あらすじ
人は塵の如く風に翻弄され散る――。まったく新しい徳川家康像を創り出した表題作『風塵』。藩政を守るために乱心と称して壮絶な死を選んだ酒井家の家老、川合勘解由左衛門とその生死のまぎわを一瞬照らす女の命を描く「九思の剣」を含む6作を収録。武士道の厳しさと哀しみを生き生きと伝える傑作短編集。(講談社文庫)
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戦国時代から明治維新までを扱った時代小説短編集。いずれも格調高い文体で、過去の資料や記録を丹念に
調査した上で書かれている。最初の「九思の剣」はあまりの展開にそこまでやるのか、と息をのんだ。最後
の「風塵」は考えさせられた。今まで栄えていた国や人が歴史の大きな流れに翻弄され、滅び去っていく
さまはコロナ禍に振り回される今の世の中そのもの。いつの世でも諸行無常というのは共通しているようだ。
Posted by ブクログ
統一感のない寄せ集め短篇集であることは間違いない。いかにも池宮らしい戦国武将を主人公にした骨太なものもあれば、明治を舞台にしたものもある。味わい深い余韻を残す良編が多く安心して読めるが、ひときわ異彩を放つのは「清貧の福」。お江戸版「賢者の贈り物」ともいうべき怪作で、なんか妙な隠し芸を見せられた気分になった(でも好き)