村木嵐のレビュー一覧

  • またうど

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    田沼意次の政治手腕と人柄が丁寧に描かれて、また将軍家重、家治との交情もうつくしい。一橋家や田安家の将軍への野望はわかるし、特に松平定信のもしかするとあったかもしれない未来への悔しさへの恨みが見苦しかった。

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    2025年01月06日
  • まいまいつぶろ 御庭番耳目抄

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    八代将軍徳川吉と嫡男の九代将軍家重、その通詞の大岡忠光の物語。
    ハンディキャップを持って生まれた長福丸は、忠光のみが彼の言葉を理解できたが為に、周囲の悪意の目に潔癖なまでの自制をしていきていた。

    とにかく登場人物達が情に溢れ、吉宗から家重へと親子の情に泣かされ、祖母と孫、祖父と孫、夫と妻、父と子、など、情け深い人物描写に泣かされてしまった。
    まいまいつぶろが雄々しく生きる姿は、深い感動をもたらしてくれた。

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    2024年11月01日
  • まいまいつぶろ 御庭番耳目抄

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    村木嵐の作品は泣ける。
    またまた気持ち良く泣かせてもらいました。
    うれし泣きができる作品にはなかなか出会えない。
    しかしこの作者の物語の奥底にいつも流れているのは優しさで、主人公やその周りに良い性格の人物がいて素敵な関係を築いているのが本当に大好き。

    前作でも万里のファンでしたが、ますます好きになりました。前作ではあまり書かれていなかった周りの人々のことをもう少し知りたかったなと思っていたので、待ってましたとばかりに一気読み。とりあえず3回読んでみました(笑)
    いったい何回読めば気が済むのであろうか?

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    2024年09月21日
  • まいまいつぶろ 御庭番耳目抄

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    「まいまいつぶろ」の感動をそのままに家重、忠光、万里らのその後を見事に描く。賢臣田沼意次の働きで郡上一揆を解決させるエピソードなども挟み込まれ、一味違う時代物であった。

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    2024年09月15日
  • 夏の坂道

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    恥ずかしながら今まで村木さんの作品を読んだことがなかったし、南原繁という人も知らなかった。字面をなんとなく認識したことはあっても、どういった方だったのかまでは知らず。その分、この『夏の坂道』という作品を真っ白な状態から読み進め、楽しむことができたように思う。
    「教育」「学問」の自立、自由のために政治やマスコミと闘った人たち。子どもの教育のために奮闘し、そのため時には自身が弾圧を受けた人たちにより今日の教育が成り立っている。ただし、それもよくよく注意して見れば戦前、戦中のように危うい方向へ進んでいないか、国民が意識をもっていなければいけない。教育が受けられることが当たり前であるけれども、当たり前

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    2024年01月22日
  • 頂上至極

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    ネタバレ

    宝暦治水の話。江戸時代、幕府から薩摩藩に木曽三川の分流工事が命ぜられた。ただでさえ難工事なのに、住民や地元役人は非協力的。最終的に工事は完成するが、工事期間中に薩摩藩士50人以上が切腹し、最後に総奉行・靱負までもが切腹した。靱負と佐江の別れのシーンでは涙がこぼれる。読みやすく、良い話だった。

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    2022年10月02日
  • にべ屋往来記

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    出自通りの人生でなく武士も町人も入り混じって懸命に生きる。身分がくっきり分かたれていたというイメージはどうやら違うらしい。

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    2022年03月11日
  • 戦国 番狂わせ七番勝負

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    新進気鋭の作家さんが番狂わせとしてそこそこ有名な戦いを書いている(弥助だけ少し毛色が違うが)。地図が分かりやすく、非常に助かる。テーマ上、若い時期のストーリーが多いが、描き方は色々で興味深い。
    海ノ口は大河でも見たが、季節は考えたこと無かったな。政宗と長政の2作がお気に入り。

