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Posted by ブクログ
見知らぬ土地で人質になり、いつ殺されるかも分からない8人が、過去の何気ない思い出を朗読していく話。
人質たちが語る思い出に出てくる人物は、名前すら分からないような人たちばかりで、そこにドラマチックな展開があるわけでもない。でも、それを死の間際に思い出すのは、何気ない物語が、語り手の中に深く根を下ろしている証でもある。
自分が選びとって生きているつもりの人生の中には、一体いくつの何気ない物語からの影響があるのだろう。そんなことを、ふと思った。
Posted by ブクログ
あらすじだけ読むととんでも展開だが、いざ第1夜が始まると、不思議で切なくて温かい小話が続いていく。特にやまびこビスケットが1番感情を揺さぶられた。B談話室も、自分も真似てやってみたくなる面白さ。実際はそう都合良く1席の空いた席など無いだろうし、集まりによっては部外者が混じると絶対にバレるだろうが。
自分ならどんな話をするだろうと考える、と共に、こんな機会があることを夢にみて、話を考えておきたくなる。
どの話も面白く、また読み返したい1冊だ。
"『sEIrI seITOn』丸テーブルの真ん中に、どうにか整理整頓が完成した。〜「英語の文字でも整理整頓と書けるんだねえ。なかなかいいよ。気に入った」〜私たちは『sEIrI seITOn』をしばらく眺めたあと、二人で分け合った。大家さんがsEIrI seITの九個、私がOnの二個を食べた。"p54
Posted by ブクログ
わたしがもし異国の地で、生きるか死ぬかの状況に置かれたら、何を思い出すのかな…そんなこと思いながら読んでいた。
8人の人質と1人の政府軍兵士が思い出したのは、決して派手な話でも、人生が順風満帆な時期の話でもなかった。むしろ世界の片隅で孤独や死の気配を感じながら生きている、そんな一場面だった。
でも暗いだけじゃなくて、一生懸命自分の人生を生きている人たちもいた。個人的には、やまびこビスケット、のお話が好きだった。胸が温かくなった。
それぞれの朗読の最後に記された年齢、ここに至った経緯を見ると、9人ともその後の人生をちゃんと生きてきたんだと当たり前のことに気付く。語られた記憶をきっとお守りのようにして、粛々と生きてきたんだろう。
それぞれの人生は、普通なら賞賛されることなく見過ごされる。でもこうしてよく耳をすませるとハキアリの列のような美しさがあるんだと思う。