」と
感じる場面が多かった。受験に受かることも、
茶店の店主が死ぬ日も。
でも「分かる」と思っていたことは全部、
外から発信されたものばかり。
老人を背負って石段を登っているとき、
二人はつなぎ目なく一つにつながり合っている、
と感じた。生涯で初めて、本当に何かを「分かった」
瞬間だった。片目の濁った老人が静かに泣きながら、
片目しかない冬眠中のヤマネをくれた。
それを僕はずっと側において過ごした、
自分の身体の一部のように。
コンソメスープ名人
僕は八歳、留守番中。隣の家の娘さんが、
母(車椅子で庭にじっと動かずに居るから、
ミイラになろうとしているんだと僕は信じている)
にコンソメスープを作らなければならないから
台所を貸して欲しい、とやってきた。
どんよりした雰囲気は、台所に立った瞬間、一変した。
テキパキと働き、眼差しは真剣だった。
温度計を刺すという使命を与えられた僕は
誇らしい気持ちで、これを飲んでミイラになれるなら
幸福なことだと思った。
娘の母は三日後に亡くなったそうだ。
槍投げの青年
槍を投擲する、ただそれだけの練習だった。
眼前で繰り広げられているのは、肉体を使う運動である
と同時に、孤独な思索でもあった。
何かに打ち込んでいるとき、
真に自分との対話ができるんだろうと思う。
描写が細かくて、槍と青年の一体感を表現しているのが
印象的だった。
亡くなった夫の代わりに、頭の片隅に住み着いた青年が
心の支えになってくれた。素敵な終わり方だった。
死んだおばあさん
「死んだおばあさんに似ている」。子や孫の世話に
一生を尽くした祖母の、うつむき祈りを捧げる顔。
偏屈なおばあさんが晩年、妄想の中でヴァイオリンを
弾く顔。
実にさまざまな、自分と似ているらしいおばあさんが
登場する。「でも私自身は子供を持つことができず、
死んだおばあさんには永遠になれないのです。」
終わり方が衝撃だった。
世にも奇妙な物語のような雰囲気だった。
花束
バイトの最終日、唯一の僕の担当であった
葬儀典礼会館の課長さんに立派な花束を貰った。
死者があの世で着替えるためのスーツを、
よく買いに来る人だった。僕は昔、腹違いの妹が
大事にしていた人形をこっそり持ち出し、
社宅の階段の踊り場から投げ落としたことがある。
その後、同じ場所で投身自殺が起き怖くなった。
帰り道の交差点にお供えされた枯れた花に気づき、
綺麗に掃除して貰った花束を生けた。そして、
課長さん、妹の人形、ここで亡くなった誰か、
身を投げた主婦へ祈りを捧げた。
ハキリアリ
ハキリアリの行進のことを
「一つ一つの切れ端は皆形が違うのに、見事に統制が
取れて、切れ目のない一続きになっている。
ジャングルを静かに流れる、緑の小川だ。」
と言った例えが素敵だと思った。
緑の小川は、苦心する素振りも見せず流れてゆく。
自分が背負うべき供物を、定められた一点へと運ぶ。
そのようにして人質は自分たちの物語を朗読した。
物語が一つ語り終わるたびに、そうだ、
この人たちはもう居ないんだと、寂しくなった。
話の終わりに現在の職業が記載されているのも
楽しみにしながら読んでいた。
Posted by ブクログ
普段、腕や首や血が飛び散ったり井戸から貞子が出たりするものばかり読んでいるので、文字通り心が洗われた気持ちになった。
たまには心をお洗濯しないとだめですね…。
ささいな日常を(もちろん練りに練られた内容なのだけども)繊細で丁寧で厳選された言葉で綴られると、こんなにも濃密な世界になるんですね。
どの話も素敵なだったのですが、個人的には「B談話室」と「コンソメスープ」が好きでした。
この物語を語った人々がどうなったかは、冒頭で語られているので、だから余計に最後のエピソードの「この朗読会が終わらなければいいのに」という一文が胸に応えました。
読み終わってため息です。余韻引きずるわー。
