あらすじ
時代の激流と人間の生き様を描く、真山仁の真髄が結実した大傑作『ベイジン』上下巻が電子版限定で、合本になって登場!
※本書は、『ベイジン(上)』『ベイジン(下)』を1冊にまとめた電子書籍限定の合本版です。
■『ベイジン(上)』
中国の威信を賭けた北京五輪の開幕直前。開会式に中継される“運転開始”を控えた世界最大規模の原子力発電所では、日本人技術顧問の田嶋が、若き中国共産党幹部・トウに拘束されていた。このままでは未曾有の大惨事に繋がりかねない。最大の危機に田嶋はどう立ち向かうのか――。時代の激流と人間の生き様を描く著者の真髄が結実した大傑作。
■『ベイジン(下)』
衝撃的な事故シミュレーションを突きつけられた田嶋とトウは、徹底的な補強工事を決意し、最大の障壁である政府の実力者を失脚させることに成功する。不和を乗り越え、“希望”を手に突き進む二人の夢――世界最大の原発から、北京五輪開会式に光は届くのか? 中国の暗部と現実を描き、共に生きる希望を謳い上げる一大傑作エンターテインメント。
感情タグBEST3
北京五輪開催に合わせて世界最大級の原発を稼働させようとする中国が舞台。日本人エンジニア、
密命を帯びて赴任した中国の官僚、オリンピックの記録映画を撮ることになった気鋭の映画監督
の三人の視点で物語が展開する。日本の常識が通用しない中国では、きっと多くの日本人ビジネ
スマンが苦労したに違いない。それにしても中国の権力闘争はあまりにえげつない。腐った連中
が富と権力を独占し、肥え太っていく様には怒りを通り越して恐ろしさを感じる。「諦めからは
何も生まれない。希望とは自らが戦って奪いとるもの」という一節が心に残った。オリンピック
開催直後に発生した原発事故は、まるで福一の事故を予言しているかのようだ。ちょっとした気
のゆるみや慢心が重大事故を招くというのはどこでも同じ。原発稼働に全力投入し、事故収束に
命がけで臨む原発マンの田嶋は立派だが、危機管理体制が全くダメで、かつ地震や火山が多い日
本にはやはり原発はいらないと思う。終わり方が唐突なのが残念だが、テーマの大きさを考える
とこれもやむ無しかと。