竹内氏の作品は初めてだが、とても面白かった。すごい!の一言に尽きる。
経歴を見るともともとTBSの記者で、ニュースキャスターを務めていたこと
もあり、現在は同社の報道局長とのこと。権力に媚びる一方で視聴率や購読率
を気にしてマトモな報道ができなくなったマスコミ人が多い中、現場第一主義
の報道
...続きを読む姿勢を貫く硬派のジャーナリストという印象。記者時代の取材経験を生
かした文章は迫力があり、物語の構成も申し分ない。
公安捜査員の彩音や外見とは裏腹に優秀な頭脳を持つ変わり種の朝倉、そして
主人公で一匹狼の筒美がパズルの一片一片をつなぎ合わせるように真実に近づ
いていくさまは緊張の連続で、ページを繰る手が止まらなかった。
北朝鮮と日本の密約、国益と言いながら、自らの私腹を肥やし、利権獲得に余
念のない官僚や政治家、財界人。政府の中枢に巣くう北朝鮮スパイなど、十分
ありうる話で空恐ろしくなった。太平洋戦争終結時の朝鮮半島で置き去りにさ
れた日本人を襲った悲劇は初めて知った。自分たちを見殺しにした日本という
国を、彼らやその子孫は絶対忘れないだろうし、そうした人たちの誰かが日本
に矛先を向けても不思議はないと思う。