あらすじ
遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた――紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは、人質たちと見張り役の犯人、そして……。人生のささやかな一場面が鮮やかに甦る。それは絶望ではなく、今日を生きるための物語。今はもういない人たちの声、誰の中にもある「物語」をそっとすくい上げて、しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。
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Posted by ブクログ
あ〜〜好みぶっ刺さり小説。江國さんのひとりでカラカサさしてゆくに読後感が似てる。冒頭で、凄惨な最期を迎えた人々が残した物語であることが明かされるので、言いようのない切なさが全編漂う。わたしが好きだった話は、
•大家の偏屈おばあさんとビスケット並べる話
•公民館で細々と行われている集会や会合に参加する男性の話
•おじいさんが作るヤマネのぬいぐるみをお守りにしている男性の話
自分で書いててなんだそりゃと思ったけど本当にそういう話なんです笑
どんな最期を迎えた人にも、きっとその人の心にずっと残り続ける大切な記憶や思い出があったんだなと、そう思って泣きたくなる宝物みたいなお話たちだった。
Posted by ブクログ
最初にこの本を書店で手に取った時、表紙の白い小鹿が人質となった人物の悲しさや絶望感を象徴しているのだろうか、と思いました。しかし、作品を読み終わると、白い小鹿の目が人質一人ひとりの大切な過去を見つめているような気がしました。人質の絶望感というよりも、物語の温かさが胸に残る小説でした。
Posted by ブクログ
命は尊いものであり、生きていると色んなこと起こってくるけど、感動を大切にしたいと、この本を通して感じた。
やまびこビスケットの大家さん
整理整頓は自己防衛の最良の武器である。意地悪なばあちゃんってイメージが強いけど、これはその通りなのかも。大家さんと動物園に行くほど仲良いって、すごい展開
亡くなる最後まで、整理整頓を心掛けてた。守り抜いた、人間味のある内容でもあり、深かった。
B談話室
公民館の部屋、談話室。いろんなことに使われてる。
受付の女性に無理やりな感じで参加することなった。行き当たりばったりで話してるのがすごい。
最後、おじさん40年もやって、女性なんていない、あの女性はなんだったんだろう…
冬眠中のヤマネ
おじいさんとの出会いが、眼科医になろうという、背中を押した経験でもある。
コンソメスープの名人
隣の娘さんの料理かっこいい、憧れる。一切迷いがない様子とか。
槍投げの青年
こんなに槍投げの様子を豊かな表現でこんなにも文で書けることに感動。さぞかし青年かっこいいんだろうな。
Posted by ブクログ
戦争やテロ、災害などでたくさんの人が亡くなる悲しい出来事が起きたとき、私たちはつい、その出来事の大きさを「量」で測ろうとしてしまう。十万人が亡くなった、数百万人が被害にあった――そんな数字のインパクトで、悲劇の大きさを捉えようとしてしまう。
『人質の朗読会』は、冒頭で「テロによって人質に取られていた8名は全員亡くなった」と告げられるところから始まる。彼らの死後に発見された、朗読会の様子を収めた記録テープがラジオで放送されることになり……という導入で、読者は最初から「登場人物のいく末」を知らされたまま、物語を読み進めていくことになる。
そこで強く感じるのは、「彼らは確かに生きていた」という、当たり前だけれど揺るぎない事実だ。そして、「彼らにもそれぞれ豊かな人生があった」ということでもある。8名の朗読には、それぞれの人生、それぞれの感情、それぞれのきっかけが刻まれていて、なぜこのツアーに参加したのかという理由も一人ひとり違っている。その記録を、死後になって私たちが耳にするという体験は、「この人たちが生きていたことを忘れないでほしい」という願いを、静かに突きつけられているようでもあった。
もし自分が死ぬとしたら、自分と関わってきた人たちに願いたいのは、「僕の声を忘れないでほしい。僕の声をどこかで覚えていてほしい」ということだ。なぜなら、人の記憶はその人の声と密接につながっていて、声を通じて、その人の表情や仕草、言葉の選び方やものの考え方まで、丸ごと立ち上がってくるからだ。だからこそ、人質たちが「声」で自分の人生を記録したことには、とても大きな意味があるように思う。同時に、最後の朗読が解放戦線側の兵士によるものだという事実も重い。彼もまた生きていて、彼にもまた一つの人生がある。
ほんの少しのボタンの掛け違えで、人は「テロリスト」と「人質」という関係に分かれてしまうことがある。けれど、元をたどれば皆、同じように生まれ、育ち、家族がいて、日々の暮らしと人生を持つ人間だ。
そのことを思うと、胸がぎゅっと締め付けられるような苦しさがある一方で、彼らの声をしっかり耳と胸に焼き付け、「彼らが生きていたことを決して忘れない」と心に決めること自体が、彼らの存在をこの世界につなぎとめる、ひとつの供養になるのかもしれない。
そんなことを思いながら、この物語を読み進めていった。
匿名
人質になった日本人たちが極限状態の中で自らのエピソードを語っていく物語です。
とても平易な語り口調で綴られる物語は彼らがもう亡くなっていることもあり、セピア色の写真を見るようです。
小川洋子の作品の中でも、その完成度の高さからもっとも好きなものの一つです。
小川洋子の特徴のひとつのグロテスクさがあまり前面に出ず、叙情的な部分が際立った作品であると思います。
私は特に「槍投げの青年」が好きです。陸上競技特有のストイックさや、力強さや、繰り返しのルーティーンからの高揚感などが、その文章の中で鮮やかに蘇ります。
Posted by ブクログ
小川氏が書く物語は…物凄い不思議ですね。
いつも思ってました。この方にしか生み出せない物語が、確かに存在する。そして深く刺さって読み手はそれを取り出さない。
この物語の驚くべきところは、初手で語り部の人達が全員死ぬということ…その効果は絶大で、ひとりひとりの話をズンと重くのし掛かけて読んでしまう。
大事にしないと、覚えておかないと。
って、図らずとも慎重になる。
させられた。
Posted by ブクログ
多くの人が持っているちょっとした記憶に刻まれた出来事を、ちょっとした工夫で語られる話。それを人質たちが語る。それを立て篭もり犯人を囲む警察が盗聴するというシチュエーションがより人質たちの思いを際立たせる。僕だったら、何を語るだろうという思いを抱いた。そして、僕の行動・行為が相手を涙させたであろうことに思いが至った。きっと、とても楽しかったことではなく、心の奥に刺さったトゲのような出来事なんだとう。