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    2021年03月01日
  • 頂上至極

    購入済み

    初めて読む作家さん。幻冬舎のキャンペーンでたまたま購入したが、内容にのめりこみ、
    一気読みしてしまった。
    木曽三川分流工事(宝暦治水)の責任者で薩摩藩家老の平田靱負を中心に描いた作品。
    今まで宝暦治水がこれだけの大プロジェクトとは知らなかった。ブルドーザーやパワ
    ーショベルのような土木機械もなく、人力だけで川筋を変え、堤防を築くなど、考え
    ただけで気が遠くなる。さらには幕府や地元の役人、尾張藩、強欲でしたたかな農民
    からの圧力、いわれなき誹謗中傷、いやがらせにも耐えなければならない。
    東日本大震災をはじめ、台風や豪雨などの災害復興プロジェクトでも国や地元の利害が
    複雑に絡み合い

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    2020年09月21日
  • 頂上至極

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    <薩摩義士>という話しが一定程度知られていると思うのだが、本作はその挿話を基礎にした物語ということになる。
    江戸時代には「御手伝普請」なるモノが在った。幕府が諸大名に命じ、諸大名は示された仕様に依拠して資材や人員等を自前で手配して工事を遂行するということになる。幕府として、諸大名が財力を蓄え悪くするためにやらせていたことらしい。この「御手伝普請」なるモノで築かれた、有名な城郭の石垣等が色々と伝わっていると思う。
    <関ヶ原合戦>から150年も経ったような宝暦年間(1750年代頃)、この薩摩の島津家に対して幕府はこの「御手伝普請」を命じた。
    遂行すべく工事は、木曽川、長良川、揖斐川が複雑に絡み合っ

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    2020年07月08日
  • 戦国 番狂わせ七番勝負

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    歴史上の有名な戦いや、大大名の合戦の話ではないが、英雄の若き日の活躍や小が大を制する小気味好い物語がとても面白い。島津義弘、織田信長、真田昌幸などの想定外、裏話、想像を掻き立てるフィクションなどが、短編なのでさくっと読める。物語の面白さもさることながら、この作者がこんな話を書くのかという楽しみ方もある。ところで、こういういくさ話、単純な勝ち負け(結果)だけでもないし、武士のメンツや矜持を保つこと(外部からの評価)や信頼関係の構築(ネットワーク)など、ケースディスカッションに使えそうだなと。ちょっと作ってみるか。

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    2019年12月05日
  • マルガリータ

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    天正遣欧使節団の4人の少年の帰国後の運命を、そのうち一人の妻の目線で描いたもの。中国に渡ることさえ命がけだった時代に、往復8年の時間をかけて欧州を訪問・帰国してみれば、鎖国とバテレン追放の時代になっていた。次第に厳しくなる迫害の中で一人は病に倒れ、一人はマカオに移住することを選ぶ。一人は司祭として残り、国内のキリシタンを励まして生きる。そして本編の主人公千々石ミゲルは棄教の道を選び、キリシタンからは棄教者と憎まれ、キリシタンを取り締まる士族からは転び者と蔑まれる。そこには日本から一人の殉教者(=死者)も出さないという4人の誓いがあった。ミゲルに寄り添いながら、最後までミゲルの本心に近ずけなかっ

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    2019年06月12日
  • マルガリータ

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    天正遣欧少年使節としてヨーロッパに渡った4人の少年たち。帰国後、千々石ミゲルだけは棄教する。その史実を軸に、キリスト教迫害の時代を描く見事な筋立ての小説だった。そしてせつない。
    何がせつないって、語り部の珠。あこがれのミゲルと夫婦になってともに人生を生きていくはずなのに、最後の最後までミゲルは珠を一番の存在にはしなかったこと。珠以前に、天主様や伊奈姫、ともにヨーロッパに行った3人がいた。ミゲルは珠にやさしいんだけど、珠が欲しいのはそういう慈悲のようなやさしさではないんだよ。ともに苦しみたいのにそこには入れてくれない、ある意味不実なミゲル。
    自分にとって一番の相手が、自分を一番と思っていないって

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    2018年04月22日
  • やまと錦

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    書き下ろし

     外つ国の 千草の糸を かせぎあげて
     やまと錦を織り成さばやな
    帝国憲法の産みの苦しみを、井上毅の人となりに迫って描いた作品。
    京大法学部出身で司馬遼太郎に仕えた作者の真骨頂と言うべきか。

