村木嵐のレビュー一覧
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またうど
P54〈全き人、愚直なまでに正直な
信(まこと)の者という意味〉
田沼意次は、「またうど」なり。
大河ドラマ「べらぼう」で田沼意次を渡辺謙さんが。
第十代将軍、家治を眞島秀和さんが演じていらっしゃる。
活字を目で追い、頭の中で役者さんが動く。
お陰で楽しい時間となった。
『まいまいつぶろ』でも
その人情味溢れる描き方で引き込まれたが
本作でも、田沼意次の魅力が十二分に伝わってきた。
志し半ばではなかったか。
第十一代将軍、家斉の行く末を
着手した政策、開発を見守りたかったのではないか。
すっかり、田沼意次に心奪われてしまった。 -
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老中後の田沼意次の物語
一説によれば、江戸時代日本の海外貿易はほぼ赤字で、唯一黒字だったのが田沼の時代、だったとか。
吉宗の時代に始まったものがあるが、田沼時代に継承したモノ、さらに推し進めたものもある
この本は小説なのでさすがに全部真実だとは思わないが、史料に残る田沼意次の周囲をおもんばかる人柄は伝わってきた。
干拓と蝦夷地開拓はとても二、三年で終わるような事業ではないのだが、どこかで始めないと永遠に終わらない。
今の体制ではすぐに限界がくることをわかっていたから急ぎたかった、しかし不運だった。
田沼意次のような生い立ちで、このような先見性や経済への明るさをどこで身につけたのか、気になって仕 -
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「まいまいつぶろ」三部作?と言っていいものかですが、世界観は繋がっていて、主人公というか視点がそれぞれ変わっていて、今回は老中の田沼意次です。前2作でも登場している田沼意次ですが、教科書的イメージとしては、賄賂をたくさんもらった悪代官(代官じゃないけど)というもので、そんな人物を主人公にして、あのまいまいつぶろな感動が得られるのかなと不安もありましたが、まったくの稀有でした。
“またうど”とは「全き人、愚直なまでに正直な誠の者」という意味ということで、はて?という思いで読み始めてみると、なるほど、歴史というのはそうやって捻れて伝わってしまい、イメージとして残り続けてしまうものなのだなと。この物 -
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「まいまいつぶろ」では、第九代将軍の徳川家重と大岡忠光が中心でした。この作品は田沼意次のことが中心に描かれています。第九代将軍の徳川家重、第十代将軍徳川家治に仕えた老中田沼意次…その信用は厚く九代将軍徳川家重は「この者は、〈またうど〉の者なり――」との言葉を、田沼意次に残したのだった…。「またうど」とは、「愚直なまでに正直な信(まこと)の者」を意味する。
田沼意次の功績といえば、税制改革なんでしょうけど、私は異なる視点から読みましたよ。第九代将軍家重は身体が不自由でしゃべることも困難な状態をおしても、田沼意次に「まとうど」を授けたこと…田沼意次はその生涯「まとうど」の言葉を何よりも大事に -
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ネタバレ前著『まいまいつぶろ』の続編と言えます。前著の主人公は、第九代将軍・徳川家重と彼の言葉を解する大岡忠光が中心でしたが、本書はこのときに登用された田沼意次を軸にしています。
「またうど」とは、「愚直なまでに正直な信(まこと)の者」の意。家重が田沼意次を表したとあり、家重亡き後、第十代・家治に仕える田沼意次の行動が書かれています。本書を読むとこれまでの田沼意次像がガラリと変わってきます。「田沼意次≒賄賂」というイメージがありますが、本人は贈り物を見ることもなく、むしろ「金子が流れ、工人どもも潤う」と気にせず国富向上に邁進。米の増産を図るため、印旛沼、千賀沼、蝦夷の開拓を図り、賄賂に至っては