あらすじ
江戸中期、勘定奉行の荻原重秀が財政立て直しに辣腕を振るった陰に、四人の猛者がいた。金の採掘量減少を受け、重秀が金の含有率を下げる御法度の貨幣改鋳を行うと、四人は十万両分の金を積む御用船を強奪。それは金の枯渇感を煽るための重秀公認の裏工作だったが……。日の目を見ることのない者が暗澹たる時代に光を灯す歴史エンタテインメント。
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北町奉行所VS微行組
荻原重秀のことは本書で初めて知った。早くから貨幣経済の本質を見抜くなど、相当な切れ者だったようだが、若くしてあれだけ出世してしまうと周囲の反発や嫉妬も相当なものだったろう。敵も多かったに違いない。新井白石の気持ちもわかる気がする。北町奉行所VS微行組の対決は、相場さんの警察ものに出てくる捜査一課VS二課、公安を連想させる。それぞれが信じる正義のため、死力を尽くしてぶつかる諜報戦が面白かった。
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荻原重秀の配下たちの活躍を題材にするなんて社会派の筆者らしい。良い意味でのリベラルと保守との白熱した戦いを貨幣経済の論点から描いていて楽しませてもらった。荻原派に道理があるのは現代では明らかだが当時を考えればこういう展開にもなり得るのかな。新井白石を凡愚な堅物として描写しているのがなんとも痛快。中過去→大過去→現代という流れが個人的には何か夢を感じさせてくれて良かった。
Posted by ブクログ
「震える牛」などの作者相場英雄の歴史上の史実や人物を題材にした歴史エンタテイメント作品。史実の部分を膨らませて読みごたえのある作品に仕上げているのはさすがだと思った。
Posted by ブクログ
まずまず。
五代徳川将軍の時代。武士の役割は終わり、商業の時代になってきており、金の産出も減少したため、小判の金比率を下げなければいけなかったようだ。
エンターテイメントのよくできた作品。
Posted by ブクログ
主人公萩原重秀は、徳川綱吉政権時、貨幣改鋳を行いインフレーションを巻き起こした実在の人物。経済小説に定評のある相場英雄がこの事件を舞台にした小説なんだから、かなり期待できると思ったんだが…。
何だろう、この消化不良感。経済政策なんだから善悪二元論にはできないというのは分かるが、重秀側視点で読むにしても敵対勢力側視点で読むにしても、それぞれの個性に差が少ないようで感情移入がし辛い。
人質の件や、将軍の不安定さ、チーム随一の腕っこきがあっさり死んだり(それも重要な場面で)詰めも色々甘く、挙句が最終章…経済小説で名を派す人がこのネタをこの描写でオチに使うんかぁ…ガックシ
つまらないばかりではない小説なんだが、期待しすぎてしまった。