
名称未設定さんのレビュー一覧
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購入済み
やはりソトニシリーズは面白い。一クセも二クセもある登場人物はそれぞれによく描かれて
いて、だんだん誰が敵か味方かわからなくなってくる。最後に明かされる金剛山の「管理人」
や楓の正体に思わず「あっ」となった。ソトニの面々と北朝鮮工作員の息詰まる駆引き、
追跡劇は読みだしたら止まらない。
本作はあくまでフィクションだが、何食わぬ顔で日本人になりすまし、諜報活動を行ってい
る北朝鮮の工作員は実在するだろうし、中には日本の中枢に浸透して、国政を操っている大物
スパイだっているかもしれない。そう思うと恐ろしい。つい先日も柏崎原発のテロ対策が全く
いい加減で杜撰のきわみだったとニュースでやっ -
購入済み
竹内氏の作品は初めてだが、とても面白かった。すごい!の一言に尽きる。
経歴を見るともともとTBSの記者で、ニュースキャスターを務めていたこと
もあり、現在は同社の報道局長とのこと。権力に媚びる一方で視聴率や購読率
を気にしてマトモな報道ができなくなったマスコミ人が多い中、現場第一主義
の報道姿勢を貫く硬派のジャーナリストという印象。記者時代の取材経験を生
かした文章は迫力があり、物語の構成も申し分ない。
公安捜査員の彩音や外見とは裏腹に優秀な頭脳を持つ変わり種の朝倉、そして
主人公で一匹狼の筒美がパズルの一片一片をつなぎ合わせるように真実に近づ
いていくさまは緊張の連続で、ペー -
購入済み
北京五輪開催に合わせて世界最大級の原発を稼働させようとする中国が舞台。日本人エンジニア、
密命を帯びて赴任した中国の官僚、オリンピックの記録映画を撮ることになった気鋭の映画監督
の三人の視点で物語が展開する。日本の常識が通用しない中国では、きっと多くの日本人ビジネ
スマンが苦労したに違いない。それにしても中国の権力闘争はあまりにえげつない。腐った連中
が富と権力を独占し、肥え太っていく様には怒りを通り越して恐ろしさを感じる。「諦めからは
何も生まれない。希望とは自らが戦って奪いとるもの」という一節が心に残った。オリンピック
開催直後に発生した原発事故は、まるで福一の事故を予言してい -
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久々に柴田哲孝の本を読んだ。ハラハラドキドキが連続のノンストップアクション。
ほぼ一日で一気読みしてしまった。
高い知能で捜査陣を混乱させ、妻を殺し、娘を誘拐した巨悪に立ち向かう笠原武大。
看護師の有美子を連れての逃避行はかつて読んだ「国境の雪」とオーバーラップする。
脇役ながら娘の萌子がいい味を出している。この子がいなかったらどうなっていたこ
とか。公安の田臥もなかなかいい。それにしても「カウボーイ」というヒットマンは
いったい何者なのか?あくまでフィクションということだが、実際にこんな話があっ
てもおかしくはない。この手の話にあまり深入りすると、今度は柴田氏自身が危ない
か -
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歴史の教科書には長篠の戦いで敗れた武田家が、あっという間に滅亡したように書
かれているが、実際は敗勢を立て直そうとする武田方と領土拡大を図る徳川方の間
で壮絶な戦闘が何度も行われている。うのたち少数精鋭の忍者集団が、徳川方にさ
まざまなゲリラ戦を仕掛けるところは痛快だが、これは現代戦における特殊部隊の
不正規戦と何ら変わらない。
それにしても当時の忍者は本当にそんなに凄い能力を持っていたのだろうか?すさ
まじい修練や訓練を積めば、超人的な能力も備わるのだろうか?
