【感想・ネタバレ】人質の朗読会のレビュー

あらすじ

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた――紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは、人質たちと見張り役の犯人、そして……。人生のささやかな一場面が鮮やかに甦る。それは絶望ではなく、今日を生きるための物語。今はもういない人たちの声、誰の中にもある「物語」をそっとすくい上げて、しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

最初にこの本を書店で手に取った時、表紙の白い小鹿が人質となった人物の悲しさや絶望感を象徴しているのだろうか、と思いました。しかし、作品を読み終わると、白い小鹿の目が人質一人ひとりの大切な過去を見つめているような気がしました。人質の絶望感というよりも、物語の温かさが胸に残る小説でした。

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2026年04月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

命は尊いものであり、生きていると色んなこと起こってくるけど、感動を大切にしたいと、この本を通して感じた。

やまびこビスケットの大家さん
整理整頓は自己防衛の最良の武器である。意地悪なばあちゃんってイメージが強いけど、これはその通りなのかも。大家さんと動物園に行くほど仲良いって、すごい展開
亡くなる最後まで、整理整頓を心掛けてた。守り抜いた、人間味のある内容でもあり、深かった。

B談話室
公民館の部屋、談話室。いろんなことに使われてる。
受付の女性に無理やりな感じで参加することなった。行き当たりばったりで話してるのがすごい。
最後、おじさん40年もやって、女性なんていない、あの女性はなんだったんだろう…

冬眠中のヤマネ
おじいさんとの出会いが、眼科医になろうという、背中を押した経験でもある。

コンソメスープの名人
隣の娘さんの料理かっこいい、憧れる。一切迷いがない様子とか。

槍投げの青年
こんなに槍投げの様子を豊かな表現でこんなにも文で書けることに感動。さぞかし青年かっこいいんだろうな。

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2025年12月09日

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ネタバレ

戦争やテロ、災害などでたくさんの人が亡くなる悲しい出来事が起きたとき、私たちはつい、その出来事の大きさを「量」で測ろうとしてしまう。十万人が亡くなった、数百万人が被害にあった――そんな数字のインパクトで、悲劇の大きさを捉えようとしてしまう。

『人質の朗読会』は、冒頭で「テロによって人質に取られていた8名は全員亡くなった」と告げられるところから始まる。彼らの死後に発見された、朗読会の様子を収めた記録テープがラジオで放送されることになり……という導入で、読者は最初から「登場人物のいく末」を知らされたまま、物語を読み進めていくことになる。

そこで強く感じるのは、「彼らは確かに生きていた」という、当たり前だけれど揺るぎない事実だ。そして、「彼らにもそれぞれ豊かな人生があった」ということでもある。8名の朗読には、それぞれの人生、それぞれの感情、それぞれのきっかけが刻まれていて、なぜこのツアーに参加したのかという理由も一人ひとり違っている。その記録を、死後になって私たちが耳にするという体験は、「この人たちが生きていたことを忘れないでほしい」という願いを、静かに突きつけられているようでもあった。

もし自分が死ぬとしたら、自分と関わってきた人たちに願いたいのは、「僕の声を忘れないでほしい。僕の声をどこかで覚えていてほしい」ということだ。なぜなら、人の記憶はその人の声と密接につながっていて、声を通じて、その人の表情や仕草、言葉の選び方やものの考え方まで、丸ごと立ち上がってくるからだ。だからこそ、人質たちが「声」で自分の人生を記録したことには、とても大きな意味があるように思う。同時に、最後の朗読が解放戦線側の兵士によるものだという事実も重い。彼もまた生きていて、彼にもまた一つの人生がある。

ほんの少しのボタンの掛け違えで、人は「テロリスト」と「人質」という関係に分かれてしまうことがある。けれど、元をたどれば皆、同じように生まれ、育ち、家族がいて、日々の暮らしと人生を持つ人間だ。

そのことを思うと、胸がぎゅっと締め付けられるような苦しさがある一方で、彼らの声をしっかり耳と胸に焼き付け、「彼らが生きていたことを決して忘れない」と心に決めること自体が、彼らの存在をこの世界につなぎとめる、ひとつの供養になるのかもしれない。

