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「毎日会社に行くたびに思うんです、わあ、なんだ、このおっさん地獄は、って」。 会社に追いつめられ、無職になった三十女が、女性アイドルに恋して日本の絶望を粉砕!? 新米ママや会社員も連帯し、「地獄」を変える賭けに挑む。世界幻想文学大賞受賞の著者がおくる、最強レジスタンス小説。 〈解説〉松尾亜紀子
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Posted by ブクログ
豊崎書評本から。最近読んだ武田砂鉄エッセイ集でも少し触れられていた。固有名詞は出されないまでも、誰から見ても自明なアイドルプロデューサーが振りまくおじさん思想が、ややSF的な結構の物語の中で、徹底的に糾弾されていく。自分の中に巣食うおじさん思考を否定できないのが情けない限りなんだけど、男性である自分...続きを読むにとっての当たり前って、実は全然自然なんかじゃないっていう当然に、もっと真摯に向き合わなくちゃ、って感慨を新たにした次第。
うんうん、そうそう、と頷き共感しながらあっという間に読んだ。 私たちの社会のゆがみに気付くこと。この毎日が当たり前じゃないと知ること。小さくても少しでもいいから行動していくこと。
p124 「魂は減る。(中略) 魂は永遠にチャージされるものじゃない。理不尽なことや、うまくいかないことがあるたびに、魂は減る。魂は生きていると減る。(中略) 三十年以上生きてきた敬子はもう自分の魂は、どれだけ満タンにチャージしても、残り「82%」ぐらいなんじゃないかと感じる。さっきの××たちのライ...続きを読むブでだいぶ充電されたけれど、それだけももう「100%」には戻れない。一体人生のどの段階まで、敬子の充電は「100%」だったのか。」 p138 「望ましい」の枠外に出ることはもちろん自由だったが、その自由には名前があり、ただ大目に見られているだけだった。「まだ若いから奇抜なファッションを楽しんでいられる一過性の時期」だとか「女を捨てたもう終わりの時期」だとか。」 p184 「未熟さ」が熱狂的に受け入れられたということは、この頃の日本では、「未熟さ」を魅力として考える人が多かったからだろうと推察できます。つまり、女の子たちではなく、国そのものが「未熟」だったのです。
普段であれば自分の選択肢にはなかなか入らない、今の日本に対するアンチテーゼのような一冊。 自分もおじさんなので「おじさん」のようにならぬように気をつけないと。
書いてもらうことで自分の中のモヤモヤや、恥ずかしながらスルーしてしまっていた物事に気付かされる。 おんな、おとこ、おじさん、おばさん、という以前にみんながみんな、消費されずのびのびと生きていくためにはどうしたらいいのか。 みんなで考えて行動していくことの大切さ。
不思議な話だった。でも、ただ不可解な話なのではなく、きっとこの物語の構造は二重三重になっていて私が一層目までしか気付けていないからなのだろうな。松田青子さんの本を読むと強いフェミニズムを感じる。私は結構、おじさんに迎合したり男性的な社会の中で配慮されて過ごす、みたいなこと得意で過ごしやすいと思ってし...続きを読むまったりする部分もあって、おじさん社会を助長させてしまってるのかな、なんて思ったりする。
わかりやすく強い言葉でこれでもかこれでもかと繰り返される「おじさん」への糾弾、拒絶、排除の物語。気づかせる、目を覚まさせる、奮起させる、連帯させるという意味ではとても良い作品なのだと思う。 だけど、残念ながらわたしにはあまり響かなかった。特に、作中に驚くほどたくさん登場する「おじさん」という言葉。...続きを読むいくら概念的に扱っているとはいえ、ある一定の年齢を超えた男性や、関係上の呼称としても使われている言葉を用いて語る内容としては攻撃的すぎて疲れてしまった。個人としてではなく女として弱い存在とみられること、制服を着ているだけで性的搾取の対象としてみられることにNo!といいながら、個人ではなく概念としての「おじさん」を叩きまくる。(個人としての「おじさん」も叩くが)性別年齢を問わず誰のなかにも存在しうる「おじさん」を自覚させるのが目的なのかもしれないけれど、そのあたりの違和感を最後までなくすことができなかった。このあたりは、シンプルに好みの問題だと思う。 ただし、繰り返しにはなるけれど、現状に甘んじるな!立ち上がれ!つながれ!という強いメッセージは伝わってくるし、両手を挙げて賛同する。