常に死と隣り合わせで生きていた戦国時代の人たちは、やはり現代人とはどこか違
っていたのかもしれないが、それでも愛する -
購入済み
面白かった。津本陽の作品は、いろいろな資料を丹念に読み込んだ上で書かれている
ので真実味がある。また、他の作品と違って家康、勝頼、信長など、登場人物がそれ
ぞれの方言で話しているのも面白い。たぶん実際はこんな話し方をしていたのだろう
なあ、と考えると余計に現実味がわく。あっという間に読み終えてしまった。家康に
父親を殺された女忍者の復讐劇ということだったが、上巻は殆ど武田と徳川の合戦ば
かり。激戦につぐ激戦で戦闘の様子も生々しく、それはそれでなかなか迫力があって
よかった。上巻の後半でようやくヒロインうのの登場。はたして彼女は家康を討てる
のか、下巻が楽しみ。 -
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明智光秀が好きで、光秀と名のつく作品は片っ端から読むようにしている。
本作も書評を読んで「面白そう」とワクワクしながら購入したが、残念ながら
期待したほどではなかった。作者はビジネスパーソンとして成功をおさめた人
らしく、描かれている光秀も戦国武将というよりは、むしろビジネスパーソン
という感じ。多くの競争相手がいたにもかかわらず、光秀が異例の出世を遂げ
たのは、彼がそれなりの人物だったからだろう。戦国時代も現代のビジネス
の世界も弱肉強食、権謀術数がはびこる世の中。最後まで生き残り、勝ち組に
なるのは容易なことではない。光秀がどうやって成功を収めたのか、歴史上の
事実を踏まえ -
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初めて読む作家さん。幻冬舎のキャンペーンでたまたま購入したが、内容にのめりこみ、
一気読みしてしまった。
木曽三川分流工事(宝暦治水)の責任者で薩摩藩家老の平田靱負を中心に描いた作品。
今まで宝暦治水がこれだけの大プロジェクトとは知らなかった。ブルドーザーやパワ
ーショベルのような土木機械もなく、人力だけで川筋を変え、堤防を築くなど、考え
ただけで気が遠くなる。さらには幕府や地元の役人、尾張藩、強欲でしたたかな農民
からの圧力、いわれなき誹謗中傷、いやがらせにも耐えなければならない。
東日本大震災をはじめ、台風や豪雨などの災害復興プロジェクトでも国や地元の利害が
複雑に絡み合い -
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購入済み
関係者の証言でよみがえる海戦当時の生々しい情景。飛龍とイ168号潜水艦の奮闘、活躍で
何とか一矢報いたのはよかったが、勝って当然の戦いで敗れたのは痛かった。最大の敗因が
連勝つづきによる気のゆるみや慢心、敵の過小評価にあったことは当時も認識されていた
らしいが、それにしては判断を誤った山本長官はじめ、海軍首脳部の責任追及が今一つ十分
ではなかったような気がする。
その一方で第二航空戦隊司令官の山口多聞、飛龍艦長の加来止男が飛龍とともに失われた
のは残念だ。艦長がフネと運命を共にするのは責任の取り方の一つかもしれないが、これで
は艦が撃沈される度に有能な人材が失われてしまう。あくま -
購入済み
手に汗にぎる
上巻より面白かった。物語の展開スピード、迫力、ともに申し分なく、どんどんストーリーに引き込
まれていく。老朽化した原潜で次々に発生するトラブルに全力で立ち向かう乗組員の姿に感動した。
とくに危険な原子炉内での修理作業では思わず力が入ってしまった。これだけ原潜について詳細に
書けるのはさすがだと思う。苦難、逆境を乗り越え、たとえわずかな可能性しかなくても決してあき
らめないところが素晴らしい。続編も出ているようなので、ぜひ読みたい。
どうでもいいことかもしれないが、作品には「コーヒー」という単語があちこちに出てくるのはなぜ
だろう?作者はよほどコーヒー好きなのだろうか。 -
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「ハンター・キラー 潜航せよ」の前日譚。「潜航せよ」が面白かったので、さっそく購入した。
こちらもなかなかスリリングな味わい。南米の麻薬王と米海軍の対決は見もの。本作に登場する
「スペードフィッシュ」は老朽化した原潜だが、麻薬組織との闘いに、退役直前の老朽艦を投入
するあたりが、いかにもエンターテインメント作品らしい。人、モノ、カネ。全てがそろってい
る米軍が本気になれば、麻薬組織など簡単に殲滅できそうなものだが、現実は異なる。科学技術
の進歩と潤沢な資金で、最近の麻薬組織は、高度なハイテク技術を駆使し、元特殊部隊の兵士を
