村木嵐の一覧
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ユーザーレビュー
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宝暦治水の話。江戸時代、幕府から薩摩藩に木曽三川の分流工事が命ぜられた。ただでさえ難工事なのに、住民や地元役人は非協力的。最終的に工事は完成するが、工事期間中に薩摩藩士50人以上が切腹し、最後に総奉行・靱負までもが切腹した。靱負と佐江の別れのシーンでは涙がこぼれる。読みやすく、良い話だった。
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出自通りの人生でなく武士も町人も入り混じって懸命に生きる。身分がくっきり分かたれていたというイメージはどうやら違うらしい。
Posted by ブクログ
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新進気鋭の作家さんが番狂わせとしてそこそこ有名な戦いを書いている(弥助だけ少し毛色が違うが)。地図が分かりやすく、非常に助かる。テーマ上、若い時期のストーリーが多いが、描き方は色々で興味深い。
海ノ口は大河でも見たが、季節は考えたこと無かったな。政宗と長政の2作がお気に入り。
Posted by ブクログ
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初めて読む作家さん。幻冬舎のキャンペーンでたまたま購入したが、内容にのめりこみ、
一気読みしてしまった。
木曽三川分流工事(宝暦治水)の責任者で薩摩藩家老の平田靱負を中心に描いた作品。
今まで宝暦治水がこれだけの大プロジェクトとは知らなかった。ブルドーザーやパワ
ーショベルのような土木機械も
...続きを読むなく、人力だけで川筋を変え、堤防を築くなど、考え
ただけで気が遠くなる。さらには幕府や地元の役人、尾張藩、強欲でしたたかな農民
からの圧力、いわれなき誹謗中傷、いやがらせにも耐えなければならない。
東日本大震災をはじめ、台風や豪雨などの災害復興プロジェクトでも国や地元の利害が
複雑に絡み合い、復興作業が遅々として進まないというのは今も昔も同じだが、幕府の
方針で、薩摩藩はプロジェクトにかかる費用、人員をすべて自弁で賄わなければならな
かった。薩摩藩の失敗を手ぐすね引いて待ち構えている幕府の手前、わずかなミスも許
されない。まして怒りに任せて刃傷沙汰に及べばそれこそ藩の存亡に直結する。およそ
実現不可能とも思える難事業を成功させたのは何だったのか?それは利害を超えたお互
いの信頼関係と、それを生みだした平田たち薩摩藩士の不撓不屈の精神力だったのでは
ないか。近年の研究では治水工事の犠牲になった人々を美化しすぎるきらいがあるとの
指摘もあるようだが、いくぶん誇張があったにせよ、工事に携わった平田たちの肉体的、
精神的負担、苦痛がはどれほどだったかを考えれば、彼らの遺したものはまさに偉業だ
ったというほかないと思う。
★★きったん★★
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<薩摩義士>という話しが一定程度知られていると思うのだが、本作はその挿話を基礎にした物語ということになる。
江戸時代には「御手伝普請」なるモノが在った。幕府が諸大名に命じ、諸大名は示された仕様に依拠して資材や人員等を自前で手配して工事を遂行するということになる。幕府として、諸大名が財力を蓄え悪くする
...続きを読むためにやらせていたことらしい。この「御手伝普請」なるモノで築かれた、有名な城郭の石垣等が色々と伝わっていると思う。
<関ヶ原合戦>から150年も経ったような宝暦年間(1750年代頃)、この薩摩の島津家に対して幕府はこの「御手伝普請」を命じた。
遂行すべく工事は、木曽川、長良川、揖斐川が複雑に絡み合って流れる、尾張・美濃・伊勢に跨る地域での治水工事である。
気が遠くなるような大工事であるのだが、これに懸命に取組んだ薩摩の人々に関して、<薩摩義士>と顕彰されているのである。
本作はその<薩摩義士>の代表ということになる、“総奉行”として現場の総指揮を執った家老の平田靱負(ひらたゆきえ)と、何人かの人達が主要視点人物に据えられて展開する。
平田靱負は島津家の国元に在った6人の家老の1人で、「御手伝普請」を受けざるを得ない中、方々に頭を下げて廻る役に他ならない“総奉行”は、自身が引き受けなければなるまいと考えて手を挙げる。そして苦難に満ちた任務が始まるのである。
平田靱負は、朝鮮出兵や関ヶ原で苦悶したであろう島津義弘や、関ヶ原で島津家の軍勢の大将で、伯父でもある島津義弘を逃すために奮戦して討死した島津豊久という先人達に思いを巡らせながら、国元から連れて来た者達で無事に工事を竣工させて帰ることを願って懸命だ。
本作の平田靱負と妻の佐江は、互いに「人生のパートナー」と言い得るような好い関係だ。平田靱負が恃みにしている部下が在って、その部下の妻が佐江の友人でもあり、部下の夫妻には娘が在った。お松である。お松の母(=佐江の友人)が他界していることもあり、平田靱負夫妻は半ば自分達の娘同然にお松と接していた。このお松は、家に「御手伝普請」に参加する者が無いことから男装して“松之輔”を名乗って同行し、父親から習い覚えた算勘の知識を活かして仕事をすることになる。
“松之輔”ことお松も本作の主要視点人物となるが、更に他の女性の主要視点人物も在る。“総奉行”の平田靱負以下、全体の指揮を執る関係者が滞在した庄屋の屋敷に在る、庄屋の後継者の嫁であるカナだ。カナは、少女時代に水害で親を失って庄屋の家に引き取られた。長じて庄屋の息子に望まれて嫁になった。気が利く、要領が良いというのでもないカナだが、折角産まれた息子が夭逝してしまって義母に少し辛く当たられているという感だ。加えて相次ぐ水害で、夫も何となく荒んでいるのだが、カナは懸命に働こうとする平田靱負達に接して心動かされる。
「木曽川、長良川、揖斐川が複雑に絡み合って流れる、尾張・美濃・伊勢に跨る地域」は利害関係者も多く、色々と面倒な条件を幕府側に押し付けられて工事に取組む薩摩の島津家が最初から信頼されているのでもない。そういう中で、「懸命に働く姿」で人々が動かされるという顛末が爽快である。
何か「読後感」が好い物語だ…
Posted by ブクログ
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