Posted by ブクログ
監禁されたことによる人質の方たちの朗読会。人は誰しも語りたくなるような思い出を持っている。事件や事故大きいことではないかもしれない。けれども、自分にとって大きいことは物語のように話は進んでいく。
素晴らしい小説です。
Posted by ブクログ
命は尊いものであり、生きていると色んなこと起こってくるけど、感動を大切にしたいと、この本を通して感じた。
やまびこビスケットの大家さん
整理整頓は自己防衛の最良の武器である。意地悪なばあちゃんってイメージが強いけど、これはその通りなのかも。大家さんと動物園に行くほど仲良いって、すごい展開
亡くなる最後まで、整理整頓を心掛けてた。守り抜いた、人間味のある内容でもあり、深かった。
B談話室
公民館の部屋、談話室。いろんなことに使われてる。
受付の女性に無理やりな感じで参加することなった。行き当たりばったりで話してるのがすごい。
最後、おじさん40年もやって、女性なんていない、あの女性はなんだったんだろう…
冬眠中のヤマネ
おじいさんとの出会いが、眼科医になろうという、背中を押した経験でもある。
コンソメスープの名人
隣の娘さんの料理かっこいい、憧れる。一切迷いがない様子とか。
槍投げの青年
こんなに槍投げの様子を豊かな表現でこんなにも文で書けることに感動。さぞかし青年かっこいいんだろうな。
Posted by ブクログ
戦争やテロ、災害などでたくさんの人が亡くなる悲しい出来事が起きたとき、私たちはつい、その出来事の大きさを「量」で測ろうとしてしまう。十万人が亡くなった、数百万人が被害にあった――そんな数字のインパクトで、悲劇の大きさを捉えようとしてしまう。
『人質の朗読会』は、冒頭で「テロによって人質に取られていた8名は全員亡くなった」と告げられるところから始まる。彼らの死後に発見された、朗読会の様子を収めた記録テープがラジオで放送されることになり……という導入で、読者は最初から「登場人物のいく末」を知らされたまま、物語を読み進めていくことになる。
そこで強く感じるのは、「彼らは確かに生きていた」という、当たり前だけれど揺るぎない事実だ。そして、「彼らにもそれぞれ豊かな人生があった」ということでもある。8名の朗読には、それぞれの人生、それぞれの感情、それぞれのきっかけが刻まれていて、なぜこのツアーに参加したのかという理由も一人ひとり違っている。その記録を、死後になって私たちが耳にするという体験は、「この人たちが生きていたことを忘れないでほしい」という願いを、静かに突きつけられているようでもあった。
もし自分が死ぬとしたら、自分と関わってきた人たちに願いたいのは、「僕の声を忘れないでほしい。僕の声をどこかで覚えていてほしい」ということだ。なぜなら、人の記憶はその人の声と密接につながっていて、声を通じて、その人の表情や仕草、言葉の選び方やものの考え方まで、丸ごと立ち上がってくるからだ。だからこそ、人質たちが「声」で自分の人生を記録したことには、とても大きな意味があるように思う。同時に、最後の朗読が解放戦線側の兵士によるものだという事実も重い。彼もまた生きていて、彼にもまた一つの人生がある。
ほんの少しのボタンの掛け違えで、人は「テロリスト」と「人質」という関係に分かれてしまうことがある。けれど、元をたどれば皆、同じように生まれ、育ち、家族がいて、日々の暮らしと人生を持つ人間だ。
そのことを思うと、胸がぎゅっと締め付けられるような苦しさがある一方で、彼らの声をしっかり耳と胸に焼き付け、「彼らが生きていたことを決して忘れない」と心に決めること自体が、彼らの存在をこの世界につなぎとめる、ひとつの供養になるのかもしれない。
そんなことを思いながら、この物語を読み進めていった。
Posted by ブクログ
