村木嵐のレビュー一覧
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購入済み
初めて読む作家さん。幻冬舎のキャンペーンでたまたま購入したが、内容にのめりこみ、
一気読みしてしまった。
木曽三川分流工事(宝暦治水)の責任者で薩摩藩家老の平田靱負を中心に描いた作品。
今まで宝暦治水がこれだけの大プロジェクトとは知らなかった。ブルドーザーやパワ
ーショベルのような土木機械もなく、人力だけで川筋を変え、堤防を築くなど、考え
ただけで気が遠くなる。さらには幕府や地元の役人、尾張藩、強欲でしたたかな農民
からの圧力、いわれなき誹謗中傷、いやがらせにも耐えなければならない。
東日本大震災をはじめ、台風や豪雨などの災害復興プロジェクトでも国や地元の利害が
複雑に絡み合い -
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<薩摩義士>という話しが一定程度知られていると思うのだが、本作はその挿話を基礎にした物語ということになる。
江戸時代には「御手伝普請」なるモノが在った。幕府が諸大名に命じ、諸大名は示された仕様に依拠して資材や人員等を自前で手配して工事を遂行するということになる。幕府として、諸大名が財力を蓄え悪くするためにやらせていたことらしい。この「御手伝普請」なるモノで築かれた、有名な城郭の石垣等が色々と伝わっていると思う。
<関ヶ原合戦>から150年も経ったような宝暦年間(1750年代頃)、この薩摩の島津家に対して幕府はこの「御手伝普請」を命じた。
遂行すべく工事は、木曽川、長良川、揖斐川が複雑に絡み合っ -
Posted by ブクログ
天正遣欧使節団の4人の少年の帰国後の運命を、そのうち一人の妻の目線で描いたもの。中国に渡ることさえ命がけだった時代に、往復8年の時間をかけて欧州を訪問・帰国してみれば、鎖国とバテレン追放の時代になっていた。次第に厳しくなる迫害の中で一人は病に倒れ、一人はマカオに移住することを選ぶ。一人は司祭として残り、国内のキリシタンを励まして生きる。そして本編の主人公千々石ミゲルは棄教の道を選び、キリシタンからは棄教者と憎まれ、キリシタンを取り締まる士族からは転び者と蔑まれる。そこには日本から一人の殉教者(=死者)も出さないという4人の誓いがあった。ミゲルに寄り添いながら、最後までミゲルの本心に近ずけなかっ
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天正遣欧少年使節としてヨーロッパに渡った4人の少年たち。帰国後、千々石ミゲルだけは棄教する。その史実を軸に、キリスト教迫害の時代を描く見事な筋立ての小説だった。そしてせつない。
何がせつないって、語り部の珠。あこがれのミゲルと夫婦になってともに人生を生きていくはずなのに、最後の最後までミゲルは珠を一番の存在にはしなかったこと。珠以前に、天主様や伊奈姫、ともにヨーロッパに行った3人がいた。ミゲルは珠にやさしいんだけど、珠が欲しいのはそういう慈悲のようなやさしさではないんだよ。ともに苦しみたいのにそこには入れてくれない、ある意味不実なミゲル。
自分にとって一番の相手が、自分を一番と思っていないって -
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書き下ろし
外つ国の 千草の糸を かせぎあげて
やまと錦を織り成さばやな
帝国憲法の産みの苦しみを、井上毅の人となりに迫って描いた作品。
京大法学部出身で司馬遼太郎に仕えた作者の真骨頂と言うべきか。
自由民権運動から生まれた私擬憲法草案があちこちで発掘され、日本史の教科書でも取り上げられているが、帝国憲法をどう作るかという苦労について書かれたものは少なかった。
保守性ばかりが強調される帝国憲法を「明治の理想を形にする」という成果の観点で捉え、「この国で生まれ育った誰もが心の奥底に持っているのが国体であり憲法なのだ。」という言葉には感動的な説得力さえある。
憲法改正や、皇室典範の -
Posted by ブクログ
為政者による創作や出版への粛清に抵抗し文化そのものに殉ずることは、多くの場合美談として語られがちです。実際その人たちの中にある信念は何物にも代えがたい気高さを湛えたものであると私も思います。では理不尽な力の前に筆を擱くことを選んだ人たちのすべてが、ただ自らの命惜しさのみにすごすごと引き下がってきたのでしょうか。答えは当然、否です。人という生き物は独りで生きているわけではない。だからこそ時に自分自身ではなく友人や愛する人、そして家族を守る為に半身と同義のものを手放す悔しさを選ばなければならない瞬間がある。この小説の主人公である太田南畝を支える人たちは気持ちが良いほどに真っ直ぐで、濁りがなく、そし
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ネタバレえ。これは鳥の言葉が分かるでお馴染みの鈴木俊貴先生ではないですか!
が、冒頭の感想(笑)
おかげで忠光は終始鈴木先生で脳内再生されてました。
それにしても初志貫徹をここまで貫けるかと唸る。
家重と忠光。何とも魅力的なバディで、この二人の信頼の深さはとても美しいが、同時にどれだけの苦しみを乗り越えて来たかという証と思うと、安々と真似できるものではないと感じ入る。
その反面、家族の乾いたような寂しさが切なかった。子供なら尚更。父親の凄さを信じられないのも仕方ない。
だが、田沼が忠光を一目置いていたという話は大人になった息子にとって何より心強い言葉であったろうと思う。
田沼を使った最後のオチがまた -
Posted by ブクログ
家康祖父の代から仕えた譜代の家臣鳥居忠吉•元忠父子が、家康を支え天下人になるのを見届ける物語。特に、祖父徳川清康•父元康は惨殺、更には継嗣の家康が遠江や尾張の人質になるなど、困難にぶつかる度に忠吉は空を見上げ雲間に無数の松平家の旗印が立つ日の本一の万軍の幻が見えると言って周りの家臣に夢を与える。その子元忠は関ヶ原の戦いにおいて伏見城に籠城して捨て石となり時間稼ぎをして勝利に貢献し、忠吉の夢が叶う。
その戦いの直前に交わした家康・元忠主従の遣り取りは、グッときて感慨深いものがあった。
それにしても、本作を構成する10話は時の流れ順になってなく、更に各話の中でも想い返す場面があったりするので、年 -
Posted by ブクログ
ブグログや書評誌での評価が高かった本書。期待に違わぬ出来であったと言いたいところだが、家重の人生と仕えた忠光の人生の重さや辛さを考えると、もっともっと書き込んでほしいところであった。そうすれば文句なしに星五つの作品である。
本書の1.5倍、いや2倍の分量があっても良かったのではないだろうか。ややもすると説明や感情の動きの表現に足りないところがあってモヤモヤが残ったりするところがあった。家重の正室亡き後のお幸との関係などは、ある意味本書のハイライトにもなる部分なので、家治誕生後も触れて欲しかった。
とは言え充分に楽しめたし、歴史的には暗愚とも言われてた家重の認識を改めさせられた。何よりも作者の