あらすじ
天才・大田南畝はなぜ筆を折ったのか?
守るべきは、文化か、家族か。
『まいまいつぶろ』『またうど』の著者がおくる、心震える江戸の家族小説!
平賀源内から高い評価を受けたことを皮切りに、
文人としての名声をほしいままにしていた大田南畝。
蔦屋重三郎とも交流を重ね江戸の狂歌を牽引する存在になるが、
田沼意次の失脚と松平定信の台頭により、出版界に粛清の嵐が吹き荒れる。
一方、長男・定吉には、大田の家に時としてあらわれる「魔」の萌芽が見え――。
狂歌への思いと家族愛。
天才・大田南畝の知られざる葛藤を描き切る傑作長編!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
為政者による創作や出版への粛清に抵抗し文化そのものに殉ずることは、多くの場合美談として語られがちです。実際その人たちの中にある信念は何物にも代えがたい気高さを湛えたものであると私も思います。では理不尽な力の前に筆を擱くことを選んだ人たちのすべてが、ただ自らの命惜しさのみにすごすごと引き下がってきたのでしょうか。答えは当然、否です。人という生き物は独りで生きているわけではない。だからこそ時に自分自身ではなく友人や愛する人、そして家族を守る為に半身と同義のものを手放す悔しさを選ばなければならない瞬間がある。この小説の主人公である太田南畝を支える人たちは気持ちが良いほどに真っ直ぐで、濁りがなく、そして優しい。江戸に名を馳せるほどの彼が狂歌を辞めてまで守りたいと思った心の動きの説得力としてこれ以上のものはありません。狂歌のささやかなユーモアを混じえながら、人が人を想う気持ちを素直に書いた佳い歴史小説でした。
Posted by ブクログ
川柳が俳句のように五七五なら、狂歌は五七五七七を基調に自由でいいような感じか?この小説の主人公、大田南畝は狂歌の天才で、かの「白河の清きに魚もすみかねて もとの濁りの田沼こひしき」を詠んだ人。
だが、彼は松平定信の弾圧に大きく抵抗することもなく筆を折ることとなる。一族の血に巣食う狂気を恐れ、家族を守るために。そのあたりの葛藤がメインテーマ。静かに家族を思うシーンや思索にふけるシーン、南畝の母親や妻、息子の妻など女性陣の静かな活躍がかなり沁みる。
家に帰りたくなるほど美味しい、心を込めて入れたお茶っての、是非一度飲んでみたい。
Posted by ブクログ
大河ドラマ「べらぼう」とオーバーラップしている本で、小説に登場する人物がべらぼうの出演者の顔になった。
太田南畝は、ドラマの影響で屁踊りの印象が強かったが、稀有な学者であり、芸術家であり、家族や隣人からの愛をたくさん受け、自分も家族へ愛を注いだ人だったのだと思った。