何かの比喩かな?と思った「人質の朗読会」というタイトル、そのまま「人質の朗読会」の話でした。
その人質は全員亡くなったことが明かされ、複雑な気持ちで読み始めることになります。
人質となってから時間も過ぎ、少し周りを見る余裕ができる頃。囚われの身である8人もだんだん打ち解けてきたのかな。
殺伐とした状況の中で、せめて穏やかな時間を過ごすためにできる事。
未来がどうなるわからない今、絶対に確かな過去の記憶を思い出し、したため、語る事。そしてそれに耳を傾ける事。
それで自分を、お互いを支えていたのかな。生きるための朗読会であることは間違いなく、だから切ない。
他人からしたらなんて事ない出来事だろうけど、強烈に覚えてる事あるなぁ。
各々のエピソードの後には『職業・年齢・性別・旅の目的』の記載があるのですが、ここがまた。この1行でさらに印象が深くなります。
しっかし発想がすごい…よく思いつくなぁ。
Posted by ブクログ
人生を彩り形作るのは、
心の底から泣いたり笑ったりするような特別な瞬間だけでなく、些細だけど確かな記憶として残るような出来事で、
そういった思い出を大事に温めて心の温度を保つことができれば、
避けられない悲しみや別れを乗り越える糧にきっとなるだろうと感じた。
辛い現実という背景で語られる自己の物語は、
平常時に語られるそれとは違って、虚栄や妬心を含まず、
まっすぐで純度が高いものだった。
私が語る物語は、どんな物語だろう。
匿名
人質になった日本人たちが極限状態の中で自らのエピソードを語っていく物語です。
とても平易な語り口調で綴られる物語は彼らがもう亡くなっていることもあり、セピア色の写真を見るようです。
小川洋子の作品の中でも、その完成度の高さからもっとも好きなものの一つです。
小川洋子の特徴のひとつのグロテスクさがあまり前面に出ず、叙情的な部分が際立った作品であると思います。
私は特に「槍投げの青年」が好きです。陸上競技特有のストイックさや、力強さや、繰り返しのルーティーンからの高揚感などが、その文章の中で鮮やかに蘇ります。
Posted by ブクログ
遠い異国の地にて反政府ゲリラにより人質となった人々が、捕らえられている間に退屈な時間を潰すため、それぞれの過去にあった印象的な話を語り合う。犯人の動きを探るために仕掛けていた盗聴器に、その録音テープが残されており、数年後ラジオにて放送されることとなった。
その八人の人質と、実際に盗聴を行っていた特殊部隊の兵士による9編のお話。
異国の地で捕らえられ、いつ日本に帰れるか分からない環境の彼らが語るお話なので、さぞや悲しいものかと思いきや、日常にどこかしらでありそうなエピソードが語られる。
子どものころに怪我をしたおじさんに会った話、若いころに住んでいた大家さんとの交流、公民館の談話室の話、謎のぬいぐるみを売るおじいさんの話、コンソメスープを作る隣人の話、槍を持って電車に乗り込んだ青年の話、死んだおばあちゃんに似ていると言われる話、バイト最終日に花束をもらう話。いずれも絶妙なエピソードで、解説の佐藤さんが書かれていたように、自分だったらどんな話を披露するだろうと真剣に考えてしまった。
彼らがこの世にもういないと分かっていて、読み進めないといけないので、どのエピソードも日常に沿ったものであることがより切なくなるし、彼らの過去の日々に、より愛しさを感じる。とても良い作品。
Posted by ブクログ
人質として、いつ処刑されるか分からない状態の中で、自分の人生の一部を文章にして朗読し合う話です。
緊迫した状況下で、ほのぼのした話、切ない話、楽しい話が発表します。
牢獄の中で生きる糧を見つける人質の心情を上手く掴んでいて、その発想が面白かったです。
Posted by ブクログ
こんなにも生と死、いつも通りの生活の有り難みを感じられる小説はあまり読んだことはありません。