     自由民権運動から生まれた私擬憲法草案があちこちで発掘され、日本史の教科書でも取り上げられているが、帝国憲法をどう作るかという苦労について書かれたものは少なかった。
     保守性ばかりが強調される帝国憲法を「明治の理想を形にする」という成果の観点で捉え、「この国で生まれ育った誰もが心の奥底に持っているのが国体であり憲法なのだ。」という言葉には感動的な説得力さえある。

     憲法改正や、皇室典範の

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    2017年03月12日
  • まいまいつぶろ

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    ネタバレ

    歴史上あまり取り上げられることのない、徳川第九代将軍・家重。
    へその緒が首に巻き付いて生れたせいなのか、口がまわらず、半身がマヒしているため正座ができず、字を書くこともできず、武士の頂点たる征夷大将軍になることなど不可能と思われていた。
    頻尿のため、歩いたあとには尿を引きずった跡が残るため「まいまいつぶろ(かたつむり)」と呼ばれていた。

    家重の言葉を、唯一聞き取ることができたのが、大岡忠光という小姓。
    コミュニケーションを取ることができないために周囲から無能呼ばわりされている家重の口となり、彼の言葉を彼に代わって発するのだが。

    本当に無能なら問題はなかった。
    しかし卓越した記憶力と明晰な判

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    2025年10月29日
  • またうど

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    教科書で習った田沼は、商いで国を潤す一方で賄賂政治で私利私欲の塊みたいなイメージ。それがドラマの「べらぼう」ではまったく違う人物像。「またうど」全き人ー愚直なまでに正直な信の者。歴史は勝者サイドとはいえ、教科書、もう少し真実に近づいてくれないと…。「田沼は物は受ける。だが、それで己の信念は曲げはせぬわい」「田沼は物では動かぬ。だが動くと見られるのは何も悪いことではない。金が流れ工人が潤う。新しい工夫も生まれ、競い合う因になる」村木さん、どれだけの資料に当たったのだろう?終始、渡辺謙さんが頭に浮かぶ。

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    2025年10月23日
  • まいまいつぶろ 御庭番耳目抄

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    まいまいつぶろの御庭番目線のスピンオフ。
    だいたいがまいまいつぶろと同じ内容で特別びっくりしたり、あの時そうだったのか!とはあまりならないけど、相変わらず家重と忠光を優しく見守る御庭番と家臣たちに心温まる。

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    2025年10月16日
  • 阿茶

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    家康の側室になった元武田の家臣の娘阿茶、大坂冬の陣で淀殿、淀殿の妹初との和議役で大阪城の内濠を埋め、夏の陣で豊臣方を滅ぼした功労者である。阿茶は戦場へ家康と行く事が多く、影の参謀的存在となり、また家康との間の子がない事で良き世継ぎを育てる乳母役となる。阿茶は女として、子を持たない側室として家康の精神的な面も理解し、家康が亡くなるまで多くの親族の支援を惜しまなかった存在である。
    阿茶の父飯田直政の言葉「まず今できる手を打つ、打たねばならぬ手を討つ。目の前にある、己が果たさなければならぬことをする。そうすれば次にすべき事が見える」
    阿茶の夫忠重の言葉「癇癪を起こさず耐えること、家臣の苦労を裏切らぬ

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    2025年10月10日
  • まいまいつぶろ

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    以前から気になっていて、文庫化されて読んだ。あまり歴史小説にならない将軍と小姓の話で、非常に面白いストーリーだが、文章力はイマイチの印象。

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    2025年09月23日
  • まいまいつぶろ

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    ネタバレ

    身体にハンデを背負いながらも見事に一国を治める知性と人柄は
    エルサレム王ボードアン四世を思い出させる。
    (太平の世で後継にも恵まれた家重と彼とでは状況も大きく異なるとは思うが)
    また言葉に関わるキーワードとして「鳥の声」を度々用いているのが非常に興味深い。東西ともに鳥は神の言葉を伝える使者として扱われることもあるため、作者も意図して表現に取り入れたのだろうか。

    忠光の存在が家重の人生にとって、どれほどかけがえのないものだったか。
    家重の口となるということは彼のハンデと同じくらいの労苦をともに背負うということ。その覚悟を持って生涯務めた彼は見事だと思う。
    立身に重きを置く者たちには持ちえない美

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    2025年09月02日