一気に読めた。 そもそも男性社会な仕事をしているせいか、女性の権利など声高に訴えているものや、フェミニズム系の話は好みでなかった。(この本で言うところの、“女性にも「おじさん」は存在する”が私のことだと自覚した) だから、最初は「なんて大袈裟な…」という気持ちで読んでいたのに、次第に自分の中に埋...続きを読むめていたモヤモヤが出てきて吹っ飛んだ感じ。爽快。 女の敵は女、という言葉も男性が生み出したのでは…と思ったりして。
すがすがしいディストピア小説。 「おじさん」による「おじさん」に都合のいい社会。 ※この場合の「おじさん」は「家父長制・男尊女卑」を維持しようとする生物のことであり、年長の男性を指して言う言葉ではない こんな日本に誰がした!という答えにいやいやそんな、と思いながらもそうでもなければこんな風なことがま...続きを読むかり通るのおかしいよねとも変に納得してしまう。 どんな革命が起こり、どんな畳まれ方をしたのか具体的には描かれていないが「きれいに畳まれた」のは確かでそれはほっとする。 家父長文化、ミソジニーが色々書かれ、その象徴としてアイドル文化が出てくる。 アイドル文化を批判しながらそのアイドルに救われるジレンマ。だってそもそも芸能界を牛耳ってるのは「おじさん」たちなわけで。 K-POPの女性アイドルとの比較もアイドルに詳しくないけどわかる。 「アイドルとは愛でるもの」に完全にシフトしたのはいつなのか「アイドルとは憧れるもの」であったはずなのに。ハロプロとK-POP贔屓の友人がいて彼女にとってアイドルは年下であっても「憧れるもの」だったことを思い出す。 男性アイドルも「愛でる」対象として見ている女性も多いがまだやはり「憧れ」成分も女性アイドルに比べれば多い。 作中元アイドルの女性にとどめを刺したのが「ファンとの夢小説(R18)」を送り付けられたことというのがオタクとしては冷や汗ものだが、その後彼女自身二次小説を趣味とするのが二次小説を全部アウトとしているのではなく、一方的な性ファンタジーを『子ども』に受け入れてもらえると思いこんでいるのがやばい。 相手を「愛でる」ために「無垢」「健気」「幼稚さ」を求めるのに「ケア」「許容」は大人としてのものを当然として要求する「おじさん」が作った女のあるべき姿。そりゃ畳むしかないこの世界。 彼女たちが起こす革命、スタンガン、デモ、タメ口は現実の私たちにも手が届きそうだがなかなか難しい。でもどこかで始まりかけているというのがこういう小説の出現がその証拠だと思う
備忘録: P124: もしこの場所がもっと違ったらもっと対策がちゃんと取られていたら、今のように耐えたり諦めたり声を出したり出せなかったり、抗ったり闘ったりしている時間を日本の女性はどう過ごしていたのだろう。すとれっすや悲しみや怒りや諦念の代わりに何を感じていたのだろう。それが本当に想像できない。 ...続きを読む魂は減る。敬子がそう気づいたのはいつの頃だったか。魂は疲れるし魂は減る。魂は永遠にチャージされているものじゃない。理不尽なことやうまくいかない事があるたびに魂は減る。魂は生きていると減る。だから私たちは魂を持続させて長持ちさせて生きていかなくてはならない。そのために趣味や押しを創るのだ。30年以上生きてきてどれだけ万単位チャージしても100%ではない。 P197: 今の十代二十代ぐらいになると違うのかもしれないがこれまで自分はこうゆうシーンに何百回も同遇しているしされたことも場をしのぐためにしたこともある。相手が自分よりも低い存在だと暗に示す行為、マウントは女同士のそれが一時期話題になり女は怖いという文脈でかたあっれたが自分に言わせると息を吐くようにそれをやるのは、むしろ一般的な男の文化だ。自分たちがマウントをしているということに気付かずに男がこわいという切り取られることもないまま無邪気にやり続けている。いじりといじめ、束縛と友情を取り違えたまま、男の文化は何十年も、もしかしたら何百年も膠着している。
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松田青子
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