極限のなか感謝、後悔、恐怖、様々な感情を押し殺して朗読会を行います。
8人の人質は偶然その場に居合わせただけで、皆それぞれの生活があり、家族や友人がいる。年齢や性別も違っているお話がとても身近に感じられます。9人目の、通訳の政府軍兵士が語った「彼らは祈りにも似た行為であった」の一文には涙が出そうになりました。
悲しいけど、素敵な短編小説です。
Posted by ブクログ
ずっと心の中にあり、人に話す程ではない、落ちもない話だけど忘れられなくて、思い出すたび、鮮やかさを増す記憶。私にもそんな話があるだろうか。
語り手一人一人の、その人となりが、息遣いが、ひとつひとつの話に感じられる。
お気に入りは、『死んだおばあさん』。
Posted by ブクログ
人間一人一人の人生がささやかな思い出で支えられている。辛い経験。悲しい記憶。過去には色々あるけど、ぐっと今も自分の軸となって心を支えている記憶って凄く素敵だなと思った。
やまびこビスケットのお話が個人的には凄く良かった。2人の距離感がビスケットを通じて縮まっていくのが大家さんの整理整頓への考えが凄く良くて私も整理整頓しようと大家さんとお話しているような不思議な感覚だった。
Posted by ブクログ
小川氏が書く物語は…物凄い不思議ですね。
いつも思ってました。この方にしか生み出せない物語が、確かに存在する。そして深く刺さって読み手はそれを取り出さない。
この物語の驚くべきところは、初手で語り部の人達が全員死ぬということ…その効果は絶大で、ひとりひとりの話をズンと重くのし掛かけて読んでしまう。
大事にしないと、覚えておかないと。
って、図らずとも慎重になる。
させられた。
Posted by ブクログ
多くの人が持っているちょっとした記憶に刻まれた出来事を、ちょっとした工夫で語られる話。それを人質たちが語る。それを立て篭もり犯人を囲む警察が盗聴するというシチュエーションがより人質たちの思いを際立たせる。僕だったら、何を語るだろうという思いを抱いた。そして、僕の行動・行為が相手を涙させたであろうことに思いが至った。きっと、とても楽しかったことではなく、心の奥に刺さったトゲのような出来事なんだとう。
Posted by ブクログ
地球の裏側のどこか知らない国、
8人の日本人の乗ったマイクロバスがバスごとゲリラにより拉致される。
世間には、一通りのゲリラの実態なども報道されるが、100日を超える膠着状態になり、世間からは少しづつ忘れ去られていく。
その危機の真っ只中の彼らは、生きて帰れるのか死ぬしかない中で、一人一人の朗読会が始まる。
短編小説みたいだ。
一人一人の物語を静かに、淡々とみんな聞いている。その話は子供の頃のことや若い時のこと、人が聞いても感動も何もないお話。
何なんだろうな。
何かしら、薄暗闇の中で静かに瞑想のような感じすら受ける。
心が透明になりそうだ。
私は「冬眠中のヤマネ」が好きだ。
いったいこんな時、私は何を朗読するんだろうか。
Posted by ブクログ
博士の愛した数式からの2作目。
人質たちが残した、一人ひとりの印象深い日記。
まるで短編集を読んでいるような贅沢な一冊でした。
全く異なる立場や目線など、色々な人の人生をちょっとずつ覗いているような気持ちになります。
ちょっと稀有な日々だけど、ほっこり。
タイトルの 人質 と 朗読会 のギャップが、湯豆腐をジャムで食べているような、、いや、そうはならない。
Posted by ブクログ
小川洋子さんの作品を読むのはもしかしたら『博士の愛した数式』以来かも?!美しく隙のない、完璧だけど冷たさを感じさせない文章が読んでいて心地よく、ひとつひとつのお話もなんだか摩訶不思議で切なく、唯一無二の小川ワールドに惹かれました。素晴らしかった~!他の作品も読まなきゃ!!
