明治維新を舞台に活躍した新選組隊士の群像。中村氏の作品は史実を丹念に調査
して書かれたものが多く、情景描写が巧みで読者を飽きさせない。また、武術の
造詣も深く、各流派の特徴や技についても詳しく書かれているのには感心させら
れる。「明治四年黒谷の私闘」の主人公、水野八郎はあまり好きになれないが、
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古武術の薙刀の技が詳しく書かれていたのが興味深かった。新選組は、ともすれ
ば幕府方の剣客集団として描かれることが多いが、構成メンバーの出身はまちま
ちで、いろいろな考え方や価値観の人たちがいたことがうかがい知れる。要領よ
く立ち回り、生き残った者もいれば、最後まで信念を曲げず、志なかばで斃れて
いった人も多い。「明治新撰組」は完全なフィクションらしいが、相馬主計のよ
うに、歴戦の猛者でありながら、決して飾らず、いざというときに本領を発揮す
る人にはエールを送りたい。