あらすじ
帝国憲法が発布された年に生まれた南原繁は、やがて一高で新渡戸稲造、内村鑑三らの師や生涯の親友と出会い、学問とキリスト教の道へ。
次第に軍国化してゆく日本は、政治学徒となった南原の人生や学問の砦・東京帝国大学にも暗い影を落とし始める。
言論や研究の自由が脅かされ、教え子が次々と戦地へと送られる苦悩のなか、南原は絶望のなかで「最高善」を目指して格闘し続けるのだった。
東大教授・宇野重規氏が解説!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
恥ずかしながら今まで村木さんの作品を読んだことがなかったし、南原繁という人も知らなかった。字面をなんとなく認識したことはあっても、どういった方だったのかまでは知らず。その分、この『夏の坂道』という作品を真っ白な状態から読み進め、楽しむことができたように思う。
「教育」「学問」の自立、自由のために政治やマスコミと闘った人たち。子どもの教育のために奮闘し、そのため時には自身が弾圧を受けた人たちにより今日の教育が成り立っている。ただし、それもよくよく注意して見れば戦前、戦中のように危うい方向へ進んでいないか、国民が意識をもっていなければいけない。教育が受けられることが当たり前であるけれども、当たり前が当たり前であるために必要なことがあるはず、という問題提起。意識の変革。人間革命。
教育の向上なくして、国民の、国の豊かさには繋がらない。
昨年、逝去された創価学会・池田大作第三代会長が現状の三権(司法・立法・行政)に「教育」を加え、四権分立を訴えられていたけれども、その必要性がこの小説を読むとより以上に感じられる。教育が独立し、政治から干渉を受けてはいけない。また政治に汲みしてはいけない。あくまでも中立的な立場として確立していなければ、戦前戦中のように弾圧され、ときには悪用されかねない。ひとりの人間として、また親として「教育権」の向上、自立を今作に登場した人物たちのように切に願う。