Posted by ブクログ
読む人によって受け取るメッセージが変わりそう こんなにいろんなことを感じた本はあまりない気がする。ただ、人は生きているとお互いにちょっとずつ影響し合っていて、そんな些細なことの積み重ねが人生になっていることをしみじみ感じさせてくれた。
Posted by ブクログ
ツアー中 異国で反政府ゲリラの襲撃を受け人質となった日本人たちが各人の思い出を語る─。
この先 起こることを自らの意思で選択できない状況下。
しかし個々の中にある思い出は何者にも踏みにじられることはない。
人質が8名に対し語られた物語は9話。
正直どんな気持ちで読んだらいいのかと思った。でも語られる話はどれも日常のささやかな思い出で、暫し状況を忘れてしまう…。
9話目があることによって冒頭のショッキングで血なまぐさい事件とは裏腹に終わりは静謐な余韻に満たされたんじゃないかと思った。
そして人には誰しも語れる物語があるということか…。
小川洋子さん。久しぶりのこの感じ。
Posted by ブクログ
誰しも一つはある、人に話すほどではないけど大事に抱えているストーリーを教えてもらったような本。
子供の頃、母に叱られて家出をする!と大騒ぎして、母にお弁当としてゆで卵とハムとセロリなどをマヨネーズで会えたらサラダを持たせてもらって(喧嘩したのに?)、家の前の公園で泣きながら食べたのを思い出した。
Posted by ブクログ
ある国で監禁された8人の人質たち。子供の頃のちょっと不思議な経験、あれはなんだったんだろうと微笑みながら思い返す記憶、心のどこかにしまっていた物語がしずかに厳かに語られる。
ひとりひとりの物語が色鮮やかで、だけれど、きちんと完結しており、この話にはこの語り方、この長さが最適解。でもずっと苦しいのはそれがラジオから流れて来た人質のひとりのみんなの命をかけた人生の朗読会だから。
自分の中にも物語があるのではないかと考えてしまった、けれど、ろくな物語はなさそうです。
俳優の佐藤隆太さんの解説が唯一の光となり、もはや物語の一部でありひとりの人質だったのかもしれません。
Posted by ブクログ
囚われの人質たちが自らを語っていく。小川さんの作品の中ではかなり読みやすい作品だと思いました。どの人質の朗読も独特な匂いを感じます。「やまびこビスケット」工場で働く大人しい女と偏屈な大家の女。ビスケットの出来損ないを通じて、二人の仲が少しずつ近づく。印象的でした。「コンソメスープ名人」死期の近い母を持つ娘とぼく。小川さんらしさを感じました。少し不気味で、不思議。「死んだおばあさん」様々な死んだおばあさんに似ている女。薄気味悪いはずなのに、全然嫌悪感がない。永遠に死んだおばあさんになれない、この締めが好き。
Posted by ブクログ
最初はスローペースで読んでいたのだけど、だんだん気になっていって最後はとても集中して読み込んだ。
私が人に朗読するなら、自分のどんな思い出を語るだろう。
Posted by ブクログ
一万円選書の5冊目。
題名の通り、異国の地で誘拐された人質たちが語る朗読会。
その内容は自分自身の人生の1ページについて。
自分の中にしまわれている過去、未来がどうあろうと決して損なわれない過去だ。
それをそっと取り出し、掌で温め、言葉の舟にのせる。
それぞれの語った内容が短編として綴られていました。
どの話もどこか不思議で、特にオチがあるわけでもありません。
でも他の人からしたらなんでもないその思い出が、きっとその人の人生にとってなくてはならない瞬間だったのだと思います。
彼らの話はしっかり届いていましたね。
私にも届きました。
私が語りたい人生の1ページは何だろうって考えさせられました。
If you have an opportunity to talk about your life, what would you choose?
What is the meaning of the episode for you?