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口がまわらず、誰にも言葉が届かない。歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、まいまいつぶろと呼ばれ、蔑まれた第九代将軍・徳川家重。常に側に控えるのは、ただ一人、彼の言葉を解する何の後ろ盾もない小姓・兵庫だった。「もう一度生まれても、私はこの身体でよい。そなたに会えるのならば」――。二人の絆を描く、落涙必至の傑作歴史小説。
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Posted by ブクログ
「べらぼう」繋がりで手に取る。 将軍家治の父、家重と唯一その言葉を解する小姓の話。 淡々としているが、その内容は読み解いていくと凄まじい。 出会えて良かった。
はじめて時代小説を読みました。どこまでが本当に史実に則っているんだろう。 9代将軍家重とその小姓の静かで深い物語でした。 涙無しでは読めない場面が多々ありました。 ちょうど、今、大河ドラマのべらぼうの時代と重なる部分があり、時代背景が想像しやすかったです。 これを機に、別の時代小説も手に取ってみた...続きを読むいと思いました
第一章で少年時代の家重と忠光の出会いで読者を惹き付ける。越前守忠相がいい味を出しているが、キャラクター造形的には加藤剛より滝田栄に近しい。 第二章以降はただの感動ストーリーを続けるのではなく、太平の世だからこそ起きる虚々実々の政治ドラマを展開する。この辺りは55年体制下の自民党権力争いとオーバーラ...続きを読むップする。 そして第七章以降で二人の別れを描き爽やかな読後感を得られる、ベストセラー納得の好著。 大岡忠光というのも興味深い人物。側用人ならば柳沢や間部、田沼の様な権力を握れたはず、と思うのだが、栄達はしたものの専横はせず。同時代人の評価も謙譲の人であったという評価らしい。 本当に本書の様な人だったのか、専横したくとも柳沢や間部の先例に学んだ自重の人なのか、したくとも出来なかった能吏か。 梅雀さんの家重をまた観たくなって来た。 ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店にて購入。
いやぁ、面白かった 最高です 是非読んでみてください (難しい漢字がたくさん出てきます。スマホを隣に置いて辞書を引きながら読むことをお勧めします)
以前から気になっていて、文庫化されて読んだ。あまり歴史小説にならない将軍と小姓の話で、非常に面白いストーリーだが、文章力はイマイチの印象。
精緻に記述を重ねていくというよりも、家重の人生が大きなうねりを持ったドラマとして心に残る作品だと感じた。
9代将軍となる家重と大岡忠光の歩みと一生を描く。障害で喋りが他人にわからない家重の言葉が忠光だけに聞き取れたことで一生を家重に捧げた話。ちょっと感動ものの話。
第九代将軍徳川家重、口がまわらず、誰にも言葉が届かない。頻尿で、歩いた後には、尿を引きずった後が残るため、まいまいつぶろと呼ばれ、蔑まされた。 家重の言葉を解する事ができたのが、小姓の大岡兵庫、後の大岡忠光であった。 二人の絆を描く。
歴史上あまり取り上げられることのない、徳川第九代将軍・家重。 へその緒が首に巻き付いて生れたせいなのか、口がまわらず、半身がマヒしているため正座ができず、字を書くこともできず、武士の頂点たる征夷大将軍になることなど不可能と思われていた。 頻尿のため、歩いたあとには尿を引きずった跡が残るため「まいまい...続きを読むつぶろ(かたつむり)」と呼ばれていた。 家重の言葉を、唯一聞き取ることができたのが、大岡忠光という小姓。 コミュニケーションを取ることができないために周囲から無能呼ばわりされている家重の口となり、彼の言葉を彼に代わって発するのだが。 本当に無能なら問題はなかった。 しかし卓越した記憶力と明晰な判断力を持ち合わせてしまったゆえに、却って将軍の跡目争いの種になってしまった。 何しろ弟は武芸にも学問にも優れていたのだから。 しかし長男が後を継ぐべしという家康以来の決まりもあり、父である徳川吉宗も簡単に跡継ぎを決めることはできなかった。 第一章を読み終えた時点で号泣でした。 まだ16歳ながらに家重を守り抜こうとする忠光の無私の覚悟に泣けてしまった。 けれど、その後がちょっと…。 メインは支える忠光なのか、支えられる家重なのか、時々で揺らいでいるのが気になった。 各老中たちの書き分けも弱い。 家重派なのか、反家重なのか、第三者的立ち位置なのか。 地の文でなんとなくわかるけど、セリフの応酬では誰が何を言いたいのかよくわからなかった。 将軍になってからの「宝暦治水事件」は、確かに歴史的には大きな事件ではあったけど、平田靱負(ゆきえ)が家重の言葉を理解する3人目の人物として登場する意味はなかったな。 結局平田靱負を救うことはできなかったのだから。 代わりに「郡上一揆」の方をもっと深掘りして、将軍として誰をどう動かしたのかを書けばよかったのに。 家重の意向を汲んで、田沼意次がサクサク解決しました、的な書きかたになってしまっている。 本当はもっとどろどろ長引いた事件なんだけど。 とはいえ、混乱しがちな徳川9代、10代の関係がわかってよかった。 この時に御三卿が作られたわけだね。 なるほど。
身体にハンデを背負いながらも見事に一国を治める知性と人柄は エルサレム王ボードアン四世を思い出させる。 (太平の世で後継にも恵まれた家重と彼とでは状況も大きく異なるとは思うが) また言葉に関わるキーワードとして「鳥の声」を度々用いているのが非常に興味深い。東西ともに鳥は神の言葉を伝える使者として扱わ...続きを読むれることもあるため、作者も意図して表現に取り入れたのだろうか。 忠光の存在が家重の人生にとって、どれほどかけがえのないものだったか。 家重の口となるということは彼のハンデと同じくらいの労苦をともに背負うということ。その覚悟を持って生涯務めた彼は見事だと思う。 立身に重きを置く者たちには持ちえない美徳と価値のある人生だっただろう。 彼らの周りが敵ばかりでなく心から支えてくれる温かい人物もおり、 物語は非常にドラマチックに展開していく。 中でも忘れられないのは、忠音との最期のやりとり。 言葉は重要だがなによりも大切なのは心。言葉を超えて心が通じあった瞬間は 誰しも一度は経験があることだろう。 物語のクライマックス、大手橋の章は涙なくしては読めない。 江戸城の大手門までの最後の道のり。草履を履くこと、駕籠に乗ること。 これまで何度も何度も主従として共に行ってきた日常の何気ない動作。 ハンデのある家重にとっては苦痛だったこともこの時ばかりは 終わって欲しくないとの思いを抱いていたことと思う。 煩わしいと思っていたことに感謝できるほどの大切な存在だった忠光への思いが 最後の家重の言葉に溢れ出ている。 頭を下げただけで足早に大手門を後にした忠光。 そうしなければきっと今生の別れの決意が揺らいでしまうから。 最後のさいごまで心が通じ合っていた二人なのだと思う。
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