村木嵐のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ賄賂にまみれた悪徳政治家といわれた田沼意次も、村木嵐さんの手にかかると、政治的手腕だけではなく、老中としての誇りや、亡き家重と忠光への深い忠義を忘れない人間味あふれる人物として描かれる。
読んでいて驚いたことが二つ。
一つは、深い信頼関係を築いていた家治と意次が60歳を過ぎてから長男を亡くすという胸が締め付けられるような共通の悲しみを持っていたこと。
もう一つ驚いたことは、革新的な財政改革を猛スピードで推し進めてきた意次が、天候不順による不作や、浅間山の噴火に対して決定的な対策が打てなかったこと。
どんなに優れた人でも、何年も続く天災に対しては手も足も出ず、多くの民を失い、食糧難や一揆を -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰にも言葉を聞き取ってもらえない主人と、唯一その言葉を聞き取れる従者
この作中世界を読者も体験できるようなつくりになっていて、とても面白かった
最後の最後まで、忠光の潔白が証明されたかと思いきや、また新たな疑いを持つ人物の視点が挟まるのが上手だなと思う
加えて一度も忠光視点では語られないため、周囲の目線を通じてしか彼の人間性は読めない
まさに「御口になっても御目や御耳にはならない」忠光の徹底ぶりを体感しているようで面白かった
だからこそ、最後に家重の視点で、セリフが分かる状態で2人の会話が聞けた時、感動したし心から嬉しくなった
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Posted by ブクログ
ネタバレ「口がまわらず、誰にも言葉が届かない。歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、まいまいつぶろと呼ばれ、蔑まれた第九代将軍・徳川家重(幼名 長福丸)。常に側に控えるのは、ただ一人、彼の言葉を解する何の後ろ盾もない小姓・兵庫だった。」
大岡越前の遠縁である兵庫(忠光)は小姓として登用される際に越前から「長福丸様のお口になれ、決して目や耳になってはならぬ」と言われ、その言葉通りのお役目を果たします。ただ一回の例外を除いて。
そんな中、家重を廃嫡とし次男に将軍職を継がせることを画策する老中が現れたり、京から家重に嫁入りした姫が徐々に家重を慕うようになるさまなど、家重が将軍職を継ぐまでには様々な経緯があ -
Posted by ブクログ
「まいまいつぶろ」に連なる世界線で書かれた田沼意次の生涯。
「またうど」とは「全人」、律儀で正直な人をいい、9代将軍徳川家重(「まいまいつぶろ」の主人公)が意次を評したという。
本書に出てくる意次は「またうど」と呼ばれるとおり、私心を持たず、滅私奉公に徹し、明るく、友情・人情に篤く、民に優しく、経済に精通し、必要な改革や政策を果断かつ戦略的に実行するという、官吏の鑑のような人物。
対比されるのは終盤に登場する白河藩主松平定信や11代将軍家斉の実父一橋治斉の未熟さや俗物さ。
定信が進めた寛政の改革以降、徳川幕府の命運は下降していく。
意次のことが大好きだという作者。
「意次の印象をひっく