そんなことを思いながら、この物語を読み進めていった。

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2025年12月07日

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ネタバレ

異国を旅行中、ゲリラの人質になってしまったツアーの参加者達の朗読会。

他人からみたらどうでもいいような出来事が、本人にとっては忘れられない大切な思い出であり、今まで生きてきた軸であったりする。

話の最後にその人の職業と、どういった理由でツアーに参加したのかが書かれていた。朗読した出来事からツアーに参加するまでどんな風にその人が生きてきたのかが想像できるようだ。

命の補償はない過酷な状況の中であるからこそ更に美しく輝くお話だった

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2025年06月24日

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ネタバレ

海外旅行先で襲撃を受け、人質となった8人。8人は亡くなってしまったが、後に犯人グループの動きを探るため、録音された盗聴テープが公開された。人質たちが自ら考えた話を朗読している様子が録音されたテープである。

1話毎の終わりに、誰が朗読したのかが記載されている。淡々と書かれているのが、その人たちが亡くなっているんだということを強調しているように感じた。

小川洋子さんの本を初めて読んだが、とても読みやすかった。ほかの本も気になるものがあったら読んでみたい。

表紙の「小鹿」は彫刻家の土屋仁応(つちや よしまさ)さんが造られたそう。
調べてみたらほかの作品も素敵だった。

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2025年06月08日

匿名

ネタバレ 購入済み

 人質になった日本人たちが極限状態の中で自らのエピソードを語っていく物語です。

 とても平易な語り口調で綴られる物語は彼らがもう亡くなっていることもあり、セピア色の写真を見るようです。

 小川洋子の作品の中でも、その完成度の高さからもっとも好きなものの一つです。

 小川洋子の特徴のひとつのグロテスクさがあまり前面に出ず、叙情的な部分が際立った作品であると思います。

 私は特に「槍投げの青年」が好きです。陸上競技特有のストイックさや、力強さや、繰り返しのルーティーンからの高揚感などが、その文章の中で鮮やかに蘇ります。

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2019年12月13日

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ネタバレ

小川氏が書く物語は…物凄い不思議ですね。
いつも思ってました。この方にしか生み出せない物語が、確かに存在する。そして深く刺さって読み手はそれを取り出さない。
この物語の驚くべきところは、初手で語り部の人達が全員死ぬということ…その効果は絶大で、ひとりひとりの話をズンと重くのし掛かけて読んでしまう。
大事にしないと、覚えておかないと。
って、図らずとも慎重になる。
させられた。

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2026年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

多くの人が持っているちょっとした記憶に刻まれた出来事を、ちょっとした工夫で語られる話。それを人質たちが語る。それを立て篭もり犯人を囲む警察が盗聴するというシチュエーションがより人質たちの思いを際立たせる。僕だったら、何を語るだろうという思いを抱いた。そして、僕の行動・行為が相手を涙させたであろうことに思いが至った。きっと、とても楽しかったことではなく、心の奥に刺さったトゲのような出来事なんだとう。

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2026年01月01日

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ネタバレ

残酷すぎる、かつ絶対に変わらない結末が最初に提示されているのにも関わらず、明るさやコメディさも含まれる展開なのが複雑な気持ちになる‥!この朗読会が行われたことで被害者たちは報われたような気もする!

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2025年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

囚われの人質たちが自らを語っていく。小川さんの作品の中ではかなり読みやすい作品だと思いました。どの人質の朗読も独特な匂いを感じます。「やまびこビスケット」工場で働く大人しい女と偏屈な大家の女。ビスケットの出来損ないを通じて、二人の仲が少しずつ近づく。印象的でした。「コンソメスープ名人」死期の近い母を持つ娘とぼく。小川さんらしさを感じました。少し不気味で、不思議。「死んだおばあさん」様々な死んだおばあさんに似ている女。薄気味悪いはずなのに、全然嫌悪感がない。永遠に死んだおばあさんになれない、この締めが好き。

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2026年03月23日

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