傭兵として使うなど、かつてないくらいに進化をとげた強敵。さ -
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明治維新を舞台に活躍した新選組隊士の群像。中村氏の作品は史実を丹念に調査
して書かれたものが多く、情景描写が巧みで読者を飽きさせない。また、武術の
造詣も深く、各流派の特徴や技についても詳しく書かれているのには感心させら
れる。「明治四年黒谷の私闘」の主人公、水野八郎はあまり好きになれないが、
古武術の薙刀の技が詳しく書かれていたのが興味深かった。新選組は、ともすれ
ば幕府方の剣客集団として描かれることが多いが、構成メンバーの出身はまちま
ちで、いろいろな考え方や価値観の人たちがいたことがうかがい知れる。要領よ
く立ち回り、生き残った者もいれば、最後まで信念を曲げず、志なかばで斃 -
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戦後はまだ終わっていない
伊東潤氏の現代ものを初めて読んだ。横浜が舞台の警察小説ということで、はじめは
森詠の「横浜狼犬シリーズ」みたいな作品を想像していたが、全然違っていた。
伊東氏の文章は読みやすく、また多くの史実を丹念に調査して書かれているものが
多いので殆どハズレがない。本作はオリンピック直前の横浜で発生する連続女性殺人
事件を追って、ハーフの日本人警官(ソニー沢田)とアメリカ軍のSP(ショーン坂口)
が活躍するという筋立てだが、戦後約20年を経過しても日本に駐留を続けるアメリ
カ軍兵士に、日本人がどのように映っていたのかがよくわかった。そして、その傾向
はおそらく今も変わっていない。アメリカ人( -
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久々にみる軍事スリラーの大作。迫力とスケールの大きさに圧倒され、あっという間に読み終え
てしまった。
ポーランド軍が、電撃作戦を終えて退却するロシア軍を、第四の都市ヴロツワフに誘い込んで殲
滅を図った市街戦は壮絶。どんなに犠牲を払っても自国の尊厳と独立を守ろうとするポーランド
の人々には敬服した。たとえ国土が蹂躙され、国民に犠牲者が出たとしても、日本ではまず同じ
ことは起こらないだろう。
アフリカでも米・仏軍とロシア軍が激突。双方の知力、死力を尽くした戦いぶりはすごいという
ほかない。用意周到、緻密な作戦計画も、想定外のハプニングが重なれば一挙に崩壊してしまう。
まさに「千丈の -
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リーダーとはかくあるべし
戊辰戦争から始まる立見尚文の生涯。中村彰彦の作品は、関連資料を丹念に調べた上で書かれている
ものが多いので信憑性が高く、かつ描写が丁寧でわかりやすい。「勝てば官軍」といわれるとおり、
戊辰戦争は明治新政府軍(官軍=薩長土肥)の視点から描かれたものが圧倒的に多く、ともすれば勝
者の歴史観が独り歩きしてしまいがちだが、本作では敗者となった側にスポットを当て、旧幕府軍に
身を投じた人々の気概、苦しみ、怒り、生き様がよく描かれている。
立見尚文は幼少の頃より文武両道に秀で、戦術家としても優秀、かつ豪胆さも兼ね備えていた人だっ
たらしいが、もし、彼が現代に生きていたらどんな活躍を見せてくれた -
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面白いが難解
他の作品と同じように、歴史や宗教の話がたくさん出てきて勉強にはなる。ただ、若干難しく、
読むのにかなり時間がかかった。今回のテーマはフリーメーソンで、ワシントンを舞台に物語が
展開。ハラハラドキドキの連続だが、残虐非道かつ狡猾な犯人は、悪魔の化身そのもの。得体の
知れないCIAのサトウは、はじめは敵か味方かわからなかった。宗教と科学が一体となった純粋知性
科学はどこまで研究が進んでいるのか知らないが、フリーメーソンには政府の要職を占めるメンバーが
多数いるといわれるだけに、陰で世界を動かしているのはフリーメーソンだという陰謀論のほうが、む
しろ現実味があると思う。 -
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交錯するオリンピックの光と影
初めて読む作家さん。昭和39年、オリンピック直前の東京。初めは古いタイプの推理小説かと思って
いたが、全然違っていた。
文章が読みやすく、飽きさせない。また、オリンピック開催の頃の当時の世相がよく書かれており、臨
場感もたっぷり。インターネットも携帯もない、もう50年以上も昔の話なのに、今、すぐそこで事件
