村木嵐のレビュー一覧
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「まいまいつぶろ」の世界観を補填する短編集。主人公は特になく、あくまで御庭番である「万里」の見聞きから書かれた物語。
とにかく、言葉選びが美しい。
「次の将軍」の章で。家重と息子の家治はとある事を機に仲違いをした。
御隠居の吉宗は、家治に伝える。
「家重が将軍となった御座前。そなたが家重と忠光を助けた。今後もし、二人が人心を侮り、偽計を画策するようなことがあれば、そなたが諌めよ。次の将軍は家治が。助け舟を出した者から言われれば、家重は将軍を辞すであろう。」
吉宗の居室から去る家治に、侍従が付き従う。
家治は彼に言う。
「私は、父上と仲直りをするべきであるか?」
侍従は言う。
「上様が -
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第一章で少年時代の家重と忠光の出会いで読者を惹き付ける。越前守忠相がいい味を出しているが、キャラクター造形的には加藤剛より滝田栄に近しい。
第二章以降はただの感動ストーリーを続けるのではなく、太平の世だからこそ起きる虚々実々の政治ドラマを展開する。この辺りは55年体制下の自民党権力争いとオーバーラップする。
そして第七章以降で二人の別れを描き爽やかな読後感を得られる、ベストセラー納得の好著。
大岡忠光というのも興味深い人物。側用人ならば柳沢や間部、田沼の様な権力を握れたはず、と思うのだが、栄達はしたものの専横はせず。同時代人の評価も謙譲の人であったという評価らしい。
本当に本書の様な人だ -
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ネタバレ「まいまいつぶろ」「御庭番耳目抄」に続くシリーズ物3作目。今回の主人公は田沼意次。学校教育では「ワイロで腐敗した政治家」と教えられるも、剣客商売では美冬殿の父親であり賢政家と描かれる、歴史上の有名な人物。
この作品でもド正直者(タイトルのまたうどとはその意)の政治家として描かれる。前2作まででも、主要な登場人物からも慕われており、若いころからその天才ぶりを表かれていたままの展開が続くが…。
家治の引退に伴い、一挙に権力を奪われるだけでなく、増税や天災の責任までも擦り付けられ、悪政の評判を押し付けられる。意次自身も予想してたとはいえ、そのはしご外しっぷりは悲愴なもの。
今の時代もそういうこ -
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ネタバレ9代将軍徳川家重と忠臣大岡忠光を主人公にした傑作「まいまいつぶろ」のスピンオフ、帯には「完結編」と書かれているが本編を補完する短編集として読める。
収録作品に全てを見知っているのが御庭番の万里、この人実に味わい深い良いキャラで、本編登場時から気になっていたんだけどこの本で大活躍できてよかった。
どの作品も心象描写や人物造形が良く描かれていて読み甲斐ある。捨作なしの粒ぞろいなのだが、あえて好みは「配信の士」、本編での嫌われ役「松平乗邑」を主人公に据えた一作。家重を世継ぎに推さなかった男の気骨と7代将軍吉宗との信頼関係がとても良かった。