【感想・ネタバレ】激動 東京五輪 1964のレビュー

あらすじ

当代きってのミステリー作家7人、華麗なる競作!昭和三十九年十月――。
オリンピックに沸く東京を舞台に、ミステリーの最前線を走る七人の思惑が交錯する。
かわりゆく街の中で、男たちは何を目指したのか。究極のミステリー・アンソロジー、ついに文庫化。

激動の昭和史をひもとく競作シリーズがここに開幕。

【収録作、作家】
・「不適切な排除」 大沢在昌 八ミリフィルムの技術者は、なぜ殺されたのか!?

・「あなたについてゆく」 藤田宜永 二十一年前のあの日、私も日の丸を背負っていた。

・「号外」 堂場瞬一 特ダネは、よりによって開会式の日にぶつかった。

・「予行演習(リハーサル)」 井上夢人 国立競技場に持ち越された、幽霊屋敷の死体騒動。

・「アリバイ」 今野 敏 五輪の輪が四つ――死刑求刑は一転して無罪に。

・「連環」 月村了衛 黒澤明が降りたオリンピック記録映画を狙え!

・「陽のあたる場所」 東山彰良 華やいだ街の片隅で、おれは死の淵に立っていた。

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蘇る昭和の世界、味わいある七編

東京オリンピックを背景に、著名なミステリー作家七人によるアンソロジー。あの頃は今よりもみんなが前向きで、街にも活気があふれていたような気がする。初めて読む作家もいて、それぞれの持ち味が楽しめてよかった。個人的には月村さんが面白かったかな。

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2020年04月26日

Posted by ブクログ

大沢在昌、藤田宜永、堂場瞬一、井上夢人 今野敏、月村了衛、東山彰良『激動 東京五輪 1964』講談社文庫。

昭和39年。東京オリンピック開催に沸く東京を舞台にした7人の作家によるミステリー・アンソロジー。古き善き時代の香りの中に描かれる様々な形のミステリーとピカレスクはいずれも秀逸。

2020年の東京オリンピック開催を記念しての刊行かと思うが、新型コロナウイルス感染拡大の非常事態により東京オリンピックは2021年に延期されてしまった。延期ならまだしも、2021年に開催できるかどうかすら怪しい状況である。自分は中止になると見ているが……『アンダーコントロール』『復興五輪』という日本の総理大臣の大嘘に、さすがに閻魔大王も黙ってはいられなかったのだろう。

大沢在昌『不適切な排除』。昭和39年東京オリンピック開催の年に8ミリフィルムの技術者が交通事故を装いCIAに殺された……何十年か後にアメリカのライターを名乗る男が事件の調査のために来日する。スッキリせず、違和感が残る結末は計算なのか。

藤田宜永『あなたについてゆく』。酒場とブルース……古い時代の日本を感じる短編。かつては犯罪者もヤクザも素人も悪さの加減を知っていた。現代では素人さえその加減を知らない。

堂場瞬一『号外』。草加次郎事件の犯人とおぼしき人物の単独インタビューという特ダネを手にした記者は何とか1面トップを狙うが、東京オリンピックの開会式とが重なり、号外発行で妥協するのだが……人生はなかなかサヨナラ満塁ホームランとはいかないのだ。

井上夢人『予行演習(リハーサル)』。東京オリンピックの行進の予行演習の最中に友人から聞いた工事現場の幽霊屋敷の死体騒動。オチがあるとは思わなんだ。

今野敏『アリバイ』。まさかのSFミステリー。ブルーインパルスが空に描いた五輪の輪が四つしかなかった。パラレルワールドから来た被告の死刑求刑は一転して無罪に……

月村了衛『連環』。黒澤明が降りたオリンピック記録映画を狙い、ヤクザが一攫千金を企てる。あの花形敬も登場するピカレスク。なかなか味のある小気味の良い短編。

東山彰良『陽のあたる場所』。東京オリンピックで沸く華やいだ街の片隅で死の淵に立つ男。ジャズと酒と暴力と女が渦巻く、時代を感じるピカレスク。

本体価格680円
★★★★★

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2020年04月20日

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