が起こっているかのような新鮮さがある。同じ日の出来事を、警察側と犯人側の両方から描いているの
で、それぞれの立場からみた展開が面白かった。
東京に日本中の富が集中し、ハッピーライフを送る人間がいる一方で、疲弊した地方で生きる人々は貧
困にあえぎ、夢も希望もない。オリンピック景気 -
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やはりウィルスは怖い
コンピュータ社会への警鐘ともいうべき作品。時代背景は少々古いが、本作のような
サイバーテロは十分起こりうる。
飛行機に関する専門用語が多く、最初は少し読みづらかったが、後半あたりから、
がぜん面白くなった。
航空業界のみならず、金融機関や製造業など、全産業で使用されているコンピュータ
がウィルスに感染し、データやOSが消去されてしまったら社会は1日で崩壊する。
いかに損害を最小限に食い止め、打撃から早く立ち直れるか。
非常事態に問われるのはまさに国家の危機管理能力だ。コロナウィルスが世界中で
猛威をふるう中、政府の対応をみるかぎり、日本は終わったなと感じざるを得ない。
本作の -
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あまりに不平等な人生
ドキュメンタリー風の小説。作者自身の体験がベースになっている。自分が最後に整備し、
メッセージを残した練習機が特攻に使われたことを知り、本作がなかばライフワークの
ような存在になったというが、たしかに行間に作者の気迫のようなものがが感じられた。
ちょっとした偶然や行き違いがもとで、運命的な出会いや別れを体験するというのは
よくある話。まして戦時中ともなれば、ワンタッチの差で生死が分かれてしまうことだ
ってざらにある。生き残れるかどうかはまさに運次第。
前途ある若者が、上層部の理不尽な命令一本で出撃を命じられ、あっけなく散っていく。
一方で無謀な作戦を立案し、大勢の若者を死なせた指 -
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エイリアンのようなスズメバチ
今回の敵は日本版ギルド。大日本帝国の再興を夢見る大富豪の老人が率いる秘密結社を相手にシグマが激闘を繰り広げる。忍者を模した秘密結社が出てきたり、日本の歴史にも触れるあたり、毎度のことながらロリンズのリサーチ力には驚かされる。ロリンズの物語には奇想天外なアイテムがいろいろ出てくるが、その多くが事実をベースに基づいている、というのが醍醐味。スミソニアン博物館の祖ともいうべきジェームズ・スミソンと、恐ろしいスズメバチがどうつながるのか、など興味は尽きない。登場する古代のスズメバチの生態は、まるで映画「エイリアン」に出てくる宇宙生物のようで、こんなのがまだ生きていたらと思うとゾッとする。
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とてもフィクションとは思えない
先日、ついに非常事態宣言が出た。コロナで毎日世界中で感染者や死者が増えていくのを目の当たりにすると、あまりに現実とダブる部分が多く、とてもフィクションとは思えない。同時に、小説に描かれた世界と現実のギャップを感じた。未曾有の国難に不退転の覚悟で立ち向かい、リーダーシップを発揮する瀬戸崎首相とその息子でWHOにいた感染症のスペシャリストの優司、首相の親友で医者でもある厚労大臣の高城と登場人物は非の打ちどころのないキャスティング、この手の小説にありがちな悪玉も出てこない。現実のコロナ対策ではすべてが後手後手で、水際作戦では失敗し、オリンピックや経済優先で首都を封鎖することもできず、この期に及んでま
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東アジアでついに戦争勃発!
シベリアから発射されたICBMがワシントン近郊に着弾し米国が報復。この機に乗じて南進を開始した北朝鮮軍とこれを支援する中国軍。スケールの大きいミリタリーもので読み応えがあるが、各国の利害や思惑が複雑に絡み合い、全体像が掴みにくいところもある。最近は国対国の正規戦より、テロリストやゲリラ組織などが相手の不正規戦のほうが発生頻度は高い。また潤沢な資金、高度なスキルをもつテロリスト集団も存在する。ブラックマーケットに流れた旧式の核兵器や、盗まれた細菌兵器がそんなテロリストの手に渡ったらどうなるか。果たして日本はまともな対応ができるのか?そんなことをふと考えてしまった。
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